脳卒中(のうそっちゅう)からの回復中に知っておきたい合併症(がっぺいしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳のはたらきに障害が出る病気です。回復期とは、症状が落ち着いてから再び生活の機能を取り戻していく期間のことですが、この時期にさまざまな合併症(回復のじゃまをする体や心のトラブル)が現れることがあります。合併症に早く気づき、適切に対処することが、回復を支えるうえでとても大切です。
重要な事実
- 回復期の合併症は、発症から数週間~数か月たってから現れることもあります。
- 多くの合併症は、早く見つけて対処すれば治療やリハビリで改善できます。
- 合併症を予防するには、医療チームと一緒に体と心の変化を見守ることが重要です。
はい、脳卒中から回復する方の多くが、何らかの合併症を経験します。程度は人によって異なりますが、回復の過程では体の動き、飲み込み、言葉、気分などに新しい症状が現れやすいためです。
脳卒中を起こしたすべての方に可能性があります。特に高齢の方や、高血圧・糖尿病などの持病がある方は注意が必要です。年齢や性別を問わず、回復期には体の状態が変化しやすくなります。
症状
- 顔がゆがむ、片方の手足に力が入らない、言葉が出ない
- 突然の強い頭痛
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 息が苦しい、胸が強く痛む
- ⚠熱が出る、悪寒がする
- ⚠飲み込みが急にむずかしくなった
- ⚠足の片側が赤く腫れて痛む(血の塊の可能性)
- ⚠転んで強い痛みがある、動けなくなった
一般的な症状
- 手足の筋肉がこわばる、またはふるえる
- 飲み込みにくい、むせる、食べ物がのどに残る感じがする
- 言葉が前より出にくい、相手の話が理解しにくい
- 気分が落ち込む、物事に興味を持てない
- 記憶力や集中力がさがる
- めまいやバランスの悪さがある
- 疲れやすさが続く
子供の症状
- 子どもは発達の途中のため、けいれんや学習の遅れとして現れることがあります。
- 体の片側が動きにくい、歩き方の変化などに気づいたら早めに相談しましょう。
- 感情のコントロールが難しくなることもあります。
高齢者の症状
- 転びやすくなる、言葉が出にくくなるなど、新たな症状に気づきにくいことがあります。
- 長く安静にしていると、肺炎や床ずれ、足の血管に血の塊ができるリスクが高まります。
- ぼんやりしたり、うわごとを言ったりする「せん妄」が起こることもあります。
原因
主な原因
- 脳の損傷によって、体を動かす・感じる・考える機能が弱くなっていること
- 長く安静にするために筋肉が衰えたり、血が固まりやすくなったりすること
- 飲み込む力が弱り、食べ物や唾液が気管に入りやすくなること
- 気分や感情を調整する脳のはたらきが乱れること
リスク要因
- 心臓病(心房細動など)
- 脂質異常症(悪玉コレステロールが多い状態)
- 以前の脳卒中、高齢
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上の「緊急」にあてはまる症状が出たときは、ためらわず119番で救急車を呼んでください。
- 安静にしても症状が良くならない、または悪化する場合は、すぐに医療機関へ連絡しましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- 定期的な診察やリハビリの予約を守りましょう。
- 気になる症状や変化は、次の受診日を待たずにメモして、早めに相談しましょう。
診断
医師は問診、神経の診察(動きや感覚、言葉のチェック)、画像検査などを行い、体の状態を調べます。合併症の種類に応じて、飲み込みの評価や血液検査なども追加されます。
行われる可能性のある検査
- 頭部CT・MRI(脳の状態を詳しく調べる)
- 血液検査
- 飲み込みの評価(嚥下機能検査)
- 心電図や心臓の超音波検査
- 言語、認知機能の評価
診察で予想されること
診察では、これまでの経過や今の症状を詳しく聞かれます。検査自体は痛みをともなわないものが多く、必要に応じてリハビリの専門家も評価に加わります。結果をふまえて、あなたに合った回復計画を一緒に立ててくれます。
治療
合併症の治療は、その種類や原因によって異なります。リハビリテーションを中心に、体の機能を高める練習や生活の中での工夫、必要に応じて薬によるサポートを組み合わせて行います。回復には個人差があるため、焦らずに進めることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 医師や理学療法士から指示された運動を、無理のない範囲で行う
- バランスのよい食事を規則正しくとる
- 十分な休養と睡眠をとる
- 飲み込みが弱い人は、食事中は姿勢を正しくし、ゆっくり食べる
- 禁煙し、アルコールは医師の指示にしたがう
医療治療
合併症の種類によって、血を固まりにくくする薬、筋肉のこわばりを和らげる薬、気分を安定させる薬などが使われることがあります。薬の種類や量は医師が慎重に決めます。飲み忘れや自己判断での変更はせず、必ず医師に相談してください。
手術が検討される場合
多くの合併症は手術をせずに治療できますが、脳の圧力が高まる、血の塊が肺に飛ぶ危険があるなどの特別な状況では、手術や処置が検討されることがあります。必要かどうかは専門医が詳しく説明します。
この病気と共に生きる
回復のペースは人それぞれです。無理をしすぎず、できることから少しずつ生活リズムを取り戻しましょう。毎日の小さな変化に目を配り、記録しておくと受診時に役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 定期的に血圧や脈をチェックする
- 体を冷やさない、床ずれ予防のために体位を変える
- 人との交流を続け、閉じこもらない
- 気分の変化や睡眠の様子を観察する
食事と運動
食生活では、塩分を控えめにし、野菜や魚を意識するとよいでしょう。運動は、リハビリの指示に従って、家の中でのストレッチや歩行など安全な範囲で行います。飲み込みに心配がある場合は、食事の形態や進め方も専門家に相談してください。
精神的健康と心の健康
脳卒中後には、脳の変化や生活環境の変化から、気分の落ち込みや不安、いらいらが起こることがあります。これは脳卒中の合併症のひとつであり、決して心が弱いからではありません。つらいときはひとりで抱え込まず、医療者や家族、相談機関に話してください。必要であれば、こころの専門家の助けも受けられます。
予防
脳卒中そのものの再発は、血圧や血糖、生活習慣を整えることで予防しやすくなります。回復期の合併症も、早期発見と適切な予防ケアでリスクを大きく下げることができます。
ワクチン
インフルエンザや肺炎などの感染症は、脳卒中後の方にとって重くなりやすいため、ワクチン接種について医師と相談することをおすすめします。
検診プログラム
定期的な健康診断で、血圧・血糖・コレステロールなどをチェックしましょう。すでに持病がある方は、かかりつけ医の診察を継続してください。
合併症
治療しない場合
- 飲み込みの障害を放置すると、誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が肺に入って起こる肺炎)につながる
- 足の血の塊が肺に飛ぶと、呼吸困難などの深刻な状態になりうる
- 長く動かさないことで関節が固まり、生活の自立度が下がる
- うつ状態が続くと、回復への意欲や体力が低下する
長期的な見通し
合併症は多くが治療やリハビリで改善し、回復の道のりを支えることができます。たとえつまずくようなことがあっても、ゆっくりでも前に進むことは可能です。あなたのペースで、医療チームとともに歩んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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