足関節上腕血圧比(ABI)検査とは
概要
ABI(足関節上腕血圧比)は、腕と足首の血圧を測って比べる、とても簡単な検査です。足に血液を送る血管が狭くなったり詰まったりしていないか(末梢動脈疾患=PAD、足の血管の動脈硬化)を、体に負担をかけずに調べることができます。血圧を測る帯(カフ)を両腕と両足首に巻き、超音波の機械で血流の音を確かめながら測ります。痛みはほとんどなく、10〜20分ほどで終わります。
重要な事実
- 腕の血圧と足首の血圧を比べて、足の血管の通り具合を数字で見る検査です
- 仰向けに寝たまま測れる、痛みの少ない検査です
- 結果は「足首の血圧 ÷ 腕の血圧」の比で表されます
- 足だけでなく、全身の血管の状態を知る手がかりにもなります
動脈硬化が気になる方や糖尿病のある方などで、よく行われている検査です。手足の血管の状態を知るための基本的な検査のひとつで、外来でも行えます。
糖尿病、高血圧、脂質異常症(コレステロールなどが高い状態)、腎臓の病気がある方、たばこを吸う方、60歳以上の方、歩くと足が痛くなる方などが対象になります。足の血管の病気は、こうした背景のある方に多く見られます。
症状
- 足が急に白っぽく、冷たくなり、激しく痛む(血管が急に詰まった可能性があります)
- 足の感覚が急に鈍くなった、動かしにくい
- 足の色が黒っぽく変わり、皮膚が破れてきた
- ⚠足の傷や靴ずれが2週間以上たっても治らない
- ⚠歩かなくても足が痛む(安静時痛)
- ⚠足の赤みやはれが急に強くなった、熱を持っている
一般的な症状
- 歩くとふくらはぎや太ももが痛くなるが、少し休むと楽になる(間欠性跛行)
- 足が冷たい、色が悪い、爪が伸びにくい、すねの毛が薄くなる
- 足首の脈が触れにくいと言われる
- 足の傷や靴ずれが治りにくい
- 進行すると、歩かなくても足が痛むことがある
子供の症状
- 小児ではほとんど行われません。生まれつきの血管の病気など、特別な場合に限られます
高齢者の症状
- 高齢の方では、痛みなどの症状が出にくいことがあります
- 血管が硬くなる(石灰化)と、ABIの数値が実際より高く出ることがあり、注意が必要です
- 足の傷や爪の変化に気づきにくいため、家族や介護する方の観察が役立ちます
原因
主な原因
- 足の血管にコレステロールなどがたまって狭くなる(動脈硬化)
- 血管が硬くなって血流が悪くなる(石灰化)
- 足の血管が血栓などで急に詰まる(急性動脈閉塞)
- 生まれつきの血管の形の違いや、けがの影響など、まれな原因
リスク要因
- たばこを吸う
- 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)
- 腎臓の病気(慢性腎臓病など)
- 60歳以上
- 運動不足、肥満
- 家族に血管の病気の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 足の傷が深くなってきた、膿やにおいがある
- 歩かなくても足が痛む
- 足の色や温度が急に変わった
定期受診を予約すべき場合:
- 歩くと足が痛くなり、休むと楽になる
- 足がいつも冷たい、はれている、むくみやすい
- 糖尿病や腎臓病があり、足の状態が気になる
- たばこを吸っていて、足の血管の病気が心配
- 健診で血管の状態を指摘された
診断
ABIは外来で行える検査です。ベッドに仰向けに寝て、両腕と両足首に血圧の帯(カフ)を巻きます。超音波の機械で血流の音を確かめながら、それぞれの血圧を測ります。所要時間は10〜20分ほどです。
行われる可能性のある検査
- ABI(足関節上腕血圧比)の測定
- 両腕の血圧測定(左右で比べることもあります)
- 超音波検査(血管の血流や狭くなり具合を見ます)
- 脈波検査(血管の硬さを調べます)
- 血液検査(血糖・コレステロール・腎機能など)
- 必要に応じてCTやMRIなどの画像検査
診察で予想されること
検査の前は安静にしてください。たばこは検査の直前に吸わないほうがよいとされています。測定中に痛みはありません。数値はその場でわかり、1.0以上がおおむね正常、0.9以下だと足の血管が狭くなっている可能性が考えられます。1.3以上と高く出た場合は、血管が硬くなっている(石灰化)可能性があり、別の検査で確かめることがあります。数値の意味は医師が説明しますので、わからないことはその場で聞きましょう。
治療
ABIの結果が気になる場合は、足の血管をこれ以上狭めないこと、そして全身の血管を守ることが目標になります。治療は、生活習慣の見直しを土台にして、必要に応じてお薬や運動療法、血管を広げる処置などを組み合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(足の血管にとって最も大切なことのひとつです)
- 痛みの出ない範囲で、歩く習慣をつける
- 足を清潔に保ち、保湿する。毎日、傷がないか見る
- きつい靴や足に合わない靴を避ける
- 血圧・血糖・コレステロールを主治医と一緒に管理する
- 足を冷やさない、長時間同じ姿勢で座り続けない
医療治療
治療の中心は、動脈硬化を進めないための生活習慣の見直しです。血圧や血糖、コレステロールを整えるお薬を使うことがありますが、種類や量は医師が体の状態に合わせて決めます。また、痛みの出ない範囲で歩く運動療法が勧められることがあります。血流がとても悪い場合には、血管を広げる処置(カテーテル治療)や手術が検討されます。
手術が検討される場合
足の血流が著しく悪く、安静にしていても痛む場合や、治りにくい傷がある場合には、カテーテル治療(風船や金網のような道具で血管を広げる方法)や、バイパス手術(血液の通り道を新しく作る方法)が検討されます。主治医とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
ABIの検査を受けたあとは、結果を「足の健康を保つための地図」として使うとよいでしょう。数値が安定していても、足の血管の病気はゆっくり進むことがあるため、定期的なチェックが役に立ちます。毎日、足の色・温度・傷の有無を見る習慣をつけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。吸いたくなったときの対処法をあらかじめ決めておく
- 十分な睡眠と、無理のない範囲の運動を習慣にする
- 体重を適正に保つ
- 足に合った靴を選び、靴下は締めつけの弱いものを
- 寒い時期は足を冷やさないよう、温かくする
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、野菜・魚・大豆製品などをバランスよくとりましょう。運動は、痛みが出る少し手前で休む「歩いては休む」を繰り返す方法が勧められます。ウォーキングや軽い体操など、続けられるものを選びましょう。運動を始める前に、主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
「足を切断することになるのでは」と不安になる方も少なくありません。でも、多くの方は生活習慣の見直しと適切な治療で、状態を保ちながら過ごせます。不安や落ち込みが続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の保健センター、心の健康の相談窓口に話してみてください。気持ちがとてもつらいときは、迷わず救急(119)や、お住まいの地域の救急相談窓口(#7119など)に連絡してください。
予防
ABIの数値が悪くならないようにする(足の血管の動脈硬化を防ぐ)ことは、生活習慣の見直しで十分に可能です。禁煙、血圧・血糖・コレステロールの管理、適度な運動、バランスのよい食事が基本になります。
検診プログラム
糖尿病や腎臓の病気がある方、60歳以上の方、足の症状がある方は、ABI検査を含む足の血管のチェックが勧められることがあります。健診のときに主治医に相談してみましょう。
合併症
治療しない場合
- 足の血管がさらに狭くなり、歩ける距離が短くなる
- 安静にしていても足が痛むようになる
- 足の傷が治らず、潰瘍(皮膚がただれた状態)になる
- まれに、組織が死んでしまう(壊死)ことがある
- 足の血管は全身の動脈硬化のサインでもあるため、心臓や脳の血管の病気のリスクも高まる
長期的な見通し
ABIの数値が低いとわかっても、それは「今の状態を知るチャンス」です。禁煙や運動、血圧・血糖の管理を続けることで、多くの方は足の状態を保ちながら、ふだんどおりの生活を続けられます。定期的に検査を受け、気になることを早めに相談することが、いちばんの近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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