乳がん検診(乳がんスクリーニング)
概要
乳がん検診は、乳房のしこりなど気になる症状がまだない人の乳房を調べて、小さながんや、その手前の段階の変化を早く見つけるための検査です。「検診(けんしん)」とは、元気に暮らしている人を対象に、病気を早く見つけるために行う取り組みのことです。日本では、市町村が行う検診(対策型検診)として、40歳以上の女性に2年に1回の乳房X線検査(マンモグラフィ)がすすめられています。検診は「治療の代わり」ではなく、あくまで「早く気づくための入り口」だと考えてください。
重要な事実
- 検診は「症状がないとき」に受けるもの。しこりや痛みなど気になる症状があるときは、検診を待たずに医療機関を受診してください。
- 日本では、40歳以上の女性に対して2年に1回のマンモグラフィ(乳房X線検査)が推奨されています。
- 検診は100%確実ではありません。見落としがあることも、がんでないのに「要精密検査」となることもあります。それでも、早期発見の助けになることが分かっています。
乳がんは、日本人女性でもっとも多いがんだといわれています。だからこそ、検診を受けることは特別なことではなく、多くの女性が当たり前に受けている健康習慣のひとつです。受けるかどうか迷う気持ちも自然なことです。
症状
- 乳房から大量の出血があり、止血できない
- 呼吸が苦しい、意識がもうろうとしているなど、全身状態が急に悪い
- ⚠乳房が急に赤く腫れ、熱をもって痛む(炎症性乳がんや乳腺炎の可能性があります)
- ⚠しこりが数週間で急に大きくなっている
- ⚠皮膚がただれて出血している、乳頭から血が出ている
- ⚠脇の下のしこりが急に腫れて痛む
一般的な症状
- 早期の乳がんは、痛みもなく、自分では気づけないことがほとんどです。だからこそ検診が大切にされます。
- 乳房のしこり(硬くて、動かしにくいことがあります)
- 乳房の形や大きさの変化、左右の違い
- 皮膚がひきつれる、くぼむ、オレンジの皮のような見た目になる
- 乳頭(にゅうとう)から血の混じった液や透明な液が出る
- 乳頭や乳輪のただれ、湿疹のような変化
- 脇の下や鎖骨の上のリンパ節が腫れる
子供の症状
- 思春期の女の子では、乳房がふくらむ時期に痛みやしこりを感じることがありますが、多くは成長の一部です。
- 10代のしこりはほとんどが良性(がんでない)といわれますが、気になる変化があれば小児科や婦人科で相談してください。
- 乳がん検診の対象は大人の女性です。子どもの頃から検診を受ける必要はありません。
高齢者の症状
- 高齢になっても検診を受けることは可能ですが、持病や体力、今後の希望をふまえて、かかりつけ医と相談しながら決めるとよいでしょう。
- 乳房の変化に加えて、痛みで腕を動かしにくい、服がこすれて痛むといった場合は、早めに相談してください。
- 一人で受診が難しいときは、家族や地域の支援サービスに付き添いを頼むこともできます。
原因
主な原因
- 乳がんは、乳房の中の乳腺(にゅうせん)という組織の細胞が、少しずつ性質を変えながら増えていくことで生じます。
- はっきりした「これが原因」というものは分かっていません。年齢を重ねる中で、さまざまな要因が重なって起こると考えられています。
- 遺伝子の生まれつきの違いが関係する場合もありますが、家族歴がない人でも乳がんになることはあります。
リスク要因
- 女性であること、そして年齢を重ねること
- 家族(母・姉妹・娘など)に乳がんや卵巣がんの人がいる
- 飲酒の習慣がある
- 閉経後の体重増加や肥満
- 運動不足
- たばこを吸う
- 初経(初めての月経)が早かった、閉経が遅かった、出産経験がない、出産年齢が高めだったなど、ホルモンと関わる要因
- 乳がんになったことがある、乳房に良性の変化があったなど、これまでの病歴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 乳房が急に赤く腫れて熱をもち、痛みがある
- 乳房から血が出て止まらない
- しこりが急に大きくなっている、皮膚のただれが進んでいる
定期受診を予約すべき場合:
- 40歳以上で、2年以上マンモグラフィを受けていない(市町村の検診案内が届いたら受けるのがおすすめです)
- 家族に乳がんの人がいて、自分はいつから受けるべきか相談したい
- しこりかどうか自信がない、乳房の変化が続いている
- 検診で「要精密検査」と書かれていた(これは「がんだ」という意味ではありません。多くはがんでないことが分かりますが、必ず受けてください)
- 乳がん検診の結果の意味が分からない、次に何をすればよいか知りたい
診断
検診で異常の可能性が見つかった場合は、次の段階として「精密検査」を受けます。精密検査では、乳房の専門の医療機関で、マンモグラフィや超音波(エコー)などを使ってもう一度詳しく調べます。必要に応じて、しこりの一部を細い針で採って調べる検査(細胞診・針生検)を行い、がんなのかどうかを確定します。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(症状や家族歴、これまでの検診の記録を確認します)
- マンモグラフィ(乳房X線検査。乳房を板で挟んで撮影します)
- 乳房超音波検査(エコー。超音波で乳房の内部を映します。妊娠中や若い方に選ばれることもあります)
- 針生検・細胞診(しこりや気になる部分の細胞を採って調べます)
- MRI検査(必要に応じて、より詳しく見たいときに行います)
- 遺伝カウンセリング(家族歴が強い場合などに、専門のスタッフと相談できます)
診察で予想されること
検診の結果が届くまでには、ふつう数週間かかります。精密検査になると、追加の検査を受ける日を決め、結果が出るまでにさらに時間がかかることがあります。待っている間は落ち着かない気持ちになるのが自然です。検査の痛みは乳房を挟む圧迫感などが中心で、多くの場合はその日のうちに終わります。分からないことは、遠慮なく医療者に質問してください。
治療
この記事のテーマは「検診」です。検診の目的は、治療が必要になったとしても早い段階で見つけ、選べる治療の幅を広くしておくことです。もし乳がんと診断された場合は、乳房の状態やがんの性質、年齢、生活の希望などをふまえて、治療の方針を医療者と一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- ふだんの自分の乳房の状態を知っておく(ブレスト・アウェアネス)。毎月決まった日に見て、触れて、変化に気づけるようにしておくと安心です。
- 気になる変化は、いつから、どんなふうに変わったかをメモしておくと、受診のときに役立ちます。
- 検診を受けた年と結果を記録しておき、次の検診の時期を把握しておく。
- 検診の案内が届いたら、予定を早めに決めてしまう。忙しいと後回しになりがちです。
- 結果に不安があるときは、一人で調べ続けず、医療者や相談窓口に聞く。
医療治療
乳がんと診断された場合の治療は、いくつかの方法を組み合わせて行われます。代表的なものは、手術、放射線療法、そして薬による治療(ホルモン療法、化学療法、分子標的薬など)です。どの方法をどの順番で行うかは、がんの大きさや広がり、性質、体の状態、そして本人の希望によって変わります。具体的な内容は、担当の医師から詳しい説明を受け、納得してから決めてください。
手術が検討される場合
手術は、乳房のがんを体から取り除く治療で、多くの場合に中心的な選択肢となります。乳房の一部を残す方法(乳房温存術)と、乳房を全部取る方法(乳房全摘術)があり、再建(乳房を作り直す)を同時に考えられることもあります。どの方法が合うかは、がんの広がりや乳房の大きさ、生活の希望などを話し合って決めます。
この病気と共に生きる
検診は、受けるまでと結果を待つ間が、いちばん気持ちが落ち着かない時間かもしれません。検査の日は仕事や家事の予定を詰め込みすぎず、少し余裕をもたせておくと楽です。結果が届いたら、まずは落ち着いて内容を読み、「要精密検査」などの言葉があれば、早めに受診の予約を入れましょう。迷ったときは、家族や友人に一緒に聞いてもらうのも助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 飲酒はほどほどに。飲む量と回数を見直すことは、リスクを下げる助けになります。
- 禁煙を考えてみる。一人で難しければ、医療機関や地域の禁煙支援を利用できます。
- 睡眠を十分にとり、無理のない範囲で体を動かす習慣をつくる。
- 検診の予定は、誕生月や年末など自分が忘れにくい時期に決めておく。
- 市町村の検診案内や職場の健康診断の案内を、捨てずに確認する。
食事と運動
特別な食べ物だけで乳がんを防げるという確かな方法はありません。バランスのよい食事を心がけ、野菜や豆類、魚などをとり、塩分や加工食品をとりすぎないようにするとよいでしょう。運動は、早歩きなどの軽い活動を週に数回、無理のない範囲で続けることがすすめられます。閉経後の体重管理は、リスクを下げる意味でも役立つといわれています。
精神的健康と心の健康
検診を受ける前、結果を待つ間、精密検査を受けるときは、不安や緊張が強くなることがあります。眠れない、気持ちが落ち着かない、何も手につかないと感じたら、それは自然な反応です。ひとりで抱え込まず、家族や友人、かかりつけ医、地域の相談窓口に話してください。つらい気持ちが続くときは、医療機関で相談することが大切です。緊急に自分を守れないと感じたときは、躊躇せず救急(119)や地域の救急相談窓口を頼ってください。
予防
乳がんを100%防ぐ方法は、今のところ分かっていません。ただ、飲酒を控えめにする、禁煙する、体重を管理する、体を動かすといった生活習慣の見直しでリスクを下げられる可能性があります。そして何より、検診で早く見つけることが、治療の選択肢を広げる助けになります。
ワクチン
乳がんを予防するワクチンは、現在ありません。
検診プログラム
日本では、厚生労働省の指針にもとづき、40歳以上の女性に2年に1回のマンモグラフィ(乳房X線検査)による乳がん検診が推奨されています。お住まいの市町村が案内する検診(住民検診)や、職場の健康診断で受けられることが多く、自己負担額や受け方は地域によって異なります。案内が届いたら、対象年齢や申込み方法を確認してみてください。検診の間隔や受ける年齢について迷うときは、かかりつけ医や自治体の健康相談窓口に相談できます。
合併症
治療しない場合
- 見つけるのが遅れると、がんが大きくなり、治療の選択肢が限られることがあります。
- リンパ節や、離れた臓器(骨・肺・肝臓など)に広がる(転移する)可能性が高まります。
- 乳房の形や皮膚の変化が進み、痛みや日常生活の支障が出ることがあります。
長期的な見通し
乳がんは、早い段階で見つかれば、多くの方が治療を終えて日常に戻っています。検診は、その可能性を少しでも高めるためのものです。受けるかどうか迷う気持ちも含めて、あなたのペースで考えて大丈夫です。気になることや不安なことは、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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