横になると強くなる疲労(がん治療後の疲労を中心に)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
がん治療後によく見られる「がん関連疲労」とは、病気や治療によって起こる強いだるさのことで、普通の疲れとは違って休んでもなかなか回復しません。この疲労が「横になると強く感じられる」と話す人は少なくありません。横になると呼吸が浅くなり、からだに十分な酸素が行きわたらないことや、睡眠の質が悪くなることが関係していることがあります。ただし、目の前の症状が何を意味するかは、医師の診察で一つずつ確かめることが大切です。
重要な事実
- がん関連疲労は、根性や気のせいではなく、からだの実際の反応です。
- 横になると疲労が強くなるには、いくつかの原因が考えられます。
- 対策可能な原因がみつかることも多く、あきらめずに医療チームへ相談しましょう。
がん治療を受けた方のほとんどが何らかの疲労を経験します。「横になると強くなる」という困りごとを伝える方も多く、珍しいことではありません。
乳がん、肺がん、胃がん、血液のがんなど、多くのがんの治療後、特に放射線治療や抗がん剤治療を経験した方に起こり得ます。年齢や性別、がんの種類にかかわらず、治療を終えた後に疲労を感じる方は少なくありません。
症状
- 横になると息ができなくなるような強い息苦しさがある場合は、すぐに119番に電話してください。
- 胸部の圧迫感や痛みが続き、冷や汗が出る場合は、すぐに119番に電話してください。
- 突然、話しにくい、顔や手足のしびれがある場合は、すぐに119番に電話してください。
- 激しい動悸とともに意識が遠くなりそうになる場合は、すぐに119番に電話してください。
- ⚠38度以上の発熱が続く場合は、当日中に医療機関へ連絡してください。
- ⚠脚が片方だけ腫れて痛む場合は、当日中に医療機関へ連絡してください。
- ⚠痰に血が混じる場合は、当日中に医療機関へ連絡してください。
- ⚠1週間以上、水分も食事もとれないほどの強い疲労が続く場合は、当日中に医療機関へ連絡してください。
一般的な症状
- 横になると体が重く感じられ、寝返りや起き上がりがつらくなる
- 夜は眠れているのに、日中の疲れが抜けない
- 座ると少し楽になるが、横になると気分が沈みがちになる
- 軽い家事や階段の上り下りで強い疲れを感じる
子供の症状
- 遊んでいたおもちゃから手を離して、静かになる
- 横になるとぐずったり、抱っこを求めることが増える
- 疲れをうまく言葉にできず、「つまらない」「やりたくない」と訴える
高齢者の症状
- 起き上がる時にめまいやふらつきがあり、転倒のリスクが高まる
- 食欲が落ち、筋力が低下する
- 無気力に見え、うつ状態と区別がつきにくい
原因
主な原因
- がん治療の影響:抗がん剤や放射線治療の後にからだの炎症が続き、エネルギーを消耗する
- 活動範囲の縮小:日中も横になって過ごす時間が長くなり、筋肉や心肺機能が衰える
- 呼吸の変化:横になると呼吸が浅くなり、十分な酸素を取り込めず疲れが強まる
- 睡眠の問題:夜中に目が覚めやすい、深い眠りが足りず、疲労感がとれない
- 貧血や栄養不足:血液の酸素を運ぶ力や、エネルギーのもとになる栄養が不足している
- 心臓や肺への負担:からだの中に液体がたまり、横になると負担が増す場合がある
リスク要因
- 治療期間が長かった
- 手術後の回復期にある
- 高齢で元の体力が少なかった
- 持病として肺や心臓の病気がある
- 治療中に体重が大きく減った
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 疲労が急に強くなり、自分で起き上がれない
- 横になると呼吸が苦しく、起きると楽になる
- 強い痛みや息切れを伴う
定期受診を予約すべき場合:
- 横になると疲労感が変わると感じ始めた
- がん治療後の定期検診で、疲労のことを伝え忘れた
- 夜眠れない日が続き、日常生活に支障が出ている
診断
医師はまず、疲労の始まった時期、程度、横になったときの変化、ほかの症状について詳しく尋ねます。そのうえで、必要な検査を行います。がん自体や治療後の体の変化が原因かを確認するための検査です。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(貧血や甲状腺ホルモンの状態など)
- 胸部X線検査(肺の状態や胸に水がたまっていないかを確認)
- 心臓超音波検査(心臓の動きと血液の流れ方を確認)
- 睡眠時無呼吸検査(夜間の呼吸状態をみる検査)
診察で予想されること
外来で検査を受けることが多く、大きな負担はありません。結果は数日から1〜2週間でわかります。その後、疲労の原因に合わせて生活の工夫や治療が提案されます。
治療
治療では、疲労の背景にある要因に一つずつ働きかけます。主なものは、無理のないリハビリテーション、生活リズムの改善、栄養の見直しです。原因となる病気などがみつかった場合は、その治療も検討されます。
自宅でのセルフケア
- 休むときはベッドに横になるだけでなく、ソファに座るなど「半横臥位」を取り入れる
- 仮眠は15〜30分までにし、夜の睡眠を確保する
- 朝起きたらカーテンを開けて光を浴びる
- 寝る前に温かい飲み物をゆっくり飲む
- 呼吸をゆっくり吐くことから整える(息を吸うよりも吐く時間を長く)
医療治療
医療機関では、貧血や炎症に対する治療、心不全などが原因の場合の薬物療法(例は示しません)、がんリハビリテーション、認知行動療法、リラクセーション技法などが行われます。薬の種類や量は、あなたの症状や原因に合わせて医師が判断します。
手術が検討される場合
がん治療後の疲労そのものに対する手術は通常ありません。ただし、疲労が心臓や肺の病気によるもので、その病気に対して手術が有効な場合は、治療の選択肢として説明されます。
この病気と共に生きる
横になっても休まらないと感じるときは、「休み方」を変えてみましょう。短い休息を1日2〜3回に分けて取り、調子のよい時間帯に体を動かすなど、自分のペースを組み立てます。
生活習慣のアドバイス
- 起床時刻と就寝時刻を一定にする
- 日中に日光を浴びる時間をつくる
- 午後の仮眠は30分までにする
- 就寝前のカフェインや飲酒を控える
- 寝る前はスマホやパソコンを遠ざける
食事と運動
食事は、偏らず、さまざまな食品を少しずつとることが基本です。食欲がないときは、1回の量を減らして回数を増やすとよいでしょう。運動は、医師や理学療法士と相談しながら、散歩、ストレッチ、軽い筋力トレーニングから始めます。「動けない日」のことを考えて、レベルの低い運動から試すのがコツです。
精神的健康と心の健康
疲労が続くと、気分の落ち込みや不安が生じることがあります。「また疲れた」と自分を責めないでください。がん治療後のからだは、休むことも回復の一部です。もし、悲しみや絶望感が強くなり、自らの命を考えるような思いが浮かんだ場合は、すぐに医療機関に連絡し、周りの人に話してください。
予防
がん治療後の疲労そのものを完全に防ぐことは難しいですが、治療中から運動療法や生活リズムの調整に取り組むと、疲労が強くなるのを和らげられると考えられています。気になる場合は、治療中でも早めに相談しましょう。
ワクチン
インフルエンザや肺炎など、感染症を予防するワクチンの接種については、体の状態や治療歴によって判断が変わります。かかりつけ医や専門医に相談しましょう。
検診プログラム
がん治療後も、再発や新たな病気を早期にみつけるため、医師が推奨する検診や定期検査を続けましょう。
合併症
治療しない場合
- 運動不足で筋力・心肺機能が低下し、疲労の悪循環が生じる
- うつ状態や不安症などのメンタルヘルスの問題が重なる
- 日常生活の自立度が下がり、家族の介助が必要になる
- 別の病気(心臓や肺の病気)のサインを見逃す可能性がある
長期的な見通し
がん治療後の疲労は、多くの場合、時間とともに改善していきます。「横になると悪化する」という感覚も、呼吸や休み方を整え、原因に応じた治療を受けることで軽くなる方が大半です。焦らず、あなたのペースで回復を目指しましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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