妊娠と副腎(ふくじん)の病気
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
副腎(ふくじん)は、左右の腎臓の上にある小さな臓器で、ストレスや命に関わるホルモンを作っています。妊娠中は、赤ちゃんの発育に合わせて体のホルモンの必要量が変わるため、副腎も普段以上に働く必要があります。副腎の病気があると、妊娠中に体調が変わりやすくなり、赤ちゃんにも影響が出ることがありますが、医師の管理をしっかり受けることで、多くの場合は安心して妊娠を続けられます。
重要な事実
- 副腎は、コルチゾールやアルドステロンなど体を守るホルモンを作っています。
- 妊娠中はホルモンの必要量が増えるため、副腎の病気があれば症状が出やすくなります。
- 副腎の病気はまれですが、医師と一緒に管理すれば、健康な赤ちゃんを迎えられる可能性が高いです。
副腎の病気は全体的にまれで、妊娠中には1000人に1人程度以下と言われています。しかし、副腎の機能が弱い方は、妊娠をきっかけに症状が現れることもあります。
副腎皮質機能低下症、クッシング症候群、褐色細胞腫、先天性副腎過形成などの副腎疾患がすでにある女性や、妊娠中に新たに副腎のトラブルを発症する女性に影響します。自己免疫疾患や長期間のステロイド薬使用歴がある方は、特に注意が必要です。
症状
- 突然の激しい頭痛、視界のかすみ
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- けいれん発作
- 激しい動悸、胸の痛み
- 血圧が極端に高くなる(測定値が高い場合)
- 激しい嘔吐が続いて水分・食事がとれない、血圧が下がる(副腎クリーゼの可能性)
- ⚠嘔吐や下痢で水分がとれない
- ⚠普段より血圧が低く、立ちくらみがひどい
- ⚠強い疲労感で動けない
- ⚠急に体重が増えたり、むくみが悪化したりする
- ⚠頭痛や動悸、発汗が続く
一般的な症状
- 強い疲れやすさ、脱力感
- めまい、立ちくらみ、低血圧
- 吐き気や嘔吐(つわりと似ていることがあります)
- 体の冷え、汗が出る
- しょっぱいものが食べたくなる
- 急な体重増加やむくみ
- 頭痛、動悸(どうき)、不安感
原因
主な原因
- 副腎皮質機能低下症:自己免疫の異常や感染などで副腎がうまく働かなくなる。
- クッシング症候群:副腎や下垂体の腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌される。
- 褐色細胞腫:副腎の中にできる腫瘍が、血圧を上げるホルモン(カテコラミン)を過剰に出す。
- 先天性副腎過形成:遺伝的な酵素の不足で、副腎ホルモンのバランスが崩れる。
リスク要因
- 自己免疫疾患(橋本病など)の既往がある
- 長期間ステロイド薬を使用したことがある
- 副腎や下垂体の腫瘍の既往がある
- 家族に副腎疾患の人がいる
- 妊娠中の感染症や大きなストレス
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合は、ためらわず救急相談や119番に連絡する
- 妊娠中に血圧が高くなったり、たんぱく尿を指摘されたりした場合
- おう吐や下痢が続いて、水分や食事が全くとれない場合
定期受診を予約すべき場合:
- 副腎の病気がある方で妊娠を計画している場合は、妊娠前に主治医に相談する
- 妊娠中に極度の疲れやすさ、めまい、吐き気が続く場合
- 副腎疾患の治療中で、症状の変化や薬の調整について相談したい場合
診断
問診と、血液検査・尿検査・画像検査(超音波やMRI)を組み合わせて診断します。妊娠中は赤ちゃんへの安全性に配慮して、検査方法を選びます。
行われる可能性のある検査
- 血液中のコルチゾールやACTH(副腎を刺激するホルモン)の測定
- 尿中のホルモン代謝物の測定
- 血圧・心拍数の確認
- 腹部の超音波(エコー)検査
- 必要に応じてMRI検査
診察で予想されること
内分泌内科(ホルモンの専門医)と産科医が合同で診療にあたります。診断がつくまでに時間がかかることもありますが、無理せず検査を進め、赤ちゃんへの影響を最小限にしながら妊娠を継続します。
治療
治療は、どの副腎の病気があるか、妊娠週数、母体と赤ちゃんの状態によって異なります。ホルモンを正常な範囲に保ち、血圧や体調の変化を穏やかにすること、そして安全な分娩時期と方法を決めることが目的です。
自宅でのセルフケア
- 医師から処方されたホルモン補充の薬は、指示どおりに必ず飲み、自己判断でやめない
- 発熱や吐き気などのストレス時にどうするか、あらかじめ医師と「緊急時プラン」を作っておく
- 十分な休息と睡眠をとり、体力を温存する
- ストレスをためず、気になる症状があればすぐに医療者へ連絡する
医療治療
副腎ホルモンが不足している場合は、足りないホルモンを補充します。過剰に分泌されている場合は、原因となる腫瘍への対応や、血圧を下げる治療などを行います。妊娠中は胎児への影響を考え、最も安全な治療法を選択します。
手術が検討される場合
腫瘍が原因で治療が必要な場合は、手術が選択肢になることがあります。妊娠中の手術は、多くは妊娠中期(13〜16週ごろ)に行うか、状況によっては出産後に手術をするか、医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
妊娠中は定期的な診察と検査が欠かせません。血圧や体重、体調の変化を記録しておくと、医師に状況を伝えやすくなります。突然の体調悪化に備えて、緊急連絡先を携帯し、家族にも病気のことと対処法を伝えておきましょう。
生活習慣のアドバイス
- ストレスを避け、リラックスできる時間をつくる
- 禁煙・禁酒を守る(妊娠中は必須)
- 体調が良いときは、医師に相談して軽い運動(散歩など)を取り入れる
- 家族や友人に状態を伝えて、遠慮なく助けを求める
食事と運動
食事は、医師や管理栄養士の指示に従うことが大切です。副腎の病気によっては、塩分を多めに必要な場合や、高血圧で塩分制限が必要な場合があります。運動は、妊娠中は無理をせず、医師の許可をもらった範囲で行ってください。
精神的健康と心の健康
妊娠中はホルモンの変化で情緒が不安定になりやすく、副腎の病気や赤ちゃんへの心配が重なると、つらさを感じることもあります。一人で抱え込まず、パートナーや家族、医療者に気持ちを話しましょう。気分の落ち込みが続いたり、眠れない、食欲がないなどがあれば、専門家への相談も大切です。
予防
副腎の病気そのものを防ぐことは難しいですが、妊娠前にしっかりと体調を整え、副腎の状態を安定させておくことで、妊娠中の合併症を減らすことができます。病気がある場合は、妊娠を計画する前に必ず主治医に相談しましょう。
検診プログラム
家族に副腎疾患がある方、ステロイドを長期間使用した方、妊娠を希望する方で副腎の病気が疑われる場合は、妊娠前に血液検査や尿検査などを受けることをおすすめします。妊娠初期にも、血圧測定やホルモン検査を行うことがあります。
合併症
治療しない場合
- 副腎クリーゼ(副腎機能が急に低下し、血圧が下がって命にかかわる状態)
- 妊娠高血圧症候群(血圧が高くなる)
- 妊娠糖尿病
- 胎児の発育不全
- 早産や流産のリスクが高まる
長期的な見通し
副腎の病気があっても、妊娠前からきちんと管理し、妊娠中も医師と協力してケアを続ければ、多くの場合、元気な赤ちゃんを迎えて出産することができます。周産期医療の進歩により、妊娠・出産の安全性は以前より大きく向上しています。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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