呼吸機能検査(肺機能検査)を受けるあなたへ
概要
呼吸機能検査は、肺がどれだけの空気を吸い込めるか、そしてどれだけスムーズに吐き出せるかを調べる検査です。大きな機械の管をくわえて、目いっぱい息を吸い、勢いよく「フーッ」と吐き出す、という簡単な動作を数回くり返します。痛みはほとんどなく、体の外から肺の働きを測れるのが特徴です。検査の結果は、息切れや長引くせきの原因を探る手がかりになります。
重要な事実
- 息を吸ったり吐いたりする量と速さを測る検査で、多くの場合は10〜30分ほどで終わります。
- 結果は「年齢・身長・性別から予想される値」と比べてどうか、という形で表されます。数字が悪くても、それだけで病気が決まるわけではありません。
- 検査の前は、たばこや激しい運動、重い食事を控えるなど、いくつか注意することがあります。事前に受付や医師に確認しておくと安心です。
呼吸機能検査はとてもよく行われている基本的な検査です。健康診断の項目に含まれている地域や職場もあり、喘息(ぜんそく)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患:たばこの煙などで息が long 期的に苦しくなる病気)が疑われたとき、せきや息切れが続くとき、手術の前の体力評価など、さまざまな場面で使われます。
息切れや長引くせきがある人、喫煙の習慣がある人、喘息やアレルギーの既往がある人、ご家族に肺の病気の人がいる人など、年齢を問わず幅広い方が受けます。小さいお子さんでも、協力して息を吹ける年齢(おおむね6歳ごろから)なら検査が可能です。
症状
- 突然の激しい息苦しさで、横になれない、話すのがやっと
- 唇や爪、顔色が青白い・紫色に見える
- 胸の強い痛みを伴う息苦しさ
- 意識がもうろうとしている、反応がおかしい
- 息を吸っても空気が入ってこない感じがする、声が出ない
- ⚠発熱と息苦しさが同時にある
- ⚠痰に血が混じる(血痰)
- ⚠息切れが数日で急に進んでいる
- ⚠ゼーゼーが強くなり、家にある常用の吸入薬を使っても楽にならない
- ⚠安静にしていても動悸や息苦しさが続く
一般的な症状
- 階段や坂道で息が切れる、以前より疲れやすい
- せきが2〜3週間以上続く、または繰り返す
- ゼーゼー、ヒューヒューという音が息をするときに聞こえる
- 痰が増えた、痰が出しにくい
- 風邪をひくたびにせきが長引く、呼吸が苦しくなる
- 胸が締めつけられるような感じがする
子供の症状
- 走り回ったあとにせき込む、息が苦しそう
- 夜中や明け方にせきやゼーゼーが出やすい
- かぜをひくたびに「ゼーゼー」が長引く
- 遊びや体育のときにほかの子より疲れやすい
- 泣いたり笑ったりしたあとにせきが止まらない
高齢者の症状
- 少し歩いただけで息が切れる、話すのがつらい
- 階段の上り下りが以前よりつらくなった
- 体重が減った、食欲が落ちた
- かぜをひきやすく、治りにくい
- 朝方にせきや痰が多くなる
原因
主な原因
- 喘息(気道が敏感になり、炎症で狭くなる病気)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患:たばこの煙などで肺が傷つき、息を吐き出しにくくなる病気)
- 間質性肺炎など、肺の組織そのものが傷つく病気
- アレルギーや職業上の粉じん・化学物質への曝露(ばくろ:さらされること)
- 肺炎や気胸など、肺の病気のあとの経過観察
- 肥満や筋力の低下による呼吸の効率の低下
- 手術や麻酔の前に、肺の予備力を確認するため
リスク要因
- 喫煙、または周りの人のたばこの煙を吸うこと(受動喫煙)
- ほこり、粉じん、化学物質を扱う仕事についている
- 喘息やアレルギー性鼻炎の既往、ご家族に喘息の人がいる
- 幼少期の呼吸器の病気、早産での出生歴
- 肥満、運動不足、体力の低下
- 加齢に伴う肺や胸の筋肉の衰え
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが急に強くなった、呼吸が速く浅い
- 痰に血が混じる
- 発熱を伴う息苦しさや胸の痛み
- いつもの薬を使っても症状が改善しない
定期受診を予約すべき場合:
- せきや痰が2〜3週間以上続く
- 階段や坂道で以前より息が切れるようになった
- ゼーゼーする音が聞こえる、夜中にせきで目が覚める
- 喫煙の習慣があり、肺の検査を受けたことがない
- 健康診断で肺の異常を指摘された
診断
まず問診で、症状の経過、喫煙歴、仕事や住まいの環境、アレルギーの有無などを確認します。そのうえで呼吸機能検査を行います。検査では、鼻をクリップでとめて、マウスピースをくわえたまま、ふつうの呼吸、深く吸って一気に吐く、などを指示に合わせて何回かくり返します。必要に応じて、気管を広げる薬を吸ってからもう一度測り、変化を見ることがあります。
行われる可能性のある検査
- スパイロメトリー:息を最大限に吸って、一気に吐き出したときの量と速さを測る基本の検査
- フローボリューム曲線:息を吐くときの空気の流れをグラフにして、気道の狭さを調べる検査
- 肺拡散能力検査:酸素が肺から血液に取り込まれやすいかを調べる検査
- 気管支拡張薬(気道を広げる薬)を吸ったあとの再検査
- パルスオキシメーター:指先に光を当てて、血液中の酸素の量を推定する検査
- 6分間歩行試験:6分間歩いて、息切れや酸素の量がどう変わるかを見る検査
- 胸部X線や胸部CT、血液検査など、必要に応じて組み合わせる画像・血液の検査
診察で予想されること
検査の前には、たばこや激しい運動、重い食事を控えるよう案内されることがあります。締めつけの少ない服装で受けると楽です。検査中は何度も強く吐くため、一時的にめまいがしたり、せき込んだりすることがありますが、休みながら進められます。力いっぱいやった結果のほうが正確になるので、遠慮せずに頑張って吐いてください。結果は多くの場合、その日のうちか次の診察で説明されます。
治療
呼吸機能検査は、それ自体が治療になるものではありません。結果をもとに、肺の状態に合った対処法を一緒に考えていくための「現在地を知る地図」のような検査です。検査の数字だけでなく、症状や生活の様子も合わせて、主治医と方針を決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する。副流煙(周りの人のたばこの煙)も避ける
- 指示どおりに吸入薬を使えているか、ときどき薬剤師や看護師に確認してもらう
- 風邪やインフルエンザを防ぐため、手洗い・うがい・換気を心がける
- 腹式呼吸や口すぼめ呼吸など、楽に息をするコツを身につける
- 体調の変化(息切れ、せき、痰の量)を簡単なメモに残しておく
- ほこりや煙、寒暖差など、症状が出やすいきっかけを避ける
医療治療
治療は、検査でわかった状態によって変わります。気道の炎症や狭さが関係している場合は、気道を広げる吸入薬や炎症を抑える吸入薬などが使われることがあります。痰を出しやすくする薬、感染症に対する治療、酸素療法、呼吸リハビリテーション(呼吸の仕方や体力づくりを学ぶプログラム)なども、症状や重症度に応じて組み合わせます。どの治療が合うかは人によって違うため、必ず主治医と相談しながら進めてください。
手術が検討される場合
多くの場合、呼吸機能検査は手術の前に受ける検査としても使われます。肺の病気そのものに対して手術が検討されるのは、一部の限られた状態のときです。手術が必要かどうかは、検査結果だけでなく全身の状態を含めて総合的に判断されます。
この病気と共に生きる
検査の結果が気になって不安になることもあるかもしれませんが、数字はあくまで今の状態を示すものです。日々の暮らしの中で、無理をせず、息苦しさを感じたら立ち止まって休む習慣をつけることが大切です。体調の記録をつけておくと、次の診察で相談しやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。禁煙外来など、支援の仕組みも活用できます
- 部屋の換気や掃除をこまめに行い、ほこりやカビを減らす
- 寒い日や空気の悪い日は、外出時にマスクを使うなど工夫する
- 十分な睡眠と休息をとり、疲れをためない
- かぜや肺炎を防ぐため、予防接種について主治医に相談する
- 動作に合わせた呼吸法を日常に取り入れる(階段はゆっくり、荷物は軽く)
食事と運動
食事は、塩分や脂っこいものを控えめにし、野菜やたんぱく質をバランスよくとると体調を整えやすいです。一度にたくさん食べるのがつらいときは、小分けにすると楽です。運動は、散歩や軽いストレッチなど、息が上がりすぎない程度のものを無理なく続けましょう。呼吸リハビリテーションでは、自分に合った運動の強さを教えてもらえます。
精神的健康と心の健康
息苦しさが続くと、「また苦しくなったらどうしよう」という不安や、外出を控えがちになる気持ちが生まれやすくなります。これは自然な反応で、あなたの弱さではありません。話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、主治医や地域の相談窓口、信頼できる人に声をかけてください。気持ちが追い詰められていると感じたら、ためらわずに医療機関や救急(119)に連絡してください。
予防
呼吸機能検査そのものを防ぐという考え方はありませんが、肺の働きを守ることはできます。たばこを吸わない・やめる、受動喫煙を避ける、粉じんや化学物質を扱うときはマスクや換気で対策する、かぜや肺炎を予防する、といったことが肺を守る近道です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎、新型コロナなどの予防接種は、肺の病気をもつ人にとって重症化を防ぐ助けになります。時期や回数、受けてよいかどうかは、主治医やかかりつけの医療機関に相談してください。
検診プログラム
健康診断の胸部X線や、喫煙歴のある人への呼吸機能検査などが、肺の病気を早く見つける機会になります。自治体や職場の健診の案内を確認し、気になる症状があるときは健診を待たずに受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 肺の病気に気づかないまま、ゆっくり進行してしまうことがある
- 息切れが進み、買い物や家事など日常の動作がつらくなる
- かぜなどをきっかけに症状が急に悪くなる(急性増悪)ことがある
- 酸素が足りなくなることで、心臓に負担がかかることがある
- 不安や睡眠不足など、生活の質が下がることがある
長期的な見通し
呼吸機能検査を受けて今の状態を知ることは、これからの選択肢を広げる第一歩です。禁煙や適切な治療、呼吸リハビリテーションによって、症状が軽くなったり、生活の質が保たれたりする方はたくさんいます。検査の結果が思わしくなかったとしても、それは「終わり」ではなく「これからの付き合い方を決めるスタート」です。主治医と一緒に、無理のない計画を立てていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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