パーキンソン病の合併症について知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
パーキンソン病は、脳の神経細胞が少しずつ減っていくことで起こる、ゆっくり進行する病気です。特に、体を動かすために大切な「ドーパミン」という脳内物質を作る細胞が減るため、手や足のふるえ、動作が遅くなる、体がこわばるなどの症状があらわれます。現在は完治する治療法はありませんが、症状をやわらげ、生活の質を保つためのさまざまな方法があります。
重要な事実
- パーキンソン病は進行性ですが、治療によって症状を長くコントロールできる病気です。
- 症状は人によって異なります。ふるえ、動作のゆっくりさ、筋肉のこわばり、バランスの悪さなどが中心です。
- 合併症を早く見つけることが重要です。転倒、誤嚥(ごえん)、肺炎、せん妄などに注意しましょう。
パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで多い神経の病気です。日本では高齢化に伴って患者数が増えています。
主に60歳以上で発症することが多く、男性にやや多い傾向があります。50歳未満で発症する「若年性パーキンソン病」もあります。
症状
- 呼吸が苦しい、または食べ物や水分がのどに詰まって窒息しそうなとき
- 転倒して頭を強く打ち、意識がもうろうとしている、激しい頭痛があるとき
- 片側の手足が動かない、ろれつが回らない、めまいがするなど、脳卒中のような症状があるとき
- 高熱に加えて、強い混乱や幻覚(実際にはないものが見える・聞こえる)があるとき
- ⚠転倒を繰り返すなど、歩行のふらつきが急に悪化した
- ⚠飲み込みにくくなり、むせることが増えた
- ⚠薬を内服しているのに、症状が急に悪化した
- ⚠排尿の痛みや頻尿など、尿路感染症のような症状がある
一般的な症状
- 手足がふるえる(特に体を動かしていないときに目立つ)
- 動作がゆっくりになる(歩く速度が落ちる、衣類の着脱に時間がかかる)
- 筋肉がこわばる(顔の表情が少なくなる、反り返った姿勢になる)
- バランスをとりにくい(転びやすくなる)
- 小さな字を書く、声が小さくなる、においがわからない、便秘、睡眠中に体を動かすなどの非運動症状もある
原因
主な原因
- 脳の「黒質(こくしつ)」という部分にある、ドーパミンを作る神経細胞が減少することが主な原因と考えられています。
- なぜその神経細胞が減るのかについては、遺伝的な要因と環境的な要因(農薬や化学物質への曝露など)が組み合わさって起こると考えられていますが、はっきりした原因はわかっていません。
リスク要因
- 高齢(特に60歳以上)
- 家族にパーキンソン病の人がいる(遺伝的要因)
- 農薬や重金属などへの長期間の曝露
- 頭部のけがの既往
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に症状が大きく変わったとき(急に歩けない、混乱が続く、高熱があるなど)は、すぐに受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- ふるえ、動作の遅さ、歩きにくさ、姿勢の変化などの症状が続く場合や、日常生活への影響が出てきた場合は、神経内科(脳神経内科)を受診しましょう。定期受診を続けることも大切です。
診断
パーキンソン病は、血液検査や画像検査だけで確定できる病気ではありません。主に医師が、症状の内容や経過を詳しく聞き、神経学的診察を行うことで診断します。そのうえで、他の病気を除外するために画像検査などが行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 問診:いつからどんな症状があるか、薬の服用歴などを確認します
- 神経学的診察:手足の動き、筋力、バランス、反射、表情などをチェックします
- MRI(磁気共鳴画像)検査:脳の構造に異常がないかを確認します
- DATスキャン(ドーパミン神経の画像検査):ドーパミンを作る神経細胞の数を調べます(保険適用の場合があります)
診察で予想されること
神経内科の医師が、あなたの症状をていねいに評価します。診断には時間がかかることがありますが、診断がついたら、症状を和らげるための治療の選択肢を一緒に考えます。セカンドオピニオン(別の医師の意見を聞くこと)を希望する場合は、遠慮なく医師に相談しましょう。
治療
パーキンソン病の治療は、症状を和らげ、生活の質を保つことを目標にします。薬物療法、リハビリテーション、外科治療を組み合わせて、患者さん一人ひとりに合わせて行われます。完治は難しくても、多くの症状は治療で改善します。
自宅でのセルフケア
- 規則正しい生活と、十分な睡眠を心がけましょう。
- 毎日、無理のない範囲で運動を続けましょう(例:ウォーキング、ストレッチ、太極拳)。
- 転倒を防ぐために、家の中の手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床など環境を整えましょう。
- 飲み込みの悩みがある場合は、食事の姿勢、食べ物の形、とろみなどを工夫しましょう。
- 気分の落ち込みや不安があるときは、家族や友人、専門家に話しましょう。
医療治療
薬物療法が治療の中心です。脳内で不足するドーパミンの働きを補う薬や、その働きを助ける薬、症状をやわらげるためのさまざまな薬が使われます。薬の種類や組み合わせ、量は、症状や生活に合わせて医師が調整します。薬の効き目が減ったり、副作用が気になったりした場合は、自分で判断せずに医師に相談してください。また、理学療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーションも、症状を改善するために役立ちます。
手術が検討される場合
薬の効果が続かなくなった場合や、副作用が強い場合には、脳深部刺激療法(DBS)という手術が選択肢となることがあります。脳の特定の部分に電極を埋め込み、微弱な電気で神経を刺激して症状を抑えます。手術を受けるかどうかは、専門のチームで慎重に評価します。
この病気と共に生きる
毎日の生活では、症状を上手にコントロールしながら、無理のないペースで過ごすことが大切です。動作がゆっくりになることを想定して、時間に余裕のある計画を立てましょう。家族や周りの人に症状を理解してもらい、必要なサポートを受けましょう。
生活習慣のアドバイス
- 運動を続ける:筋力とバランスを保つために、ウォーキングや体操を習慣にしましょう。
- 趣味や人との交流を大事にする:外出や社会参加が気分を明るくし、認知機能の維持にもつながります。
- お薬の管理をきちんとする:処方された薬を決まった時間に飲み、自己判断で止めないことが大切です。
食事と運動
栄養バランスのよい食事をとり、特に便秘を防ぐために、食物繊維(野菜、果物、全粒穀物)と水分を十分に摂りましょう。飲み込みにくさがある場合は、調理の工夫やとろみをつけるなど、食べやすい形を検討しましょう。運動は、毎日少しずつでも続けることで、筋力とバランスの維持に役立ちます。
精神的健康と心の健康
パーキンソン病では、うつや不安、不眠、幻覚などの精神面の症状が起こることがあります。これらの症状は、本人にとってつらく、家族にも負担になります。気分の落ち込みや眠りの悩みが続く場合は、我慢せずに医師に相談してください。心のケアの専門家や心理カウンセラーの支援も有効です。
予防
現在のところ、パーキンソン病を確実に予防できる方法はありません。ただし、適度な運動、バランスのよい食事、頭部のけがを避けることなどが、リスクを減らすのに役立つ可能性があります。また、早期の症状に気づいて早く受診することで、進行に合わせた適切な治療を受けることができます。
ワクチン
パーキンソン病を予防するワクチンは、現在ありません。
検診プログラム
一般の健常者を対象にしたパーキンソン病の検診は確立されていません。気になる症状がある場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診し、相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 転倒による骨折や頭部外傷
- 飲み込みの低下による誤嚥性肺炎
- 消化不良、便秘、栄養不足、脱水
- うつ、不安、幻覚、せん妄などの精神症状の悪化
- 認知症の進行
- 日常生活の自力での活動が難しくなる(ADLの低下)
長期的な見通し
パーキンソン病はゆっくり進行する病気ですが、多くの人は治療と生活の工夫によって、長い間、自分らしい生活を続けられます。症状は人それぞれで、新しい治療法も開発されています。希望を持ちながら、医療者と信頼関係を築き、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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