ヘモグロビン検査(血液検査でわかること)
概要
ヘモグロビンは、赤血球の中に入っているたんぱく質で、肺で取り入れた酸素を体のすみずみまで運ぶ「運び屋」の役割をしています。ヘモグロビン検査は、腕の静脈や指先から少量の血液を採って、このヘモグロビンの量を測る検査です。医療機関では検査の依頼番号として「17790」という番号が使われることがあります。ヘモグロビンが少ないと「貧血(血液が薄くなり、酸素を運ぶ力が落ちた状態)」、多すぎると「多血症(血液が濃くなりすぎた状態)」の手がかりになります。ただし、この検査だけで病名が決まるわけではなく、症状やほかの検査結果とあわせて医師が判断します。
重要な事実
- 採血だけで行える、体への負担が少ない基本的な検査です。結果は多くの場合、当日から数日でわかります。
- 数値が低いときは貧血、高いときは多血症や脱水(体の水分不足)などが疑われます。
- 基準値(正常とされる範囲)は年齢・性別・妊娠の有無・住んでいる土地の高さなどで変わり、検査機関ごとにも多少異なります。
- 一度の数値だけで決めつけず、症状や食事、生活習慣、ほかの血液検査と合わせて総合的に見ていきます。
はい、とてもよく行われます。健康診断や病院の一般的な血液検査に必ず近い形で含まれている、もっとも基本的な検査のひとつです。
年齢や性別を問わず、どなたでも受ける検査です。とくに、疲れやすい・息切れがするといった症状がある方、月経のある女性や妊娠中の方、高齢の方、腎臓病や炎症性の病気など慢性の持病がある方、手術の前後や入院中の方では、よく測られます。
症状
- 会話も難しいほど強い息切れがある、横になっても息が苦しい
- 胸の痛みや強い圧迫感がある
- 意識がもうろうとしている、気を失った(失神)
- 唇や爪が青白く、汗が止まらない
- 心臓がとても速く打ち続ける、脈が飛ぶ感じが続く
- 大量の出血が止まらない、黒い便や血便が続く
- ⚠安静にしていても動悸や息切れが続く
- ⚠ひどいめまいやふらつきで、歩くのが不安
- ⚠顔色が明らかに悪く、ぐったりしている
- ⚠便が黒い(タールのような便)、または血が混じる
- ⚠月経の出血量が急に増えた、レバーのような塊が出る
- ⚠微熱や体重減少など、ほかの気になる症状が重なっている
一般的な症状
- 疲れやすい、だるさが続く
- 階段や少しの運動で息切れがする、動悸(心臓がドキドキする感じ)がする
- めまい、立ちくらみ、朝起きるのがつらい
- 顔色が悪いと人に言われる、唇や爪の色が薄い
- 頭痛、耳鳴り、集中しにくい、仕事や勉強の能率が下がる
- 爪がもろい、髪が抜けやすい
- 氷や土などを無性に食べたくなる(異食症)
- 逆に、ヘモグロビンが高めのときは、頭が重い、顔がほてる、皮膚が赤っぽいなどの症状が出ることがあります
子供の症状
- 元気がなく、遊びたがらない、すぐ疲れる
- 食欲がない、体重が増えにくい
- 顔色や唇の色が白っぽい
- 集中しにくい、学習に遅れが出る
- 氷や泥などを食べたがる
- 夜泣きや不機嫌が増える
高齢者の症状
- 動悸や息切れが、年のせいだと思って見過ごされやすい
- ふらつき、転びやすくなる
- 疲れやすさ、気力の低下
- 物忘れや集中力の変化として現れることがある
- 心臓に負担がかかり、胸の苦しさや足のむくみが出ることがある
- もともとの持病の症状と混ざって、貧血に気づきにくい
原因
主な原因
- 鉄分の不足(食事からの不足、月経や消化管からの出血など)
- ビタミンB12や葉酸の不足(偏った食事、胃や腸の手術後など)
- 慢性の炎症や腎臓の病気による、赤血球が作りにくい状態
- 消化管の潰瘍や腫瘍、痔などからの慢性的な出血
- 赤血球が壊れやすい体質や、遺伝による血液の病気(地中海貧血、鎌状赤血球症など)
- 骨髄(骨の内側で血をつくる場所)の病気
- 脱水や喫煙、高い土地での生活、睡眠時無呼吸(寝ている間に呼吸が止まる状態)などで数値が高く出ることがある
- まれに、血液をつくる細胞が過剰に増える多血症
リスク要因
- 月経のある女性、妊娠中・出産後の方
- 偏った食事、極端なダイエット、菜食中心で鉄が不足しがちな方
- 高齢の方
- 腎臓病、炎症性の腸の病気、がんなどの慢性の病気がある方
- 胃や腸の出血を起こしやすい薬を長く使っている方(自己判断で中止せず、必ず主治医や薬剤師に相談してください)
- 家族に血液の病気の方がいる
- 喫煙、脱水、激しい運動の直後(数値が高めに出ることがあります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 安静にしていても息苦しい、動悸が止まらない
- ふらつきが強く、立っているのがつらい
- 黒い便や血便がある、出血が続いている
- 意識が遠のく、気を失った
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすさや息切れが数週間以上続いている
- 健康診断でヘモグロビンの数値に「要再検査」「要精密検査」と書かれていた
- 顔色が悪いと言われる、爪の色が薄い
- 妊娠を考えている、または妊娠中で貧血を指摘された
- 家族に血液の病気の人がいる
診断
まず医師が症状や生活習慣、既往歴(これまでの病気の経験)、飲んでいる薬、月経の状況などを聞き、診察をします。そのうえで採血を行い、ヘモグロビンの値を測ります。採血は腕の静脈から、または指先に小さな針を刺して行い、数分で終わります。結果と症状を合わせて、貧血かどうか、どのタイプかを考えていきます。
行われる可能性のある検査
- ヘモグロビン値の測定(今回の検査)
- 全血球計算(CBC:赤血球・白血球・血小板の数をまとめて調べる検査)
- ヘマトクリット(血液の中で赤血球が占める割合)と赤血球数
- MCV(赤血球ひとつの大きさ)— 貧血のタイプを推測する手がかりになります
- 血清鉄・フェリチン(体に蓄えられている鉄の量)
- ビタミンB12・葉酸の値
- 網状赤血球数(新しく作られた赤血球の数)
- 便潜血検査(便に血が混じっていないか)
- 必要に応じて、胃や腸の内視鏡検査、超音波検査、骨髄の検査など
診察で予想されること
採血のあとは、少し圧迫して止血すれば、そのまま普段どおり過ごせます。結果は当日から数日で出ることが多いです。基準値は検査機関や年齢・性別・妊娠の有無によって異なるため、結果の紙に書かれている基準値と見比べてください。脱水があると数値が高めに出ることがあるので、検査の前に水分をとっておくと安定しやすいことがあります。結果は一度で確定せず、必要なら再検査や追加の検査を行います。
治療
治療の内容は「ヘモグロビンがなぜ多い/少ないのか」という原因によって変わります。数値そのものを下げる・上げるだけではなく、背景にある原因に対応することが大切です。たとえば鉄や栄養素の不足なら食事の見直しや補充、出血が原因なら出血源の治療、持病が関係しているならその病気の管理、といった具合です。
自宅でのセルフケア
- 食事を整える(肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質、緑黄色野菜、鉄を多く含む食品)
- ビタミンCを含む食品を一緒にとると、鉄の吸収が助けられます
- 食事の直前直後に濃いお茶やコーヒーを大量に飲むのは控えめにする(鉄の吸収を妨げることがあります)
- 水分をこまめにとる
- 十分な睡眠と、無理のない範囲の運動
- 禁煙する、飲酒はほどほどにする
- 症状と数値を簡単なメモにつけておくと、診察のときに役立ちます
- サプリメントや市販薬を自己判断で始めず、まずは医師や薬剤師に相談する
医療治療
原因に合わせて、不足している栄養素を食事や補充で補う、出血の原因を治療する、持病の管理をしっかり行う、といった対応をします。貧血が強い場合には、医師の判断で点滴や輸血などの処置が行われることもあります。どの方法が適切かは、年齢や持病、妊娠の有無などによって変わるため、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
出血が原因で貧血が続いている場合、胃や腸の潰瘍・腫瘍、子宮筋腫などに対して手術が必要と判断されることがあります。ただし、これは原因や状態によって大きく異なり、すべての方に必要なわけではありません。
この病気と共に生きる
数値を気にしすぎて不安になりすぎる必要はありませんが、疲れやすさや息切れの程度を毎日なんとなく記録しておくと、体の変化に気づきやすくなります。急に坂道がつらくなった、動悸が増えた、といった変化があれば早めに相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- バランスのよい食事を3食、無理なく続ける
- 睡眠時間を確保し、疲れたら休む
- 禁煙し、飲酒は適量にする
- 無理のない範囲で歩くなど、軽い運動を習慣にする
- 入浴やサウナのあとは水分を補給する
- 便の色や月経の量など、出血のサインに気を配る
- 薬を自己判断でやめたり増やしたりしない
食事と運動
鉄を多く含む食品(赤身の肉や魚、レバー、卵、大豆製品、小松菜やほうれん草、ひじきなど)と、たんぱく質、ビタミンCを組み合わせると吸収がよくなります。ヘモグロビンが低いときは、息が上がるほど強い運動は控え、散歩などの軽い運動から始めましょう。数値が安定してきたら、体力に合わせて少しずつ増やしていくとよいです。
精神的健康と心の健康
疲れやすさや息切れが続くと、気分が落ち込んだり、仕事や家事が思うように進まず焦りや不安を感じたりすることがあります。これは体の状態が心に影響している、ごく自然なことです。一人で抱え込まず、かかりつけ医や家族、地域の保健センター、自治体のこころの相談窓口に話してみてください。気持ちがつらい状態が続くときは、早めに專業の相談先を訪ねることが大切です。
予防
すべての貧血や多血症を防ぐことはできませんが、鉄や栄養素の不足による貧血は、日々の食事と定期的な検査である程度予防でき、早めに見つけることもできます。出血が原因の場合は、気になるサイン(黒い便、月経量の増加など)を早めに相談することが大切です。
検診プログラム
日本の職場の定期健康診断や、自治体の特定健康診査では血液検査が行われ、ヘモグロビンも測られます。妊娠中は母子保健の健診で定期的に確認されます。結果に「要再検査」とあれば、症状がなくても受診して確認しましょう。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進み、心臓に負担がかかって息切れやむくみが出ることがある
- 疲れやすさから、仕事・家事・学業など日常生活が制限される
- 集中力や記憶力の低下につながることがある
- 妊娠中の場合、母体や赤ちゃんの健康に影響することがある
- 出血や腫瘍など、隠れていた原因の発見が遅れる
- 高齢の方は転倒やふらつきのリスクが高まることがある
長期的な見通し
ヘモグロビンの異常は、多くの場合、原因に応じた対応で改善が期待できます。検査は、体の中で起きていることを早く知るための「入り口」です。結果をきっかけに生活を見直し、必要な治療につなげることで、安心して過ごせるようになる方がたくさんいます。気になることがあれば、遠慮なく医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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