BIMS(ビムス)スコアとは ― 認知機能を3〜5分で確認する検査
概要
BIMS(ビムス)スコアは、正式には「Brief Interview for Mental Status(簡易精神状態面接)」といい、もの忘れや認知機能の状態を短時間で大まかにつかむための検査です。医師や看護師、介護の専門職が、その人と向き合って口頭でいくつか質問し、その答えを点数にします。質問は主に3つで、(1) 3つの言葉をそのまま繰り返してもらう、(2) 今日が何年・何月・何日・何曜日かを答えてもらう、(3) さきほどの3つの言葉を思い出してもらう、という内容です。15点満点で、点数が高いほど「記憶と、時間や場所の見当識(自分が今いつ・どこにいるかをつかむ力)」が保たれていると判断されます。ただしこれは「診断」をするためのものではなく、今の状態の目安をつかみ、時間をおいて比べるための道具です。日本では同じ目的で長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSEという検査が使われることも多く、BIMSはその仲間のひとつと考えるとわかりやすいでしょう。
重要な事実
- 15点満点の短い検査で、所要時間はおよそ3〜5分。紙とペンは不要で、会話だけで行います。
- 目安として、13〜15点は「ほぼ保たれている」、8〜12点は「中等度の低下」、0〜7点は「高度の低下」とされます。
- 点数が低いからといって、すぐに認知症と決まるわけではありません。疲れ、緊張、聞こえにくさ、気分の落ち込み、体の不調などでも点数は下がります。
- 一度の点数よりも、時間をおいて測ったときの「変化」のほうが大切にされます。
はい、とてもよく使われる検査です。病院や施設で、入院したとき、施設に入るとき、あるいはもの忘れが気になって受診したときなどに、認知機能の状態をまず大まかに知るための手段として行われます。特別な器具が要らず、会話だけで済む手軽さから、幅広い場面で活用されています。
主に高齢の方を対象にすることが多い検査です。もの忘れが気になる方、入院や施設入所の予定がある方、認知症の経過を定期的に見ていきたい方などが対象になります。ただし、年齢にかかわらず、けがや病気のあとで意識や記憶の状態を確認したいときに行われることもあります。
症状
- 突然、意識がぼんやりして呼びかけへの反応がわるい
- 急に会話がかみ合わなくなり、混乱している
- ろれつが回らない、言葉が出てこない
- 顔や手足の片側が動かしにくい、力が入らない
- 突然の激しい頭痛、またはけいれんが起きた
- 倒れて頭を打ったあと、様子がおかしい
- ⚠数日のうちに、もの忘れや混乱がはっきり進んだ
- ⚠食事や水分をほとんどとらなくなった
- ⚠転倒したあとから、なんとなく様子が変わった
- ⚠新しい環境に移ってから、急に落ち着かなくなった
- ⚠薬を変えたあとから、ぼんやりすることが増えた
一般的な症状
- 同じことを何度も聞いたり、話したりする
- 約束や予定を忘れてしまうことが増えた
- 今日の日付や曜日がわからなくなることがある
- 物の置き場所がわからず、探しものが増えた
- 料理や買い物など、段取りのいることが面倒になった
- 話の筋が通らず、会話がかみ合いにくくなった
- これまで好きだった趣味への関心が薄れた
- 怒りっぽくなる、不安が強くなるなど、性格の変化が見られる
子供の症状
- BIMSは大人、とくに高齢者の認知機能を見るための検査で、子どもには基本的に使いません。
- 子どもの発達や学習の心配は、年齢に応じた別の方法で評価します。気になることがあれば、小児科や学校の相談窓口に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢者の場合、加齢による「普通のもの忘れ」と、病気による「気になるもの忘れ」の区別がむずかしいことがあります。
- 聞こえにくさ、目の見えにくさ、強い疲れ、緊張、気分の落ち込み、睡眠不足、薬の影響でも点数は下がることがあります。
- 急に混乱が始まった場合(せん妄=急に起こる意識の混乱)は、感染症や脱水、脳の病気など体の不調が隠れていることがあり、注意が必要です。
原因
主な原因
- 加齢にともなう、ゆるやかな記憶力の低下
- 軽度認知障害(MCI)― もの忘れはあるものの、日常生活はほぼ自分でできる状態
- 認知症(アルツハイマー型など)― 記憶や判断に影響が出て、生活に支障が生じる状態
- うつ病や強い不安、気分の落ち込み
- せん妄 ― 体の不調などで急に起こる意識の混乱
- 脱水、発熱、感染症、睡眠不足、強い疲労
- 聞こえにくさや目の見えにくさ(質問が聞き取りにくいと点数が下がることがあります)
- 薬の影響や、いくつもの薬を併用していること
- 脳卒中や頭部のけがなど、脳の病気
- 甲状腺の病気やビタミン不足など、治療できる体の原因
リスク要因
- 高齢であること
- 家族に認知症の人がいる
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病
- 運動不足
- 難聴をそのままにしている
- 人と会う機会が少なく、社会的に孤立している
- うつ状態や不眠が続いている
- 頭を強く打った経験がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に意識がぼんやりした、会話がかみ合わない
- 片側の手足が動きにくい、ろれつが回らない
- 頭を打ったあとに様子がおかしい
- 食事や水分をとらず、ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- もの忘れが増え、家族が心配している
- 同じことを何度も聞くようになった
- 日付や曜日がわからず、生活に困りごとが出てきた
- 性格や気分の変化が気になる
- 運転やお金の管理に不安を感じる
- 施設入所や入院の前に、認知機能の状態を確認したい
診断
BIMSは、医師や看護師、心理士などが、静かな場所でその人と向き合い、口頭で質問して行います。まず3つの言葉(たとえば「桜」「電車」「親切」のような、覚えやすい言葉)を伝えて繰り返してもらい、次に今日の年・月・日・曜日を答えてもらい、最後にさきほどの3つの言葉を思い出してもらいます。合計15点満点で採点します。大切なのは、点数だけで判断しないことです。生活の様子や困りごと、家族からの聞き取り、体の状態、必要に応じて血液検査や画像検査を組み合わせて、全体としてどういう状態かを考えます。日本では、より詳しい長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSEが使われることもあります。
行われる可能性のある検査
- BIMS(簡易精神状態面接)そのもの ― 会話形式で3〜5分
- MMSEや長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)など、より詳しい認知機能検査
- 時計描画テストや言葉の出やすさを見る検査など、必要に応じた追加の検査
- 血液検査 ― 甲状腺やビタミン、貧血など、治療できる原因を探すため
- 頭部CTやMRI ― 脳の病気や脳の萎縮がないかを確認するため
- 気分の落ち込みや不安、睡眠の状態を確認する質問
- 家族や介護する人からの、日々の様子の聞き取り
診察で予想されること
検査はあっという間に終わります。緊張すると点数が下がることがあるので、リラックスして臨んでください。聞こえにくいときは、遠慮せず「もう一度お願いします」と伝えて構いません。家族や身近な人が同席すると、日々の様子を伝えられて役立ちます。点数は成績表ではなく、今の状態の目安です。良し悪しを競うものではないことを、ぜひ覚えておいてください。
治療
BIMSは検査そのものであり、治療ではありません。大切なのは、点数が低かった場合に「その背景に何があるか」を一緒に考えることです。原因が体の病気や薬の影響、気分の落ち込みであれば、それを整えることで状態が改善することがあります。認知症が背景にある場合も、早めに支援を整えることで、穏やかに生活を続けやすくなります。
自宅でのセルフケア
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 水分をこまめにとり、脱水を避ける
- 聞こえにくいときは補聴器を、見えにくいときは眼鏡を使って、会話しやすい環境を整える
- お薬手帳などで、飲んでいる薬を一つにまとめておき、受診時に見せる
- カレンダーやメモ、スマートフォンの予定通知を上手に使う
- 決まった日課をつくり、生活のリズムを保つ
- 家族や身近な人に、困っていることを早めに話しておく
医療治療
治療の内容は、背景にある原因によって変わります。気分の落ち込みや不安が強い場合は、心の面からの支援や治療が検討されます。甲状腺の病気やビタミン不足など、治療できる体の原因が見つかれば、それを整えることで状態が良くなることがあります。認知症が背景にある場合は、進行をゆるやかにする目的の治療や、落ち着きのなさ・気分の波などの症状に合わせた治療が、医師の判断で行われることがあります。薬を使うかどうか、どの治療を選ぶかは、主治医とよく相談して決めてください。あわせて、生活の支援やリハビリテーション、環境の調整なども組み合わせて行われます。
手術が検討される場合
BIMSの点数そのものに対して手術が必要になることはありません。ただし、検査の結果や画像の検査から、脳の病気(頭の中に血がたまる状態など)が原因と考えられる場合には、外科的な治療が検討されることがあります。その判断は専門の医師が行います。
この病気と共に生きる
点数が気になるときこそ、できるだけ今までどおりの生活を続けることが大切です。できていることに目を向け、むずかしくなったことは道具や人の手を借りて補いましょう。「できないこと」を数えるより、「どうすれば続けられるか」を一緒に考えるほうが、気持ちも安定します。
生活習慣のアドバイス
- 散歩や軽い運動など、無理のない範囲で体を動かす習慣をつくる
- 人と会う機会を意識してつくる(地域の集まりや趣味の場など)
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
- 規則正しい睡眠を心がける
- 難聴があれば、補聴器の使用を検討する
- 家の中を整理し、転びにくい環境にする
食事と運動
食事は、野菜や魚、豆類などをバランスよくとり、塩分をとりすぎないことが基本です。血圧や血糖、脂質をよい状態に保つことは、脳の健康にもつながると考えられています。運動は、早歩きの散歩や軽い体操など、息が少しはずむ程度を週に数回続けるのがおすすめです。無理をして始めるより、続けられることを一つ見つけるほうが効果的です。
精神的健康と心の健康
もの忘れが気になると、不安になったり、落ち込んだり、人に会うのがおっくうになったりすることがあります。これは自然な反応です。不安や気分の落ち込みが強いとき、眠れない日が続くとき、ひとりで抱えきれないと感じるときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に早めに話してください。気持ちのつらさが強い場合には、地域の危機支援の窓口を頼ることも大切です。ひとりで抱え込まないでください。
予防
BIMSの点数が下がること自体を完全に防ぐ方法はありません。ただし、脳と体の健康を保つ生活は、認知機能をできるだけ長く保つ助けになると考えられています。血圧・血糖・脂質を良い状態に保つ、体を動かす、人とつながる、難聴を放置しない、睡眠をしっかりとる、禁煙する ― こうした日々の積み重ねが大切です。
ワクチン
特定のワクチンがBIMSの点数を上げるわけではありませんが、高齢者では感染症が体調を大きく崩し、一時的に意識がぼんやりすることもあります。インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについては、かかりつけ医や自治体の案内を参考に、必要性を相談してください。
検診プログラム
自治体によっては、高齢者の健康診査の中で認知機能のチェックが行われたり、認知症の早期発見・相談の取り組みが行われたりしています。もの忘れが気になったときは、市区町村の窓口やかかりつけ医に相談するのが第一歩です。
合併症
治療しない場合
- 転倒やけがのリスクが高まる
- 薬の飲み忘れや飲みすぎが起こりやすくなる
- 火の元や鍵の管理など、日常生活の事故が増える
- お金の管理や契約ごとでのトラブルが起きやすくなる
- 運転の判断に不安が生じる
- 食事や水分が十分にとれず、体力が落ちる
- 人と会う機会が減り、孤立しやすくなる
- 介護する家族の負担が大きくなる
長期的な見通し
BIMSの点数が低いからといって、これからの生活が暗いわけではありません。大切なのは、早めに気づいて、必要な支援を整えることです。治療できる原因が見つかれば状態が良くなることもありますし、認知症が背景にあっても、環境や人との関わりを整えることで、穏やかに暮らし続けている方はたくさんいます。心配なことは、どうか一人で抱えずに、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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