記憶の健診(もの忘れ検診)を知ろう
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
記憶の健診とは、記憶や考える力(認知機能)がこれまでどおりに働いているかをチェックする検査です。たいていは医師や保健師との対話や、簡単な課題を通して行われます。病気を確定するためではなく、心配なことがある早い段階で変化に気づき、適切な次の一歩を決めるためのものです。
重要な事実
- 記憶の健診は、特別な機械を使わず、質問に答えたり、絵や言葉の課題に取り組んだりする対話形式で行われます。
- 結果はあくまで一つの目安です。結果だけで認知症や記憶障害と診断されることはありません。
- 早期に気づくと、生活の工夫や服薬の準備、地域のサービス利用など、安心して暮らすための選択肢が広がります。
- もの忘れの原因は認知症だけではありません。うつ病や睡眠の問題、薬の副作用など、改善できる原因も多くあります。
物忘れの心配は年齢を問わず多くの方が経験します。特に65歳以上の方を中心に、自治体の健診や医療機関で記憶のチェックが広くおこなわれるようになってきています。
主に中高年の方で、物忘れが多いと感じる本人や、その変化が気になるご家族に勧められます。若い世代でも、強いストレスや睡眠不足、うつなどで記憶が心配になることがありますが、年齢が上がるほど受ける機会が多くなります。
症状
- 突然、時間や場所がわからなくなった場合は、すぐに119番を呼んでください
- 急にろれつが回らず、言葉が出にくい場合は、すぐに119番を呼んでください
- 顔や手足に麻痺がある、または片側が動かせない場合は、すぐに119番を呼んでください
- 頭を強く打った後に記憶が飛んでいる場合は、すぐに119番を呼んでください
- 意識がもうろうとする、または呼びかけに反応しない場合は、すぐに119番を呼んでください
- ⚠最近、数時間から数日で急に記憶や判断力の低下がある
- ⚠混乱や幻視(実際にはないものが見える)がある
- ⚠食事を食べたことを忘れたり、危険な行動をしたりする
- ⚠強い不安やうつがあり、自分を傷つける言葉が聞かれる
一般的な症状
- 同じことを何度も尋ねたり、同じ話を繰り返したりする
- 約束や大切な予定を忘れてしまう
- 慣れた場所で道に迷ったり、物を置いた場所を思い出せなくなったりする
- 言葉が出てこず、会話が途切れることが増える
- 数秒前や数時間前の出来事を思い出せない
- 身だしなみや金銭管理、料理の段取りなど、今までできていたことがうまくいかない
原因
主な原因
- アルツハイマー病などの認知症(脳の神経がゆっくりと減っていく病気)
- 脳梗塞や脳出血など、脳の血管の障害による血管性認知症
- うつ病による意欲や集中力の低下
- 甲状腺機能低下症などのホルモンの病気
- ビタミンB12不足などの栄養の問題
- 睡眠時無呼吸症候群など、睡眠と関係する疾患
- 神経難病・感染症など、その他の脳の病気
リスク要因
- 年齢(65歳以上)
- 家族歴(近い家族に認知症の方がいる)
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病
- 喫煙・飲酒過多
- 運動不足・社会的孤立
- 十分な睡眠がとれていない
- 難聴や視力低下など、感覚の衰え
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の記憶障害に加え、まひ・言語障害・意識障害などがある
- 頭部打撲の直後や、強い頭痛を伴う記憶の混乱
- 自分や周囲の安全が危ぶまれるような強い混乱や幻覚
定期受診を予約すべき場合:
- 数か月から半年の間で、物忘れが明らかに進行している
- 同じことを数回繰り返し相談するようになった
- 日常生活や仕事・人間関係に支障が出てきた
- 体の不調(貧血や甲状腺など)を指摘されたことがある
診断
診断の第一歩は、医師が本人とご家族から、いつからどんな物忘れがあるかを丁寧に聞くことです。その上で、記憶や考える力を評価する検査を行い、必要に応じて血液検査や脳の画像検査を組み合わせて、原因を探ります。
行われる可能性のある検査
- 本人とご家族への問診(症状が出始めた時期、日常生活の様子など)
- 認知機能テスト(言葉の記憶や計算、図形の模写、時間の見当識など、決まった課題で評価する)
- 血液検査(甲状腺機能や栄養状態、臓器の病気などが記憶に影響していないかを評価)
- 脳のCTやMRI(脳の萎縮・梗塞・出血・腫瘍などの有無を確認)
- 必要に応じて、心理士によるより詳しい検査
診察で予想されること
検査自体は、通常は外来で受けられます。時間は30分〜1時間程度で、まずは本人のペースで行われます。途中で疲れたら休めることも多いです。結果は、医師からその場で説明されることも、後日詳しく説明されることもあります。わからないことはその場で質問しましょう。
治療
治療法は『記憶障害の原因が何か』によって異なります。改善できる原因(甲状腺の病気やうつ病など)が見つかれば、その治療を行うことで記憶の改善が期待できます。認知症の場合でも、進行をゆるやかにする治療薬や、生活のリハビリテーション、周囲の支援を組み合わせて、その人らしい暮らしを続けることを目指します。
自宅でのセルフケア
- 毎日使うもの(鍵・財布・眼鏡など)の置き場所を決め、同じ場所に置く
- 予定や服薬をカレンダーや付箋に書いて見える化する
- 睡眠を十分にとり、昼間に適度に体を使う
- 人との会話を意識的に作る(電話でも短い散歩でも良い)
- 焦らず・慌てず、できていることを認めながら生活する
医療治療
医師が原因を評価したうえで、状況に応じて治療方針が決まります。うつ病や甲状腺疾患などの原因があれば、その治療が優先されます。認知症の場合には、神経系の働きを助けて進行をゆるやかにする薬が選択されることがありますが、どの薬を使うか、どのくらいの量をいつまで飲むかは、必ず医師が判断します。ご自身の判断で薬を変えたり止めたりせず、かかりつけ医とよく相談してください。
手術が検討される場合
記憶障害そのものに対して、外科手術が第一選択にのぼることはほとんどありません。ただし、水頭症(脳室に髄液がたまる病気)や、一部の脳腫瘍・脳の血管病変が原因とわかった場合は、脳神経外科の医師と手術の適応を検討することがあります。
この病気と共に生きる
物忘れがあっても、一日の流れを作り、環境を整えることで安心して暮らせます。朝起きてカーテンを開ける、食卓の位置を決める、玄関に鍵を掛けるなどを『いつもの動作』にしましょう。本人が取り組みやすいことから少しずつ習慣にすると、混乱が減ります。
生活習慣のアドバイス
- 毎日起きる時間・寝る時間を一定にする
- 趣味の活動や地域の集まりなど、外出の機会を作る
- 家事や役割を分担し、できたことを喜び合う
- 無理をしない範囲で、頭を使う遊び(トランプ、塗り絵、読書など)を取り入れる
- 認知症カフェや家族会など、情報交換の場を活用する
食事と運動
バランスのよい食事(魚・野菜・果物・乳製品など)と、週に数回の散歩や体操は、脳と体の健康に役立ちます。特に運動は、血流を良くし気分を整える効果があります。飲酒は適量までとし、喫煙は控えましょう。
精神的健康と心の健康
物忘れが増えると、本人も家族も不安や焦りを感じるものです。『忘れる自分はダメだ』と責める必要はありません。気持ちを言葉にできる環境を作り、困った時は助けを求めることが心の健康につながります。うつや不眠が続く場合は、遠慮なく医師に相談しましょう。
予防
認知症を完全に防げる方法はまだありません。しかし、生活習慣病の管理、運動、十分な睡眠、社会的な交流を心がけることは、認知症になりにくくする可能性が多くの研究で示されています。完全に防ぐことより、気づき・備え・工夫が大切です。
ワクチン
記憶の働きに直接効くワクチンはありません。ただし、肺炎球菌やインフルエンザなどのワクチンは、重い感染症を防ぎ、体への負担を減らすことで、間接的に脳の健康を守る役割があります。接種は医師と相談しましょう。
検診プログラム
気になる症状がある場合には、早めの『もの忘れ健診』が勧められます。自治体の健診や人間ドックの項目で受けることができます。また、かかりつけ医でも『ちょっと記憶が心配で…』と伝えれば、適切な検査や専門医を紹介してもらえます。
合併症
治療しない場合
- 火の不始末や交通の事故など、危険な場面で判断を誤るリスクが高まる
- 服薬や買い物、お金の管理が難しくなる
- 不安やうつが強くなり、家にこもりがちになる
- 家族との関係が緊張し、介護負担が増える
長期的な見通し
早期に見つけることができれば、生活を調整してトラブルを防ぎ、安心して過ごす期間を長くすることができます。認知症は進行する病気もありますが、一人ひとりの速度や症状は違います。適切な診断、治療、支援によって、その人らしさを保ちながら暮らし続けることは十分可能です。絶望する必要はありません。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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