妊娠中の脳卒中(ストローク)からの回復
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中に脳卒中(脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の一部に血液が届かなくなること)が起こると、お母さんの命と脳を守ることが最優先になりながら、赤ちゃんの安全にも配慮した治療が必要です。適切な治療とリハビリで、多くの方が回復に向かうことができます。
重要な事実
- 妊娠中の脳卒中はまれですが、妊娠中から産後数週間までのあいだに起こることがあります。
- 脳卒中が起こった場合、脳の専門医、産科医、リハビリチームが連携して治療にあたります。
- 回復には時間がかかりますが、赤ちゃんのケアを周りに頼みながら、一歩ずつリハビリを進めることが大切です。
妊娠中の脳卒中は非常にまれで、おおよそ10万人の分娩につき数人程度と考えられています。しかし、妊娠中は体の変化により血栓ができやすくなり、脳卒中が起こりやすい時期でもあります。
妊婦さんであればどなたでも起こり得ますが、特に妊娠後期(7~9か月)や出産直後から産後数週間の間に多くみられます。高齢出産や妊娠高血圧症候群のある方は注意が必要です。
症状
- 顔の片側が急に下がる
- 片方の腕や脚が突然麻痺する、力が入らない
- 言葉が急に話せなくなる、相手の言葉が理解できない
- 片目が見えない、視野が半分欠ける
- 突然の激しい頭痛
- 意識がもうろうとする、けいれんが止まらない
- ⚠血圧が高いと言われているのに、頭痛が続く
- ⚠妊娠中で、急なむくみや体重増加がある
- ⚠赤ちゃんの動きが減ったような気がする
一般的な症状
- 顔の片側だけが突然下がる
- 片方の腕や脚に力が入らず、上げられない
- 言葉が話しにくい、または相手の言葉が理解できない
- 片方の目が見えにくい、物が二重に見える
- 経験したことがないほどの激しい頭痛
- めまいやふらつきで立っていられない
子供の症状
- この記事は妊娠中の方を対象としています。一般的に子どもの脳卒中では、突然のけいれん、片側の手足の麻痺、意識がもうろうとする、激しい嘔吐などがみられます。気になる症状があれば、すぐに救急相談をしてください。
高齢者の症状
- 高齢者の場合、症状が漠然としていることがあります。突然のふらつき、手足の感覚の鈍り、ボーッとする、急に認知機能が落ちたような変化も脳卒中の可能性があります。妊娠中の方には当てはまりにくいですが、同様の症状が突然現れたら119番に連絡してください。
原因
主な原因
- 血液の塊(血栓)が脳の血管を詰まらせる脳梗塞
- 脳の血管が破れて出血する脳出血
- 脳を包む膜の下の血管が破れるくも膜下出血
リスク要因
- 妊娠高血圧症候群(妊娠中に血圧が高くなること)
- 高齢出産(35歳以上)
- 糖尿病や肥満
- 心臓病や血栓症の既往がある
- 喫煙や飲酒
- 片頭痛の持病がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 脳卒中の症状が一つでもあれば、ためらわず119番に連絡する
- 妊娠中に突然の激しい頭痛やめまいが続く場合は、すぐに産科・救急外来を受診する
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠健診で血圧が高いと言われた場合、妊娠高血圧症候群の管理について医師に相談する
- 過去に脳卒中や血栓症を起こしたことがある場合、妊娠前にリスクを相談する
診断
医師が問診と神経診察(手足の力、感覚、言葉の確認)を行い、脳卒中が疑われる場合は画像検査で脳の状態を調べます。妊娠中でも、必要と判断されればCTやMRI検査を行います。可能な範囲でおなかの赤ちゃんを守りながら検査します。
行われる可能性のある検査
- 頭部CT(コンピュータ断層撮影)
- 頭部MRI(磁気共鳴画像)
- 脳の血管を調べる血管造影や超音波検査
- 血液検査(血小板の数、凝固能、血糖など)
- 胎児の状態を確認する超音波検査
診察で予想されること
検査は急いで行う必要があります。妊娠中でも検査で得られる情報は命を守るためにとても大切です。医師はおなかの赤ちゃんを守る方法も考えながら、できるだけ短い時間で必要な検査を行います。
治療
治療は、脳卒中が詰まりによるものか出血によるものか、重症度、妊娠の時期によって異なります。お母さんの命と脳を守ることを最優先に、赤ちゃんへの影響も考慮したチームで方針を決めます。回復期にはリハビリテーションがとても大切です。
自宅でのセルフケア
- 医療機関の指示に従い、処方された薬を自己判断で中止しない
- 日中も家族や助産師に赤ちゃんの世話を頼み、十分な休息をとる
- 頭痛やしびれなど気になる症状があれば我慢せず医師に伝える
- アルコールや喫煙は避ける
- 気持ちの落ち込みが続く場合は早めに相談する
医療治療
治療には、血管の詰まりを溶かす薬、新たな血栓を作りにくくする薬、血圧を下げる薬、脳の腫れを抑える薬などが用いられます。妊娠中でも使える安全性の高い薬が選ばれます。具体的な薬の名前や量は担当医が妊娠の状態と合わせて決めます。出血による脳卒中の場合は、止血する治療や、血管のこぶ(動脈瘤)を治療する方法が検討されることがあります。
手術が検討される場合
脳の出血が大量で脳への圧力が強い場合や、動脈瘤が原因の場合は、手術やカテーテル治療(血管内治療)が必要になることがあります。治療方針は、担当医がお母さんと赤ちゃんの状態を見ながら詳しく説明します。
この病気と共に生きる
回復の速さは人によって違います。最初は体の片側が麻痺していても、少しずつ動きが戻ることもあります。焦らず、一日ごとの小さな目標を立ててリハビリを続けましょう。介助が必要な生活が続く場合は、地域の支援サービスを活用できます。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- 医師から許可が出るまで、重い物を持ち上げる運動は控える
- 血圧を定期的に測る
- 通院やリハビリの予定を家族と共有する
食事と運動
医師や栄養士のアドバイスに従い、塩分を控えバランスのよい食事をとりましょう。運動は、理学療法士(体の動きを専門に支える職種)の指示に従って無理のない範囲で行います。妊娠中はおなかの赤ちゃんの状態も見ながら安全に行うことが大切です。
精神的健康と心の健康
脳卒中後は気分が沈んだり不安になったりすることがあります。妊娠・出産によるホルモンの変化や睡眠不足も心に影響します。ひとりで抱え込まず、助産師や心理士、家族や友人に気持ちを伝えましょう。必要に応じて精神面のサポートを受けることができます。
予防
すべての脳卒中を予防できるわけではありませんが、妊娠高血圧症候群を早期に見つけて治療し、血圧や血糖をしっかり管理することでリスクを下げられます。妊娠前から健康な体重を維持し、禁煙・禁酒をすることも大切です。
ワクチン
脳卒中を直接予防するワクチンはありません。妊娠中はインフルエンザなどの感染症が重症化しやすいため、医師と相談して必要に応じてワクチン接種を検討してください。
検診プログラム
妊娠健診では血圧と尿の中のたんぱく(妊娠高血圧症候群のサイン)を毎回調べます。医師から追加の検査をすすめられたら、必ず受けてください。
合併症
治療しない場合
- 脳のダメージが進み、手足の麻痺などの後遺症が残る可能性がある
- 言葉を理解する・話す機能に障害が残ることがある
- 視野の半分が欠けたり、記憶力や注意力に影響が出ることがある
- 重度の場合は命に関わることがある
長期的な見通し
妊娠中の脳卒中はとても心配なことが続きますが、最近は治療とリハビリの発達によって、回復して退院し、自宅で赤ちゃんと生活できる方が増えています。回復には時間がかかるかもしれませんが、医療者や家族の支援を受けながら、無理のないペースで前に進んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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