子宮内膜症の痛みについて知ろう:原因と治療の選択肢
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)とは、子宮の内側にあるべき「子宮内膜」という組織が、子宮の外側(卵巣、腹膜、腸など)にできる病気です。この組織は、月経周期と同じようにホルモンの影響を受けて増えたりはがれたりするため、強い痛みや炎症を引き起こします。
重要な事実
- おもな症状は、ひどい月経痛、腰痛、下腹部痛、性交時の痛みなどです。
- 痛みの程度は人によって異なり、無症状の人もいます。
- 適切な治療で症状を和らげることができ、妊娠・出産の可能性も十分にあります。
はい。子宮内膜症は比較的多い病気で、日本の女性の約5~10%にみられるといわれています。10代後半から閉経前の女性によく見られます。
月経のある年齢の女性に起こります。特に25歳から35歳の女性に多く、10代で発症することもあります。出産経験がない方や初経が早い方は、リスクが高いとされています。
症状
- 突然の激しい下腹部痛や腰痛が起きた
- 立っていられないほどの痛みがある
- 大量の出血があり、めまいや冷や汗が出る
- このような場合は、すぐに119番に電話してください。ひとりでいるときは、周りの人にも助けを求めてください。
- ⚠いつもと違う強い痛みがある
- ⚠出血が止まらない(量が多い、長く続く)
- ⚠痛みとともに38度以上の発熱がある
- ⚠吐き気や嘔吐が続く
一般的な症状
- 月経のときに強い腹痛(月経困難症)があり、市販の鎮痛薬が効きにくい
- 月経前から下腹部や腰に痛みが出る
- 排便のときに痛みや不快感がある
- 性交時に痛みを感じる
- 月経量が多い、月経以外の不正出血がある
子供の症状
- 10代でも起こります。月経開始から数年以内に強い月経痛、吐き気、頭痛、下腹部痛が現れることがあります。学校を休むほどの痛みがある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
高齢者の症状
- 閉経を迎えると痛みはおさまることが多いですが、閉経後でもホルモン補充療法などで症状が続く場合があります。40代以降は卵巣や子宮の他の病気の可能性も考えられるため、定期的な検診が大切です。
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだ不明ですが、月経血が子宮を通って腹腔内に逆流する「月経血逆流説」が有力です。
- そのほか、免疫の異常や遺伝的要因、環境ホルモンが関わっているという説もあります。
リスク要因
- 初経が早い(12歳以下)
- 月経周期が短い(25日以下)
- 出産経験がない
- 家族に子宮内膜症の人がいる
- ストレスや睡眠不足などの生活習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 痛みのせいで仕事や学校に行けない
- 医師から処方された薬でも痛みが治まらない
- 我慢できないくらいの出血がある
定期受診を予約すべき場合:
- 月経痛が毎回ひどく、日常生活に支障がある
- 月経以外にも頻繁に下腹部痛や腰痛がある
- 妊娠を希望しているが、なかなか妊娠できない
- 以前に子宮内膜症と診断されたことがあり、症状が悪化している
診断
子宮内膜症の診断は、問診、内診、超音波検査、MRI検査などを組み合わせて行います。特に、おなかに小さなカメラを入れて直接確認する「腹腔鏡検査」をすると、確定診断になります。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状や月経の様子を詳しく聞く)
- 内診(子宮や卵巣の状態を直接触れて確認する)
- 経腟超音波検査(腟から超音波を当てて画像でみる)
- MRI検査(画像で子宮内膜症の広がりを評価する)
- 血液検査(CA125という腫瘍マーカーを測定する)
- 腹腔鏡検査(手術用のカメラを入れて直接観察する)
診察で予想されること
初めての受診では、月経周期や痛みの程度、妊娠の希望などを詳しく聞かれます。内診や超音波検査は少し不快に感じることもありますが、多くの女性が受けています。安心して医師に相談しましょう。
治療
治療の目的は、痛みなどの症状をやわらげることと、妊娠を希望される方では妊よう性(妊娠しやすさ)を保つことです。症状の重さ、年齢、妊娠の希望に合わせて、薬物治療や手術治療などを組み合わせて選びます。
自宅でのセルフケア
- 痛みが強いときは安静にして、下腹部を温めると血流がよくなり楽になることがあります。
- 月経周期を把握し、痛みが予想される日に備えて予定を調整しましょう。
- ストレスをためないこと。軽い運動や入浴でリラックスしましょう。
- 痛みを我慢しすぎず、医師や薬剤師に相談した上で、適切に痛み止めを使いましょう。
医療治療
薬物治療には、痛みを和らげる鎮痛薬のほか、ホルモンの働きを調整する薬(低用量ピルや黄体ホルモン剤など)があります。ホルモン薬は子宮内膜症の組織の増殖を抑え、月経痛を軽くします。そのほか、症状に合わせて注射薬や子宮内にホルモンを放出する器具を使う方法もあります。これらの治療は、必ず医師の処方のもとで行われます。
手術が検討される場合
薬で効果が不十分で強い痛みが続く場合や、妊娠を希望する場合に、腹腔鏡下手術で子宮内膜症の組織を取り除くことがあります。妊娠を望まない方で症状が非常に重い場合は、子宮を摘出する手術も選択肢になりますが、医師と十分に相談して決めることが重要です。
この病気と共に生きる
子宮内膜症の症状は月経周期に沿って変化します。自分の痛みや出血の様子をメモに残すと、医師との話し合いに役立ちます。痛みが出そうな日は、無理をせず休息を取れるように計画しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 痛みの強弱に合わせて、仕事や家事の負担を調整する
- 湯船につかる、カイロや温タオルで下腹部を温める
- ヨガや深呼吸、瞑想などでリラックスする時間をつくる
- 妊娠を希望する場合は、生活リズムを整え、禁煙を心がける
食事と運動
栄養バランスのよい食事を心がけ、特に青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸、野菜、果物、全粒穀物がよいとされています。赤身肉や加工肉、アルコールは控えめにしましょう。適度な運動(ウォーキング、水泳など)は血流を改善し、痛みを和らげる助けになります。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みは、気分の落ち込みや不安を引き起こすことがあります。「まわりに理解してもらえない」「仕事や家事を休むのがつらい」と感じることもあるかもしれません。そのような感情は自然なことです。心の負担が大きいと感じるときは、医師や看護師、カウンセラーに相談することも選択肢の一つです。
予防
残念ながら、子宮内膜症を完全に予防する方法はまだありません。しかし、規則正しい生活、適度な運動、バランスのよい食事、ストレスをためないことで、リスクを下げられる可能性があります。月経痛が重くなったり、いつもと違う症状があれば、早めに婦人科を受診することが重症化を防ぎます。
検診プログラム
子宮内膜症は一般的な健康診断の項目にはありませんが、年に一度は婦人科検診を受けることをおすすめします。特に月経痛がひどい方や月経不順がある方は、自己判断せずに医師の診察を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 痛みが続くことで、日常生活の質が下がる
- 不妊の原因となることがある(子宮内膜症の組織が卵子や受精卵の通り道を妨げる)
- 卵巣にチョコレート嚢胞ができ、破裂すると急激な腹痛を起こすことがある
- 腸や膀胱など、周囲の臓器に癒着(くっつくこと)が起こり、痛みや腸閉塞の原因となる
- ごくまれですが、悪性化(がん化)することがあります
長期的な見通し
子宮内膜症は、継続的な治療により痛みをうまくコントロールできる病気です。薬物治療から手術療法までさまざまな選択肢があり、症状に合わせて調整できます。また、多くの方が妊娠・出産を経験されています。診断後も、自分の体と向き合いながら、医師と一緒に長く付き合っていくことが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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