心電図テレメトリー監視 ― 心臓のリズムを続けて見守るしくみ
概要
心電図テレメトリー監視(しんえいずテレメトリーかんし)とは、胸に貼ったシール状の電極(でんきょく)から心臓の電気の信号をとり続け、心臓がどのくらいのテンポで、どんな順番で打っているかを、病院のスタッフが24時間いつでも見られるようにするしくみです。ふつうの心電図は「その瞬間」の数十秒だけを記録しますが、テレメトリーは「何日も続けて」記録できるところが大きな違いです。小さな送信機(そうしんき)がポケットに入る大きさの機械で、ベッドのそばの画面やナースステーションの画面に心臓の波形がうつります。検査や治療そのものではなく、心臓を「見守る目」のようなものだと考えてください。
重要な事実
- 胸に貼る電極と小さな送信機を使い、心臓のリズムを何日も続けて記録します。痛みはほとんどなく、貼るときに少しひんやりする程度です。
- 記録はベッドのそばやナースステーションの画面に映り、スタッフがいつでも確認できるので、急にリズムが乱れても早く気づけます。
- モニターは「見つける」ための道具です。記録から不整脈(心臓のリズムの乱れ)の有無や種類がわかり、その後の治療の方針を決める材料になります。
とてもよく行われる方法です。心臓の病気で入院している方、心臓の手術のあとの方、動悸(どうき)や失神(きを失うこと)の原因を調べたい方など、多くの病棟で日常的に使われています。
主に病院に入院している方が対象です。動悸・めまい・失神・胸の不快感がある方、心臓の病気の治療中や手術後の方、心臓に影響する薬の効果や副作用を確認したい方などが使います。子どもでは先天性(生まれつき)の心臓病がある場合や心臓の手術のあとに使うことがあり、高齢の方では不整脈が見つかりやすいためよく使われます。
症状
- 胸を強く締めつける痛みが続く、または15分以上おさまらない(119番に電話してください)。
- 意識を失って倒れた、呼びかけへの反応が弱い(119番)。
- 息が苦しくて横になれない、話すのがつらい(119番)。
- 脈がとても速い、またはとても遅い状態が続き、冷や汗や顔色の悪さをともなう(119番)。
- けいれんのように全身が震えて意識が戻らない(119番)。
- ⚠動悸が数時間続いて落ち着かない。
- ⚠軽いめまいやふらつきが続き、歩くのが不安。
- ⚠脈が飛ぶ感じが何度も繰り返す。
- ⚠モニターのアラームが鳴り続けている、電極が何度もはがれる(看護師にすぐ伝えてください)。
一般的な症状
- モニターを付けていること自体で痛みや苦しさが出ることは、ほとんどありません。
- モニタリングのきっかけになる症状として多いのは、動悸(心臓がドキドキする、飛ぶように感じる)です。
- めまいやふらつき、立ちくらみ。
- 胸の不快感や締めつけられる感じ。
- 息切れ、階段や坂で息が上がりやすい。
- 気が遠くなる、意識が一瞬とぶ(失神)。
- 原因がはっきりしない疲れやすさ。
- 電極を貼るときに少しひんやりしたり、はがすときに軽くかゆくなったりすることがあります。
子供の症状
- 生まれつきの心臓病があるお子さんや、心臓の手術のあとのお子さんでよく使われます。
- シール(電極)を怖がったり、リード線(細いコード)を気にして触りたがったりすることがあります。ぬいぐるみを使って説明すると安心しやすいです。
- 遊んでいるうちにコードを引っぱってしまうことがあるので、大人が見守り、はがれたらすぐ看護師に伝えてください。
- 小さいお子さんは自分で症状を言葉にできないため、保護者の方が様子の変化に気づくことが大切です。
高齢者の症状
- 高齢になるほど不整脈が見つかりやすく、モニタリングの必要性が高くなります。
- 皮膚が弱くなっていることがあり、電極をはがすときに赤みやかゆみが出やすいです。
- 認知症やせん妄(一時的に混乱すること)があると、コードを触ったり外そうとしたりすることがあります。スタッフに相談してください。
- 入院中に体を動かす機会が減ると、筋力が落ちやすくなります。ベッドの上でできる動きを看護師に相談しましょう。
原因
主な原因
- 動悸や失神の原因となる不整脈(心臓のリズムの乱れ)があるかどうかを調べるため。
- 心臓の病気(心筋梗塞や心不全など)の治療中に、リズムの変化を早く見つけるため。
- 心臓の手術やカテーテル治療のあとの経過を見守るため。
- 心臓に影響する薬の効果や副作用を確認するため。
- 心房細動(心臓の上の部屋が細かく震える不整脈)が見つかった方の経過観察のため。
リスク要因
- 高齢であること。
- これまでに心臓の病気(心筋梗塞、心不全、弁膜症など)を経験したことがある。
- 高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸(いびきと息の止まり)。
- 甲状腺(こうじょうせん)の病気など、ホルモンの影響。
- 体の水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスの乱れ。
- 強いストレス、睡眠不足、過度の飲酒やカフェインのとりすぎ。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みや強い息苦しさがある、または意識が遠のく。
- 動悸が長時間おさまらず、冷や汗や吐き気をともなう。
- 失神した、または倒れそうになった。
定期受診を予約すべき場合:
- 健診の心電図で「不整脈の疑い」と言われた。
- 動悸や脈の乱れをときどき感じる。
- 家族に心臓病や突然死の方がいる。
- 心臓の病気で通院しており、動悸や息切れが増えた気がする。
診断
テレメトリー監視は、それ自体が「診断の道具」です。胸に貼った電極から心臓の電気の信号を連続して記録し、波形として画面に映します。スタッフはその波形から、心臓のテンポが速すぎないか、遅すぎないか、リズムが乱れていないかを確認します。記録は保存されるので、あとから医師がくわしく見直すこともできます。
行われる可能性のある検査
- 12誘導心電図(その場の数十秒を記録する基本の検査)。
- テレメトリー監視(入院中に何日も続けて記録)。
- ホルター心電図(自宅で24時間ほど装着する携帯型の記録)。
- イベントレコーダー(症状が出たときだけ記録する小型の機器)。
- 血液検査(電解質や甲状腺のホルモン、心臓に負担がかかっていないかを見る)。
- 心エコー(超音波で心臓の形や動きを見る検査)。
- 胸部レントゲン。
- 必要に応じて運動負荷試験(動いたときの心臓の反応を見る検査)。
診察で予想されること
看護師が胸にシール状の電極を数枚貼り、細いコードを小型の送信機につなぎます。準備は数分で終わり、痛みはありません。シャワーや入浴は、コードや機械をぬらさないために制限されることがあります。体を大きく動かしたり、汗をかいたりすると波形が乱れたり電極がはがれたりするので、そのときは看護師に伝えてください。スマートフォンや電気毛布など、機械に影響することがあるものは病院の指示に従ってください。
治療
テレメトリー監視は治療ではなく「見守り」です。記録から不整脈の有無・種類・頻度がわかり、その結果をもとに、生活の調整でよいのか、薬が必要なのか、処置が必要なのかを医師が判断します。モニターがあることで、急な変化にも早く対応できます。
自宅でのセルフケア
- 電極やコードは自分ではずさない。はがれかけたら看護師に伝える。
- 汗をかいたときは、そのままにせず看護師に知らせる(シールが浮きやすいため)。
- 体を拭くときは電極のまわりをやさしく。
- 装着中に動悸やめまいを感じたら、その時刻とどんな感じだったかをメモするか、すぐナースコールを押す。
- ベッドのまわりを整理し、コードにつまずかないようにする。
- 入院中も、指示された範囲で体を動かして筋力を保つ。
医療治療
治療の方針は、見つかった不整脈の種類や、心臓の働き、症状の強さによって変わります。一般的には、生活の調整(睡眠・アルコールやカフェインを控える・血圧や体重の管理)、心臓のリズムや速さを整えるための薬、必要なときに行う電気的な処置、カテーテルを使った治療、ペースメーカーなどの機器の植え込みなどが組み合わされます。どの方法が合うかは一人ひとり違うため、必ず担当の医師と相談して決めてください。
手術が検討される場合
すべての方に手術が必要なわけではありません。カテーテルで不整脈の原因となる部分を治療する方法や、心臓のテンポを保つための小さな機器を体内に植え込む方法などは、モニタリングの記録と症状から必要と判断された場合に行われます。
この病気と共に生きる
装着中は、コードの長さの範囲でベッドのまわりを動けます。トイレや移動のときに看護師が手伝うことがあります。モニターのアラーム音は、心配のないものでも鳴ることがあるので、音が鳴ったらまず看護師を呼んでください。退院後は、入院中に見つかった不整脈の種類に合わせた生活のポイントを、医師や看護師から具体的に教えてもらいましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する。
- 飲酒は控えめに、医師の指示に従う。
- カフェイン(コーヒー、濃いお茶、エナジードリンク)をとりすぎない。
- 睡眠を十分にとる。
- ストレスをためこまず、リラックスする時間をつくる。
- 血圧・体重・血糖を日々の記録で把握する。
- 体調の変化(動悸・めまい・息切れ)を手帳にメモしておく。
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、野菜や魚、食物繊維をバランスよくとることを心がけましょう。運動は、退院後にどのくらい動いてよいかを医師に確認してから始めてください。多くの場合は、息が上がりすぎない程度の散歩などから少しずつ増やしていきます。入院中は、ベッドの上でできる足の運動などを看護師に教えてもらいましょう。
精神的健康と心の健康
モニターの音やコード、慣れない入院生活で、不安になったり眠りにくくなったりするのは自然なことです。不安は心臓のリズムにも影響することがあります。一人で抱えこまず、看護師や医師、家族に話してください。つらい気持ちが長く続くとき、気分の落ち込みが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、地域の相談窓口や医療スタッフに早めに伝えてください。命に関わる緊急のときは119番に電話してください。
予防
テレメトリー監視そのものを防ぐという考え方はありません。ただし、監視が必要になるような不整脈や心臓の病気は、生活習慣を整えることでリスクを下げられる場合があります。禁煙、節酒、バランスのよい食事、適正体重、血圧と血糖の管理、十分な睡眠が基本です。
検診プログラム
健診(健康診断)の心電図や血圧測定は、自覚のない不整脈や心臓の変化を見つける助けになります。動悸や失神の経験がある方は、健診を待たずに医療機関で相談してください。厚生労働省も健診の受診を勧めています。
合併症
治療しない場合
- 原因となる不整脈に気づかれず、症状が繰り返す。
- 失神によって倒れ、けがや骨折につながる。
- 心不全(心臓のポンプの働きが弱ること)が悪化する。
- 心房細動がある場合、脳梗塞(のうこうそく)のリスクが上がる。
- まれですが、危険な不整脈が突然の心停止につながることがある。
長期的な見通し
多くの場合、モニタリングで心臓のリズムの様子がわかり、それに合わせた対応で状態は落ち着きます。記録があることで、見落としを減らし、早めに対応できるのは大きな安心材料です。心配なことは遠慮なく医療スタッフに質問し、一緒に方針を決めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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