脳卒中回復期の発熱について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脳卒中(のうそっちゅう)とは、脳の血管が詰まったり破れたりする病気です。その回復中に体温が38度以上になることを「発熱(はつねつ)」といいます。発熱は、脳卒中後の体に何か問題が起きているサインであることがあります。
重要な事実
- 脳卒中後の発熱は、感染症(かんせんしょう:細菌やウイルスが体に入って起こる病気)が原因でよく起こります。
- 発熱は脳の回復を遅らせることがあるため、早めの対応が大切です。
- 脳卒中後の発熱は、適切に治療すれば多くの場合改善します。
はい、脳卒中後の発熱はよくみられます。特に脳卒中で寝たきりになったり、飲み込みの機能が弱ったりすると、肺炎(はいえん)や尿路感染症(にょうろかんせんしょう)などの感染症を起こしやすくなります。
脳卒中から回復中のすべての人が発熱する可能性があります。特に高齢の方や、もともと体の弱い方、飲み込みに問題がある方に多くみられます。
症状
- 意識がもうろうとする
- 呼吸が苦しそう、または息が速い
- けいれん(体がガクガクと震える)が起きる
- 体温が40度以上ある
- 顔色が悪く、冷や汗が出ている(ショックの可能性)
- ⚠38度以上の熱が続く
- ⚠せきやたん(痰)が出る
- ⚠排尿(おしっこ)のときに痛みがある、または尿がにごっている
- ⚠傷口が赤くなったり、はれたり、膿(うみ)が出る
一般的な症状
- 体温が38度以上になる
- 寒気(さむけ)や震え(ふるえ)
- 汗をかく
- 体がだるい、元気がない
- 食欲がない
子供の症状
- 脳卒中は子どもにはまれですが、発熱の症状は大人と似ています。ぐったりする、機嫌が悪い、呼吸が速いなどもみられます。
高齢者の症状
- 高齢者の場合、発熱があっても体温が上がりにくいことがあります。代わりに、混乱(こんらん:ぼんやりする、わけがわからなくなる)や、転びやすくなることなどが最初のサインになることがあります。
原因
主な原因
- 感染症(細菌やウイルスが原因):肺炎(はいえん)、尿路感染症(ぼうこう炎など)、敗血症(はいけつしょう:感染が全身に広がった状態)
- 中枢性発熱(ちゅうすうせいはつねつ):脳卒中による脳のダメージが直接体温調節に影響して起こる発熱。感染症ではない
- 薬の副作用:脳卒中後に使う薬で発熱が出ることがある
リスク要因
- 高齢である
- 飲み込みの機能が弱っている(誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスク)
- 寝たきりや体をあまり動かせない
- 免疫力(めんえきりょく:病気と戦う力)が低下している
- 膀胱(ぼうこう)にカテーテル(管)を入れている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「緊急」症状がある場合は、すぐに119番(救急車)を呼んでください。
- 38度以上の発熱が続く、または意識がぼんやりする場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
定期受診を予約すべき場合:
- 微熱(37度台)で元気がある場合は、翌日まで様子を見てもよいですが、脳卒中回復中は早めに相談することをおすすめします。
- 定期的な体温測定と、気になる症状があれば診察を受けてください。
診断
医師が問診(症状や経過を聞く)と診察を行い、発熱の原因を調べます。
行われる可能性のある検査
- 体温測定
- 血液検査(白血球や炎症のマーカーを調べる)
- 尿検査(尿路感染症の確認)
- 胸部X線(はいぶエックス線:肺の写真を撮る)
- 必要に応じてCTスキャンや喀痰培養(かくたんばいよう:たんの検査)
診察で予想されること
診察では、いつから熱が出たか、他にどんな症状があるかを聞かれます。血液や尿の検査は痛みを伴いますが、すぐに終わります。結果が出るまで数時間かかることもあります。
治療
治療の目的は、発熱の原因となっている感染症を治し、体温を正常に戻すことです。脳卒中後の発熱は放っておくと脳に悪影響を与えるため、早めの治療が重要です。
自宅でのセルフケア
- 安静にし、体を休める
- 水分を十分にとる(飲み込みに問題がある場合は、医師の指示に従う)
- 部屋の温度を涼しく保つ
- 薄着にして熱を逃がしやすくする
- 解熱剤(げねつざい:熱を下げる薬)は、医師の指示がある場合のみ使用する。自分で市販薬を飲まない
医療治療
感染症が原因の場合は、細菌感染に対して抗生物質(こうせいぶっしつ:細菌をやっつける薬)を投与します。ウイルス感染の場合は、点滴などで体の状態を整えます。中枢性発熱の場合は、脳の治療に合わせて体温管理を行います。薬の種類や量は医師が患者さんの状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
発熱そのものに対する手術はありません。ただし、肺炎などで膿(うみ)がたまった場合など、原因となる病巣に対して手術が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
脳卒中からの回復中に発熱があると、リハビリが遅れたり、回復が長引いたりすることがあります。焦らず、医師や看護師の指示に従いましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日決まった時間に体温を測る
- 手洗い・うがいをこまめにする(感染予防)
- 疲れたら無理をせず休む
- 飲み込みに問題がある場合は、食事の姿勢や食べ方に注意する
食事と運動
バランスの良い食事と、できる範囲での軽い運動(リハビリ)が回復を助けます。ただし、発熱中は無理な運動は避け、安静を優先してください。水分補給を忘れずに。
精神的健康と心の健康
発熱が続くと不安やイライラが強くなることがあります。脳卒中後の回復期は気分の変動も起きやすい時期です。気持ちがつらいときは、家族や医療スタッフに話すことが大切です。
予防
脳卒中後の発熱を完全に防ぐことはできませんが、感染症のリスクを減らすことで予防できることがあります。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌(はいえんきゅうきん)のワクチン接種は、感染症予防に役立ちます。脳卒中後の方は、かかりつけ医と相談の上、接種を検討しましょう。
検診プログラム
定期的な健康診断や歯科検診も感染予防につながります。また、飲み込みの問題がある場合は、言語聴覚士(げんごちょうかくし:専門家)による評価を受けるとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 脳の損傷が悪化し、脳卒中後の回復が遅れる
- 敗血症(はいけつしょう:感染が全身に広がる)になる
- 多臓器不全(複数の臓器の働きが悪くなる)
- 意識障害(意識がもうろうとする)が続く
- 最悪の場合、命に関わることがある
長期的な見通し
脳卒中後の発熱は、原因を特定して適切に治療すれば、多くの場合改善します。特に感染症による発熱は、抗生物質などでしっかり治療すれば予後は良好です。早期発見・早期治療が回復の鍵ですので、気になる症状があればすぐに医療機関に相談しましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月30日
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