バリウム注腸検査(大腸のX線検査)
概要
バリウム注腸検査は、おしり(肛門)から「バリウム」という白い造影剤(レントゲン写真に白く映る液体)と空気をゆっくり入れて、大腸の内側の形や粘膜の様子をX線で撮影する検査です。大腸は長い管なので、空気でふくらませることで、しわの間や狭くなった部分も見えやすくなります。検査そのものは「治療」ではなく、大腸に病気があるかどうかを調べるための検査です。
重要な事実
- おしりからバリウムと空気を入れて、大腸の形や粘膜をX線で写す検査です。所要時間はおよそ15〜30分です。
- 検査の前日から食事の内容を控えたり、腸をきれいにするための準備(前処置)が必要になります。
- 最近は大腸カメラ(大腸内視鏡)が主流になりつつあり、バリウム注腸検査は目的に応じて選ばれる検査です。
かつては大腸の病気を調べる代表的な検査でしたが、現在は大腸カメラに置き換わることが多くなっています。ただし、大腸カメラが難しい場合や、大腸の長さ・形・狭窄(狭くなっている部分)を全体的に見たい場合などに、今も使われています。
血便が出る、便通の異常が続く、おなかの痛みや張りがある、貧血や体重減少があるなど、大腸の病気が疑われる人が対象になります。炎症性腸疾患(腸に炎症が続く病気)の経過観察や、手術後の状態の確認のために行われることもあります。
症状
- おなかが激しく痛み、我慢できない
- おなか全体が板のように硬く張っている
- 高熱とおなかの激痛が同時にある
- 大量の血便が出る、または便が黒くて量が多い
- 顔色が悪い、意識がもうろうとしている、冷や汗が止まらない
- ⚠検査後2〜3日たっても便が出ず、おなかの張りや吐き気が強い
- ⚠38度以上の発熱や寒気がある
- ⚠少しずつでも血便が続く
- ⚠水分がとれず、尿の量が極端に減っている
一般的な症状
- 検査を受けるきっかけになる症状:血便(便に血が混じる)、黒っぽい便
- 便の回数や形の変化が続く(下痢と便秘をくり返す、便が細くなる)
- おなかの痛み、張り、ガスがたまった感じ
- 理由がはっきりしない貧血や体重減少
- 検査のあとに起こりうる一時的な症状:おなかの張り、軽い痛み、白っぽい便(バリウムが body の外に出るまで)
子供の症状
- 小児ではあまり一般的な検査ではありません。
- 生まれつき大腸の動きが悪い病気(ヒルシュスプルング病)など、特定の病気が疑われるときに限って行われることがあります。
- お子さんの場合は、検査の説明や準備の方法が大人と異なります。小児科の医師に詳しく確認してください。
高齢者の症状
- 高齢の方は脱水(体の水分不足)になりやすいため、前処置の下剤や食事制限の影響に注意が必要です。
- もともと便秘がちな方は、検査後にバリウムが排出されにくいことがあります。
- 腸の壁が弱くなっている場合、腸に穴が開く危険(穿孔:腸に穴があくこと)がわずかに高まることがあります。持病や服薬は必ず医師に伝えてください。
原因
主な原因
- この検査は「原因を調べるための検査」なので、検査が必要になる理由(きっかけ)には次のようなものがあります。
- 大腸がんやポリープ(腸の内側にできる良性のできもの)が疑われるとき
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に炎症が続く病気)の評価
- 憩室(腸の壁が外側に飛び出した小さな袋)や狭窄(腸が狭くなること)など、大腸の形の異常を調べるとき
- 腸閉塞(腸が詰まる状態)の位置や程度を確認するとき、手術後の経過を見るとき
リスク要因
- 血便や便通異常などの症状が続いている
- 家族に大腸がんの人がいる
- 40歳以上で、大腸がん検診を受けたことがない
- 炎症性腸疾患と診断されたことがある
- 長年の便秘、食生活の偏り、喫煙、飲酒習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 便に血が混じる、黒い便が出た
- おなかの激痛、発熱、おなかの硬い張りがある(この場合は救急要請も検討してください)
- 検査後に便が長く出ず、吐き気や張りが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 便の回数や形の変化が2週間以上続く
- 理由のわからない体重減少や貧血を指摘された
- 大腸カメラを受けるか迷っている、バリウム注腸検査が必要かどうか相談したい
- 検査結果の説明を受けても内容がよくわからない
診断
バリウム注腸検査は、大腸の状態を画像で見るための検査です。検査の前日から、繊維の多い食品や種のある食品を控え、指定された食事(検査食)をとります。前処置として、腸をきれいにするための飲み薬や浣腸(腸の中を洗う処置)を使うことがあります。検査当日は、検査台の上で横になり、おしりから細い管を入れてバリウムと空気を少しずつ注入します。体の向きを変えながら、何枚かX線写真を撮ります。終わったら、バリウムをできるだけ排出するためにトイレに行きます。
行われる可能性のある検査
- バリウム注腸検査(大腸のX線撮影)
- 大腸内視鏡(大腸カメラ)— 粘膜を直接見て、必要なら組織を採ることもできます
- CTコロノグラフィー(CTで大腸を立体的に写す検査)
- 便潜血検査(便に目に見えない血が混じっていないかを調べる)
- 血液検査(貧血や炎症の程度をみる)
診察で予想されること
検査中は、空気で腸をふくらませるため、おなかが張る感じや軽い痛みを感じることがあります。深呼吸をしてリラックスすると楽になります。がまんできない痛みがあれば、すぐに声をかけてください。検査後は、水分をしっかりとり、白っぽい便が数日続くことがあります。結果は多くの場合、後日医師から説明があります。
治療
バリウム注腸検査は診断のための検査であり、それ自体が病気を治す治療ではありません。検査で見つかった状態に応じて、その後の方針を医師と一緒に決めていきます。異常が見つからない場合も多く、その場合は安心して経過を見ていくことになります。
自宅でのセルフケア
- 検査後は水分を多めにとり、バリウムが体の外に排出されやすくしましょう。
- 検査後2〜3日は便が白っぽくなることがあります。便秘がちな方は、医師に相談のうえで排便を促す方法を確認してください。
- 検査翌日以降もおなかの張りや痛みが続くときは、がまんせずに医療機関に連絡しましょう。
- 前処置の食事制限中は、水分をこまめにとって脱水を防ぎましょう。
医療治療
検査で病気が見つかった場合の治療は、その病気の種類と程度によって変わります。炎症をしずめる治療、狭窄を広げる処置、定期的な経過観察など、いくつかの選択肢があります。どの方法が合うかは、年齢や体の状態、これまでの病歴を含めて医師と相談して決めます。治療の内容や副作用について不安があれば、薬剤師にも気軽に相談できます。
手術が検討される場合
大腸がんが疑われる場合や、腸が狭くなって食事がとりにくい場合、腸閉塞をくり返す場合などに、手術が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、検査結果と全身の状態をふまえて医師が判断します。
この病気と共に生きる
検査を受けたあとは、ふだんどおりの生活に戻って問題ありません。ただし、バリウムが完全に出るまでは、おなかの張りや便秘に注意しましょう。検査の結果待ちの間は、不安な気持ちになることもあります。気になることはメモしておき、診察のときにまとめて聞くと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 便の状態(色、形、回数)を時々思い出して確認する習慣をつけましょう。
- 水分をこまめにとり、食物繊維をバランスよくとることを心がけましょう。
- 気になる症状はノートやスマートフォンに記録しておくと、診察で伝えやすくなります。
- 検査結果の説明は、可能であれば家族や信頼できる人と一緒に聞くと安心です。
食事と運動
ふだんから野菜・果物・きのこ・海藻などの食物繊維をとり、水分をしっかりとることが大腸の健康につながります。過度な飲酒や喫煙は控えめにしましょう。ウォーキングなど無理のない運動を続けることは、便通のリズムを整える助けになります。検査前の食事制限については、必ず医療機関の指示に従ってください。
精神的健康と心の健康
検査を受ける前は「痛かったらどうしよう」「悪い結果だったらどうしよう」と不安になるのは自然なことです。不安が強くて眠れない、気持ちが落ち着かない状態が続く場合は、医師や看護師に話してみてください。話すことで気持ちが軽くなることもあります。つらい気持ちが長く続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談しましょう。
予防
バリウム注腸検査は病気そのものではなく、大腸の病気を早く見つけるための検査です。大腸の病気を予防・早期発見するには、症状に気づいたら早めに相談すること、そして自治体のがん検診を定期的に受けることが大切です。
検診プログラム
日本では、厚生労働省の指針にもとづき、主に40歳以上の方を対象に、年に1回の便潜血検査(便に血が混じっていないかを調べる検査)が自治体の大腸がん検診として行われています。対象年齢や受診方法はお住まいの地域によって異なるため、自治体の案内やかかりつけ医に確認してください。
合併症
治療しない場合
- ここでいう「治療しない場合」とは、症状があっても検査を受けずに放置した場合を指します。
- 大腸の病気の発見が遅れ、治療の選択肢が限られることがあります。
- 狭窄や腸閉塞が進むと、急な腹痛や入院が必要になることがあります。
- 出血が続くと貧血が進み、だるさや息切れにつながることがあります。
長期的な見通し
バリウム注腸検査は、大腸の状態を全体像としてとらえられる有用な検査です。多くの場合、異常が見つからず安心できる結果になります。もし何か見つかったとしても、早期にわかれば対応できることが多くあります。気になる症状があるときは、ためらわず医療機関に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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