抗がん剤治療中に発熱が起きたら
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
抗がん剤治療(化学療法)を受けていると、治療から数日から2週間ほどして、発熱が起きることがあります。これは、抗がん剤が、体を細菌やウイルスから守る白血球(特に好中球)を一時的に減らしてしまうことが原因です。白血球が少なくなると、小さな傷や風邪からでも感染症を引き起こしやすくなります。発熱は、体が感染とたたかっているサインであり、抗がん剤治療を受けている人にとっては、すぐに医療機関へ連絡すべき大切な症状です。
重要な事実
- 抗がん剤治療後の発熱は、感染症のサインであることがあり、重症化する前に早めの対応が重要です。
- 体温が38度以上になったら、夜間や休日でも、かかりつけの医療機関や担当医に必ず連絡しましょう。
- 自己判断で市販の解熱剤などを服用せず、まずは医師の指示を仰いでください。
抗がん剤治療を受けている方の約10~20%に発熱が起こると報告されています。特に、治療後7日目から14日目ごろに起こりやすいとされています。抗体薬や強い化学療法を受けている場合には、より注意が必要です。
血液のがん(白血病や悪性リンパ腫など)の治療をしている方や、強い抗がん剤治療を受けている方に多く見られますが、どの種類のがん治療でも起こりうる副作用です。高齢の方や体力が落ちている方は、特にリスクが高くなります。
症状
- 呼吸が苦しい、息切れがする
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 胸の痛みが続く
- 顔色が青白く、血圧が低いと感じる
- けいれんを起こしている
- ⚠体温が38度以上ある(まずはかかっている医療機関へ連絡)
- ⚠悪寒や震えを伴う発熱
- ⚠のどの痛み、咳、息苦しさがある
- ⚠おしっこの痛みや回数の増加がある
- ⚠ひどい下痢で水分が摂れない
- ⚠抗がん剤治療後の傷や皮膚の赤み・腫れがある
一般的な症状
- 38度以上の発熱
- 悪寒(ふるえ)や寒気
- のどの痛み、咳、鼻水など風邪のような症状
- 下痢、吐き気、おう吐
- 排尿時の痛み、頻尿(おしっこの回数が多い)
- 皮膚の赤み、腫れ、痛み
- 口内炎やひび割れ
子供の症状
- ぐったりして元気がない
- 機嫌が悪く、泣き止まない
- 母乳や食事をあまり摂らない
- ぼんやりして反応が鈍い
- けいれんを起こす
高齢者の症状
- 体温が上がらないにもかかわらず、ぼんやりする
- ふらつきや転倒
- 食欲が急に落ちる
- いつもと違う言動や混乱が見られる
- 尿失禁(おしっこをもらす)
原因
主な原因
- 抗がん剤が骨髄のはたらきを抑え、白血球(好中球)が減少する「発熱性好中球減少症」という状態が主な原因です。
- 白血球が減ると、細菌やウイルス、真菌(カビ)などに感染しやすくなります。
- 発熱は、体が微生物とたたかっている時に起こる自然な反応でもあります。
リスク要因
- 抗がん剤の点滴治療を最近受けた(特に1週間から2週間以内)
- 治療サイクルの間隔が短い、治療の強度が高い
- 中心静脈カテーテル(ポート)を入れている
- 70歳以上である、または体力が低下している
- 前回の治療で白血球が大きく減ったことがある
- 口腔内の炎症や皮膚に傷がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 抗がん剤治療中または治療後に、体温が38度以上になったら、夜間や休日でも、遠慮せずに担当医や病院へ電話してください。
- 発熱に加えて、呼吸苦や意識の変化がある場合は、ためらわずに119番を呼んで救急車を要請してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 発熱がなくても、定められた治療・受診の予定は守りましょう。血液検査で白血球の数や状態を確認します。
- 治療の副作用や気になる症状は、次の受診のときにメモをして伝えましょう。
診断
まず医師が問診と診察を行い、体温・血圧・脈拍などを確認します。抗がん剤治療中の患者さんでは、白血球が減っていないかどうかを知るために、すぐに血液検査を行います。また、感染の原因を調べるために、尿や血液、痰(たん)、便などの培養検査をすることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(白血球の数や炎症反応など)
- 血液培養(血中に細菌がいるかを調べる)
- 尿検査・尿培養
- 胸部X線(レントゲン)検査
- 必要に応じてCT検査などの画像検査
診察で予想されること
採血や培養のため、いくつかの検査を受けることになります。原因がすぐに分からないこともありますが、重症化を防ぐため、最初は幅広い菌に効く抗生物質を点滴で使うことが一般的です。検査結果は数日で判明しますが、その間も症状の観察と治療は続きます。
治療
発熱の原因が感染症であれば、抗生物質の点滴による治療が中心となります。白血球が非常に少ない場合は、白血球を増やす薬を使用することもあります。多くの患者さんは入院して、24時間体制で状態を観察しながら治療を受けます。
自宅でのセルフケア
- 発熱時は、厚着をしすぎず、あたたかすぎない環境で安静にします。
- こまめに水分を摂り、脱水を防ぎます。
- 定期的に体温を測り、記録しましょう。
- 急に体調が悪くなったときのために、スマートフォンや電話は手の届く場所に置きましょう。
- 家族や同居する人にも、症状と連絡先を共有しておきましょう。
医療治療
感染症の可能性が高い場合、抗生物質の点滴(静脈注射)による治療がすぐに始まります。血液検査の結果を待たずに、経験的に広い範囲の菌に効果が期待できる抗生物質が選ばれることもあります。白血球が極端に少ない場合には、白血球の回復を促す薬を使うこともあります。治療の期間や方法は、症状の重さや原因によって変わりますが、医療スタッフが寄り添いながら進めていきます。
この病気と共に生きる
抗がん剤治療中の発熱は、多くの場合、数日で改善します。入院中は医療スタッフの観察を受けながら安静に過ごします。退院後は、毎日の体温チェックと手洗い・うがいを習慣にしましょう。体調に変化があれば、早めに医療機関へ連絡することで、安心して日常生活を送ることができます。
生活習慣のアドバイス
- 外出時はマスクを着用し、人混みを避けましょう。
- 家族や周囲で感染症にかかっている人がいる場合は、接触を控えてもらいましょう。
- 体を清潔に保ち、歯ブラシやタオルは清潔なものを使いましょう。
- 部屋をこまめに掃除し、ほこりやカビを減らしましょう。
- 調理したての加熱済み食品を選ぶなど、食中毒に注意しましょう。
食事と運動
発熱しているときは、消化のよいものを少しずつ食べましょう。食欲がなくても、水分は必ず摂ることが大切です。運動は、医師の許可があるまでは控えめにし、体力が回復してきたら短い散歩から始めるとよいでしょう。主治医に相談して、自分の体調に合った活動量を見つけることが大切です。
精神的健康と心の健康
抗がん剤治療の副作用に発熱が加わると、「治療がうまくいかないのでは」「感染が悪化するのでは」と不安や恐怖を感じることがあります。そのような気持ちは自然なことです。もし心のつらさが続くなら、医療機関の心理士やがん相談支援センターに話を聞いてもらいましょう。決して一人で抱え込まず、周りの専門家を頼ってください。もし、自分を傷つけたいなどの強い危機感が生まれた場合は、ためらわずに119番や地域の救急窓口へ連絡してください。
予防
抗がん剤治療中の発熱を完全に予防することはできませんが、感染リスクを下げるための対策を続けることで、発熱の可能性を減らすことができます。特に、白血球が低下する時期は、手洗い・うがいを徹底し、人混みを避け、体を清潔に保つことが大切です。
ワクチン
予防接種(ワクチン)は、治療の時期や免疫の状態によっては受けることができない場合があります。インフルエンザや肺炎球菌など、どのワクチンをどのタイミングで受けるかは、必ず主治医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 感染が血液中に入り込み、全身に広がる「敗血症」になることがあります。
- 敗血症が進行すると、血圧が下がって臓器が働かなくなる「敗血症性ショック」を起こすことがあります。
- 肺炎や腎盂腎炎など、特定の臓器に感染が広がることがあります。
- 抗がん剤治療のスケジュールが遅れたり、中断が必要になったりすることがあります。
長期的な見通し
発熱が見つかっても、早く医療機関に連絡し、適切な治療を受ければ、多くの方は回復します。抗がん剤治療は、がんとたたかうために大切な治療です。副作用を乗り越えるためのサポートは十分にあります。あせらず、医療チームを頼りながら、一歩ずつ治療を続けていきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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