FISH検査(蛍光in situハイブリダイゼーション)とは
概要
FISH検査(フィッシュ検査)は、細胞の中にある「遺伝子」を調べる検査です。遺伝子は、体をつくる設計図のようなもの(DNA)の一部で、私たちの体質や細胞の動き方に大きく関わっています。FISH検査では、調べたい遺伝子にぴったりくっつく「目印」を蛍光色素(光る色)でつけて、顕微鏡で見えるようにします。そして、その遺伝子が多すぎないか、少なすぎないか、場所が入れ替わっていないかを確かめます。体の中に針や管を入れて直接見る検査ではなく、採血や組織の一部など、取り出した「検体(けんたい)」を検査室で調べるタイプの検査です。
重要な事実
- 採血や、組織のごく一部(生検=せいけん)などから調べられます。体を大きく伤つける検査ではありません。
- 遺伝子が「増えすぎている」「欠けている」「場所が入れ替わっている」といった変化を見つけるのが得意な検査です。
- 結果が出るまで数日から2週間ほどかかることが多く、施設によって違います。
- FISH検査ひとつで診断が決まるわけではなく、病理検査や画像検査などと組み合わせて判断されます。
ここ20年ほどで広く使われるようになった、比較的よく行われる検査です。特に「がん」の分野で、治療方針を決めるための大切な情報として使われることが増えています。
がんの疑いがある方や、血液のがん(白血病・リンパ腫など)が疑われる方に多く行われます。そのほか、生まれつきの体の特徴や発達の遅れの原因を調べるとき、流産の原因を調べるとき、妊娠中の赤ちゃんの状態を調べるときなどにも行われることがあります。年齢や性別を問わず受ける可能性のある検査です。
症状
- 検査や検体採取のあとに、息が苦しい・胸が強く痛む
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が弱い
- 採取した部位や傷口から血が止まらない、大量に出血している
- 顔色が真っ青で冷や汗がひどい、立てないほどのめまいがある
- 高熱と強い寒気が同時にあり、ぐったりしている
- ⚠検体を採った部位が、赤く腫れて熱を持ち、痛みが強くなってきた(感染の可能性)
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠出血が少量でもだらだらと続いている
- ⚠強い吐き気・嘔吐で水分がとれない
- ⚠検査や結果の説明を受けてから、強い不安や動悸、眠れない状態が続いている
一般的な症状
- FISH検査そのものには、痛みや発熱などの「症状」はありません。検査を受けるきっかけになる所見として、次のようなものがあります。
- しこりや腫れ、体重の減少など、がんが疑われる症状や所見がある
- 血液検査で、白血球や赤血球の数に説明のつかない異常が見つかった
- 画像検査(レントゲン・CT・MRI・超音波など)で、詳しく調べたい影や腫れが見つかった
- 医師が、特定の遺伝子の変化を疑い、治療法の選択のために確認したいと考えた
子供の症状
- 小児では、生まれつきの体の特徴や発達の遅れ、心臓などの形の異常の原因を調べるために行われることがあります。
- 小児の血液のがん(白血病など)の診断や治療方針の決定に使われることもあります。
- 子ども自身に「FISH検査の症状」があるわけではありません。検査のための採血や組織採取のとき、痛みや不安を感じることがあります。
- 検査の前には、子どもにわかりやすい言葉で説明し、怖がらせない工夫をしてもらえることを医療スタッフに伝えておくと安心です。
高齢者の症状
- 高齢者の場合、がんで「自分に合った治療を選ぶ」ための検査として行われることが多くなります。
- 腎臓や肝臓の働き、心臓の状態によっては、検体の取り方(麻酔の量や方法など)を工夫する必要があります。
- 服用中の薬(特に血をさらさらにする薬)がある場合は、必ず事前に医師・薬剤師に伝えてください。
- 検査の説明は、難聴や目の見えにくさがあっても理解しやすいよう、ゆっくり説明してもらうようお願いしてかまいません。
原因
主な原因
- FISH検査は「原因を探す」ための検査でもあります。この検査で見つかる主な変化は次のとおりです。
- 遺伝子の増幅(ぞうふく):ある遺伝子のコピー数が異常に増えている状態。がんの性質と関係することがあります。
- 転座(てんざ):染色体の一部が切れて、別の場所にくっついてしまう状態。血液のがんでよく見られます。
- 欠失(けっしつ):遺伝子や染色体の一部が失われている状態。
- 染色体の数の変化:特定の染色体が1本多い、少ないといった状態。
- こうした変化は、生まれつき持っているもの(親から受け継いだもの、受精の前後におきたもの)と、生まれたあとに体の細胞の中で起きるもの(後天的なもの)の両方があります。後天的な変化は、年齢とともに少しずつ起こりうるもので、誰かのせいではありません。
リスク要因
- 検査そのものの危険性はとても低いとされています。
- 検体の取り方によって、わずかなリスクがあります。採血では内出血や軽い痛み、組織を採る生検では出血・感染・痛みがごくまれに起こります。
- 妊娠中に羊水(ようすい)を採って調べる場合などは、ごくわずかに流産のリスクが上がることが知られています。医師から詳しい説明を受けてください。
- 血をさらさらにする薬を飲んでいる方、アレルギーがある方、妊娠の可能性がある方は、事前に必ず伝えてください。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 検体を採った部位の腫れ・赤み・痛みが強くなった、膿のようなものが出てきた
- 38度以上の発熱、または強い寒気がある
- 出血が止まらない、またはだらだら続く
- 息苦しさ、胸の痛み、動悸が強い
- 検査結果を聞いたあと、眠れない・食べられない・涙が止まらない状態が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 検査の前に、検査の目的・方法・結果がわかるまでの期間をもう一度確認したい
- 服用している薬、サプリメント、アレルギー、妊娠の可能性を伝え忘れた
- 結果の紙に書かれている言葉の意味がわからない
- 結果が「陰性」「陽性」だった意味や、次に何をするのかを知りたい
- セカンドオピニオン(別の医師の意見)を聞いてみたい
診断
FISH検査は、それ自体が「診断のための検査」のひとつです。医師が、症状・診察・画像検査・血液検査などの結果から「特定の遺伝子の変化を確かめたい」と考えたときに計画されます。目的に合わせて、血液・組織の一部・骨髄(こつずい)・尿・羊水など、調べやすい検体が選ばれます。
行われる可能性のある検査
- 採血:腕の静脈から少量の血を採ります。最も負担の少ない方法のひとつです。
- 組織生検(せいけん):内視鏡や細い針を使って、腫れている部分の組織をごく小さく採ります。局所麻酔を使うことが多く、日帰りで行われることもあります。
- 骨髄穿刺(こつずいせんし):腰の骨などから骨髄液を採ります。血液のがんを調べるときに行われ、局所麻酔をします。
- 羊水穿刺(ようすいせんし)・絨毛(じゅうもう)採取:妊娠中に赤ちゃんの細胞を調べるときの方法です。専門の施設で行われます。
- 尿検査:膀胱(ぼうこう)のがんが疑われるときなどに、尿の中の細胞を調べます。
- FISH以外の検査との組み合わせ:病理検査(細胞や組織の形を見る)、免疫染色(たんぱく質の目印を見る)、PCR検査や遺伝子パネル検査(別の方法で遺伝子を読む)などと一緒に判断されます。
診察で予想されること
検査の内容によって所要時間は変わります。採血なら数分、組織を採る場合は10〜30分ほどかかることが多く、痛みを和らげる麻酔を使うことがあります。検体を採ったあとは、しばらく安静にして、出血や気分の悪さがないか確認します。結果が出るまでは数日から2週間ほどかかることが多く、その間に不安な気持ちになるのは自然なことです。結果は医師から直接、紙の結果とあわせて説明されるのが一般的です。ひとりで聞きに行くのが心配なときは、家族や信頼できる人に一緒に来てもらうと安心です。
治療
FISH検査は「治療」ではなく「調べる」ための検査です。ただし、結果はその後の治療の選び方に大きく関わります。たとえば、ある遺伝子の変化があるかないかで、効きやすい治療の種類が変わることがあります。つまりFISH検査は、治療を「あなたに合う方法」に近づけるための地図のような役割をします。
自宅でのセルフケア
- 検査の前に、絶食(食事をとらない)などの指示があれば必ず守ってください。
- 飲んでいる薬・サプリメント・健康食品は、すべて医師と薬剤師に伝えてください。自己判断で中止しないでください。
- 妊娠の可能性があるときは必ず事前に伝えてください。
- 組織を採ったあとは、指示された時間だけ安静にし、激しい運動や長風呂は避けましょう。
- 結果を待つ間は、考えすぎて眠れなくならないよう、決まった心配の時間を短く区切る、軽い散歩をするなど、気持ちの切り替えを意識してみてください。
- 結果の説明は、メモを取るか、家族や信頼できる人に一緒に聞いてもらうと、あとで整理しやすくなります。
医療治療
FISH検査の結果は、治療方針を話し合う材料になります。治療には大きく分けて、手術、放射線療法、そして薬による治療(抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬、免疫を利用した治療など)があります。どの方法を選ぶかは、がんの種類や広がり、遺伝子の変化、年齢や体力、生活の希望などをふまえて、主治医と一緒に決めていきます。具体的な薬の名前や量については、必ず主治医・薬剤師から説明を受けてください。この記事では特定の薬をおすすめすることはできません。
手術が検討される場合
FISH検査そのものは手術ではありません。ただし、検査の結果をふまえて「手術で取り除くのがよいかどうか」を話し合うことがあります。手術が必要かどうかは、病変の場所や大きさ、広がり、体の状態によって変わります。納得して決められるよう、手術の目的(治すためか、症状をやわらげるためか)を医師に確認しておくとよいでしょう。
この病気と共に生きる
検査を受けたあとの日常は、ほとんどの場合ふだんと変わりません。採血のあとは少し腕が重い程度、組織を採ったあとは数日、軽い痛みや内出血が残ることがあります。結果を待つ期間は、どうしても頭から離れないものです。「わからない期間」をどう過ごすかをあらかじめ決めておくと、気持ちが少し楽になります。
生活習慣のアドバイス
- 検査のあと1〜2日は、重いものを持つ・激しい運動をするなど、体に負担のかかることは控えめにしましょう。
- 傷口は清潔に保ち、医師の指示どおりに保護してください。
- 睡眠をしっかりとることは、心と体の回復に役立ちます。
- 結果を待つ間に、インターネットの情報を夜中まで見続けると不安が強くなることがあります。情報を見る時間を決めておくとよいでしょう。
- 信頼できる人に、気持ちを話せる時間をつくりましょう。
食事と運動
特別な食事制限が必要になるのは、特定の治療を受けている場合などに限られます。検査だけを受ける場合は、ふだんどおりの食事でかまいません(絶食の指示があるときは除きます)。運動も、体調がよければ軽い散歩などから再開して大丈夫です。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動は、治療を受けるときの体力づくりにも役立ちます。気になることは主治医や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
検査結果を待つ時間や、結果を聞いたあとの気持ちの揺れは、とても自然なことです。不安、怒り、悲しみ、涙が出る、眠れない、頭が回らない、といった反応は、誰にでも起こります。これは弱さではなく、大切なことに向き合っている証拠です。気持ちがつらい状態が2週間以上続くときや、日常生活が保てないときは、医療スタッフに遠慮なく話してください。必要に応じて、専門の相談窓口や心のケアを紹介してもらえます。ひとりで抱え込まないでください。
予防
FISH検査は「病気になるのを防ぐ検査」ではありません。遺伝子の変化そのものを完全に防ぐことはできませんが、たばこを吸わない、節酒する、適正体重を保つ、定期的に検診を受けるといった生活習慣は、がんをはじめとする病気のリスクを下げる助けになります。また、必要なときに必要な検査を受けることは、病気を早く見つけて早く対応する「予防的な行動」といえます。
検診プログラム
日本では、厚生労働省の指針に基づいて、自治体が各種のがん検診(大腸がん・胃がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんなど)を実施しています。対象年齢や間隔は自治体によって異なるため、お住まいの地域の案内をご確認ください。FISH検査は検診として行うものではなく、症状や所見があって医師が必要と判断したときに行う検査です。検診で異常を指摘された場合は、自己判断せず医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- FISH検査を受けずにいると、遺伝子の変化に合った治療を選べず、治療の開始が遅れることがあります。
- 特にがんの分野では、遺伝子の変化を知ることが「効きやすい治療を選ぶ」近道になることがあります。
- 不安や疑問を抱えたまま過ごすことで、眠れない、食欲が落ちるなど、心と体の負担が大きくなることがあります。
- 検査を受けないこと自体が体を傷つけるわけではありません。迷っているときは、その気持ちも含めて医師に相談してください。
長期的な見通し
FISH検査は、あなたに合った医療を選ぶための大切な道具です。結果がどうであっても、それは「終わり」ではなく「これからの方針を決めるための情報」です。近年は検査の精度が上がり、治療の選択肢も増えています。わからないこと、不安なことを一つずつ医師と共有しながら進むことで、納得のいく道を選びやすくなります。希望を持ちながら、あなたのペースで進んでください。
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最終更新: 2026年11月3日
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