脳卒中を予防し、回復するために
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなり、さまざまな神経の症状が現れる病気です。主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つのタイプがあります。
重要な事実
- 脳卒中は命に関わることがありますが、早く気づいて119番に連絡すれば、後遺症を軽くできる可能性があります。
- 高血圧、喫煙、糖尿病、心房細動などが主な危険因子です。これらを管理することで予防できます。
- 発症後の回復には、リハビリテーションと再発予防がとても大切です。
日本では、脳卒中はがん、心臓病と並んで死亡原因・要介護原因の上位に挙げられる、身近な病気です。高齢になるほど増えますが、働き盛りの人にも起こります。
高血圧の人、喫煙者、糖尿病・脂質異常症の人、心房細動のある人、運動不足の人、過度の飲酒をする人などに多く見られます。年齢を重ねるとリスクが高くなります。
症状
- 突然、片方の手足や顔に麻痺がある
- 言葉が話せない、または相手の言葉が理解できない
- 意識を失う、呼びかけても反応しない
- これまでに経験したことのない激しい頭痛がある
- 片方の視野が見えない、目が見えない
- ⚠手足のしびれや言葉のもつれが数分で消えた(一過性脳虚血発作の可能性)
- ⚠めまいやふらつきが続く
- ⚠頭痛が続き、吐き気やおう吐を伴う
一般的な症状
- 片方の手足に力が入らない、動かない、しびれる
- 顔の片側がゆがむ、下がる
- 言葉が話しにくい、相手の言葉が理解できない
- 突然、激しい頭痛がする
- 片方の視野が見えにくい、物が二重に見える
- ふらふらして歩けない、めまいがする
子供の症状
- 子どもではまれですが、けいれんや意識がもうろうとする、片側の手足が動かない、などの症状が突然現れることがあります。
- 言葉の発達の遅れや、歩き方の異常などで気づかれることもあります。
高齢者の症状
- 高齢者では、はっきりした麻痺がなくても、突然ぼんやりする、転びやすくなった、飲み込みが悪くなった、などの変化が現れることがあります。
原因
主な原因
- 脳血管が動脈硬化などで狭くなり、血栓(血の塊)で詰まる「脳梗塞」
- 高血圧などで血管壁が弱くなり破れる「脳出血」
- 心臓の不整脈(心房細動など)でできた血の塊が脳の血管に飛ぶ「心原性脳塞栓症」
- 脳動脈瘤が破れて出血する「くも膜下出血」
リスク要因
- 脂質異常症(悪玉コレステロールが高いなど)
- 心房細動
- 運動不足
- 過度の飲酒
- ストレス
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 脳卒中の症状が突然現れたら、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 症状が短時間で治まった場合でも、脳卒中の前触れ(一過性脳虚血発作)の可能性があるため、同じ日に医療機関を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病がある方は、定期的に受診して治療を続けましょう。
- 生活習慣の改善やリハビリテーションについて、医師や看護師、理学療法士などに相談しましょう。
診断
医師が問診と神経の診察を行い、CTやMRIなどの画像検査で脳の血管や組織の状態を確認します。必要に応じて心電図や血液検査も行います。
行われる可能性のある検査
- 問診と神経診察(手足の力、感覚、言葉、目の動きなどを確認)
- 頭部CT検査(脳出血の有無をすぐに確認)
- 頭部MRI検査(脳梗塞の場所や範囲を詳しく確認)
- 心電図(心房細動などの不整脈の発見)
- 頸動脈エコー(頸動脈の狭さやプラークの有無を確認)
- 血液検査(血糖や脂質、凝固機能などを確認)
診察で予想されること
緊急の場合を除き、検査は数十分から1時間ほどです。CTやMRIは痛みを伴いません。検査結果に基づいて、治療方針やリハビリテーションの計画が立てられます。
治療
脳卒中の治療は、発症直後の急性期治療と、再発を防ぎながら機能を回復させるリハビリテーションに分かれます。病型や重症度に応じて、医師がチームで最適な治療を提供します。
自宅でのセルフケア
- 薬は医師の指示通りに飲み、自己判断でやめない。
- 毎日血圧を測り、記録する。
- 禁煙し、飲酒は控えめにする。
- 塩分を控え、野菜や果物を多く取るバランスのよい食事を心がける。
- 医師の許可が得られたら、無理のない範囲で体を動かす。
- 水分を十分に取り、便秘を予防する。
医療治療
急性期には、脳梗塞では血栓を溶かす薬や、再発を防ぐ抗血小板薬・抗凝固薬などが使われることがあります。脳出血やくも膜下出血では、血圧を管理し、出血を抑える治療が行われます。いずれも、医師が病型や患者さんの状態に合わせて選択します。
手術が検討される場合
脳出血やくも膜下出血では、血腫の除去や脳動脈瘤のクリッピング手術、コイル塞栓術などが行われることがあります。また、頸動脈の狭窄が原因の場合には、頸動脈内膜剥離術やステント留置術などの治療が検討されることもあります。
この病気と共に生きる
回復期には、医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などと一緒に、食事・着替え・歩行などの日常生活の動作を少しずつ取り戻していきます。家族や周囲の支援を受けながら、無理をせず、継続することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- バランスのよい食事(減塩・野菜・果物を意識する)
- 医師に相談しながらの適度な運動(歩行など)
- 禁煙・節酒
- 体重を適正に保つ
- 睡眠をしっかり取り、ストレスをためない
- 服薬と通院を欠かさない
食事と運動
厚生労働省の指針でも、減塩と適度な運動は脳卒中の再発予防に効果的とされています。1日30分程度の歩行から始め、医師や理学療法士の指導を受けながら、無理のない範囲で継続しましょう。
精神的健康と心の健康
脳卒中後は、気分の落ち込みや不安を感じることが少なくありません。リハビリの成果がなかなか見えず、もどかしさを感じることもあるでしょう。うつ状態は回復にも影響するため、早めに医師や専門家へ相談してください。もし自分を傷つけたくなる気持ちが強くなったら、ひとりで抱えず、すぐに信頼できる人や救急サービスに連絡してください。
予防
脳卒中は、生活習慣の改善と、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの持病をきちんと管理することで、多くの場合予防できます。特に高血圧は最大の危険因子であり、家庭での血圧測定と管理が重要です。
検診プログラム
年に一度は健康診断や人間ドックを受け、血圧、血糖、脂質、心電図などをチェックしましょう。心房細動の早期発見のため、脈が乱れると感じたら医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 再発を繰り返すと、障害が重くなり、寝たきりになる可能性が高まります。
- 食べ物や唾液が気管に入る誤嚥性肺炎や、尿路感染症などの合併症を起こしやすくなります。
- 認知機能の低下や認知症、うつのリスクが高まります。
- 家族や介護する人の負担も大きくなります。
長期的な見通し
脳卒中は、再発予防とリハビリテーションをしっかり続けることで、多くの人が在宅復帰や社会参加を実現しています。障害が残る場合でも、適切な支援があれば生活の質を大きく高めることができます。あきらめず、一歩ずつ前に進みましょう。
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最終更新: 2026年7月31日
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