汗(発汗)試験|嚢胞性線維症(CF)を調べる検査
概要
汗試験(あせしけん)は、汗に含まれる塩分(塩化物イオン)の濃さを測る検査です。この検査は、嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう、CF)という生まれつきの病気がないかを調べるために行われます。CFは、体のなかの粘液(ねんえき=粘膜をおおう、ぬるっとした液体)がとても粘っこくなる病気で、主に肺と消化管(食べ物の通り道)に影響します。CFのある人は汗に塩分が多く出やすいため、汗の塩分を測ることで手がかりが得られます。注射も麻酔も使わず、ふつう1時間ほどで終わる検査です。
重要な事実
- 腕の皮膚に小さな器具を当てて汗を出し、にじみ出た汗を集めて塩分の濃さを測ります。
- 痛みはほとんどなく、終わったあとは普段どおりに過ごせます。
- 正確に測るには専門の施設での実施が大切で、汗の量が足りないときは再検査をすることがあります。
汗試験は、日常の診察でよく行われる検査ではありません。CFそのものが日本ではとてもまれな病気で、疑わしい症状があるときや、新生児スクリーニング(生まれたばかりの赤ちゃんに行う血液検査)で陽性だったときなどに限って行われます。
新生児スクリーニングで陽性だった赤ちゃん、繰り返す咳や肺炎がある子ども、体重が増えにくい子ども、皮膚が塩辛いと言われたことのある人、家族にCFの人がいる人などが対象になります。大人では、気管支拡張症(気管の壁が広がって弱くなった状態)や、原因のわからない男性不妊が見られる人で調べることもあります。
症状
- 次の症状があるときは、ためらわずにすぐ119番へ電話してください。
- 呼吸がとても苦しそう、息ができない
- 唇や顔色が青白い
- ぐったりして反応が弱い、呼びかけに答えない
- けいれんしている
- 暑い日にたくさん汗をかいたあと、ぐったりして尿が出ない(重度の脱水)
- ⚠熱が続き、咳や痰がどんどん悪くなっている
- ⚠息切れのため歩くのがつらい
- ⚠食事がとれず、体重が減り続けている
- ⚠油っぽい便が続き、おなかの張りが強い
一般的な症状
- 汗がとても塩辛い、皮膚をなめるとしょっぱいと言われる
- 粘っこい痰が出る咳が長く続く
- 息切れや、ゼーゼーする呼吸
- 体重が増えにくい、だんだんやせてくる
- 油っぽくてにおいの強い便が出る、おなかが張る
- 鼻づまりや副鼻腔炎(鼻の奥の空洞の炎症)を繰り返す
子供の症状
- 生まれてすぐに腸が詰まる(胎便性イレウス=赤ちゃんの便が固まって腸をふさぐ状態)
- ミルクを飲んでいるのに体重が増えない、成長がゆっくり
- 肺炎や気管支炎を繰り返す
- 暑い日にたくさん汗をかいたあと、ぐったりする(塩分が失われるため)
- 皮膚が塩辛いと言われる
高齢者の症状
- 大人になって見つかるCFは、症状が軽めのことが多い
- 慢性の咳や気管支拡張症が見られる
- 副鼻腔炎を繰り返す
- すい臓の炎症(膵炎)を繰り返す
- 原因のわからない男性不妊
原因
主な原因
- 嚢胞性線維症は、CFTR遺伝子という遺伝子の変化によって起こる生まれつきの病気です。
- 両親の両方がこの遺伝子の変化を持っていると、子どもに受け継がれる可能性があります。
- 汗試験は、その病気があるかどうかを調べる検査です。検査そのものが病気を引き起こすわけではありません。
リスク要因
- 家族にCFの人がいる
- 両親が保因者(遺伝子の変化を持っているが、目立った症状がない)である
- 新生児スクリーニングで陽性だった
- 繰り返す呼吸器の症状や、体重が増えにくい状態がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりしているときは、すぐに救急へ連絡してください。
- 痰の量や色が急に変わった、熱が高い状態が続く
- 水分がとれず、尿の量が減っている
定期受診を予約すべき場合:
- 咳や痰が長く続く、繰り返す
- 体重が増えない、やせてきた
- 油っぽい便が続く、おなかの張りが続く
- 家族にCFの人がいる、新生児スクリーニングで陽性と言われた
診断
汗試験は「汗を出す」段階と「汗を集めて測る」段階に分かれます。腕の皮膚に小さな器具を当て、発汗を促す薬を含ませたガーゼをあてて微弱な電流を流し、汗を出しやすくします(チクチク感じることがあります)。出てきた汗を特殊なろ紙やチューブに集め、塩分(塩化物)の濃さを測ります。汗の量が足りないと正確に測れないため、別の日にやり直すことがあります。
行われる可能性のある検査
- 汗試験(汗の塩化物濃度を測る)
- 遺伝子検査(CFTR遺伝子の変化を調べる)
- 新生児スクリーニングの血液検査
- 便の検査(消化を助ける酵素が足りているかを見る)
- 呼吸機能検査(息を思いきり吐ける量などを測る)
- 胸部の画像検査
診察で予想されること
検査の時間は30分から1時間ほどで、痛みはほとんどありません。結果が出るまでに数日から数週間かかることがあります。数値が境界の範囲に入った場合は、再検査をしたり遺伝子検査を組み合わせたりして判断します。結果は必ず医師の説明と一緒に受け取り、ひとりで決めつけないようにしましょう。
治療
汗試験はあくまで「調べるための検査」で、治療そのものではありません。検査の結果からCFが疑われる、あるいは確定した場合は、呼吸器・小児・栄養などの専門チームが一緒に支える体制でケアを進めていきます。
自宅でのセルフケア
- 検査の当日は、腕にクリームや塗り薬を使わないようにします(施設の指示に従ってください)。
- 検査の前後は、普段どおり水分をとって過ごしてかまいません。
- 結果を待つ間に気になった症状や体調の変化をメモしておくと、診察で伝えやすくなります。
- 家族にCFの人がいる場合は、そのことを医師に伝えておきましょう。
- 医師に聞きたいことを事前にリストにしておくと安心です。
医療治療
CFと診断された場合のケアは、大きく「肺のケア」と「栄養のケア」に分かれます。肺のケアでは、痰を出しやすくする道具や呼吸の体操(気道クリアランス)、吸入による治療、感染症の予防と早期の治療を行います。栄養のケアでは、消化を助ける薬(すい臓の酵素を補うもの)や、必要なエネルギーとビタミンをとる食事の工夫、必要に応じて栄養の補助を行います。使う薬や量は人によって異なるため、必ず担当の医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
肺の状態が進んだ場合に、肺移植を検討することがあります。これは専門の施設で、医療チームとよく話し合って決めるものです。多くの人は手術を必要とせず、日々のケアを続けながら生活しています。
この病気と共に生きる
検査の結果を待つ間や、診断を受けたあとは、不安な気持ちになるのが自然です。CFのケアは「毎日の小さな積み重ね」が中心です。家族や医療チームと一緒に、無理のない生活のリズムを作っていくことが助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 手洗いや咳のエチケットで、感染症を防ぐ
- 決まった時間に痰を出すケアを続ける
- 暑い日は水分と塩分をこまめにとる
- 予防接種について主治医と相談する
- 喫煙や受動喫煙を避ける
- 学校や職場と、必要な配慮について話しておく
食事と運動
エネルギーとたんぱく質をしっかりとる食事が大切で、必要に応じて脂溶性ビタミンを補います。運動は肺の働きと体力を保つのに役立ち、散歩や水泳など続けやすいものがおすすめです。汗で塩分が失われやすいので、運動のときは水分と塩分の補給を忘れずに行いましょう。
精神的健康と心の健康
検査待ちの期間や、診断後の毎日のケアは、心の負担になることがあります。不安や落ち込みが続くときは、医療チームや心理の専門家に話してみてください。同じ経験をした人や家族の集まりも力になります。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちが出てきたときは、ひとりで抱え込まず、すぐに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
CFは遺伝子の変化による生まれつきの病気のため、防ぐことはできません。汗試験は予防のためではなく、早期に見つけて早く支援を始めるための検査です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種は、呼吸器の感染症を防ぐ助けになります。何をいつ受けるかは、主治医と相談して決めましょう。
検診プログラム
日本では、CFは新生児マススクリーニングの対象疾患に基本的には含まれていませんが、一部の自治体や研究事業で行われている場合があります。家族歴がある場合や症状から疑われる場合は、医師に相談して検査を検討します。妊娠を考えている方は、遺伝カウンセリングも選択肢になります。
合併症
治療しない場合
- 呼吸器の感染症を繰り返し、肺の働きが少しずつ下がることがある
- 栄養がうまくとれず、成長や体重に影響することがある
- 塩分が失われやすく、脱水を起こしやすい
- 副鼻腔炎や、すい臓のトラブルが続くことがある
長期的な見通し
CFには今も根治的な治療はありませんが、早期に見つけて丁寧にケアを続けることで、多くの人が長く充実した生活を送れるようになってきています。汗試験の結果がどうであっても、その後の道筋を一緒に考えてくれる専門家がいます。不安なときは相談しながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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