胃排泄シンチグラフィ(胃排出能検査)— 胃から食べ物が送り出される速さを調べる検査
概要
胃排泄シンチグラフィ(別名:胃排出能検査)は、食べ物が胃から小腸へどれくらいの速さで送り出されているかを調べる検査です。少量の放射性の目印(トレーサー)を混ぜた検査食を食べ、そのあと専用のカメラの前で何回か写真を撮ります。目印が胃の中にどれだけ残っているかを時間ごとに見ることで、胃の動きが「ふつう」「遅い」「速い」のどれくらいかを数字で確かめられます。痛みはなく、入院も不要です。
重要な事実
- 検査食を食べたあと、2〜4時間ほどかけて数回撮影します。途中で待ち時間があるため、半日ほど予定をあけておくと安心です。
- 使う放射性の量はごくわずかで、通常の体に差し支えない範囲です。検査後はふだんどおり過ごせます。
- 胃がもたれる、すぐにおなかいっぱいになる、吐き気が続くといった症状の原因を探るときに使われます。
胃の不快な症状が長く続く人の原因調べとして、よく行われる検査のひとつです。特別な大病院でしかできない検査ではありませんが、核医学の設備がある医療機関で行われます。
食後のもたれや吐き気、すぐにおなかがいっぱいになる感じが続く人、原因がはっきりしない体重減少がある人などが対象になります。長く糖尿病のある人、胃の手術を受けたことがある人では、胃の動きが遅くなりやすいことが知られています。子どもや高齢者でも必要に応じて行われますが、検査食の量や撮影のしかたは年齢や体に合わせて調整されます。
症状
- 激しく続く腹痛、おなかをかばって動けない
- 血を吐く、コーヒー色のものを吐く、黒い便が出る
- 意識がもうろうとしている、会話がかみ合わない
- 呼吸が苦しい、顔色が明らかに悪い
- けいれん、強いめまいで立てない
- ⚠水分がほとんどとれず、尿の量が減っている(脱水のおそれ)
- ⚠嘔吐が何度も続き、食事がとれない
- ⚠数週間で体重がはっきり減っている
- ⚠糖尿病があり、血糖値の高い状態や低い状態が続く
- ⚠薬を飲み始めてから胃の調子が明らかに悪くなった(自己判断で中止せず、まず相談を)
一般的な症状
- 食べたあと、いつまでも胃がもたれる感じが続く
- 少量食べただけで「もうおなかいっぱい」と感じる
- 吐き気がする、ときに嘔吐する
- おなかが張る、ガスがたまる感じがする
- 食欲がわかない、食が細くなる
- 原因がはっきりしない体重減少
- 胸やけや胃酸の上がってくる感じ(げっぷ・呑酸)
- 血糖値の上がり下がりが安定しにくい(糖尿病のある人の場合)
子供の症状
- 繰り返す吐き気や嘔吐、とくに食後に多い
- すぐにおなかがいっぱいになると訴える、食が細い
- 理由のわからない腹痛や体重の増えにくさ
- 検査の内容は年齢に合わせて調整されます。子どもは緊張しやすいので、付き添いや説明の工夫が大切です。
高齢者の症状
- 「年のせい」と思われやすい胃もたれや食欲低下
- 食事量が減ることによる体重減少、脱水、だるさ
- 薬の影響で胃の動きが鈍くなっている可能性
- 糖尿病のある人は低血糖や高血糖の乱れとして現れることがあります
原因
主な原因
- 糖尿病による神経の障害で胃の動きが鈍くなる(比較的多い原因)
- 胃や食道の手術を受けたあとの影響
- 胃の神経や筋肉の働きが弱くなる病気(神経・筋の病気など)
- 一部の薬の副作用で胃の動きが遅くなる
- 甲状腺の働きが低下する病気
- 腹部の手術後や、体の大きな病気のあとの胃の動きの低下
- はっきりした原因が見つからない場合(特発性)も少なくありません
リスク要因
- 長い期間の糖尿病
- 胃の手術を受けたことがある
- 一部の痛み止めや、動きを抑える作用のある薬を長く使っている
- 女性では比較的多く報告されています
- 体重の急な減少や、食事量が大きく減っている時期
- 強いストレスや、ほかの病気による体の疲れ
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐血や黒い便、コーヒー色の嘔吐がある(すぐに救急へ)
- 水分がとれない、尿がほとんど出ない
- 嘔吐が続いて食事ができない
- 短期間で体重がはっきり減った
- 糖尿病があり、血糖の乱れが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 食後のもたれや吐き気が2週間以上続く
- 少量で満腹になり、食事が楽しめない日が続く
- 市販の胃薬を使ってもしばらく改善しない(使い続ける前に相談を)
- 検査で「胃の動きが遅いかもしれない」と言われた
診断
まず問診で、症状の出方や食事との関係、これまでの病気や飲んでいる薬を確認します。そのうえで、胃の中を直接見る検査などで「胃そのものに傷や詰まりがないか」を確かめ、問題がないのに症状が続く場合に、胃の動きを調べる胃排泄シンチグラフィが検討されます。
行われる可能性のある検査
- 胃排泄シンチグラフィ(本題の検査):放射性の目印を混ぜた検査食を食べ、時間ごとに撮影して胃に残る量を測ります
- 胃内視鏡(胃カメラ):胃の中の炎症・潰瘍・詰まりなどを確認します
- 腹部超音波検査:胆のうや膵臓など、ほかの臓器の異常を確認します
- 血液検査:貧血、甲状腺の働き、血糖の状態などを調べます
- 呼気検査など、別の方法で胃の動きをみる検査が選ばれることもあります
- 症状や経過の記録(食事日記)が診断の助けになります
診察で予想されること
検査の数日前から、飲んでいる薬の扱いについて指示が出ることがあります。自己判断で中止せず、必ず事前に相談してください。前日の夜から食事や喫煙を控えるよう案内されることが多く、当日は検査食を食べてからカメラの前に座り、決まった時間に何度か撮影します。撮影の間は待ち時間があり、本を読んだり休んだりして過ごします。所要時間は2〜4時間ほどです。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方は必ず事前に伝えてください。検査後は通常どおりの生活に戻れます。
治療
治療の中心は、症状をやわらげながら、原因があればそれに対応していくことです。胃の動きが遅い場合でも、食事のとり方を工夫し、必要に応じて医療機関での治療を組み合わせることで、多くの人は症状と上手に付き合えるようになります。
自宅でのセルフケア
- 1回の量を少なめにして、1日4〜5回に分けて食べる
- 脂っこいもの、食物繊維のかたまり(生野菜を大量になど)は控えめにし、やわらかく調理する
- よくかんでゆっくり食べる。食後すぐ横にならず、上半身を少し起こして休む
- 水分は少しずつこまめにとる。嘔吐があるときは特に意識する
- 食後に軽く歩くなど、無理のない範囲で体を動かす
- 症状と食事の内容を簡単に記録すると、受診時に役立つ
- 禁煙し、アルコールは控えめにする
- 市販薬を続けて使う前に、薬剤師やかかりつけ医に相談する
医療治療
原因に応じた対応として、血糖の管理を整える、症状を悪化させている可能性のある薬の見直しを行う、といったことが検討されます。胃の動きを助ける種類の薬や吐き気をやわらげる薬が使われることもありますが、内容や量は症状・年齢・ほかの病気に合わせて医師が判断します。栄養が不足している場合は、点滴や栄養のサポートが行われることもあります。具体的な薬の名前や量は、必ず処方した医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのはまれです。食事や薬での対応でも強い症状が続き、栄養や生活に大きな支障が出るような場合に限り、専門の医療機関で治療の選択肢が検討されます。多くはまず食事と生活の工夫、そして必要に応じた薬での治療が中心になります。
この病気と共に生きる
胃の動きがゆっくりめでも、食事のとり方を少し変えるだけで毎日がぐっと楽になることがあります。完璧を目指すより、「自分のペースで食べる」「食べたあとは少し休む」といった小さな工夫を続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 食事は小分けに。空腹でまとめ食いをしない
- 食後は15〜30分ほど座って休み、すぐ横にならない
- 睡眠をしっかりとり、ストレスをためすぎない
- 体調が良い日は無理のない散歩などの軽い運動を
- 体重の変化をときどき確認する
- 症状が悪化したときの連絡先を決めておく
食事と運動
食事はやわらかく、消化のよいものを中心に、少量をこまめにとるのが基本です。脂っこい食事や一度にたくさん食べることは、もたれ感を強くしやすいので控えめに。水分は少しずつこまめに。運動は激しいものでなくてよく、食後の軽い散歩やストレッチで血流と腸の動きを助けます。体重が減り続けるときは、自己流で我慢せず、早めに相談してください。
精神的健康と心の健康
「食べたいのに食べられない」「外食が不安」といった日々が続くと、気持ちが沈んだり、人と食事をするのがつらくなったりすることがあります。これはわがままでも弱さでもありません。症状を抱えながら生活している人の多くが同じ気持ちを経験します。つらいときは、ひとりで抱え込まずに誰かに話してください。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、何も楽しめないといった状態があれば、医療機関に相談を。日本では、こころの健康の相談窓口として、お住まいの自治体の保健所や、厚生労働省が案内する相談窓口を利用できます。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず救急(119)や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
胃の動きの遅れを完全に防ぐ方法はありませんが、糖尿病のある人は血糖を安定させること、胃の手術を受けた人は術後の食事の指導を守ることが、リスクを下げる助けになります。原因になる可能性のある薬を自己判断で増やさないことも大切です。
検診プログラム
この検査は「症状がある人」に対して行うもので、症状のない人のスクリーニングとして行われるものではありません。気になる症状が続く場合は、自治体の健康診断を毎年受けたうえで、医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 食べられない状態が続くことによる栄養不足、体重減少
- 脱水や電解質の乱れ
- 胃に食べ物が長く残ることによる胃石(かたまり)や吐き気の悪化
- 糖尿病のある人では血糖の乱れが強くなる
- 食事がつらいことによる生活の質の低下、気分の落ち込み
長期的な見通し
多くの人は、食事の工夫と必要に応じた治療を組み合わせることで、症状がやわらぎ、ふだんの生活を取り戻していきます。検査の結果は「あなたの胃の動きを数字で知る」ための材料です。結果をもとに、かかりつけ医と一緒に自分に合った付き合い方を見つけていきましょう。改善までに時間がかかることもありますが、あせらず一歩ずつで大丈夫です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.