骨盤内炎症性疾患(PID)と発熱
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
骨盤内炎症性疾患(PID)は、子宮や卵巣、卵管など骨盤の中にある臓器に細菌が入って炎症を起こす病気です。多くの場合、膣や子宮頸部から細菌が上行して起こります。発熱は体が感染と戦っているサインであり、早めの治療が必要です。
重要な事実
- 主な原因は性感染症(クラミジアや淋菌など)です。
- 適切に治療すれば多くの方は治りますが、治療が遅れると不妊症につながることがあります。
- 症状が全く出ないこともあるため、心配な場合は検査を受けることが大切です。
10〜20代の若い女性を中心に、日本でも少なくない病気です。性行為を経験した女性なら誰でもかかる可能性があります。
性行為のある女性全般に可能性がありますが、特に25歳未満の方、新しい性パートナーがいる方、性感染症の既往がある方に多く見られます。
症状
- 突然の激しい下腹部痛
- 40度以上の高熱と悪寒
- 意識がもうろうとする
- 呼吸が苦しい
- 立ちくらみや失神
- ⚠38度以上の発熱と下腹部痛
- ⚠悪臭を伴う異常なおりもの
- ⚠性交後の激しい痛み
- ⚠出血が止まらない
一般的な症状
- 下腹部(おへその下あたり)の痛み
- 38度前後の発熱
- いつもと違うおりもの(色やにおいの変化)
- 性交時の痛み
- 生理と関係ない出血
- 排尿時の痛み
原因
主な原因
- 性感染症(クラミジア、淋菌など)による細菌感染が最も一般的です。
- 分娩後や流産後、子宮内器具(IUD)挿入後の感染がきっかけになることもあります。
- まれに、腹部手術や骨盤の手術後の感染で起こることがあります。
リスク要因
- 25歳未満
- 新しい性パートナーや複数の性パートナー
- 性感染症の既往
- 子宮内避妊器具(IUD)の使用
- 頻繁な膣洗浄
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱と下腹部痛がある場合は、すぐに婦人科を受診してください。
- 高熱や激しい痛み、悪寒がある場合は、緊急性が高いため夜間でも救急外来を利用してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 下腹部の軽い痛みや気になるおりものがある場合
- 生理不順や性交痛が続く場合
- パートナーが性感染症と診断された場合
診断
問診で症状や性行為歴などをお聞きし、内診で子宮や卵巣の痛みを確認します。また、おりものや血液の検査、超音波検査などで感染の有無や範囲を調べます。
行われる可能性のある検査
- 内診(子宮や卵巣の圧痛を確認)
- おりものの細菌検査
- 血液検査(炎症反応の確認)
- 超音波検査(子宮や卵巣の腫れ、膿瘍の有無)
- 必要に応じて腹腔鏡検査
診察で予想されること
診察は短時間ですが、内診に抵抗がある場合は事前に伝えましょう。検査結果は少し時間がかかることがあります。痛みや不安がある場合は、遠慮なく医師や看護師に相談してください。
治療
治療は抗生物質を使った薬物療法が中心です。症状の重さに応じて、外来または入院での治療が選ばれます。性感染症が原因の場合は、パートナーも一緒に治療しないと再感染することがあります。
自宅でのセルフケア
- 安静にして十分に休む
- 水分をこまめに取る
- 治療中の性行為は控える
- 痛みがある時は無理せず、医師に相談する
- 処方された薬は、症状が良くなっても最後まで飲み切る
医療治療
抗生物質による治療が基本です。症状が軽い場合は、内服薬で治療します。症状が重い場合や膿瘍がある場合は、入院して点滴による抗生物質治療や、必要に応じて排膿処置を行うことがあります。医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
手術が検討される場合
薬物治療で改善しない場合や、卵巣や卵管に膿瘍ができて薬が効きにくい場合には、手術が必要なことがあります。腹腔鏡手術や開腹手術で膿を出したり、感染した組織を切除したりします。
この病気と共に生きる
治療中は無理をせず、体を休めることを優先してください。抗生物質は指示された期間必ず服用し、自己判断で中止しないことが重要です。症状が消えても、感染が完全に治ったとは限りません。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠
- ストレスをためない
- コンドームを使用して性感染症を予防する
- タバコを避ける(喫煙は免疫力を下げるため)
食事と運動
バランスの良い食事で免疫力を保ちましょう。水分を多めに取り、激しい運動は避けて、医師の許可が出てから徐々に体を動かすようにしてください。
精神的健康と心の健康
感染症の診断は、不安やショックを受けることもありますが、早期に治療すれば多くの方は回復します。自分を責めず、必要な治療に集中しましょう。辛い気持ちは信頼できる人に話してください。
予防
性感染症を予防することが最も大切です。コンドームを正しく使うことで、感染リスクを大きく減らせます。また、性感染症にかかったら、パートナーも同時に治療・検査を受けましょう。
ワクチン
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、子宮頸がんや性器いぼの原因となるウイルスを予防しますが、すべての性感染症を防げるわけではありません。性感染症全体の予防にはコンドームの使用が効果的です。
検診プログラム
症状がなくても性感染症にかかっていることがあります。定期的な婦人科検診や、心配な場合は気軽に検査を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 不妊症(卵管が傷つき受精しづらくなる)
- 子宮外妊娠のリスク上昇
- 慢性骨盤痛(長く続く下腹部の痛み)
- 卵管卵巣膿瘍(卵巣や卵管に膿の塊ができる)
長期的な見通し
早期に発見して治療すれば、多くの場合、後遺症なく治ります。治療が遅れると合併症のリスクが高まりますが、たとえ合併症があっても、適切な医療で妊娠や症状管理に取り組めます。希望を持って治療に臨みましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。