スパイロメトリー(呼吸機能検査)— 肺の働きを調べる検査
概要
スパイロメトリーは、肺の働き(呼吸機能)を調べる検査です。機械につながったマウスピースを口にくわえ、鼻をクリップで軽くふさいで、思い切り息を吸い、できるだけ強く、長く息を吐き出します。機械は「どれくらいの量の空気を吐き出せたか」「どれくらいの速さで吐けたか」を測定します。注射も痛みもなく、レントゲンのような放射線も使いません。結果はグラフと数値で表され、気道(空気の通り道)が狭くなっていないか、肺がしっかりふくらんでいるかを知る手がかりになります。
重要な事実
- 所要時間はふつう15〜30分ほどで、同じ動作を何回か繰り返します。
- 結果はその日のうちに数値で出ることが多く、医師がグラフを見ながら説明します。
- 喘息(ぜんそく:気道が敏感になって狭くなる病気)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患:たばこの煙などで肺が傷つき、息を吐き出しにくくなる病気)の診断や、治療が効いているかの確認に使われます。
- 検査の前後に、気道を広げる吸入薬を吸って変化を比べることがあります(薬の名前や使い方は医師の指示に従ってください)。
とてもよく行われている、身近な検査です。かかりつけの内科や呼吸器科、健康診断の場などで行われています。特別な準備が難しい検査ではないので、初めてでも心配しすぎる必要はありません。
長引くせき、息切れ、ゼーゼーする息(喘鳴:ぜんめい)がある人、たばこを長く吸っている人、息切れの原因を調べたい人、手術前に肺の状態を確認したい人などが受けます。年齢を問わず行えますが、小さな子どもは強く息を吐くのが難しいことがあり、その場合は様子を見ながら進めます。
症状
- 息ができず、会話も難しいほどの息苦しさがある
- 唇や爪が青紫色になる(酸素が足りていないサイン)
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い
- 胸の強い痛みを伴う息苦しさがある
- ⚠息切れが急に悪化し、横になると苦しい
- ⚠発熱と息苦しさが同時にあり、痰の色が変わった
- ⚠検査のあと、めまいやふらつき、気分の悪さが続く
- ⚠普段より呼吸が速く、顔色が悪いと感じる
一般的な症状
- せきが2〜3週間以上続く、または何度も繰り返す
- 階段や坂道で息が切れやすい、以前より息切れが増えた
- ゼーゼー、ヒューヒューという息をする(喘鳴)
- 痰がよく出る、痰の量や色が変わった
- 夜間や早朝にせきや息苦しさが出る
- たばこを吸っていて、息切れやせきが気になりはじめた
- 健康診断や術前検査で肺の働きを確認するよう言われた
子供の症状
- 子どもは6歳くらいから、大人と同じように検査に協力できることが多くなります。
- 小さい子どもの場合は、保護者と一緒に座り、遊びの感覚で息を吹く練習をしてから行うことがあります。
- 泣いたり笑ったりしていると正確に測れないため、落ち着いてから行います。
- うまくできないときは、医師が症状や他の検査を組み合わせて判断します。検査ができないことは診断できないことと同じではありません。
高齢者の症状
- 何度も繰り返すと疲れることがあるため、休みながら進めます。
- 椅子に座って楽な姿勢で行うなど、体への負担を少なくする工夫ができます。
- 口の渇き、入れ歯のぐあい、聞こえにくさなどで説明が伝わりにくいことがあります。ゆっくり説明してもらい、家族に同席してもらうのもよい方法です。
- 息苦しさが強い日は無理をせず、医師にその旨を伝えてください。
原因
主な原因
- 喘息:気道が敏感になり、狭くなったり炎症を起こしたりする病気
- COPD(慢性閉塞性肺疾患):たばこの煙などで肺が傷つき、息を吐き出しにくくなる病気
- 間質性肺炎など、肺が硬くなってふくらみにくくなる病気
- 胸や筋肉の影響で肺が十分ふくらまない状態(拘束性の換気障害)
- アレルギーや粉じん、化学物質など仕事の環境による肺の病気
- 心臓や貧血など、呼吸器以外の原因による息切れ
リスク要因
- たばこを吸っている、または長く吸ってきた
- 家族や職場などでの受動喫煙
- 粉じん、化学物質、ほこりの多い職場での作業
- 大気汚染の多い環境での生活
- 子どものころを含め、呼吸器の感染症を繰り返してきた
- 喘息やアレルギーの家族歴がある
- 肥満や運動不足で息切れしやすい状態がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが強く、横になるとつらい、会話が途切れる
- 血の混じった痰が出た
- 発熱と息苦しさが同時にあり、ぐったりしている
- 検査の予約を待てないほど症状がつらい
定期受診を予約すべき場合:
- せきや痰が3週間以上続いている
- 以前より階段や坂道で息が切れるようになった
- ゼーゼー、ヒューヒューという息が聞こえる
- たばこを吸っていて、息切れやせきが気になりはじめた
- 健康診断で肺の働きについて指摘された
- 手術を控えていて、肺の状態を確認したい
診断
スパイロメトリーは、医師の指示のもとで臨床検査技師や看護師が行うことが多い検査です。椅子にまっすぐ座り、鼻をクリップでふさぎ、マウスピースを口にくわえて、まずゆっくり最後まで息を吐ききります。次に思い切り深く吸い込み、できるだけ強く、長く吐き出します。この動作を3回以上繰り返し、いちばん良い結果を記録します。検査の前後に気道を広げる吸入薬を吸って、変化を比べることがあります。結果と症状、これまでの経過をあわせて、医師が総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- スパイロメトリー(基本の呼吸機能検査)
- 気道を広げる吸入薬を吸ったあとの再検査(反応を見る検査)
- フローボリューム曲線(息の出し方をくわしく見るグラフ)
- パルスオキシメーター(指先で血中の酸素の量を測る)
- 胸部レントゲンやCT(肺の形や影を調べる画像検査)
- 血液検査、アレルギー検査、痰の検査
- 6分間歩行テスト(歩いたときの息切れや酸素の変化をみる)
- 吐く息に含まれる一酸化窒素を測る検査(気道の炎症の目安)
診察で予想されること
検査の前には、喫煙や激しい運動、食事、使っている吸入薬についての指示が出ることがあるので、事前に確認しておきましょう。締めつけの少ない楽な服装で受けてください。検査中は何度も強く息を吐くため、せきが出たり、少しめまいがしたりすることがあります。そのときは無理をせず、手を挙げて休ませてもらいましょう。検査のあとは少し休めば大丈夫です。結果の説明はその日にあることも、後日になることもあります。
治療
スパイロメトリーは検査そのものであり、治療ではありません。結果をもとに、息切れやせきの原因に合った治療や、日常生活の工夫を一緒に考えていきます。数値が思わしくない場合でも、治療や生活の調整で症状がずいぶん楽になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 検査の前に、喫煙・運動・食事・吸入薬の使用について医師や看護師の指示を確認する
- 締めつけの少ない、動きやすい服装で受ける
- 検査の直前の激しい運動は控える
- 検査のあとは少し休み、水分をとって落ち着く
- 結果の数値と医師の説明をメモしておき、次回の受診で見返せるようにする
- 自宅で息苦しさやせきの程度を記録しておくと、受診のときに役立つ
医療治療
結果に応じて、気道の炎症をしずめたり気道を広げたりする吸入薬が使われることがあります。薬の種類や使い方は医師の判断によりますので、ここでは具体的な名前はお伝えしません。そのほか、誘因(たばこの煙、ほこり、冷気など)を避ける工夫、呼吸リハビリテーション(呼吸の仕方や体の動かし方を学ぶプログラム)、重症の場合の在宅酸素療法などが組み合わされることがあります。治療が効いているかは、定期的な呼吸機能検査で確かめていきます。
手術が検討される場合
手術を受ける前に肺の働きを確認する目的で、この検査が行われることがあります。また、肺の手術の前後で肺の状態を比べるためにも使われます。手術の安全性を判断する材料のひとつになります。
この病気と共に生きる
検査の結果は、毎日の暮らしを見直すきっかけになります。息苦しさは「がまんするもの」ではなく、記録して相談するものと考えてください。階段を使う、買い物に行く、眠るといった日常の場面でどんなときに息が苦しくなるかをメモしておくと、治療の調整に役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を考え、必要なら禁煙外来など専門の支援を利用する
- 受動喫煙を避ける(換気、分煙、喫煙場所を離れる)
- ほこりや化学物質、冷たい空気など、症状が出やすいものを避ける工夫をする
- かぜやインフルエンザなど呼吸器の感染症にかからないよう、手洗い・うがいを心がける
- 決まった時間に休み、睡眠を十分にとる
- 症状や検査結果を記録し、受診時に持参する
食事と運動
バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動は、体力と呼吸の効率を保つのに役立ちます。歩行や軽い体操など、会話ができる程度の強さから始め、息苦しさが強い日は休むなど、体の声に合わせて調整しましょう。体重が増えすぎると息切れしやすくなることがあり、やせすぎも体力低下につながります。食事や運動の内容は、かかりつけ医や管理栄養士、リハビリの担当者に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
息苦しさが続くと、不安になったり、外出を控えたくなったりすることがあります。検査の結果を聞く前は特に、いろいろ考えてしまいがちです。そんなときは一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。気持ちのつらさが続く場合は、かかりつけ医に相談するか、地域の相談窓口を利用しましょう。緊急に気持ちが追い込まれたときは、ためらわず救急(119)や地域の相談先を頼ってください。
予防
検査そのものを防ぐという考え方はありませんが、この検査で見つかる肺の病気の多くは、予防や進行をゆるやかにする工夫ができます。とくに禁煙は、肺の働きを守るために最も効果的な方法のひとつです。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンは、肺の病気がある人に勧められることがあります。接種の可否や時期は、かかりつけ医に相談して決めてください。
検診プログラム
症状がなくても、たばこを長く吸ってきた人や粉じんの多い職場で働く人は、呼吸機能検査を受けることがあります。健康診断の項目に含まれている場合もあるので、気になる場合は健診の案内を確認したり、かかりつけ医に相談したりしてみてください。
合併症
治療しない場合
- 息切れが進み、階段の上り下りや家事が大変になることがある
- 症状が急に悪くなる状態(急性増悪)を起こすことがある
- 心臓への負担が増えることがある
- 睡眠が浅くなる、外出や人づきあいが減るなど、生活の幅が狭くなることがある
- 不安や気分の落ち込みが続くことがある
長期的な見通し
スパイロメトリーで早めに状態を知ることは、今後の暮らしを整える第一歩になります。肺の病気の多くは、治療と生活の工夫で症状を軽くし、安定した毎日を続けられます。数値だけで将来が決まるわけではありません。結果を一緒に受け止め、無理のない目標を立てていくことが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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