甲状腺と吐き気
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺は首の前側にある、ちょうちょのような形をした小さな臓器です。ここから出る甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝(エネルギー消費のペース)を整える大切な役割をしています。甲状腺の働きが強すぎたり弱すぎたりすると、胃や腸の動きにも影響が出て、吐き気を感じることがあります。吐き気の原因は甲状腺とは限りませんが、長く続く吐き気やほかの症状がある場合は、甲状腺の検査を受ける価値があります。
重要な事実
- 甲状腺の病気は、吐き気の原因の一つになりえますが、吐き気だけで甲状腺の病気と決まるわけではありません。
- 甲状腺ホルモンは全身の臓器に働くため、胃腸の調子にも影響します。
- 吐き気に加えて、体重の変化・動悸・疲れやすさ・寒がり・暑がりなどを伴う場合は甲状腺の可能性があります。
- 甲状腺の病気は適切に診断・治療すれば、多くの場合コントロールできます。
吐き気は甲状腺の病気でよく見られる症状ではありませんが、起こることがあります。すべての吐き気のなかで、甲状腺が原因の割合は多くないと考えられています。
甲状腺の病気は女性に多く見られ、妊娠後や子育て中、更年期などホルモンの変化がある時期に発症しやすい傾向があります。年齢を問わず起こりますが、特に20代から50代の女性に多いとされています。
症状
- 胸の強い痛みや圧迫感がある
- 息が苦しくて横になれない
- 体温が非常に高い(40度近く)のに汗をかいている
- 意識がもうろうとして呼びかけに反応しない
- 激しい動悸で立っていられない
- 吐き気がひどく、水分さえも取れない
- ⚠吐き気が24時間以上続き、食事や水分が取れない
- ⚠吐いたものに血が混じっている
- ⚠体重が急激に減っている
- ⚠脈が乱れたり、極端に速くなったりする
- ⚠意識はあるが、自分で動けないほど弱っている
一般的な症状
- 吐き気・むかむかする感じ
- 食欲が落ちる
- おなかの不調(痛み、張り、便通異常)
- 体重の急な増減
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 疲れやすい、だるい
- 寒さ・暑さへの敏感さ
- 手のふるえ
- 不眠やイライラ
子供の症状
- 吐き気やおなかの痛み
- 成長がゆっくりになる
- 体重が増えにくい、または減りやすい
- 疲れやすく、学校で集中できない
高齢者の症状
- 吐き気のほかに、食欲低下や体重減少
- 体がだるく、動くのがおっくうになる
- ぼんやりする、混乱しやすい
- 便秘や下痢などのおなかの症状
原因
主な原因
- 橋本病などの自己免疫の病気で、甲状腺ホルモンが過剰に出る(甲状腺機能亢進症)
- 甲状腺ホルモンが不足する(甲状腺機能低下症)
- 甲状腺に炎症が起きる(甲状腺炎)
- 甲状腺の腫瘍や結節がホルモンのバランスに影響する
- 妊娠によるホルモンの変化
リスク要因
- 家族に甲状腺の病気の人がいる
- 自分や家族に自己免疫の病気(リウマチなど)がある
- 女性であること
- 最近妊娠・出産した
- 強いストレスや大きな疲れが続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い吐き気とともに動悸・息苦しさ・意識の変化がある
- 吐き気が続き、脱水が心配される
- 体重が1か月で5キロ以上変動した
定期受診を予約すべき場合:
- 吐き気が何週間も続く
- 吐き気に加えて、疲れ、体重変化、寒がり・暑がりなどの症状がある
- 首の前側にしこりや腫れを感じる
- 妊娠中や産後に吐き気が続く
診断
医師はまず、お話を聞き、首の触診(触って甲状腺の大きさや硬さを確かめる)を行います。その後、血液検査で甲状腺ホルモンの値が正常かどうかを調べます。必要に応じて超音波検査などを行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(甲状腺刺激ホルモン、FT3、FT4など)
- 首の触診
- 超音波(エコー)検査
- 必要に応じて、甲状腺シンチグラフィやその他の画像検査
診察で予想されること
検査は痛みを伴うものはほとんどなく、血液検査は腕から採血するだけです。結果は通常、数日から1週間ほどでわかります。医師からは、検査結果に基づいて「今の甲状腺の状態」と「今後の方針」が説明されます。不安なことがあれば、遠慮なく質問してください。
治療
甲状腺と吐き気の治療は、原因となる甲状腺の病気に対して行われます。甲状腺の働きが強すぎる場合と弱すぎる場合とでは対処が異なります。治療の目的は、ホルモンのバランスを整え、吐き気などの症状を和らげることです。
自宅でのセルフケア
- 食べやすいものを少しずつ、数回に分けて食べる
- 脂っこいものや強い香りのものは控える
- 冷たい飲み物や白湯をこまめに飲み、脱水を防ぐ
- 体を温め、十分な休養をとる
- 吐き気が強いときは無理に食べず、胃を休める
医療治療
治療には、甲状腺ホルモンのバランスを整える薬や、炎症を抑える薬が使われることがあります。症状や検査結果に合わせて、医師が最適な方法を選びます。また、病状によっては抗甲状腺薬や放射性ヨウ素治療、手術などの選択肢が検討されることもあります。薬の名前や具体的な治療法は医師が説明するため、必ず指示に従ってください。
手術が検討される場合
甲状腺が大きく腫れて気道を圧迫する場合、薬で改善しない場合、または悪性の腫瘍が疑われる場合には、手術が検討されます。ただし、手術が必要かどうかは専門医が慎重に判断します。
この病気と共に生きる
甲状腺の治療は長く続くこともありますが、多くの人は薬や治療で症状をうまくコントロールしています。毎日決まった時間に薬を飲み、医師の予約を守り、定期的に血液検査を受けましょう。症状の記録(吐き気の頻度、体重、体温、心拍など)をつけておくと、診察のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- ストレスをため込まず、リラックスする時間をつくる
- 無理な運動は避け、体調に合わせて軽い散歩などを行う
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
- 寒さや暑さから体を守る
食事と運動
バランスのよい食事を心がけましょう。吐き気があるときは無理せず、消化のよい食べ物(おかゆ、うどん、バナナなど)を選んでください。ヨウ素の過剰摂取は甲状腺に影響することがあるため、昆布やわかめなどの海藻類は食べ過ぎないようにしましょう。運動は負荷が軽めのもの(ウォーキングやヨガなど)から始め、体調が悪いときは休むことが大切です。
精神的健康と心の健康
吐き気が続くと、食事が楽しめず気分が落ち込んだり、不安になったりすることがあります。甲状腺の病気は心の状態にも影響することが知られています。つらいときは無理をせず、医師や看護師、家族に相談しましょう。
予防
甲状腺の病気の多くは自己免疫疾患が関係しており、完全に予防することはできません。しかし、規則正しい生活とバランスのよい食事、ストレス管理によって、発症リスクや症状の悪化を減らせる可能性があります。
ワクチン
甲状腺の病気を直接予防するワクチンはありません。
検診プログラム
甲状腺の病気の症状がある場合や、家族に甲状腺疾患の人がいる場合は、健康診断で甲状腺の検査を検討してもらうとよいでしょう。ただし、症状がなくても全員に検査が必要なわけではありません。
合併症
治療しない場合
- 心臓への負担が大きくなる(動悸、不整脈、心不全など)
- 骨がもろくなる(骨粗しょう症)
- 体重減少や筋力低下が進む
- 妊娠中の母体や赤ちゃんに影響が出ることがある
- 重度の場合は「甲状腺クリーゼ」という危険な状態になることがある
長期的な見通し
甲状腺と吐き気の状態は、適切な診断と治療でほとんどの場合、改善が期待できます。治療は長引くこともありますが、多くの方は職場や家事、育児などふだんの生活を続けながら、症状と上手につきあっています。医師の指導を守り、定期的に通院すれば、安心して生活することができます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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