放射線治療中の皮膚ケア~食事の後の手入れを中心に~
概要
放射線治療を受けている間や治療後に、照射(ひしょう)された部分の皮膚が赤くなったり、乾燥したり、かゆみが出たりすることがあります。これを放射線皮膚炎と言います。特に頭や首への治療では、食事の後に食べ物の汁や唾液が口のまわりの皮膚に付着し、刺激になることがあります。食事の後にやさしく皮膚を洗って保湿することで、皮膚の負担を和らげ、治療の効果を妨げずに回復を助けることができます。
重要な事実
- 放射線皮膚炎は、照射した皮膚の細胞や血管がダメージを受けて起こります。
- 食事の後、口のまわりに食べ物の汁や唾液が残ると、皮膚の炎症が悪化することがあります。
- ぬるま湯でやさしく洗い、押さえるように水分を拭き取ることが大切です。
- どんなクリームや薬を使ってよいかは、必ず担当の医療者に確認してください。
放射線治療を受ける患者さんの多くに、何らかの皮膚反応が起こります。特に頭頸部(とうけいぶ)がんの治療ではほぼ全員に、乳房や胸の皮膚を照射する場合も半数以上の人に見られます。
放射線治療を受けるがん患者さんなら誰にでも起こりうる反応ですが、特に頭頸部がんの治療を受けている方、乳房や胸の皮膚に照射を受けている方、放射線と抗がん剤を併用している方に多く見られます。
症状
- 急に息苦しくなる、顔やのどが腫れる
- 治療した皮膚から膿(うみ)が出て、赤い線が広がる
- 高熱と悪寒(おかん)を伴う
- ⚠38℃以上の発熱が続く
- ⚠水ぶくれが破れて、ただれが広がる
- ⚠食事や飲み込みのときの痛みが強く、水も飲めない
- ⚠いつもの痛みより激しく、夜も眠れない
一般的な症状
- 照射された皮膚が赤くなる(日焼けのあとのような赤み)
- 皮膚がかゆくなる、乾燥する、皮がむける
- 皮膚がひりひりと痛む、しみる、触れるとつらい
- 食事のとき、食べ物や唾液が口のまわりに触れると刺激を感じる
- 皮膚が黒ずむ、色が変わる(治療の後期に見られることがあります)
原因
主な原因
- 放射線が皮膚の細胞や小さな血管を傷つけて、炎症や水分の蒸発を起こすため
- 食べ物の汁や唾液、香辛料などが照射された皮膚に付着して刺激を与えるため
- 治療部位をこすったり、湿った状態のまま放っておいたりするため
リスク要因
- 放射線の量が多い、治療回数が多い
- 抗がん剤や特定の分子標的薬と併用している
- 首、わきの下、皮膚のたたみなど、皮膚が薄い部位に照射している
- 治療中に吐き気や食欲不振などで、スキンケアが十分にできない
- 喫煙や飲酒を続けている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱、悪寒、膿が出る、赤い線が広がるなど、感染を疑う症状
- 水ぶくれが破れて、ただれが広がる
- 強い痛みで食事ができず、水分もとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 治療中の予定された受診時に、皮膚の状態をスタッフに伝える
- 赤みやかゆみが以前より強くなった時
診断
放射線皮膚炎の診断は、主に医師や看護師が治療中の皮膚の外観を目で見て確認し、状態を評価します。特別な検査は通常必要ありません。
行われる可能性のある検査
- 皮膚の外観の観察(赤み、むくみ、皮むけ、ただれの程度)
- 症状の問診(かゆみ、痛み、しみる感じなど)
- 症状が重い場合には、血液検査で炎症の程度を調べることがあります
診察で予想されること
治療中は週1回程度の診察があるので、そのときに皮膚の状態を報告します。軽い反応であれば、食事の後のスキンケアなどの自己ケアを続けながら治療を進めます。反応が強い場合は、医師が治療の休止や外用薬の変更を検討します。
治療
治療の基本は、皮膚を清潔に保ち、保湿して負担を減らすことです。症状の進行具合や程度に応じて、医療者が外用の薬や被覆材(ひふくざい)を使うこともあります。
自宅でのセルフケア
- 食事の後は、ぬるま湯で口のまわりをやさしく洗い流す
- 清潔なタオルでこすらずに、押さえるように水分を拭き取る
- 医療者に指示された保湿剤や外用薬を決められた通りに塗る
- アルコールや香料の入った化粧品や、強いせっけんは避ける
- 刺激の少ない綿の衣服やマスクを選び、締め付けを防ぐ
- 照射した皮膚を日光や冷気から守る
医療治療
症状が強い場合や感染を防ぐために、医師は炎症を抑える外用薬や、皮膚を保護するためのクリーム、専用の被覆材(ドレッシング材)を処方することがあります。どの薬を使うかは皮膚の状態や治療の段階によって異なります。市販の薬や軟膏を自己判断で使わないでください。
手術が検討される場合
放射線皮膚炎に対して手術が行われることは一般にはありません。
この病気と共に生きる
毎日のスキンケアを習慣にしましょう。特に食事の後は、口のまわりと照射部位を必ずやさしく洗って保湿してください。家族や介助者も、洗浄の手順を覚えて手伝うと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙と節酒を心がける(血流を良くし、皮膚の回復を助けます)
- 十分な睡眠をとり、疲れをためない
- 入浴はぬるめのお湯で、刺激の少ない石鹸を使う
- 皮膚をかいたり、こすったりしない
食事と運動
食事は、辛いもの・塩辛いもの・酸味の強いものを避け、やわらかくて刺激の少ないものを選ぶと、口やそのまわりの皮膚への負担が減ります。水分を十分に取り、食事の後は口を軽くすすぐと良いでしょう。運動は、医師に相談しながら無理のない範囲で続けることが勧められます。
精神的健康と心の健康
皮膚の見た目の変化や痛みは、人に知られたくないと感じたり、気分が落ち込んだりすることがあります。無理に我慢せず、担当の看護師や医師、病院のがん相談支援センターに話してください。
予防
放射線皮膚炎を完全に防ぐことは難しいですが、医療者の指示に従ったスキンケアを毎日続けることで、症状が重くなりにくくなります。自己判断で市販のクリームや軟膏を使うのは避けましょう。
合併症
治療しない場合
- 皮膚のバリア機能が壊れ、細菌感染を起こす
- 痛みが強くなり、食事や睡眠が不十分になる
- 治った後に色素沈着や瘢痕(はんこん)が残りやすくなる
長期的な見通し
放射線治療が終わると、皮膚の赤みやはがれは数週間から数か月かけて改善し、多くの方は元の状態に近づきます。時々敏感さが残ることもありますが、適切なケアを続けることで、生活の質を保ちながら回復に向かうことができます。
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最終更新: 2026年7月31日
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