妊娠中の神経障害(ニューロパチー)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中の神経障害とは、妊娠に伴う体の変化によって、手足のしびれや痛み、力が入りにくいなどの症状が出る状態です。多くは一時的なもので、出産後に改善します。神経は体のすみずみに張りめぐらされた情報の通り道のようなもので、妊娠中はホルモンの変化や水分の増加によって神経が圧迫されることがあります。
重要な事実
- 妊娠中の神経障害は、手根管症候群(手のしびれ)が最も多く、妊婦さんの数%に見られます。
- 多くは出産後に自然に改善しますが、妊娠中は症状を和らげる工夫ができます。
- まれに、妊娠高血圧症候群や糖尿病などが原因になることもあるため、気になる症状は早めに医師に相談しましょう。
比較的よく見られる症状で、特に妊娠後期に多くなります。手足のしびれや痛みを経験する妊婦さんは少なくありません。
妊娠中の女性なら誰でも起こり得ますが、妊娠前から糖尿病がある人、体重が増えすぎた人、むくみが出やすい人、双子や三つ子など多胎妊娠の人では、リスクがやや高くなります。
症状
- 顔の片側が動かない、ろれつが回らない(脳卒中の可能性)
- 突然、激しい頭痛とともに手足のしびれがある
- 息苦しさや胸の痛みがある
- 意識がもうろうとする
- このようなときはすぐに119番に電話してください。
- ⚠手足の力が急に抜けて立てない
- ⚠しびれが急に広がって動けなくなった
- ⚠失禁したり、足の感覚が完全に消えた
- ⚠ひどい痛みで眠れない、動けない
- ⚠このような症状は同じ日のうちに医療機関に連絡しましょう。
一般的な症状
- 手のしびれやピリピリした痛み(特に指先、親指から薬指にかけて)
- 足や足の裏のしびれ、ほてり感
- 手や足に力が入りにくい
- 感覚が鈍くなる
- 夜間に症状が強くなり、手を振ると楽になることがある
子供の症状
- この症状は妊婦さん本人に現れるもので、おなかの赤ちゃんに直接影響することはまれです。
- まれに遺伝性の神経の病気がある場合は子どもにも症状が見られることがあるため、心配な場合は小児科医に相談しましょう。
高齢者の症状
- 高齢出産(35歳以上)でも同じ症状が起こり得ますが、年齢そのものが原因ではありません。
- 年齢を重ねてからの妊娠では、神経の症状に加えて腰痛など他の症状も出やすいため、早めの受診が勧められます。
原因
主な原因
- 妊娠中のホルモン変化(リラキシンなど)による靭帯のゆるみで神経が圧迫される
- 水分がたまって組織がむくみ、神経が通り道で圧迫される(手根管症候群など)
- 子宮の大きさによる体重増加で腰や脚の神経に負担がかかる
- ビタミンB12やB6など、神経の働きを助ける栄養素の不足
- まれに糖尿病や妊娠高血圧症候群などが神経に影響する
リスク要因
- 妊娠前からの糖尿病
- 妊娠中に発症する妊娠糖尿病
- むくみが出やすい
- 体重増加が多い
- 双子や三つ子などの多胎妊娠
- 前に手や腰のトラブルがあった人
- 神経を圧迫する姿勢を長時間続ける仕事
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手足の力が入らない、感覚がなくなった
- 顔の片側が動かない、ろれつが回らない
- 急な激しい頭痛や視野の異常がある
- 呼吸が苦しい
- このような症状はすぐに救急車(119番)を呼ぶか、夜間でも救急外来を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 手足のしびれや痛みが続く、生活に支障がある
- 夜間に何度も目が覚めるほど症状がある
- 1〜2週間たっても症状が良くならない
- 「これはおかしいな」と思ったら、検診のときにでも医師に相談しましょう。
診断
医師が問診(いつから、どこが、どんなふうにしびれるかなど)をし、手足の感覚や筋力を診察します。必要に応じて血液検査や神経の伝わり方を調べる検査を行います。妊娠中でも安全な方法で進められます。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(感覚・筋力のチェック)
- 血液検査(血糖値やビタミン不足、腎機能などの確認)
- 神経伝導速度検査(神経に電気刺激を与えて伝わり方を調べる、痛みはほぼありません)
- 必要に応じた画像検査(超音波やMRIなど)
診察で予想されること
診察は通常の妊婦健診と同じような流れで行われます。痛みを伴う検査はほとんどありません。神経伝導速度検査は少し電気の刺激を感じますが、すぐに終わります。結果や治療方針は、産婦人科医と専門医が連携して説明してくれます。
治療
多くの場合、安静と生活の工夫で症状は和らぎます。原因となっている病気(糖尿病や妊娠高血圧症候群など)があれば、それを管理することが第一です。妊娠中は飲み薬や治療に制限があることもあるため、自己判断せずに医師の指示に従いましょう。
自宅でのセルフケア
- 手根管症候群のときは、手首を真っすぐに保つサポーターや添え木(シーネ)を夜間につけると楽になることがあります。
- むくみが強いときは、足を高くして休む、塩分を控えるなどして水分を調整しましょう。
- 長時間同じ姿勢でいることを避け、こまめに休憩し、手足を軽く動かしましょう。
- 痛みがある場所に冷たいタオルや温かいタオルを当てる(感覚が鈍いときは低温やけどに注意)。
- 妊婦向けのマタニティヨガやストレッチを無理のない範囲で行う。
医療治療
医師の判断で、ビタミン不足が原因であれば栄養補助食品や食事指導が行われることがあります。痛みが強い場合には、妊娠中に使える薬や物理療法、神経ブロック注射などが検討されますが、必ず専門医の診察と同意のもとで行われます。また、理学療法士によるリハビリや姿勢指導も有効です。
手術が検討される場合
手根管症候群などで強い症状が続き、出産後も改善しない場合は、いったん様子を見ることが多いです。症状が重い場合や神経の圧迫が長引く場合は、出産後に手術が行われることもありますが、多くの場合手術は必要ありません。妊娠中の手術は最小限のリスクで安全に行える場合もありますが、専門医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
症状が強いときは無理をせず、夫や家族に家事や重い物の運搬を頼みましょう。夜間のしびれで眠れない場合は、枕やタオルで手足を少し高くして休みましょう。仕事がある場合は、職場に相談して休憩を取らせてもらうと楽になります。
生活習慣のアドバイス
- 塩分を控えめにしてむくみを予防する
- 水分をこまめに取る(むくみをとるのに逆効果に見えますが、十分な水分は血液の循環を良くします)
- 適度に歩く、軽いストレッチをする
- 長時間同じ姿勢を避け、座るときも足を組まない
- 睡眠時は手首を真っすぐに保つような姿勢を工夫する
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、特にビタミンB群を含む食品(豚肉、魚、卵、緑黄色野菜、豆類)を意識して取り入れましょう。サプリメントを自分で追加する前に、必ず医師に相談してください。運動は医師に許可をもらった範囲で、マタニティヨガやウォーキングなどの軽いものを続けると、血行改善と体重管理に役立ちます。
精神的健康と心の健康
しびれや痛みが続くと、睡眠不足や不安が積もり、気分が落ち込むことがあります。妊娠中はホルモンの変化もあり気持ちが不安定になりがちです。そんなときは、パートナーや家族に話したり、助けを求めたりしましょう。“頑張らなくては”と思いすぎないことが大切です。
予防
すべての妊娠中の神経障害を予防することはできませんが、リスクを下げることは可能です。体重増加を適正範囲に保つ、血糖値をコントロールする、むくみを予防する、バランスの良い食事を取ることで、症状が起こりにくくなったり、軽くなったりすることがあります。
ワクチン
妊娠中の神経障害に直接関係するワクチンはありませんが、妊娠中の予防接種は医師と相談して、母子手帳のスケジュールに沿って受けることが大切です。
検診プログラム
妊娠初期の血液検査で血糖値やビタミン値の異常が調べられます。高リスクな人は、妊娠糖尿病の検査を医師が追加で行うこともあります。気になる人は検診のときに相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 症状が強くても放置すると、手や足の筋力が低下して、日常生活に支障が出ることがあります。
- しびれにより足の感覚が鈍いと、転んだりやけどをしたりする危険性が高まります。
- まれに、神経障害が重症化して出産後も症状が続く場合があります。
- 原因が妊娠高血圧症候群や糖尿病の場合は、母体と赤ちゃんの健康に影響することがあるため、早めの管理が必要です。
長期的な見通し
ほとんどの妊娠中の神経障害は、出産後数週間から数か月の間に自然に良くなります。産後の育児で手を使いすぎると症状が続くこともありますが、適切なケアと時間経過で改善が期待できます。多くの女性が、赤ちゃんとの生活を楽しんでいるなかで症状が消えていきます。心配なときは、いつでも医療機関に相談してください。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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