骨盤臓器脱(骨盤底のゆるみ)の予防と対策
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
骨盤臓器脱は、子宮や膀胱(ぼうこう)、直腸などの骨盤内の臓器が、骨盤底(骨盤の底にある筋肉やじん帯)で支えきれずに下がり、膣の中から外へ出てきてしまう状態をいいます。
重要な事実
- 骨盤底の筋肉やじん帯がゆるむことで起こります。
- 症状が出ないこともありますが、出ると排尿や排便、歩行に影響が出ることがあります。
- 骨盤底筋体操や生活習慣の改善で進行を遅らせたり、防いだりできます。
決して珍しい病気ではありません。出産経験のある40~50代以降の女性によく見られ、閉経後に症状が現れたり強くなったりすることがあります。
出産を経験した女性に多く、特に難産や大きな赤ちゃんの出産、出産回数が多い場合にリスクが高まります。閉経後の女性や、慢性的な便秘、重い物を扱う仕事をしている人にも起こりやすくなります。
症状
- 子宮や膀胱の一部が膣の外に出たまま戻らず、強い痛みがある
- 急に尿が全く出なくなった
- 大量の出血がある
- ⚠膣の痛みや違和感が急に強くなった
- ⚠尿や便の出方がこれまでと違う、または苦しい
- ⚠下腹部に強い張りや痛みがある
一般的な症状
- 膣から何か出ているような感じがする
- 腰や下腹部に重さや違和感を感じる
- 尿漏れや排尿しにくさ、頻尿
- 便が出しにくい
- 性交時に痛みや違和感がある
- 歩くとすれる感じがある
原因
主な原因
- 妊娠・出産(骨盤底の筋肉やじん帯が伸展・損傷するため)
- 加齢による骨盤底組織の衰え
- 閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)減少
- 慢性的な腹圧がかかる状態(便秘、重い物の持ち上げ、慢性的なせき)
リスク要因
- 出産回数が多い
- 大きな赤ちゃんや難産
- 慢性のせき(喘息やCOPDなど)
- 重労働などで重い物を持つ習慣
- 便秘が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合は、すぐに救急車(電話119)を呼びましょう。
- 臓器が外に出たまま戻らず、色が変わるほど強い痛みや腫れがある場合は、時間外でも医療機関へ連絡してください。
診断
婦人科の診察で行います。まず問診で、出産歴や気になる症状を詳しく確認します。その後、内診(膣の中に指を入れて診ること)で、子宮や膀胱の位置、脱の程度を調べます。
行われる可能性のある検査
- 内診(骨盤底の状態や脱の程度を確認)
- 超音波検査(エコー)
- 必要に応じて尿流動態検査(排尿の機能を調べる検査)
診察で予想されること
診察室で診察台に上がり、医師が膣の中に指を入れて臓器の位置を確かめます。力を入れたり、いきんだりして、脱の程度を調べることがあります。少し不快な感じはありますが、数分で終わります。痛みが強い場合は医師に伝えてください。
治療
治療は、症状の程度や年齢、妊娠を希望するかどうかなどによって変わります。軽度であれば骨盤底筋体操や生活改善で経過を見ます。中等度以上では、ペッサリー(膣に入れて臓器を支える器具)や手術が選択されます。
自宅でのセルフケア
- 骨盤底筋体操を毎日続ける(骨盤の底の筋肉を締めたり緩めたりする運動)
- 便秘を防ぐ(食物繊維と水分を十分に摂る)
- 重い物を持ち上げない
- 体重を適正に保つ
- 喫煙をやめる(慢性的なせきを防ぐため)
医療治療
ペッサリーという器具を膣内に装着する非手術的な治療法があります。また、骨盤底筋のトレーニングを専門家から指導してもらうこともあります。閉経後で膣の乾燥や萎縮がある場合は、局所の保湿や組織の健康を保つための女性ホルモン療法が検討されることがあります。具体的な薬の名前や用量は、医師が症状や状態に合わせて判断しますので、必ず相談してください。
手術が検討される場合
症状が重く、日常生活に大きな影響がある場合や、ペッサリーが合わない場合は手術が検討されます。手術には、メッシュ(補強用のシート)を使う方法と使わない方法があります。どの治療がよいか、リスクや回復期間を含めて医師と十分に相談することが大切です。
この病気と共に生きる
骨盤臓器脱と診断されても、生活の工夫で症状を軽くすることができます。重い物を避け、いきみすぎないようにし、体への負担を減らしましょう。外出時は、フィット感のある下着や吸収性のあるサニタリー製品を使うと安心感があります。
生活習慣のアドバイス
- 骨盤底筋体操を毎日の習慣にする
- 便秘を予防する(野菜・果物・水分をしっかり)
- 喫煙を避ける
- 高所での飛び跳ねるような運動は避ける
- 体重増加を防ぐ
食事と運動
便秘を防ぐため、食物繊維の多い野菜や果物、全粒穀物を意識して摂りましょう。水分も1日1.5~2リットルを目安に十分に飲んでください。ウォーキングや水泳など、骨盤底に過度な負担をかけない軽い運動は血行を良くし、症状の維持に役立ちます。激しい運動は尿漏れが悪化することがあるので、医師に相談してから行いましょう。
精神的健康と心の健康
尿漏れや下腹部の違和感は、人に知られるのが恥ずかしく、外出を控えたり気分が落ち込んだりすることがあります。「自分だけではない」と思うことが大切です。この悩みは多くの女性が経験するものです。気持ちを一人で抱え込まず、医師や看護師に相談しましょう。
予防
すべての人が完全に予防できるわけではありませんが、骨盤底筋体操や生活習慣の改善によって発症リスクを減らしたり、進行を遅らせたりすることができます。特に出産後は、早めに骨盤底筋体操を始めると効果的です。
ワクチン
骨盤臓器脱を直接予防するワクチンはありませんが、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは子宮頸がん予防の一つです。骨盤の健康全般に関わるため、かかりつけ医に相談してみてください。
検診プログラム
骨盤臓器脱のための特別な検診はありませんが、婦人科の検診や子宮がん検診の際に、骨盤底の状態について相談できます。気になる症状があれば、検診時に医師に伝えましょう。
合併症
治療しない場合
- 症状が進行すると、脱の程度が大きくなり、排尿障害や腎臓への負担が出ることがあります。
- 膣の粘膜が露出したままだと、すれたり傷ついたりして出血や感染のリスクが高まります。
- 便が出しにくく、便秘がさらに悪化することもあります。
長期的な見通し
骨盤臓器脱は治療によって多くの場合、症状が改善します。生活習慣の改善と骨盤底筋体操だけでも軽度の症状は良くなることがあります。中等度以上でもペッサリーや手術で日常生活の質を取り戻せる可能性が高く、決して絶望される病気ではありません。専門医に相談すれば、自分に合った対策が見つかります。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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