脳卒中からの回復|退院後のフォローアップケアと再発予防
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳卒中(脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の細胞が傷つく病気)を経験したあと、回復を助け、再発を防ぐために継続して行うケアのことを「フォローアップケア」といいます。退院後も、定期的な診察やリハビリテーション、生活習慣の見直しを続けることが大切です。
重要な事実
- 脳卒中からの回復には時間がかかり、回復の速さや程度は人によって大きく異なります
- 退院後も定期的な診察とリハビリテーションを続けることで、できることが少しずつ増えていきます
- 再発を防ぐためには、血圧の管理や生活習慣の見直しがとても重要です
- 家族や専門職の支えを受けながら、無理のないペースで進むことが回復への近道です
脳卒中は日本人の死亡原因や介護が必要になる原因の上位に挙げられる、決して珍しくない病気です。回復期のフォローアップケアは、脳卒中を経験した多くの人にとって必要なものです。
脳卒中を経験したすべての人が対象です。年齢や性別を問わず、退院後の生活を支え、再発を防ぐために行われます。ご家族にも関わりの深いケアです。
症状
- 突然、顔の片側が下がる、笑顔を作れない
- 片方の手足に力が入らない、または挙げられない
- 言葉が急に出てこない、または相手の言葉を理解できない
- 突然の激しい頭痛が起こる
- 視野の半分が見えにくい、または物が二重に見える
- 体のバランスが急にとれず、立てない
- ⚠新しいまひやしびれが出現した
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠ひどいむせが続き、食事や水分がとれない
- ⚠転倒して頭をぶつけた
- ⚠尿や便が出にくい、または漏れてしまう状態が続く
一般的な症状
- 手足の片側のまひやしびれが残る
- 言葉のもつれや、相手の言葉を理解しにくさが続く
- 物忘れや注意力の低下を感じる
- 気分の落ち込みや不安、涙もろさがある
- 疲れやすさが続く
- 飲み込みにくさや、食事中にむせることがある
子供の症状
- 子どもは大人よりも回復力が高いことがありますが、発達や学習への影響に注意が必要です
- 片側の手足をうまく動かせず、使わないことがあります
- 集中力や記憶力に影響が出ることがあり、学校でのサポートが役立ちます
高齢者の症状
- 高齢者は回復に時間がかかることが多く、転倒に特に注意が必要です
- 筋肉の量が減る「サルコペニア」が進みやすくなるため、早期からのリハビリテーションが大切です
- 誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が気管に入って起こる肺炎)のリスクが高まります
原因
主な原因
- 脳梗塞(のうこうそく):脳の血管が血のかたまりなどで詰まり、血流が途絶える
- 脳出血(のうしゅっけつ):脳の血管が破れて出血し、周囲の脳を圧迫する
- くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ):脳の表面にある血管が破れて、脳を包む膜の間で出血する
リスク要因
- 高血圧(血圧が高い状態が続くこと)
- 脂質異常症(血中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態)
- 心房細動(心臓のリズムが乱れる不整脈の一種)
- 過度の飲酒
- 運動不足
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 脳卒中を疑う緊急の症状が現れたら、迷わず119番に電話して救急車を呼んでください
- 家庭で測った血圧が極端に高い場合(上の血圧が180以上など)は、かかりつけ医にすぐ相談してください
- 新しい症状や、症状の急な悪化がある場合は、同じ日に医療機関を受診してください
定期受診を予約すべき場合:
- 退院時に医師から指示されたスケジュールで、定期的に診察を受けましょう
- 血圧や血液検査の結果を確認するため、月に1回程度の通院が一般的です
- リハビリテーションの進み具合や生活の困りごとを、担当スタッフに相談しましょう
診断
フォローアップケアでは、脳卒中そのものを新たに診断するというよりは、回復の状態や再発のリスクを定期的に評価します。診察と検査の結果を合わせて、リハビリテーションや治療の計画をその都度見直していきます。
行われる可能性のある検査
- 神経学的診察(まひの程度、感覚、平衡感覚、反射などのチェック)
- 血圧測定
- 血液検査(コレステロール値や血糖値などの確認)
- 頭部CTやMRI(脳の状態を画像で確認する検査)
- 心電図(心臓のリズムの乱れがないかの確認)
- 嚥下機能の評価(飲み込みの状態を確認する検査)
診察で予想されること
診察では、最近の体調や生活の様子、服薬の状況などについて医師から質問があります。苦手なことや困っていることを遠慮なく伝えましょう。必要に応じて、検査の予約が入ったり、リハビリテーションの計画が調整されたりします。
治療
脳卒中後のフォローアップケアは、「再発予防」と「機能回復」の2つを柱に進められます。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士など、さまざまな専門職が連携して、一人ひとりの状態に合わせたケアを提供します。
自宅でのセルフケア
- 医師から処方された薬を、指示された量と時間に飲み忘れずに服用する
- 毎日決まった時間に血圧を測定して記録する
- 塩分を控えめにしたバランスのよい食事を心がける
- 無理のない範囲で毎日体を動かし、運動習慣を続ける
- 十分な睡眠と休養をとり、疲れをためない
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
医療治療
再発予防のために、血圧をコントロールする薬や、血液が固まりにくくする薬などが処方されることがあります。また、リハビリテーションとして、歩く・立ち上がるなどの運動機能を回復する理学療法、食事や着替えなどの日常生活動作を練習する作業療法、言葉や飲み込みの機能を改善する言語聴覚療法などが行われます。具体的な薬の種類やリハビリの内容は、医師が状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
脳卒中の急性期には、詰まった血管を再開通させる手術や、破れた血管を修復する手術が行われることがあります。回復期のフォローアップでは、再発の原因となる血管の状態によっては、再発予防を目的とした手術が検討されることもあります。手術の必要性は、担当医が画像検査などの結果に基づいて説明します。
この病気と共に生きる
退院後は、できることから少しずつ日常生活を取り戻していきましょう。ひとりで全部をこなそうとせず、家族や周囲の助けを借りながら、無理のないペースで過ごすことが回復につながります。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に起きて、規則正しい生活リズムをつくる
- 転倒を防ぐため、家の中の段差をなくし、手すりや滑り止めマットを活用する
- 入浴や着替えなどは、できることは自分で行い、難しい部分は介助を受ける
- 地域の通所リハビリテーション(デイケア)や訪問リハビリテーションを活用する
- 趣味や人との交流を少しずつ再開し、社会とのつながりを保つ
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜や魚を中心としたバランスのよい内容を心がけましょう。加工食品や外食は塩分が多くなりがちなので注意が必要です。運動は、医師や理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で歩行やストレッチを毎日続けることが回復を助けます。
精神的健康と心の健康
脳卒中後には、気分の落ち込みや不安、イライラを感じることが少なくありません。これは「脳卒中後うつ」と呼ばれることもあり、脳のダメージと関係している場合もあります。「頑張りが足りない」と思わずに、つらい気持ちを家族や友人に話しましょう。気分の落ち込みが長く続く場合は、医師や看護師に相談することが大切です。もし眠れない、食事がとれない、自分を傷つけたくなるなどの強いつらさがある場合は、すぐに医療機関や地域の精神保健福祉センターなどの相談窓口につながってください。命の危険を感じる場合は、ためらわずに119番を利用しましょう。
予防
脳卒中そのものを完全に防ぐことはできませんが、再発は予防が可能です。高血圧や糖尿病などのリスク因子を管理し、禁煙や適度な運動などの生活習慣を見直すことで、再発のリスクを大きく減らすことができます。厚生労働省も、健康診断の定期的な受診や生活習慣の改善を通じた脳卒中予防をすすめています。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌の予防接種は、脳卒中後の体力が落ちている時期に起こりやすい感染症や誤嚥性肺炎の予防に役立つことがあります。接種については、かかりつけ医に相談して検討しましょう。
検診プログラム
定期的な健康診断で、血圧や血糖値、コレステロール値をチェックしましょう。心電図検査は、再発のリスクとなる心房細動の早期発見に役立ちます。地域の健診や職場の健康診断を活用してください。
合併症
治療しない場合
- 脳卒中の再発(再発すると、障害がさらに重くなることがあります)
- 誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が気管に入ることで起こる肺炎)
- 転倒による骨折(特に大腿骨の骨折)
- 筋肉の萎縮や関節のこわばり(体を動かさないことで進みます)
- うつ状態や、社会とのつながりが減って孤立すること
長期的な見通し
脳卒中からの回復は人それぞれですが、多くの人が退院後もリハビリテーションや適切なフォローアップを続けることで、できることを少しずつ増やしていけます。再発を防ぐための管理を続けながら、自分らしい生活を築いていくことは十分に可能です。回復の過程を焦らず、希望を持って一歩ずつ進んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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