胎児心エコー検査(おなかの赤ちゃんの心臓の超音波検査)
概要
胎児心エコー検査は、おなかの中の赤ちゃん(胎児)の心臓を、超音波(人には聞こえない高い音の波)を使ってくわしく調べる検査です。妊娠中に受けるふだんの超音波検査よりも、心臓の形や大きさ、血液の流れ、心臓の動きをじっくり見ることができます。おなかの上から機械を当てるだけで、痛みはなく、放射線(レントゲンのような被ばく)も使いません。赤ちゃんにもお母さんにも体の負担が少ない検査です。
重要な事実
- おなかの上から超音波を当てるだけの、痛みのない検査です。放射線は使いません。
- 多くは妊娠18〜22週ごろに行われ、必要に応じて妊娠後期にもう一度行うことがあります。
- 検査には30分から1時間ほどかかることがあります。赤ちゃんの向きによっては、日を改めて行うこともあります。
- 胎児の心臓を専門に見る医師(産婦人科医や小児循環器医など)が担当することが多い検査です。
- この検査は「病気を探すため」だけでなく、赤ちゃんの心臓が順調であることを確かめるためにも行われます。
この検査は、すべての妊婦さんが必ず受けるものではありません。ふだんの超音波検査で心臓の様子が気になったときや、ご家族の病史など心配な点があるときに行われます。なお、生まれつきの心臓の病気(先天性心疾患)は、およそ100人に1人くらいの割合で見られると言われており、決してめずらしいものではありません。
妊娠中の方と、おなかの中の赤ちゃんが対象です。次のような点があると、医師から検査をすすめられることがあります。
症状
- 大量の出血がある、または出血が止まらない
- がまんできないほど激しいおなかの痛みがある
- 意識がもうろうとする、けいれんが起きた
- 破水した可能性があり、おなかの張りや痛み、発熱もある
- 胎動が急にまったく感じられなくなった
- これらの症状があるときは、ためらわずに119番へ電話してください。同時に、かかりつけの産院・病院にも連絡しましょう。
- ⚠胎動がいつもより明らかに少ない、と感じる
- ⚠急に体がむくむ、ひどい頭痛、目がチカチカする(妊娠高血圧症候群のサインかもしれない症状)
- ⚠38℃以上の発熱がある
- ⚠水のようなおりものが急に増えた
- ⚠腹痛やおなかの張りが繰り返し続く
- ⚠これらは当日中に産院・病院へ相談してください。夜間や休日でも、まずは産院の連絡先に電話しましょう。
一般的な症状
- この検査は「症状があって受けるもの」ではなく、医師の判断で行う検査です。次のような理由ですすめられることがあります。
- ふだんの超音波検査で、赤ちゃんの心臓の形や拍動に気になる点を指摘された
- ご家族やご自身に生まれつきの心臓の病気がある人がいる
- お母さんに糖尿病やてんかん、自己免疫の病気などがある
- 妊娠中に飲んだお薬や、かかった感染症について確認したいことがある
- 赤ちゃんの心臓の不整脈(脈の乱れ)が疑われた
- 染色体の異常(ダウン症など)が疑われたり、確定したりした
- 一卵性の双子など、多胎(赤ちゃんが2人以上)の妊娠である
子供の症状
- この検査はおなかの中の赤ちゃんが対象なので、生まれた後の子どもが受ける検査ではありません。
- 出生後に心臓の詳しい検査が必要になった場合は、小児科で別の超音波検査(心エコー検査)などを行います。
高齢者の症状
- 対象は妊娠中の方と胎児です。年齢が高い妊婦さんでは、染色体の異常や心臓の病気の可能性がやや高くなることがあるため、検査をすすめられる場合があります。
- ただし、年齢だけで「異常がある」と決まるわけではありません。心配な点があれば、遠慮なく産婦人科の医師にたずねてください。
原因
主な原因
- 生まれつきの心臓の病気の多くは、はっきりした原因が分かりません。お母さんやご家族の「何かのせい」ではないことがほとんどです。
- 染色体の異常や遺伝子の変化が関係していることがあります。
- お母さんの糖尿病や、妊娠初期にかかった感染症(風疹など)が関係することがあります。
- 妊娠中に服用した一部のお薬が関係する場合もありますが、多くのお薬は医師の指示どおりに使えば問題ありません。自己判断で中断しないでください。
- 多くの場合は、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。
リスク要因
- ご家族やご自身に生まれつきの心臓の病気がある
- お母さんに糖尿病、てんかん、自己免疫の病気などがある
- 妊娠初期に風疹などの感染症にかかった
- 妊娠中に特定のお薬を使っている(自己判断でやめず、必ず医師に相談してください)
- 体外受精などの不妊治療で妊娠した
- 双子など多胎の妊娠である
- 妊娠中の喫煙や飲酒
- 妊娠中の肥満や、年齢が高い妊娠
- これらは「可能性がやや高くなる」という意味で、当てはまっても必ず病気になるわけではありません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 検査の結果を聞いてから、眠れないほど不安が強いとき(早めに産院の助産師や医師に相談してください)
- 検査後に発熱、出血、強い腹痛、破水のようなおりものがあったとき
- 胎動が急に減った、または感じられなくなったとき
定期受診を予約すべき場合:
- 医師から胎児心エコー検査をすすめられたとき(日程と内容を確認しましょう)
- 検査の前に、何のために行うのか、結果がどう使われるのかを知りたいとき
- 検査の結果について、もう少し詳しく説明してほしいとき
- 出産する場所や方法について相談したいとき
- ふだんの健診で気になることを聞きそびれたとき
診断
胎児心エコー検査は、お母さんがベッドに横になった状態で、おなかの上にゼリーをぬり、超音波の機械(プローブ)を当てて行います。画面に映る赤ちゃんの心臓を、角度を変えながらいろいろな方向から観察し、心臓の部屋の大きさ、弁の形、血液の流れ、心臓の動きや脈の速さを確認します。痛みはありません。妊娠初期など、赤ちゃんが小さい時期には、膣から機械を入れて調べる方法(経腟超音波検査)を使うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 経腹超音波検査(おなかの上から当てる、ふつうの方法)
- 経腟超音波検査(妊娠初期など、赤ちゃんが小さいとき)
- カラードップラー検査(血液の流れを色で見る方法)
- Mモード検査(心臓の動きや脈の速さを測る方法)
- 通常の妊娠健診の超音波検査(スクリーニング。まずここで気になる点が見つかることが多いです)
- 必要に応じて、染色体の検査や遺伝カウンセリングの相談
診察で予想されること
検査の予約は、ふだんの健診と同じ産院で行われることが多いです。当日は、おなかを出しやすい服装で行くと楽です。検査中は横になったまま、ときどき息を止めたり、体の向きを変えたりをお願いされることがあります。赤ちゃんの向きによっては心臓がよく見えず、時間がかかったり、別の日にもう一度行ったりすることがあります。これは異常があるという意味ではありません。結果は、その日のうちに大まかな説明があることもあれば、専門の医師の判定を待って後日詳しく説明されることもあります。一人で聞くと不安が強い場合は、パートナーやご家族に同席してもらうとよいでしょう。
治療
胎児心エコー検査は「調べるための検査」であり、それ自体が治療ではありません。大切なのは、結果をもとに、妊娠中の過ごし方、出産する場所や方法、生まれた後のケアをあらかじめ話し合っておくことです。心臓に問題が見つからない場合でも、赤ちゃんの成長に合わせてふだんの健診を続けます。
自宅でのセルフケア
- 検査の前に、聞きたいことをメモしておくと、短い診察時間でも聞きやすくなります。
- 検査の前に特別な食事制限や安静は必要ありません。ふだんどおりで大丈夫です。
- 可能ならパートナーやご家族に同席してもらい、説明を一緒に聞き、メモを取ってもらいましょう。
- 結果を聞いた日は、すぐに全部を理解しようとしなくて大丈夫です。家に帰ってから整理して、次の健診でまた質問してください。
- 検査の結果をインターネットで調べて、かえって不安になることもあります。心配なときは、まず産院のスタッフに確かめましょう。
医療治療
検査で心臓の病気が疑われた場合は、産婦人科、小児循環器科、新生児科などのスタッフがチームになって関わります。具体的には、妊娠中の定期的な観察、出産する病院の選び方(赤ちゃんの治療ができる設備のある病院かどうか)、出産の方法や時期の相談、生まれた直後の処置の準備などが話し合われます。生まれた後に治療が必要になる場合もありますが、その内容は赤ちゃんの状態によって大きく変わります。お薬の名前や量、治療の詳しい進め方については、この記事ではお伝えできません。必ず担当の医師に確認してください。
手術が検討される場合
手術が必要かどうかは、見つかった心臓の病気の種類と程度によって決まります。多くは生まれた後、状態を詳しく調べてから方針が決まります。出生前に手術の話をされた場合でも、まずは担当チームとじっくり相談しながら進めていくのが一般的です。
この病気と共に生きる
検査を受けた後は、結果が気になって毎日が落ち着かないこともあるかもしれません。そんなときは、ふだんの生活をできるだけ今までどおり続けることが助けになります。健診の予定をカレンダーに書き込み、質問はメモにためておき、次の診察でまとめて聞く。この繰り返しが、気持ちを落ち着ける土台になります。
生活習慣のアドバイス
- 妊娠中は無理のない範囲で体を動かし、十分な睡眠をとりましょう。
- 喫煙や飲酒は避け、受動喫煙にも気をつけましょう。
- 体調の変化(出血、腹痛、胎動の変化、発熱など)は、自己判断せず産院に連絡しましょう。
- お薬は、妊娠中に使えるかどうかを必ず医師や薬剤師に確認してから使いましょう。
- ひとりで抱え込まず、パートナーや家族、友人、助産師など、話せる相手を増やしておきましょう。
食事と運動
特別な食事制限は必要なく、バランスのよい食事を心がけることが基本です。厚生労働省も、妊娠を考えている方や妊娠初期の方に葉酸を含む食事をすすめています。サプリメントを使う場合は、妊娠中に適したものを医師や薬剤師に確認してください。運動は、散歩など無理のない範囲で行い、医師から安静の指示がある場合はそれに従ってください。
精神的健康と心の健康
赤ちゃんの心臓の検査は、結果を待つ間も、結果を聞いた後も、強い不安や落ち込みを伴うことがあります。眠れない、涙が止まらない、何も手につかない、といった状態が続くときは、がまんせずに産院の助産師や医師に話してください。妊娠中の心の不調は珍しいことではなく、相談することで楽になることがあります。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちが浮かんだときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
生まれつきの心臓の病気の多くは、はっきりした原因が分かっておらず、完全に防ぐことは難しいのが現実です。ただし、妊娠前からできる工夫はあります。持病がある方は妊娠前から主治医と相談して状態を整えておく、妊娠中は喫煙・飲酒を避ける、お薬は自己判断で始めたりやめたりしない、といったことが大切です。
ワクチン
風疹は、妊娠初期にかかると赤ちゃんの心臓などに影響することがあります。妊娠を考えている段階で、風疹の抗体があるかを確認し、必要なら妊娠前にワクチンを接種しておくことがすすめられています(妊娠中は接種できません)。その他のワクチンについては、妊娠の時期に合わせて医師に相談してください。
検診プログラム
妊娠中の定期健診での超音波検査が、赤ちゃんの様子を知る最初の手がかりになります。医師が必要と判断した場合に胎児心エコー検査が行われます。検査を希望するか迷うときは、その地域の産院や自治体の妊婦健診の案内を確認し、担当医に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 心臓の病気が出生前に見つからないと、生まれた後に息苦しさや肌の色の変化などで初めて気づかれることがあります。
- 重症の場合は、出生直後の処置が遅れる可能性があります。
- 出生前に分かっていれば、治療できる病院で出産するなど、準備を整えておくことができます。
- 検査を受けずにいたからといって、必ずしも重い結果になるわけではありません。あくまで「準備できる」ことの意味が大きい検査です。
長期的な見通し
多くの赤ちゃんでは、検査で心臓に問題は見つかりません。見つかった場合でも、医療は年々進歩しており、多くの子どもたちが治療や経過観察を経て、学校生活や成長を楽しんでいます。出生前に状態を知っておくことは、ご家族にとっても赤ちゃんにとっても、安心して出産を迎えるための力になります。心配なことは、どうか一人で抱えず、担当のチームに何度でも相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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