神経障害(ニューロパチー)の合併症に気づくために
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
神経障害(ニューロパチー)とは、脳や脊髄から手足や内臓に指令を伝える「神経」が傷つき、しびれ・痛み・感覚の低下などが現れる病気です。神経には、手足の感覚や動きをつかさどる「末梢神経」と、心臓や胃などの働きを調整する「自律神経」があります。ここでは主に手足に症状が出る「末梢神経障害」について説明します。
重要な事実
- 症状はしびれや痛みだけとは限らず、感覚が鈍ることで傷ややけどに気づきにくくなります。
- 原因には糖尿病やビタミン不足、自己免疫疾患など、さまざまなものがあります。
- 毎日の足のチェックと原因の管理で、重い合併症を予防できることが多いです。
はい、決して珍しくありません。特に糖尿病の患者さんでは約3人に1人に神経障害が見られるという報告があります。高齢になると増えやすくなります。
糖尿病が長く続いている人、高齢者、アルコールを多く飲む人、栄養の偏りがある人、腎臓病や肝臓病を抱える人、また家族に同じ病気の人がいる場合に起こりやすくなります。
症状
- 突然、片方の手足に力が入らない
- 顔の片側が動かせない、ろれつが回らない
- 激しい頭痛や吐き気がある
- 意識がもうろうとする、または意識を失った
- 胸が強く痛む、または息が苦しい
- ⚠足に深い傷や広がる赤み、熱感がある
- ⚠しびれや痛みが急に強くなり、動けなくなった
- ⚠排尿や排便のコントロールができなくなった
- ⚠高熱をともなう悪寒がある
- ⚠ふらつきが強く、立っていられない
一般的な症状
- 手足のしびれ、ピリピリ・ジンジンとした痛み
- 温度や痛みを感じにくくなる
- 足の裏に何か貼りついているような感じ
- 歩くときのバランスがとりにくい
- 手指の細かい動きがしにくい
- 夜間に症状が強くなる
子供の症状
- 理由もなく転ぶようになる
- 手足の痛みやしびれを訴える
- 走る・跳ぶなど運動の発達が遅れる
- 小さな傷や痛みに気づかない
- 靴がすぐにきつくなると感じる
高齢者の症状
- 足のしびれや痛みで夜眠れない
- ふらついて転びやすくなる
- やけどや傷ができても気づかない
- 筋力が低下して歩行が不安定になる
- 立ち上がったときのめまい(自律神経の症状)
原因
主な原因
- 糖尿病(高血糖が神経にダメージを与える)
- ビタミンB群の不足
- 自己免疫疾患(免疫が自分の神経を攻撃する)
- 慢性腎臓病や肝臓病などの代謝の病気
- 多量のアルコール摂取
- 抗がん剤などの薬の影響
- 化学物質や重金属への曝露
- 遺伝性の病気
リスク要因
- 血糖コントロールが不十分な糖尿病
- 過度の飲酒
- 偏った食事や栄養不足
- 長時間同じ姿勢での作業
- 自己免疫疾患を持つ
- 家族に神経障害の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- しびれや痛みが数日で急に悪化した
- 足の傷がなかなか治らない、または悪化している
- ふらつきが強くなり、日常生活に危険を感じる
- 排尿・排便のトラブルが新たに出た
定期受診を予約すべき場合:
- 手足のしびれや痛みが数週間以上続く
- 感覚の低下でやけどや切り傷をよくする
- 糖尿病など持病があり、神経障害を心配している
- 家族に神経障害がいるため、一度相談したい
診断
医師が症状の経過や体の状態を詳しく調べ、必要に応じて神経の働きを確認する検査や血液検査などを行います。原因をはっきりさせることが、合併症の予防の第一歩です。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血糖値、ビタミン、肝・腎機能など)
- 神経伝導検査(電気の流れで神経の傷み具合を調べる)
- 筋電図(筋肉の電気的な活動を調べる)
- 振動感覚検査(音叉で感覚の鈍さを調べる)
- 画像検査(MRIなどで神経が圧迫されていないか確認)
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどです。神経伝導検査や筋電図は少しチクッとする程度で、数十分で終わります。結果は数日かかる場合があります。その後、医師から説明があり、あなたに合った治療方針を一緒に決めます。
治療
治療の中心は、原因となる病気への対応と、症状をやわらげるケアです。進行を遅らせ、合併症を防ぐことを目標にします。自分の状態に合った治療を続けることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 毎日、足の裏や指の間まで鏡で確認する
- 皮膚を清潔に保ち、保湿して乾燥を防ぐ
- 硬すぎない、締め付けのない靴と靴下を選ぶ
- 足の爪は切りすぎず、やすりで整える
- 入浴前に水温を確認し、やけどを防ぐ
- 家の中の段差や滑りやすい所を整え、転倒を防ぐ
- 痛みが強い日は無理をせず、安静にする
医療治療
医師は、痛みやしびれをやわらげる薬、神経を保護する薬、原因となる病気を治療する薬を、あなたの状態に合わせて処方します。また、運動機能を保つためのリハビリテーションや、カウンセリングなども行われることがあります。市販薬を自己判断で併用せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
椎間板ヘルニアなどで神経が強く圧迫されている場合は、手術を行うことがあります。しかし、多くの末梢神経障害は手術の対象ではなく、薬物療法やリハビリテーションが中心になります。
この病気と共に生きる
神経障害とうまく付き合うには、「見えない小さな変化」に気づく習慣が大切です。特に足は、毎日チェックするようにしましょう。痛みやしびれは、疲れやストレスで強くなることがあるため、休養を上手に取り入れてください。
生活習慣のアドバイス
- 医師に許可された範囲で、ウォーキングやストレッチを行う
- 足をまめに観察し、異常を早く見つける
- 湯たんぽやカイロを直接皮膚に当てない
- アルコールは控えめにし、禁煙に取り組む
- 症状の変化をメモに残し、受診時に伝える
- 睡眠時間を確保し、疲れをためない
食事と運動
バランスの良い食事を3食しっかりとることが基本です。特にビタミンB群(魚、肉、卵、大豆、緑黄色野菜)は神経の健康に関わります。運動は血流を良くし、筋力の維持にも役立ちますが、ふらつきや痛みがある場合は、医師や理学療法士に相談しながら無理のない範囲で行いましょう。
精神的健康と心の健康
慢性の痛みやしびれは、気分の落ち込みや不安を引き起こすことがあります。感情は悪い意味ではなく、自然な反応です。つらいときは、ひとりで抱え込まず、家族や友人、医師、カウンセラーに話してみてください。
予防
遺伝性のものを完全に予防することはできませんが、糖尿病などをしっかり管理し、栄養バランスの良い食事、適度な運動、禁煙・節酒を続けることで、発症や進行を抑えられる可能性が高くなります。特に糖尿病患者さんの足のチェックは合併症予防の基本です。
ワクチン
神経障害自体を防ぐ特別なワクチンはありません。ただし、糖尿病や腎臓病などで感染症のリスクが高い場合は、かかりつけ医と相談のうえでインフルエンザや肺炎球菌などの予防接種を検討することが勧められます。
検診プログラム
糖尿病の方は定期健診で血糖値を確認し、年に1回は足の状態を医師に見てもらうことが勧められます。神経障害の家族歴がある人や、糖尿病ではないがしびれを感じる人も、早めに一度相談すると安心です。
合併症
治療しない場合
- 足の潰瘍(ただれ)や感染症が進み、最悪の場合は切断が必要になることがある
- 温度や痛みを感じないことによるやけどや凍傷、外傷
- 筋力低下やバランス感覚の低下による転倒・骨折
- 自律神経の障害による立ちくらみ、吐き気、便秘・下痢、排尿トラブル
- 慢性の強い痛みによる不眠、うつ状態、生活の質の低下
長期的な見通し
神経障害は一度傷つくと、長い時間がかかることもありますが、原因の治療と毎日のセルフケアによって進行を遅らせ、多くの合併症を防ぐことができます。また、症状に合わせた治療を受けることで、日常生活の質を保つことが十分可能です。あきらめずに、医師と一緒に取り組んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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