便中カルプロテクチン検査(べんちゅうカルプロテクチンけんさ)
概要
便中カルプロテクチン検査は、便(うんち)の中に含まれる「カルプロテクチン」というたんぱく質の量を測る検査です。カルプロテクチンは、体の中で炎症が起きたときに白血球の一種(好中球)から出てくる物質で、腸に炎症があると便の中に多く出てきます。つまりこの検査は、おなかの不調の原因が「腸の炎症」なのか、それとも炎症のない「過敏性腸症候群(IBS)」のような状態なのかを、体を傷つけずに大まかに見分ける手助けをしてくれます。注射も麻酔もいらない、便を少量とるだけのやさしい検査です。
重要な事実
- 便を少量とって調べるだけの、痛みのない検査です。
- 腸に炎症があると数値が高くなり、炎症がないときは低く保たれます。
- 数値が高いからといって、それだけで病気が決まるわけではありません。必要に応じて内視鏡などで詳しく調べます。
- 腹痛や下痢が続く人の検査の進め方を決めるのに役立ちます。
ここ20年ほどで世界で広く使われるようになり、日本でも消化器の外来でよく行われる検査です。入院や前処置(腸をきれいにする準備)が不要なため、子どもや高齢の方でも受けやすいのが特長です。
腹痛・下痢・血便などが続く人なら、年齢を問わず受ける可能性があります。子どもの繰り返すおなかの痛みの原因を調べるときにも使われ、つらい検査を避けられることがあります。
症状
- 激しい腹痛で動けない、体を丸めても楽にならない
- 大量の血便が出る、トイレが真っ赤になる
- 顔面が真っ青で冷や汗が出る、意識がもうろうとする
- 高熱と激しい腹痛が同時にあり、ぐったりしている
- おなかが板のように硬く、触ると痛がる
- ⚠血便が続いている
- ⚠38度以上の発熱とおなかの痛みがある
- ⚠嘔吐や下痢で水分がとれず、尿がほとんど出ない
- ⚠体重が短期間に減り続けている
- ⚠強い腹痛が数時間続き、良くならない
一般的な症状
- 1か月以上続く腹痛やおなかの張り
- 何度も繰り返す下痢、または下痢と便秘をくり返す
- 便に血が混じる、粘液(ねばねばしたもの)がつく
- トイレに何度も行きたくなる、残便感がある
- 食欲が落ちる、体重が少しずつ減る
- 疲れやすい、元気が出ない
子供の症状
- 繰り返すおなかの痛みで学校を休みがちになる
- 長く続く下痢、または便がゆるい状態が続く
- 体重が増えない、身長の伸びが悪い
- 肛門の周りが痛い、腫れている、おむつかぶれのように見える
- 機嫌が悪い、食欲がない、夜眠れない
高齢者の症状
- 急に始まった下痢や便通の変化
- 血便、黒い便
- 体重減少、貧血を指摘された
- 発熱をともなうおなかの痛み
- 持病の薬(痛み止めなど)を長く飲んでいる
原因
主な原因
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に慢性的な炎症が起きる病気)
- 細菌やウイルスによる腸の感染症(食あたりなど)
- 痛み止めの一部(NSAIDs)を長く使っていることによる腸の炎症
- 大腸のポリープや大腸がんなど、腸に変化がある場合
- 憩室炎(腸の壁にできた小さなふくらみに炎症が起きる)
- 逆に、過敏性腸症候群(IBS)や機能性のおなかの不調では、通常は数値が低いままです
リスク要因
- 家族に炎症性腸疾患の人がいる
- 若い年齢で発症することが多いが、どの年齢でも起こる
- 喫煙(クローン病との関連が知られています)
- 痛み止めの一部を長期間、頻繁に使っている
- 海外渡航歴や、同じ食事を食べた人に同じ症状が出ている
- 強いストレスや睡眠不足が症状を悪化させることがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血便が出た、便が黒い
- 高熱とおなかの強い痛みがある
- 水分がとれないほどの嘔吐や下痢がある
- 急に体重が減っている
定期受診を予約すべき場合:
- 下痢や腹痛が1か月以上続いている
- 便通の状態が以前と変わったと感じる
- トイレに何度も行く、残便感がある
- 家族に炎症性腸疾患の人がいて、自分も気になっている
- 症状は軽いが、何度も繰り返している
診断
この検査は「診断そのもの」ではなく、診断の手がかりを集めるための検査です。医師は問診(症状の経過、便の回数や性状、薬の使用、家族歴)、診察、血液検査などと組み合わせて総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 便中カルプロテクチン検査(自宅で採便し、提出します)
- 血液検査(炎症の程度、貧血、栄養状態などを確認)
- 便の細菌検査やウイルス検査(感染性の下痢が疑われるとき)
- 便潜血検査(便に血が混じっていないかを調べる)
- 腹部の超音波検査やCT検査
- 大腸内視鏡検査(必要がある場合。腸の粘膜を直接見て、組織を少しとって調べます)
診察で予想されること
自宅や病院で、便を専用の容器に少量とって提出します。容器は清潔に扱い、便が尿やトイレの水と混ざらないようにしてください。生理中の血液が混ざると数値に影響することがあるため、時期について医師や看護師に相談してください。結果は検査機関にもよりますが、数日から2週間ほどでわかることが多いです。痛み止めの一部は数値に影響するので、自己判断で中止せず、飲んでいる薬を医師に伝えてください。
治療
便中カルプロテクチン検査は「調べる検査」であり、それ自体が治療ではありません。結果に応じて、次のステップが変わります。数値が低ければ、過敏性腸症候群など炎症のない状態を考え、食事や生活の工夫や症状に合わせたお薬で様子を見ることがあります。数値が高い、または症状が強い場合は、内視鏡などで原因を詳しく調べ、見つかった病気に合わせた治療を始めます。
自宅でのセルフケア
- 症状と便の状態(回数、形、色、血が混じっていないか)を簡単な日記につける
- 水分をこまめにとり、脱水を防ぐ
- 食事は決まった時間に、無理のない範囲でバランスよくとる
- 睡眠をしっかりとり、強いストレスをため込まないようにする
- 市販の痛み止めを長く使い続ける前に、医師や薬剤師に相談する
- 検査結果の紙は保管し、次の受診のときに持っていく
医療治療
原因に合わせた治療を行います。腸の炎症が確認された場合は、炎症を抑えるお薬、免疫の働きを調整するお薬、腸内環境を整えるお薬などを、症状や状態に合わせて組み合わせます。感染が原因の場合は、原因に応じた対応をします。いずれも医師が状態を見ながら決めるもので、自己判断で薬を始めたりやめたりしないでください。具体的な薬の種類や量については、必ず主治医や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
多くの場合は手術は必要ありません。ただし、炎症性腸疾患で腸が狭くなって食べ物が通らない、穴が開く、膿(うみ)がたまる、出血が止まらないといった場合には、手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
検査をきっかけに「自分のおなかの傾向」を知ることは、毎日の暮らしを整える助けになります。症状が落ち着いているときと悪いときの違いを記録しておくと、受診のときに役立ちます。検査結果はあくまで一枚のカードです。数値だけで一喜一憂せず、症状と合わせて主治医と一緒に考えていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 食事の時間をできるだけ一定にし、よくかんで食べる
- 便意を我慢しすぎない
- 適度な運動を習慣にする(散歩など無理のない範囲で)
- 禁煙を考え、節酒を心がける
- 体調の変化を記録する習慣をつける
- 受診の予定を守り、気になる症状は次回まで待たずに相談する
食事と運動
食事は「これを必ず食べる・絶対に避ける」という画一的なものはありません。自分にとっておなかが張りやすい食べ物、調子がよい食べ物を見つけることが大切です。一度にたくさん食べず、少量ずつ複数回に分けると楽なこともあります。運動は散歩や軽いストレッチなど、続けられるものを無理のない範囲で行いましょう。食事や運動の具体的な内容は、管理栄養士や主治医に相談すると安心です。
精神的健康と心の健康
おなかの不調が長く続くと、「またトイレが近くなるのでは」「検査で何か見つかったらどうしよう」といった不安を抱えやすくなります。とくに検査結果を待つ間は落ち着かないものです。そんなときは一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、医療機関の相談窓口や、お住まいの地域の保健所、いのちの電話などの相談サービスを利用できます。気持ちの面でもサポートを受けられますので、どうか遠慮なく声をかけてください。
予防
この検査そのものを「予防する」という考え方はありません。大切なのは、おなかの不調を放っておかず、気になったときに相談することです。炎症性腸疾患などの発症を完全に防ぐ方法はまだわかっていませんが、禁煙、バランスのよい食事、十分な睡眠、市販の痛み止めの使いすぎに気をつけることが、腸の健康を保つ助けになると考えられています。
ワクチン
この検査に直接関係するワクチンはありません。ただし、炎症性腸疾患などの治療で免疫の働きに影響するお薬を使う場合、感染症を防ぐためのワクチンがすすめられることがあります。接種歴については主治医に相談してください。
検診プログラム
便中カルプロテクチン検査は、大腸がん検診の代わりになるものではありません。日本では自治体による大腸がん検診(便潜血検査)が行われています。血便や便通の変化があるときは、検診を待たずに医療機関を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 腸の炎症が続くことで、貧血や栄養不足が進むことがあります
- 下痢や腹痛が長引き、日常生活や学校・仕事に支障が出ることがあります
- 炎症性腸疾患の場合、腸が狭くなる、穴が開く、膿がたまるなどの合併症が起こることがあります
- 原因が別にあるのに気づかず、受診が遅れることがあります
- 痛み止めの使いすぎによる腸の炎症が悪化することがあります
長期的な見通し
この検査のよいところは、体に負担をかけずに腸の状態の手がかりが得られることです。数値が低ければ安心につながり、高ければ必要な検査や治療に早く進めます。多くのおなかの不調は炎症のないタイプで、生活の工夫で落ち着きます。炎症性の病気が見つかった場合も、近年は治療の選択肢が増えており、落ち着いた状態を長く保てる方がたくさんいます。不安なときは、一人で抱えずに主治医に相談しながら進めていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.