心拍数(脈拍)について知っておきたいこと
概要
心拍数とは、心臓が1分間に何回打つかを表す数のことです。手首や首すじの血管に指を当てて感じる「脈(みゃく)」の回数を数えると、心拍数とほぼ同じ数になります。心臓は全身に血液を送るポンプのような働きをしていて、体を動かすとき、緊張したとき、熱が出たときなど、必要に応じて打つ回数を増やしたり減らしたりしています。つまり心拍数は、体の状態を映す「ものさし」のようなものです。
重要な事実
- 安静にしているときの成人の心拍数の目安は、1分間に60〜100回程度です。ただ、これはあくまで目安で、個人差があります。
- 運動・緊張・発熱・脱水(体の水分が足りない状態)・カフェインなどで、心拍数は簡単に変わります。
- 測るときは、座って5分ほど静かに休んでから、手首か首すじで1分間数えると正確になりやすいです。
心拍数が上がったり下がったりすること自体は、誰にでも日常的に起こります。病気が原因で脈が速すぎる・遅すぎる・不規則になる状態も珍しいものではなく、外来でよく相談されるテーマのひとつです。
子どもは大人より心拍数が多く、高齢になるにつれてやや少なめになるなど、年齢によって変わります。また、心臓や甲状腺(首のあたりにあるホルモンの分泌を担う臓器)の病気がある人、貧血の人、発熱や脱水のある人、カフェインやアルコールを多くとる人、睡眠不足や強いストレスがある人、一部の薬を使っている人では変動しやすくなります。
症状
- 胸の痛みや強い圧迫感が続く(数分以上続く場合)
- 意識を失った、倒れた、呼びかけに反応が弱い
- 息ができず、話すのも苦しい
- 冷や汗をともなう強い動悸で、楽にならない
- 唇や顔色が青白く、ぐったりしている
- 脈がとても速いまま、または極端に遅いまま意識がぼんやりしてきた
- ⚠安静にしていても脈が異常に速く、何十分も続く
- ⚠脈が速くなったり遅くなったりを繰り返す
- ⚠めまいやふらつきが続き、日常生活に支障が出ている
- ⚠息切れと足のむくみが同時にある
- ⚠脈が飛ぶ感じが頻繁にあり、不安で眠れない
一般的な症状
- 胸がドキドキする、脈が速いと感じる(動悸・どうき)
- 脈が1回抜けたような、飛んだような感じがする
- 軽いめまいや立ちくらみ
- 少し動いただけで息が切れる、息苦しい
- 疲れやすい、だるい
- 胸のあたりの不快感や圧迫感
- 冷や汗が出る、落ち着かない感じがする
子供の症状
- 子どもの脈はもともと大人より速いので、少し速いくらいでは心配いらないことが多いです
- ぐったりしている、元気がない
- 母乳やミルクを飲む力が弱い、飲みが悪い
- 顔色が青白い、唇の色が悪い
- 汗が多く、呼吸が苦しそう
高齢者の症状
- ふらつき、立ちくらみ、転びやすさ
- 一瞬意識が遠のく、気が遠くなる感じ(失神)
- 脈が遅い、力が弱いと感じる
- 疲れやすい、階段で息が上がる
- 症状がはっきり出にくく、なんとなく元気がないだけのこともあります
原因
主な原因
- 運動や階段の上り下りなど、体を動かしたとき
- 緊張・不安・強いストレス
- カフェイン(コーヒー・お茶・エナジードリンク)、アルコール、たばこ
- 発熱、脱水(暑さや下痢・嘔吐で水分が足りなくなること)
- 貧血(血液中の酸素を運ぶ成分が足りない状態)
- 甲状腺の病気(ホルモンの量が多すぎる・少なすぎる)
- 不整脈(脈のリズムが乱れる状態)や心臓の病気
- 睡眠不足、過労
- 薬の作用や副作用、サプリメントの影響
リスク要因
- 高血圧や心臓病の家族歴がある
- 糖尿病、腎臓病、甲状腺の病気などの持病がある
- 喫煙、過度の飲酒
- 肥満、運動不足
- 強いストレスを長く抱えている、睡眠が足りない
- 高齢であること
- 脱水になりやすい環境(暑い場所での作業、発熱時)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛み、強い息苦しさ、意識が遠のく感じがある(ためらわず119番へ)
- 安静時の脈がとても速い、または極端に遅い状態が続く
- 失神した、倒れたことがある
- 動悸とともに冷や汗や吐き気がある
定期受診を予約すべき場合:
- 動悸や脈の乱れを何度も感じるようになった
- 脈が飛ぶ感じが繰り返しある
- 以前より疲れやすい、息が上がりやすいと感じる
- 家族や健診で脈が速い・遅いと指摘された
- 動悸のせいで不安になり、生活に支障が出ている
- かかっている薬を変えてから脈の変化が気になる
診断
まず問診で、どんなときに脈の変化を感じるか、どのくらい続くか、めまいや息切れなどの症状があるか、飲んでいる薬や生活習慣などを確認します。そのうえで脈拍を測り、心電図(心臓の電気の流れを記録する検査)で心臓のリズムを調べます。必要に応じて追加の検査を行い、原因を絞り込んでいきます。
行われる可能性のある検査
- 脈拍の測定と血圧測定
- 心電図(安静時)
- 24時間心電図(ホルター心電図):1日中心臓のリズムを記録する検査
- 血液検査:貧血、甲状腺のホルモン、電解質などを調べる
- 心臓超音波検査(心エコー):心臓の形や動きを見る検査
- 必要に応じて運動負荷試験(運動中に心電図を記録する検査)
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。24時間心電図では、小さい機械を身につけて普段どおりに過ごし、症状が出た時間をメモしておくと診断の助けになります。結果の説明では、脈の速さや乱れの有無だけでなく、日常生活で気をつけるポイントも一緒に確認するとよいでしょう。
治療
治療の内容は原因によって大きく変わります。脱水や発熱、カフェインのとりすぎなど生活に由来するものであれば、原因を取り除くことで自然に落ち着くことが多いです。貧血や甲状腺の病気、不整脈などが背景にある場合は、その病気に対する治療を行います。症状が軽く日常生活に支障がなければ、定期的に経過を見ていくだけのこともあります。
自宅でのセルフケア
- 脈を測るときは、座って5分ほど安静にしてから測る
- コーヒーやエナジードリンクなどカフェインの多い飲み物をとりすぎない
- 水分をこまめにとる(特に暑い時期や発熱時)
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- たばこは控え、お酒はほどほどにする
- ゆっくり息を吐く呼吸を数分行い、気持ちを落ち着ける
- 動悸を感じたときの時刻・状況・続いた時間をメモしておく(受診時に役立ちます)
- 激しい運動は体調に合わせて無理のない範囲で行う
医療治療
医師はまず原因を確認し、必要に応じて治療方針を決めます。脈の乱れを整えるための薬を使うことや、甲状腺や貧血など背景にある病気の治療を行うことがあります。また、生活習慣の見直しや、症状を記録して経過を観察する方法がとられることもあります。どのような治療が合うかは体の状態によって異なるため、医師や薬剤師に相談しながら進めてください。薬の名前や量、飲み方については、必ず処方した医療機関や薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
多くの場合、心拍数の相談は手術を必要としません。ただし、脈の乱れの原因によっては、カテーテルという細い管を使った処置や、心臓のリズムを助ける小さな機器(ペースメーカーなど)を体内に入れる方法が検討されることがあります。適応があるかどうかは検査の結果をもとに医師が判断します。
この病気と共に生きる
脈の変化と上手につきあうコツは、「記録する」「無理をしない」「気にしすぎない」の3つです。気になったときに時刻と状況をメモしておくと、受診のときに役立ちます。一方で、脈を何度も確認しすぎると不安が強くなることがあります。1日に数回、決まった時間に測るなど、自分なりのペースを作ると安心です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と食事のリズムを保つ
- 休憩や深呼吸をこまめに取り入れる
- カフェインやアルコールの量を意識する
- たばこを控える
- 体調がすぐれない日は運動を軽めにする
- 健診やかかりつけ医での定期的なチェックを続ける
食事と運動
食事は、塩分や脂っこいものを控えめにし、野菜・魚・豆類などをバランスよくとると、心臓や血管の健康につながります。水分はのどが渇く前に少しずつとりましょう。運動は、ウォーキングなど息が少し弾む程度を無理のない範囲で続けるのがおすすめです。運動中に動悸や息苦しさ、めまいが出たら中止して休み、改善しなければ医療機関に相談してください。
精神的健康と心の健康
動悸は、不安やストレスによって強く感じることがあります。そして「また起きたらどうしよう」という不安が、さらに脈を速くするという悪循環に入ることもあります。これは決して珍しいことではありません。症状を記録して客観的に見られるようにしたり、リラックスする時間を意識的に作ったりすることが助けになります。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。気持ちがとてもつらい場合は、ためらわず緊急の相談先や医療機関に連絡してください。
予防
すべての脈の変化を防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることで、心臓や血管に負担をかける状態を減らすことはできます。特に、脱水を避ける、睡眠を十分にとる、喫煙を控える、適正体重を保つことは大切です。
ワクチン
心拍数そのものを予防するワクチンはありません。ただし、感染症(インフルエンザなど)にかかると発熱で脈が速くなることがあるため、年齢や持病に応じた予防接種を検討することは、体調を保つ助けになります。接種の可否はかかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
健康診断では血圧や心電図の検査が行われ、脈の異常が見つかることがあります。動悸や脈の乱れを感じたら、健診を待たずに相談してよいでしょう。また、家庭で血圧計やスマートウォッチを使って脈を記録する人も増えていますが、記録はあくまで参考情報です。数値だけで判断せず、気になる点は医療者に確認してください。
合併症
治療しない場合
- 脈が速い・乱れた状態が長く続くと、心臓に負担がかかることがあります
- めまいや失神によって転倒し、けがをするおそれがあります
- 心臓の働きが弱まり、息切れやむくみが出ることがあります(心不全)
- 特定の不整脈では、脳の血管が詰まる病気(脳卒中)のリスクが高まることがあります
- 動悸への不安から、外出や運動を控えるようになり、生活の質が下がることがあります
長期的な見通し
多くの場合、脈の変化は原因を確認して適切に対応すれば、落ち着いて生活を続けられます。生活習慣の見直しや定期的な受診で状態を把握することが、安心につながります。気になる症状があっても、一人で抱え込まずに医療者に相談することが一番の近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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