交代勤務(シフトワーク)の健康を守るために
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
交代勤務とは、日勤・夜勤・早番・遅番など、仕事をする時間帯がずれる働き方のことです。体には「体内時計」というリズムがあり、このリズムと仕事の時間がずれることで、睡眠や体調、心の健康に影響が出ることがあります。交代勤務に関連する体調不良は、特別な病気というよりも、生活リズムの乱れから起こる不調のことを指します。
重要な事実
- 体内時計の乱れは、眠気・疲れ・集中力低下を招きます。
- 長く続くと、生活習慣病(高血圧や糖尿病など)やうつのリスクが高まる可能性があります。
- 睡眠のとり方や光の使い方、食事の工夫で、体の負担を大きく減らせます。
- 仕事の勤務表の調整や、職場の産業医・保健師への相談も対策の一つです。
交代勤務は、病院や工場、物流、コンビニ、警備、介護、消防など、社会を支える多くの職場で行われています。夜勤や早朝勤務を含む仕事をしている人は、日本に数百万人いると言われ、誰にでも起こりうる健康課題です。
交代勤務に従事するすべての人に影響する可能性があります。特に、勤務時間が不規則に変わる「ローテーション勤務」の人や、長い夜勤を続ける人、年齢が上がった人ほど、体の調整が難しくなると言われています。
症状
- 突然の強い胸の痛みがある
- 息が苦しくて動けない
- 意識を失った、または激しいめまいで立っていられない
- ろれつが回らない、顔や手足の片側が動かない(脳卒中の可能性)
- 強烈な頭痛が突然起こった
- ⚠眠気による居眠り運転に近い状態があった、または交通事故を起こしそうになった
- ⚠強い不眠が続き、日常生活が送れない
- ⚠「消えてしまいたい」など気分の落ち込みが激しい、または強い不安がある
- ⚠仕事中にボーッとして、ケガや事故につながりそうなミスがあった
一般的な症状
- 仕事中に強い眠気や頭がぼーっとする感覚がある
- 寝ようと思ってもなかなか眠れず、寝ても疲れが取れない
- 常に疲労感があり、体が重い
- 食欲が落ちたり、胃がもたれたりする
- イライラしやすくなる、気分が落ち込む
- 注意力や集中力が続かない、忘れっぽくなる
子供の症状
- 交代勤務そのものは大人の働き方なので、子ども自身にこの症状はありません。ただし、親の夜勤の生活リズムの影響で、子どもの睡眠や生活リズムが乱れることがあります。
- 子どもに不眠や疲れ、情緒の不安定さが見られる場合は、他の原因のこともありますので、小児科医に相談してください。
高齢者の症状
- 眠りが浅くなりやすく、夜勤後の回復に時間がかかる
- だるさや意欲の低下が強く出やすい
- 転倒や事故のリスクが高まることもある
- 高血圧や糖尿病などの持病がある場合、交代勤務の負担で悪化することがある
原因
主な原因
- 体内時計と仕事時間のズレが大きい(昼に眠り、夜に働く状態)
- 眠る環境が明るすぎる、またはうるさい(睡眠が浅くなる)
- 夜勤の合間の休みが短い、勤務が不規則に変わることが多い
- コーヒー・エナジードリンク・アルコールなどで体調を無理やり調整している
- 運動不足や栄養バランスの偏りが続く
リスク要因
- 年齢が高い(特に40代以降)
- 睡眠時無呼吸症候群や高血圧、糖尿病、胃の病気などの持病がある
- 交代勤務の回数が多い、夜勤が多い、休みが少ない勤務形態
- 家族の生活(家事や育児)で休息時間が確保できない
- もともと朝型・夜型など、体内時計のタイプが合わない場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 不眠や強い眠気が続き、仕事や日常生活に支障が出ている
- 飲酒や薬に頼らないと眠れない状態が続いている
- 気分の落ち込みがひどく、以前楽しめていたことに興味が持てない
- 仕事中の強い眠気で事故やヒヤリハットを経験した
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で血圧や血糖値、コレステロールの異常を指摘された
- 胃腸の不調や頭痛、肩こりなどが数週間以上続いている
- 昼間のすごい眠気に悩んでいる
- 自分の体調管理方法について産業医やかかりつけ医に相談したい
診断
医師は、あなたの勤務パターンと症状を詳しく聞き取り、睡眠の状態を確認することで診断の手がかりを得ます。必要に応じて、睡眠日記(いつ寝て、いつ起きているかを記録するもの)や、体の動きを測る機器、血液検査などを組み合わせて調べます。
行われる可能性のある検査
- 睡眠日記(就寝時間・起床時間・眠気の程度を1~2週間記録する)
- アンケートによる眠気や不眠の評価
- 腕時計型の活動計(アクチグラフ)による睡眠リズムの測定
- 血圧や血液検査など、生活習慣病のチェック
- 必要に応じ、終夜睡眠ポリグラフ検査(睡眠時の呼吸や脳波を調べる精密検査)
診察で予想されること
診察では、まず症状や生活リズムについての会話があります。「いつ眠れないのか」「どんなときに強い眠気が起こるのか」を伝えやすくするため、あらかじめメモを準備しておくと良いでしょう。診断には数週間かかることもありますが、無理なく進めていけます。
治療
交代勤務による体調不良の治療の中心は、睡眠と生活リズムを整える「非薬物療法」です。眠る時間帯や環境を工夫し、光の使い方を調整することで、体を慣れさせていきます。医師や専門家の指導のもとで、あなたの生活に合った対策を一緒に見つけていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 仮眠(パワーナップ)を上手に取り入れる。夜勤中に15〜30分だけ眠ると、眠気が減り、安全性が高まります。
- 朝帰宅後はサングラスなどで強い光を避け、寝室を真っ暗にして“夜”をつくる。
- 規則正しい時間に軽い運動をする。夜勤前の運動は避け、睡眠の2〜3時間前には終える。
- カフェインは朝〜午後早めにし、夜勤の後半は摂りすぎないようにする。アルコールは睡眠を妨げるため控えめに。
- 休みの日でも、大きく寝坊せず、体内時計のリズムを極端に崩さないようにする。
医療治療
医療機関では、必要に応じて、短期的に睡眠を助ける薬や、患っている人の覚醒をサポートする薬が検討されることがあります。ただし、薬は単独ではなく、生活リズムの調整や心理的な援助と組み合わせて、医師の管理のもとで使うことが原則です。市販薬を自己判断で長く使うのは避けてください。
手術が検討される場合
該当しません。
この病気と共に生きる
交代勤務をしながら健康を保つには、「自分に合った睡眠パターン」を少しずつ作ることが鍵です。勤務終わりの光の浴び方、帰宅後の過ごし方、休みの日の過ごし方を工夫して、体の負担を軽くしていきましょう。また、職場の同僚と協力して、できるだけ勤務の区切りを一定にしてもらうことも助けになります。
生活習慣のアドバイス
- 眠る前に、スマホやパソコンの強い画面を見ずに、ゆったりした時間を持つ
- 寝室はカーテンを遮光タイプにし、耳栓やアイマスクを使う
- 便秘や胃の不調を防ぐため、食物繊維や水分を十分にとる
- 疲れがたまっているときは、家事を家族と分担するなどして休息を最優先にする
- 仕事の悩みは、信頼できる同僚や産業カウンセラーに話す
食事と運動
食事は、三食を規則的にとることが基本ですが、夜勤の場合は「真夜中に食べすぎない」ことが大切です。夜勤中は、消化の良いおにぎりや野菜、果物などを少しずつ食べ、揚げ物や脂っこい食べ物は控えめにしましょう。運動は週2〜3回の有酸素運動(ウォーキングなど)を日勤の日の前後に行うと、睡眠の質が上がります。
精神的健康と心の健康
交代勤務は心にも負担がかかります。眠れない・疲れが取れない、という状態が続くと、不安やイライラ、落ち込みにつながることがあります。気分の不調を感じたら、「怠けている」のではなく体と心からのサインとして、早めに相談してください。
予防
交代勤務そのものを完全に避けることはできないかもしれませんが、健康への影響は多くの場合予防可能です。勤務表を連続の夜勤にしすぎない、夜勤後に十分な休みを確保する、明るい光をうまく使う、仮眠を取り入れる、などの対策でリスクを大きく減らせます。
ワクチン
交代勤務そのものにワクチンはありませんが、交代勤務で免疫力が落ちやすいときは、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの一般的な予防接種を、体調の良いときに受けておくことが勧められます。
検診プログラム
年に1回の定期健康診断は必ず受けましょう。また、厚生労働省は交代勤務を含む労働者に対して、産業医による面接指導を受けられる制度を設けています。勤務時間が長い方や体調不良が続く方は、この制度を利用することをおすすめします。
合併症
治療しない場合
- 慢性的な睡眠不足から、集中力や記憶力が低下する
- 高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病になりやすくなる
- うつ病や不安障害などの心の病気を発症するリスクが高まる
- 生活習慣病や心臓病のリスクが高まる
- 居眠り運転や労働災害(ケガ・事故)の原因になる
長期的な見通し
交代勤務による体調の乱れは、適切な対策で十分に改善できることが多いです。寝環境の工夫、勤務中の仮眠、光の使い方、医師や産業医のサポートなどを続けることで、健康を守りながら働き続けることができます。あきらめずに、あなたに合った方法を見つけていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。