深視力(奥行き知覚)検査――遠近感を調べる目の検査
概要
深視力(しんしりょく)とは、物の遠近や奥行きを感じ取る力のことです。両目で見ると、左右の目に映る像にはほんの少しズレが生まれます。脳はそのわずかな違いをまとめて、「どちらが近いか、どれくらい離れているか」を判断しています。深視力検査は、この両目を組み合わせて使う力(両眼視:りょうがんし)がどのくらい働いているかを調べる検査です。検査では、器具をのぞいて棒の位置を合わせたり、専用の眼鏡をかけて図が浮き上がって見えるかを答えたりします。痛みはなく、多くの場合数分から30分ほどで終わります。
重要な事実
- 深視力は「二つの目を脳がまとめて使う力」であり、片方の目の視力が良くても低いことがあります。
- 検査は痛みがなく、特別な準備もほとんどいりません。眼鏡やコンタクトの情報は検査前に伝えましょう。
- 運転免許の更新時には深視力検査が行われ、とくに大型免許などでは重視されます。
とてもよく行われる検査です。眼科の一般検査、乳幼児健診や学校健診、運転免許の更新時など、さまざまな場面で実施されています。奥行きの感じ方に課題がある人も珍しくありません。
子どもから高齢者まで、幅広い年代が関係します。斜視(しゃし:目の向きがずれる状態)や弱視(じゃくし:片方の目の見え方が育ちにくい状態)のある子ども、左右の視力差が大きい人、白内障や緑内障のある高齢者、長時間の画面作業が多い人などが主な対象です。
症状
- 突然物が二重に見える、まぶたが下がる、ろれつが回らない、顔や手足の片側が動かない(脳卒中の可能性があります。すぐ119番へ)
- 突然、片方の目が見えなくなった、視野の一部が欠けた
- 目に強い衝撃を受けた、薬品や異物が入った
- 目の激しい痛みに、頭痛・吐き気・光がまぶしいが伴う(急性緑内障発作の可能性があります)
- ⚠数日以内に視界のかすみや二重視が進んでいる
- ⚠目の痛みや充血が続く
- ⚠頭痛を伴う目の不快感が続く
- ⚠急に目の向きがずれた、ものが二重に見えるようになった
一般的な症状
- 階段や段差でつまずきやすい、距離感がつかめない
- 車の車庫入れや車間距離の判断が苦手
- ボールをうまくキャッチできない、物を取ろうとして手がずれる
- 3D映画や3D映像が立体に見えにくい、見ると気分が悪くなる
- 目が疲れやすい、長時間見ていると頭が重い
- 物がときどき二重に見える(複視:ふくし)
子供の症状
- 階段の上り下りを怖がる、手すりを強く握る
- ボール遊びや自転車が極端に苦手
- コップをよくこぼす、物を取るときに手がずれる
- 斜視を指摘された、横目で見る、顔を傾けて見る
- 片方の目を隠すのを嫌がる、片目をつぶって見る
- 絵本や画面に顔を近づける、目を細める
高齢者の症状
- 段差や階段でつまずく、転びやすくなった
- 白内障などで視界がかすみ、奥行きがつかみにくい
- 夜間の運転が不安、駐車が苦手になった
- 目が疲れやすい、長時間の読書がつらい
- 物が二重に見えることがある
原因
主な原因
- 斜視:両目の向きが合わず、脳が二つの像を一つにまとめにくい状態
- 弱視:子どもの頃に片方の目の見え方が十分に育たなかった状態
- 不同視(ふどうし):左右の視力や眼鏡の度数の差が大きい
- 白内障・緑内障・網膜の病気などで、片方の見え方が悪くなっている
- 眼を動かす筋肉や神経の働きの異常
- 生まれつき両眼視の機能が育ちにくかった場合
- 眼鏡やコンタクトの度数が合っていない、装用が不適切
リスク要因
- 家族に斜視や弱視の人がいる
- 子どもの頃に斜視・弱視を指摘されたことがある
- 強い近視、左右の度数の差が大きい
- 加齢(白内障などの目の病気)
- 糖尿病などの全身の病気
- 眼のけがや手術の経験
- 長時間の近距離作業・画面作業
- 脳や神経の病気の既往
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に物が二重に見えるようになった
- 片方の目が見えにくくなった、視野が欠けてきた
- 頭痛や吐き気を伴う目の痛みがある
- 眼のけがをした、異物が入った
定期受診を予約すべき場合:
- 以前から距離感がつかみにくい、よく物にぶつかる
- 子どもが階段や球技を極端に嫌がる、斜視を指摘された
- 3D映像が立体に見えない
- 運転免許の深視力検査に不安がある、更新を控えている
- 高齢になり転倒が増えた、夜間の運転が不安
- 眼鏡を作り替えるタイミング、見え方の変化が気になる
診断
問診と、いくつかの簡単な検査で判断します。多くは痛みがなく、器具をのぞく、印を合わせる、図が浮き上がって見えるかを答える、といった内容です。所要時間は10〜30分程度のことが多いです。
行われる可能性のある検査
- 深視力検査(三桿法:さんかんほう):棒を前後に動かし、3本が同じ距離にそろったと感じたところで止める検査。運転免許の更新時に行われます
- 立体視検査(Titmus・TNO・Lang・Randot など):専用の眼鏡や図版を使い、図が浮き上がって見えるかを調べる検査
- 視力検査(裸眼と矯正の両方)
- 眼位検査(カバーテスト):目がずれていないかを調べる
- 眼球運動検査:目を動かす筋肉の働きをみる
- 両眼視機能検査:同時視・融像・立体視の段階を確認する
- 細隙灯顕微鏡検査・眼底検査:白内障や眼底の病気がないかを確認する
- 必要に応じて画像検査(CT・MRI)や血液検査
診察で予想されること
検査の前に、普段使っている眼鏡やコンタクトレンズの情報を伝えてください。検査の種類によってはコンタクトを外すことがあります。疲れていると結果が変わることがあるため、十分な睡眠をとり、検査前の長時間の画面作業は控えると安心です。結果はその日のうちに説明されることが多いです。
治療
治療は原因によって変わります。眼鏡やコンタクトレンズで見え方を整える、目の使い方を訓練する、必要なら手術で原因を取り除く、といった選択肢があります。深視力そのものを「鍛える」というより、見えにくさの原因に働きかけるのが基本です。
自宅でのセルフケア
- 眼鏡の度数が合っているかを定期的に確認する
- 画面作業は30分ごとに休憩し、遠くを眺める
- 室内の照明を適切にし、画面の反射やまぶしさを減らす
- 階段や段差のある場所では手すりを使う
- 運転時は車間距離を多めにとり、夜間や悪天候では無理をしない
- 十分な睡眠をとり、目の疲れをためない
- 子どもの場合は、気になる様子を保育園・学校と共有する
医療治療
原因に応じて、眼鏡・コンタクトレンズの調整、視能訓練(しのうくんれん:両目を協調して使う力を育てる訓練)、斜視に対する手術、白内障などの目の病気の治療、糖尿病などの全身の病気の管理などが行われます。訓練の効果は年齢や原因によって異なるため、眼科医や視能訓練士と相談しながら進めます。薬が必要と判断された場合は、医師から用途と注意点の説明があります。
手術が検討される場合
斜視が強い場合や、白内障・緑内障など手術で改善が見込める病気が原因の場合は、手術が検討されます。すべての人に必要なわけではなく、年齢・生活スタイル・両目の状態をふまえて眼科医と相談して決めます。
この病気と共に生きる
深視力に課題があっても、多くの人は工夫しながら安全に暮らしています。段差では手すりを使う、車間距離を多めにとる、スポーツは自分のペースで楽しむなど、生活の中で無理なく調整していくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 定期的な眼科受診を習慣にする
- 眼鏡・コンタクトレンズのケアと定期交換を欠かさない
- バランスのよい食事と適度な運動を心がける
- 禁煙を心がける(目の血管にも影響します)
- 紫外線対策(帽子・サングラス)を行う
- 転倒予防のための筋力づくり、家の中の段差や照明を見直す
- 画面の明るさと姿勢を調整する
食事と運動
特定の食べ物で深視力が良くなるという確実な根拠はありませんが、緑黄色野菜や魚などを含むバランスのよい食事は目の健康を支えます。ウォーキングなどの適度な運動は血流を保ち、糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながります。
精神的健康と心の健康
見えにくさは、運転や仕事、スポーツへの不安につながることがあります。とくに免許更新の前や、子どもの斜視を指摘されたときは心配になるものです。一人で抱え込まず、家族や医療者に話してください。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口や医療機関に相談してみましょう。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、子どもの頃の斜視・弱視を早く見つけて治療することが、両眼視を育てる大切なポイントです。大人は眼鏡の定期確認、目の病気の早期発見、生活習慣病の管理によって、見え方の変化を抑えられます。
検診プログラム
乳幼児健診での視覚検査、学校健診、運転免許更新時の深視力検査、眼科での定期検査がスクリーニングの機会になります。気になる症状があるときは、健診を待たずに受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 子どもの弱視・斜視が未治療のままになると、両眼視の機能が育ちにくくなる
- 距離感のずれから、転倒や運転時の事故のリスクが高まる
- 転倒によるけがや骨折
- 眼精疲労、頭痛、集中力の低下
- 原因となる白内障・緑内障などの病気が進行する
長期的な見通し
深視力の課題は、原因に応じて改善できることが多くあります。とくに子どもの斜視・弱視は、早く見つけるほどよい結果が期待できます。大人も眼鏡の調整や病気の治療で見やすくなる場合があります。不安を感じたら、早めに眼科に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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