大腸がん検診(大腸がんスクリーニング)
概要
大腸がん検診は、大腸(結腸と直腸)にできた早期のがんや、がんになる前の「ポリープ」を、症状が出る前に見つけるための検査です。大腸は、食べ物の残りから水分を吸収して便を作るところで、長さは約1.5〜2メートルあります。検診は「症状がない人が、決まった年齢から定期的に受けるもの」で、早期に見つかれば治しやすいのが大きな特長です。
重要な事実
- 日本では、40歳以上の方を対象に、年に1回、便に血が混じっていないかを調べる「便潜血検査(べんせんけつけんさ)」が、お住まいの自治体や職場の健診などで行われています。
- 便潜血検査で異常があった場合は、大腸内視鏡(大腸カメラ)などで詳しく調べる「精密検査」を受けます。ここまで受けて初めて、検診がきちんと終わったことになります。
- 大腸がんは、早期に見つかれば、内視鏡で治療できることが多く、治りやすいがんのひとつです。
大腸がんは、日本でかかる人がとても多いがんのひとつで、男性でも女性でも上位に入ります。決してめずらしい病気ではありません。だからこそ、症状がないうちに受ける検診が大切にされています。
年齢とともに増え、40代の後半から増え始めて、50〜60代で多くなります。家族に大腸がんの人がいる、ポリープを指摘されたことがある、たばこ・お酒・肥満・運動不足がある、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)が長く続いている、といった方は特に注意が必要です。若い年代でも起こることはあります。
症状
- 大量の血便や下血があり、ふらふらする、意識がぼんやりする、顔色が真っ白で冷汗が出ている(緊急です。すぐに119番に連絡してください)
- 突然の激しい腹痛で、立っていることもできない
- おなかが固く張って痛み、便もガスも出ない(腸が詰まった可能性があります)
- ⚠便に血が混じる状態が続く、または何度もくり返す
- ⚠黒いタール状の便が出た
- ⚠便通の変化やおなかの不快感が2週間以上続く
- ⚠説明のつかない体重減少がある
- ⚠健康診断で貧血を指摘された、動くと息切れがする
一般的な症状
- 早期の大腸がんは、ほとんど症状がありません。症状が出たときには進んでいることがあるため、症状がない時期の検診が勧められています。
- 便に血が混じる、便の表面が赤い(血便)
- 便が黒くタールのようにべたつく
- 便が細くなった、便が出にくい、残った感じがする
- 便秘と下痢をくり返すなど、便通の習慣が変わった
- おなかの張りや痛みが続く
- 原因がわからない体重減少
- 疲れやすい、息切れがする(貧血のため)
子供の症状
- 子どもの大腸がんは、非常にまれです。
- 子どもの腹痛や血便は、便秘、感染性の腸炎、アレルギーなど別の原因であることがほとんどです。
- 子どもに大腸がん検診を行うことは、通常ありません。血便や強い腹痛が続くときは、小児科に相談してください。
高齢者の症状
- 年齢が上がるほどリスクは高くなりますが、体の状態によっては、検診を受ける負担と利益のバランスが変わってきます。
- 持病が多い方、体力が落ちている方、今後の生活の見通しを考えたい方は、年齢だけで決めずに、かかりつけ医と相談して受けるかどうかを決めるとよいでしょう。
- 高齢でも、元気に過ごしている方には、引き続き検診が勧められることがあります。
原因
主な原因
- 大腸の粘膜の細胞が、長い時間をかけて少しずつ変化し、がんになると考えられています。
- 多くは「腺腫(せんしゅ)」という良性のポリープ(いぼのような盛り上がり)を経て育つといわれ、がんになるまでに10年以上かかることが多いです。
- 一部は、遺伝的な体質(リンチ症候群など)や、長く続く炎症性腸疾患が関係しています。
リスク要因
- 年齢が高いこと(特に40代後半から増えます)
- 家族(親、きょうだい、子ども)に大腸がんの人がいる
- これまでに大腸ポリープや大腸がんを指摘されたことがある
- 肥満、特に太鼓腹(おなか周りに脂肪が多い)
- たばこを吸う
- お酒を多く飲む
- 赤身の肉や加工肉(ハム、ソーセージなど)を多く食べる
- 野菜、果物、食物繊維が少ない食事
- 運動不足
- 2型糖尿病
- 潰瘍性大腸炎やクローン病に長くかかっている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 便に血が混じる、黒い便が出た
- 強い腹痛、おなかの張りが続く
- 便通の変化が2週間以上続く
- 体重が減り続けている、貧血を指摘された
定期受診を予約すべき場合:
- 40歳以上で、大腸がん検診をまだ受けたことがない
- 前回の検診から1年以上たっている
- 家族に大腸がんの人がいる(何歳から受けるか、かかりつけ医に相談しましょう)
- ポリープを指摘されたことがある、炎症性腸疾患で通院している
- 便潜血検査で「陽性(+)」と言われた(必ず精密検査を受けましょう)
診断
大腸がん検診は、ふつう2段階で進みます。まず1次検診として、自宅で採った便(2日分)を調べる「便潜血検査」を受けます。そこで陽性だった場合に、2次検査として大腸内視鏡(大腸カメラ)などで腸の中を直接調べます。症状があって受診した場合は、症状と体の状態から必要な検査を選びます。
行われる可能性のある検査
- 便潜血検査(免疫法):便に人の血が混じっていないかを調べる検査です。ふつう2日分の便を採ります。検査前の食事制限は、多くの場合必要ありません。
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):肛門から細い管を入れて、大腸の中を直接見る検査です。ポリープがあれば、その場で切除できることも多くあります。前日からの食事の制限と、下剤で腸をきれいにしてから行います。
- CTコロノグラフィー(CTで大腸の形を見る検査):内視鏡が難しい場合などに選ばれることがあります。
- 注腸X線検査(バリウムを入れてX線で見る検査):施設によっては行われます。
- カプセル内視鏡:小さなカメラを飲み込んで腸の中を見る検査です。使える条件があります。
- 組織検査(生検):ポリープや気になる部分の一部を採って、顕微鏡で調べます。
- 血液検査:貧血の有無などを確認します。なお、腫瘍マーカーという血液の数値は、早期発見のための検診には向かないとされています。
診察で予想されること
大腸内視鏡を受けるときは、前日から食事の内容を制限し、当日は専用の下剤を飲んで腸を空にします。トイレに何度も行くことになるので、時間に余裕をもって予定を組むと安心です。検査そのものは10〜30分ほどで、必要に応じて鎮静剤(眠くなる薬)を使うこともあります。検査後はしばらく休んでから帰宅します。ポリープを取った場合は、出血に気をつけるよう説明を受け、その日は激しい運動や飲酒を控えます。結果はその日のうちに聞けることも、後日になることもあります。
治療
検診で見つかるのは、ポリープや早期のがんであることが少なくありません。早期であれば、内視鏡で切り取る治療ができ、入院せずに済むことも多いです。見つかったものの種類、大きさ、腸壁への入り込み方、転移の有無によって、治療の進め方が変わります。治療の内容は、担当の医師から詳しい説明を受け、納得してから決めていきましょう。
自宅でのセルフケア
- 検診の予定を先に決めて、カレンダーに入れておく
- 精密検査の結果や説明のメモを、一か所にまとめて保管する
- 家族にも検診を受けるよう声をかける(家族歴は大切な情報です)
- たばこをやめる、お酒を控えめにする、体重を管理する
- 結果を待つ間は、調べすぎて不安にならないようにする
医療治療
内視鏡でポリープや早期のがんを切り取る治療、おなかに小さな穴をあけて行う手術や開腹手術、薬でがんの増え方を抑える治療(抗がん剤・化学療法)、放射線をあてる治療、免疫の力でがんを攻撃する治療などが、病状に合わせて組み合わされます。どの治療が合うかは、がんの場所や広がり、体の状態によって変わるため、担当の医師とよく相談して決めます。
手術が検討される場合
内視鏡だけでは取りきれない、腸壁の深くまで入り込んでいる、リンパ節に転移がある可能性がある、といった場合に手術が検討されます。手術の方法は、がんの場所や広がり、体の状態に合わせて選ばれます。
この病気と共に生きる
検診を受けたあとも、ふだんの生活はほとんど変わりません。精密検査の結果を待つ間は、落ち着かない気持ちになるのが自然なことです。予定を詰め込みすぎず、いつもどおりの生活リズムを保つことが、気持ちを安定させる助けになります。
生活習慣のアドバイス
- たばこを吸わない(禁煙する)
- お酒はほどほどにする
- 体重を適正に保つ
- 毎日の生活に体を動かす時間を取り入れる
- 睡眠をしっかりとる
- 気になる症状はメモしておき、次の受診のときに伝える
食事と運動
食事は、全粒穀物(玄米や全粒粉のパンなど)、野菜、果物、豆類、きのこ、海藻をしっかりとり、食物繊維を意識しましょう。赤身の肉や加工肉は控えめにし、揚げ物や脂っこいものに偏らないようにします。水分もこまめにとりましょう。運動は、早歩きのような「少し息がはずむ程度」の活動を、週に合わせて150分ほどを目安に、無理のない範囲で続けるとよいといわれています。
精神的健康と心の健康
「陽性」という言葉を聞いただけで、強い不安や恐怖を感じる方は少なくありません。眠れない、食欲がない、気持ちが沈むといった状態が続くときは、一人で抱え込まないでください。不安は、正しい情報と人に話すことで、少しずつ軽くなることがあります。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐにかかりつけ医、お住まいの自治体の相談窓口、病院のがん相談支援センターなどの専門の相談先に連絡してください。緊急の場合は119番に連絡してください。
予防
大腸がんを完全に防ぐ方法はありませんが、リスクを下げることはできます。いちばん効果が期待できるのは、症状がないうちに検診を受け続けることです。がんになる前のポリープの段階で見つけて取り除けば、がんの発生そのものを減らせると報告されています。生活習慣の見直しも、リスクを下げる助けになります。
ワクチン
現在、大腸がんを予防するワクチンはありません。
検診プログラム
日本では、40歳以上の方に、年に1回の便潜血検査(2日分の便を調べる方法)が勧められています。お住まいの自治体の検診は、自己負担が少額か無料で受けられます。職場の健康診断で受けられる場合もあります。大切なのは、陽性と言われたときに必ず精密検査を受けること、そして翌年もまた検診を受けることです。家族に大腸がんの人がいる場合は、ふつうより早い年齢から内視鏡を含めた検査を勧められることがあるので、かかりつけ医に相談してください。なお、日本では大腸がん検診の受診率がまだ低いことが課題とされています。
合併症
治療しない場合
- 出血が続いて貧血になり、疲れやすい、息切れがするといった症状が出る
- がんが大きくなって腸が狭くなり、腸閉塞(おなかが張って痛み、便もガスも出なくなる状態)を起こす
- 腸に穴が開く(穿孔)ことがあり、緊急の治療が必要になる
- リンパ節や肝臓、肺など、ほかの臓器に転移する
- 進行してから見つかると、治療の選択肢が限られ、体への負担も大きくなる
長期的な見通し
大腸がんは、早期に見つかれば、多くの場合、治すことができます。実際、早期の段階で見つかった方は、その後の経過がとても良いことが多いと報告されています。検診で陽性と言われても、がんでないことのほうが多くあります。大切なのは、こわいからと先延ばしにせず、精密検査まで受けることです。見つかった場合も、治療の方法は年々進歩しています。まずはかかりつけ医に相談するところから始めてみてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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