穿刺吸引細胞診(FNA)~細い針で細胞を調べる検査~
概要
穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん、英語ではFine Needle Aspiration、略してFNA)は、体の中にできた「しこり」や「腫れ」から、細い針で少量の細胞を吸い取って調べる検査です。手術のように皮膚を大きく切る必要はなく、外来で短時間に行えることが多い検査です。調べる場所は、首の甲状腺(のどぼとけの下にある、体の代謝を調整するホルモンを作る臓器)、乳房、リンパ節、唾液腺(だえきせん:唾液を作る器官)などが多いですが、超音波(エコー)で見える場所であれば他の部位にも行われます。取った細胞を顕微鏡で観察し、「良性(心配の少ないもの)か、悪性(がんの疑いがあるもの)か」を判断する手がかりにします。採血やレントゲンのように、体への負担が比較的少ない検査のひとつです。
重要な事実
- 細い針を使うため、切開する手術に比べて体への負担が小さく、多くの場合は日帰りで受けられます。
- 検査そのものは数分から十数分程度で終わることが多く、超音波で画面を見ながら行うのが一般的です。
- 結果が出るまでには数日から1~2週間ほどかかることがあります(施設によって異なります)。
- この検査は「診断のための検査」であり、それ自体が病気を治す治療ではありません。結果をもとに今後の方針を相談します。
- FNAで十分な細胞が取れず「判定できない」となることもあり、その場合は再検査や別の検査が検討されます。
はい、とてもよく行われる検査です。甲状腺のしこりや乳房のしこり、リンパ節の腫れがあって受診したときには、標準的な検査のひとつとして行われます。特に甲状腺のしこりは超音波検査で見つかることが多く、その中のごく一部に対してFNAが行われます。
年齢や性別を問わず、しこりや腫れが見つかった方に行われる可能性があります。甲状腺のしこりは女性にやや多く見られます。乳房のしこりは主に女性ですが、まれに男性にも起こります。リンパ節の腫れは子どもから高齢者まで幅広く見られ、風邪や感染症が原因のことも多いため、FNAが必要になるのはごく一部の方です。
症状
- 急に呼吸が苦しくなった、息が吸いにくい
- 急激に首の腫れが大きくなり、飲み込みや会話がつらい
- 声が出ない、または急な喘鳴(ゼーゼーする呼吸)がある
- 穿刺した部位から血が止まらず、大量に出血している、または意識がぼんやりしている
- ⚠穿刺した部位の腫れ・赤み・熱感・痛みが日ごとに強くなる(感染の可能性)
- ⚠穿刺した部位の内出血(あざ)が広がり続ける、硬く腫れて痛む
- ⚠38℃以上の発熱がある
- ⚠検査結果を待つ間に、しこりが急に大きくなった、痛みが増した
一般的な症状
- 首の前側(甲状腺のあたり)に、触れるしこりや左右差のある腫れがある
- 乳房に、痛みのないしこりを感じる、または健診の超音波・マンモグラフィで指摘される
- 首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が、硬く or 大きめに腫れている
- 耳の下やあごの下(唾液腺のあたり)が腫れている
- しこりそのものは無症状で、健康診断や別の検査のついでに見つかる
- 声がかすれる、飲み込みにくいなど、しこりによる圧迫が疑われる症状(甲状腺の場合)
子供の症状
- 首のリンパ節の腫れは、風邪や感染症に伴って子どもではよく見られます。多くは数週間で小さくなります。
- 甲状腺のしこりは子どもではまれですが、見つかった場合は丁寧に調べることが大切です。
- 検査の前に、痛みが少ないこと、針を使うことを、年齢に合わせてやさしく説明しておくと安心につながります。
- 子どもは検査中に体を動かしやすいため、保護者の付き添いや、場合によっては短時間の鎮静が検討されることがあります。
高齢者の症状
- 高齢の方では、しこりに気づきにくかったり、痛みを感じにくかったりすることがあります。
- 複数の持病や血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬など)を使っている場合は、検査前に必ず医療者へ伝えてください。
- 検査後の安静や、穿刺(せんし:針を刺すこと)した部位の観察を、家族と一緒に確認しておくと安心です。
原因
主な原因
- 甲状腺のしこり(結節):超音波で見つかった結節の性質を調べるために行われます
- 乳房のしこり:マンモグラフィや超音波で見つかった病変の評価に用いられます
- リンパ節の腫れ:感染症以外の原因を確認したいときに行われることがあります
- 唾液腺の腫れ:腫瘤(しゅりゅう:できもの)の性質を調べるために行われます
- その他、超音波などで確認できる体表近くのしこりや、のう胞(液体がたまった袋)の中身の確認
リスク要因
- 甲状腺のしこりは女性に比較的多く見られます
- 甲状腺の病気の家族歴がある場合、しこりが見つかりやすいことがあります
- 首のあたりに放射線を浴びた既往がある場合は、甲状腺の結節に注意が必要です
- 乳腺の病気の家族歴や、ホルモンに関わる要因が乳房のしこりのリスクに関わることがあります
- 喫煙や生活習慣は、リンパ節や唾液腺の腫れと関連することがあります(原因は感染症など多様です)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 首や乳房のしこりが、数週間で明らかに大きくなっている
- 声のかすれ、飲み込みにくさ、呼吸のしづらさがある
- しこりが硬く、皮膚にくっついたように動かない、または皮膚の色が変わっている
- 乳房のしこりに、乳頭からの出血や分泌物、皮膚のくぼみを伴う
- 穿刺後に、腫れ・赤み・強い痛み・発熱が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断や超音波検査で「しこりがある」と言われた
- 自分で触れて気になるしこりがある(痛みがなくても)
- 家族やかかりつけ医からFNAを勧められた
- 以前のFNAで「判定不能」「再検査」と言われた
- 検査結果の説明を受けたあと、今後の方針についてもう一度相談したい
診断
FNAはそれ自体が「診断のための検査」です。まず問診と触診、そして超音波(エコー)検査でしこりの位置や大きさ、形を確認します。そのうえで、超音波の画面を見ながら細い針をしこりに刺し、注射器で軽く吸引して細胞を吸い取ります。取れた細胞をガラス板に塗って染色し、顕微鏡で観察します。結果は「良性」「悪性の疑い」「判定不能(細胞が十分に取れなかった)」などに分類され、その後の方針を決める材料になります。
行われる可能性のある検査
- 問診・触診:しこりの大きさ、硬さ、動きやすさ、痛みの有無を確認します
- 超音波(エコー)検査:しこりの位置や形、内部の様子を観察します。FNAのガイドとしても使われます
- 穿刺吸引細胞診(FNA)本体:細い針で細胞を採取します
- 血液検査:甲状腺ホルモンや炎症の値など、必要に応じて行います
- 結果によっては、超音波下での組織生検(より太い針で組織の一部を取る検査)や画像検査が検討されます
診察で予想されること
検査は椅子やベッドに座る・横になる形で行われ、多くは数分から十数分で終わります。皮膚を消毒し、必要に応じて局所麻酔のテープや注射を使うことがあります(施設により異なります)。針を刺すときは一瞬チクッとすることがありますが、多くの方は我慢できる程度です。吸引中に軽い圧迫感を感じることがあります。終わったら数分間圧迫して止血し、そのまま帰宅できることがほとんどです。結果は数日〜1〜2週間ほどで説明されます。結果を聞くまでは不安な時間ですが、検査を受けたことで「何が起きているのか」を確かめる準備ができたと考えてみてください。
治療
FNAは検査であり、治療そのものではありません。大切なのは「結果にどう向き合い、次に何をするか」を医療者と一緒に決めることです。結果が良性であれば、多くの場合は定期的な経過観察(超音波検査など)が中心になります。悪性やその疑いがある場合、あるいは判定不能の場合は、追加の検査や専門の診療科への紹介、必要に応じて手術などが検討されます。
自宅でのセルフケア
- 検査当日は、穿刺した部位を清潔に保ち、こすったり強く押したりしないようにしましょう
- 穿刺後しばらくは、激しい運動や長時間の入浴(サウナ・温泉など)を控えめにすると安心です(医師の指示に従ってください)
- 内出血による軽いあざや、押すと軽く痛む程度は数日で落ち着くことが多いです。広がる場合は連絡してください
- 検査結果を待つ間は、睡眠や食事をできるだけ整え、考えすぎて夜更かしをしないように心がけましょう
- 結果の説明日と、そのときに聞きたいことをメモにまとめておくと、話がスムーズになります
- 血液を固まりにくくする薬を使っている場合は、自己判断で中止せず、必ず医療者に相談してください
医療治療
治療の内容はFNAの結果と、しこりの場所・種類によって変わります。良性と判断された場合は、多くの場合、定期的な診察や超音波検査で様子を見ていきます。甲状腺の場合、ホルモンの状態に応じて内服による調整が行われることがあります(薬の名前や量は医師が決めます)。悪性やその疑いがある場合は、専門科での詳しい検査のあと、手術やその他の治療法が検討されます。どの選択肢も、メリットと負担を比べながら、担当医とじっくり相談して決めていくものです。
手術が検討される場合
FNAの結果が悪性(または強く疑われる)場合や、しこりが大きくなって呼吸や飲み込みに影響している場合、細胞が十分に取れず診断が確定しない場合などに、手術や組織生検が検討されます。手術が必要かどうかは、しこりの種類・大きさ・場所、年齢や持病、本人の希望をふまえて総合的に判断されます。
この病気と共に生きる
検査を受けたあとは、穿刺した部位を観察しながら、いつもどおりの生活に戻って問題ありません。結果を待つ期間は落ち着かないものです。「結果が出るまではわからないことを、今考え続けても答えは出ない」と区切ることも、ひとつのセルフケアです。結果の説明では、診断名だけでなく「次に何をするのか」「どのくらいの間隔で通うのか」を確認しておくと、見通しが立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムをできるだけ保つ
- 強いストレスを感じたときは、信頼できる人に話す、日記に書くなど、気持ちの出口をつくる
- 穿刺した部位の変化(腫れ・赤み・痛み)を、数日間は意識して見ておく
- 検査結果や診察の予定をカレンダーに書き、忘れずに受診する
- 喫煙がある場合は、禁煙についてかかりつけ医に相談する(検査結果に関わらず体に良い影響があります)
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは通常ありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動(散歩など)は、検査を待つ間の気分転換にもなり、体調を整える助けになります。穿刺した当日から数日は、穿刺部位への負担を考えて激しい運動は控えめにし、医師の指示があればそれに従ってください。
精神的健康と心の健康
「しこりが見つかった」「針を刺す」というだけで、強い不安や緊張を感じる方は少なくありません。検査結果を待つ間は、悪い方向に考えてしまい、眠れなくなったり食欲が落ちたりすることもあります。そうした反応は自然なものです。ただし、不安が強くて日常生活がつらい、気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない日が続くといった場合は、医療者に話してください。必要に応じて相談の場を紹介してもらえます。つらい気持ちを一人で抱え込まないでください。
予防
FNAは検査であるため、それ自体を「予防する」という考え方はあてはまりません。ただ、しこりを早く見つけて適切に調べることは、心配事を減らし、必要なときに早く対応する助けになります。首や乳房など、気になる変化に気づいたら早めに相談することが大切です。自己判断で「たぶん大丈夫」と決めつけず、気になることは医療者に確かめましょう。
検診プログラム
日本では、乳がん検診(マンモグラフィなど)や、自治体・職場による健康診断が行われています。甲状腺については、症状や触診で気になる場合に超音波検査が行われます。検診の対象年齢や間隔は自治体や施設によって異なるため、お住まいの地域の案内や、かかりつけ医にご確認ください。
合併症
治療しない場合
- FNAを受けないこと自体が直接体を悪くするわけではありませんが、しこりの性質がわからないままだと、必要な対応が遅れる可能性があります
- 甲状腺のしこりが大きくなると、声のかすれや飲み込みにくさ、呼吸のしづらさが出ることがあります
- リンパ節の腫れの原因が感染症以外の場合、原因を確かめないまま経過してしまうことがあります
- 穿刺そのものによる合併症としては、内出血(あざ)、軽い痛み、ごくまれに感染などがあります。多くは軽度で自然に落ち着きます
- 細胞が十分に取れず「判定不能」となり、再検査が必要になることがあります
長期的な見通し
FNAで調べられるしこりの多くは良性で、心配の少ないものです。検査を受けて結果を知ることは、不安を減らし、必要なときに適切な対応をとるための第一歩です。たとえ追加の検査が必要になっても、それは「より確かに知るため」のステップであり、多くの方が相談しながら一歩ずつ進んでいけます。気になることは、遠慮なく担当医に聞いてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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