便エラスターゼ
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
便中エラスターゼ(便中膵エラスターゼ)は、膵臓(すいぞう)がちゃんと働いているかを調べるための検査です。エラスターゼという酵素(こうそ)は膵臓から作られ、食べ物の消化を助けます。便(うんち)の中のエラスターゼの量が少ないと、膵臓の働きが弱っている可能性があります。この状態を「膵外分泌機能不全(すいがいぶんぴつきのうふぜん)」といいます。
重要な事実
- 便中エラスターゼ検査は、膵臓が消化酵素を十分に作れているかを調べる簡単な検査です。
- この検査は痛みがなく、ごく普通の便のサンプルを使います。
- 低い値は、慢性膵炎や嚢胞性線維症など、膵臓の病気のサインかもしれません。
- 治療には、足りない消化酵素を補う薬(消化酵素補充療法)が使われます。決まった薬の名前はここでは書きません。
便中エラスターゼが低くなる状態(膵外分泌機能不全)は、それほどまれではありません。特に慢性膵炎(まんせいすいえん)の患者さんでは多く見られます。
主に膵臓に障害がある人に影響します。例えば、長期間アルコールを多く飲む人、膵炎を繰り返す人、嚢胞性線維症の人、糖尿病の人、膵臓がんの人などに多く見られます。年齢では中年以降に多いですが、子どもの場合は嚢胞性線維症が原因となることがあります。
症状
- 突然の激しいみぞおちの痛み(背中に響く)
- 意識がもうろうとする
- 呼吸が苦しい
- 激しいおう吐やおう吐が止まらない
- ⚠2~3日以上続く激しい腹痛
- ⚠発熱をともなう腹痛
- ⚠血便が出た
- ⚠体重が急激に減っている
- ⚠水分が取れず、脱水症状(尿が少ない、めまい)
一般的な症状
- 油っぽい便(脂肪便:しぼうべん)が続く
- 便がゆるく、においが強い
- 体重が減る(食べているのに)
- お腹が張る、ガスが多い
- みぞおちや背中が痛む
- 下痢を繰り返す
- 疲れやすくなる(栄養不足のため)
子供の症状
- 体重が増えない、発育が遅れる(低身長)
- 便が油っぽくて悪臭が強い
- お腹がふくれて苦しそう
- せきや呼吸器の感染を繰り返す(特に嚢胞性線維症の場合)
高齢者の症状
- 意図しない体重減少
- 食欲がない、食後に膨満感
- 脂っこい食事が苦手になる
- 下痢と便秘を繰り返す
- 疲労感が強い
原因
主な原因
- 慢性膵炎(アルコールが原因になることが多い)
- 嚢胞性線維症(生まれつきの病気)
- 膵臓がん
- 膵臓の手術後
- 重度の急性膵炎
- 糖尿病(特に1型)
- セリアック病(グルテン過敏症)
- シャイ・ドレーガー症候群などのまれな病気
リスク要因
- 長期間の大量飲酒
- 膵炎の家族歴
- 胆石(たんせき)
- 高カルシウム血症や高脂血症
- 特定の薬の長期使用(医師に相談を)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急な強い腹痛がある
- 黄色くなる(黄疸)
- 高熱がある
- 血便や真っ黒な便が出る
- 意識がもうろうとする
定期受診を予約すべき場合:
- 油っぽい便が数週間以上続く
- 体重が減っているのに理由がわからない
- 慢性的なお腹の張りや下痢がある
- 家族歴に膵臓の病気がある
- 糖尿病のコントロールが悪くなった
診断
医師はあなたの症状を聞き、便中のエラスターゼを測定する検査を勧めることがあります。この検査は特別な準備は必要なく、少量の便を容器にとって提出するだけです。
行われる可能性のある検査
- 便中エラスターゼ検査(主な検査です)
- 血液検査(膵臓の炎症マーカーや栄養状態)
- 腹部超音波(エコー)やCT検査(膵臓の形を見る)
- 膵臓の機能を詳しく調べる特殊な検査(必要に応じて)
診察で予想されること
まずは診察で症状や生活習慣を詳しく聞かれます。その後、便のサンプルを採るための容器をもらい、自宅で便を少しだけ取って病院に提出します。結果は数日~1週間程度でわかります。もし値が低ければ、さらに詳しい検査で原因を調べます。
治療
治療の中心は、足りない消化酵素を薬で補うことです。これにより、食べ物をしっかり消化・吸収できるようになり、症状が改善します。また、原因となる病気(例:慢性膵炎や糖尿病)の治療も並行して行います。
自宅でのセルフケア
- 脂っこい食事をひかえ、消化の良いものを食べる
- 少しずつ、こまめに食事をとる(1回の量を減らして回数を増やす)
- アルコールは控える(特に原因がアルコールの場合)
- 禁煙する
- 十分な栄養をとるために管理栄養士に相談する
医療治療
消化酵素補充療法という治療が第一選択です。これは食中または食後に専用のカプセルを飲む方法です。量やタイミングは医師が個別に調整します。その他、ビタミン(特に脂溶性ビタミンA、D、E、K)の補給をすることもあります。インスリンが必要な糖尿病があれば、その治療も行います。原因疾患の治療(例:慢性膵炎の痛み治療、閉塞があれば内視鏡治療など)も行われます。
手術が検討される場合
膵臓にがんやのう胞、閉塞がある場合に手術が検討されることがあります。また、痛みが強く薬でコントロールできない慢性膵炎で、外科処置が必要になることもあります。
この病気と共に生きる
この状態は多くの場合、長く付き合っていくものです。しかし治療により症状は大きく改善します。消化酵素の薬を食事のたびに忘れずに飲むことが大切です。体調や便の様子を記録すると、医師との相談に役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい食生活を心がけ、栄養バランスを整える
- アルコールとたばこは避ける
- ストレスをためない工夫をする(趣味、軽い運動など)
- 主治医の指示に従って定期的に通院する
- 体重や栄養状態を定期的にチェックする
食事と運動
バランスの良い食事を基本に、脂質の摂取量に注意します。食事は消化酵素の薬と一緒にとるのが理想的です。脂溶性ビタミンが不足しないように、緑黄色野菜や適度な油脂をとりましょう。運動は体力が許す範囲で、ウォーキングなどの軽い運動から始めると良いです。
精神的健康と心の健康
慢性的な症状や長期的な治療は、気持ちの負担になることがあります。落ち込んだり不安を感じるのは自然なことです。そんな時は一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話しましょう。必要であれば心理カウンセリングも選択肢の一つです。
予防
慢性的な膵臓の機能低下は、ある程度予防できる部分もあります。アルコールを控える、禁煙する、健康的な食事を心がけることでリスクを減らせます。しかし、遺伝性の病気や膵臓がんなどは予防が難しいものもあります。早期発見・早期治療が大切です。
検診プログラム
一般の健康診断で便中エラスターゼが調べられることはほとんどありません。症状がある場合やリスクが高い人にのみ行われます。膵臓の病気が疑われる場合は、医師が適切な検査を判断します。
合併症
治療しない場合
- 栄養失調(特に脂溶性ビタミン不足)による骨粗しょう症や夜盲症(やもうしょう)
- 体重減少と筋力低下
- 免疫力の低下による感染症のリスク上昇
- 糖尿病の悪化
- 慢性の痛みや生活の質の低下
長期的な見通し
適切な治療を行えば、多くの人は症状が改善し、普段の生活に戻ることができます。消化酵素補充療法は非常によく効き、栄養状態も改善します。ただし、原因となる病気(慢性膵炎やがんなど)の進行を抑えるためには、定期的な経過観察と治療の継続が大切です。早期に治療を始めれば、合併症も防ぎやすくなります。希望を持って、医師と一緒に治療に取り組みましょう。
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最終更新: 2026年7月31日
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