妊娠中に骨を折ったときの治り方
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
骨折とは、骨にひびが入ったり折れたりすることです。体には、折れた骨を元に戻す「治る力」がそなわっています。妊娠中は、赤ちゃんへの影響を考えながら治療やケアを進めるため、妊娠していないときとは少し違う配慮が必要です。
重要な事実
- 妊娠中はホルモンの影響で関節やじん帯がゆるみ、転びやすくなることがあります。
- 妊娠中でも、多くの骨折は赤ちゃんを育てながら安全に治療できます。
- 治療では、医師や産科医と相談し、必要な検査や痛み止めを最小限に使うことを目指します。
妊娠中の骨折はそれほど多くありませんが、転倒や事故によって起こることがあります。また、妊娠中に骨密度(骨の中身がどれだけ詰まっているかの指標)が低くなり、骨盤や背骨が折れやすくなる「妊娠関連骨粗しょう症」という状態になる人もまれにいます。
妊娠中の女性なら誰でも骨折する可能性があります。特に、お腹が大きくなる妊娠後期は重心がかわり、バランスをくずして転びやすくなります。カルシウムやビタミンDが不足していたり、もともと骨密度が低い人は、より注意が必要です。
症状
- 動けなくなってしまうほどの激しい痛みがある(すぐに119番へ)
- 骨が皮膚を突き破っている、または出血が止まらない(すぐに119番へ)
- 手足の感覚がない、または意識がもうろうとしている(すぐに119番へ)
- 転倒後のお腹の強い張り、性器出血、激しい腹痛がある(すぐに119番へ)
- 赤ちゃんの動きがこれまでと比べて極端に少ないと感じる(すぐに119番へ)
- ⚠骨折かどうかわからないが、痛くて体重をかけられない
- ⚠手足の腫れや変形が目立つ
- ⚠転んだときにおなかを打ち、強い痛みや張りが続く
- ⚠妊娠中に転倒して、腰や骨盤の痛みが続く
一般的な症状
- 痛みが強く、動かすとさらに痛む
- 骨折した場所がはれる、赤く色が変わる
- けがの部分の形がいつもと違って見える
- 手足の場合は、力を入れたり体重をかけたりできない
- 触るととても痛い、またはしびれがある
子供の症状
- おなかの中の赤ちゃんに直接の「骨折の症状」はありません。ただし、転んだ後にお腹の張りや出血、赤ちゃんの動きがいつもより少ないと感じたら、すぐに産科を受診してください。
高齢者の症状
- この記事は妊娠中の女性を対象としています。高齢者の骨折では、同じように痛みや腫れ、動かしにくさが主なサインですが、妊娠中とは原因や治療方針が異なるため、別の記事で確認してください。
原因
主な原因
- 転倒や落下による外傷
- 交通事故などの強い衝撃
- 妊娠中に骨密度が低くなることで起こる骨の弱り
- くり返し同じ場所に負荷がかかる疲労骨折
リスク要因
- 妊娠後期でお腹が大きく重心が不安定
- つわりや食事の偏りでカルシウム・ビタミンDが不足
- 妊娠前に骨密度が低いと言われたことがある
- 滑りやすい床、深夜のトイレ歩行など転倒しやすい環境
- 妊娠中に体重が増えすぎて骨や関節への負担が大きい
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 動けないほどの痛みがある
- 手足の形が変わるほどの腫れや変形がある
- おなかを打った後、お腹の張りや出血がある
- しびれや感覚のまひがある
定期受診を予約すべき場合:
- 痛みが1〜2日続く、またはだんだん強くなる
- 骨や関節に違和感があり、動作中に痛む
- 妊娠中に転んだが、痛みが落ち着かない
- 骨折の治療中に、痛みがぶり返したり固定がゆるんだりした
診断
医師がぶつけた場所や状況を聞き、腫れ・痛み・動かし方を確認します。骨折が疑われる場合は、画像検査を行います。妊娠中であることを必ず伝え、おなかに配慮した方法で検査します。
行われる可能性のある検査
- X線(レントゲン)検査 — 必要最小限の範囲を、おなかに配慮して撮影します
- 超音波(エコー)検査 — 赤ちゃんに影響が少ないとされる検査で、骨の状態を補助的に確認できます
- MRI検査 — 強い磁気を使って骨や周りの組織を詳しく見る検査です
- CT検査 — 複雑な骨折で詳しい立体情報が必要な場合に、最小限の範囲で行うことがあります
- 血液検査 — 骨密度に関係する栄養状態やホルモンの状態を確認することがあります
診察で予想されること
診察では、いつどこでけがをしたのか、痛みの強さ、しびれの有無、今の妊娠週数などを聞かれます。整形外科の医師が産科の医師と連携して、お母さんの体と赤ちゃんの両方に配慮した検査・治療計画を立ててくれます。不安なことは遠慮なく質問しましょう。
治療
骨折の基本治療は、折れた骨を正しい位置にして動かないように固定し、体が自然に治す力を助けることです。妊娠中は、外科的な処置が必要な場合も、産科医と整形外科医が相談してお母さんと赤ちゃんの安全を最優先に進めます。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示にしたがって、痛む部分を安静にする
- 急性期には氷で冷やすと腫れや痛みが和らぐことがある
- 痛む足に体重をかけず、松葉づえなどの道具を医師や理学療法士と相談して使う
- ギプスや装具を自分で外さず、ふだんの手入れ方法を確認する
- 家事や仕事を無理せず、周囲に手伝ってもらう
医療治療
治療には、ギプスやシーネ(添え木)、装具で固定する方法があります。痛み止めが必要な場合、妊娠中に使える種類を医師が判断して処方します。自己判断で市販薬を飲むのは避け、必ず医師や薬剤師に妊婦であることを伝えて相談してください。
手術が検討される場合
骨のずれが大きく、ギプスでは正しい位置に戻らない場合や、関節の中まで折れてしまった場合は、手術が必要になることがあります。妊娠中でも安全な手術方法と麻酔方法を、整形外科医と産科医が一緒に検討します。
この病気と共に生きる
骨折後は、医師の許可が出るまで無理に動かさず、固定した状態を保ちましょう。妊娠中は体重が増えるため、足や腰の骨への負担も大きくなります。家事の動線を整え、必要なものは手の届く場所に置くなど、過ごしやすい環境をつくることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 休養をしっかりとり、睡眠時間を十分確保する
- 転倒を防ぐため、家の中の段差や水まわりを整理する
- 滑りにくい靴や室内ばきを選ぶ
- 体重増加が急になりすぎないよう、健診で医師や助産師と相談する
- 痛みが続く間は、運転や重い荷物を持つことを控える
食事と運動
骨の材料になるカルシウムと、吸収を助けるビタミンDを意識した食事が役立ちます。乳製品、小魚、豆腐、緑黄色野菜などが例です。運動やリハビリは、医師や理学療法士の許可を受けた範囲で、無理なく行いましょう。
精神的健康と心の健康
骨折で動きが制限されると、妊娠中の不安も重なり、気持ちが沈んだり、いらいらしたりすることがあります。これは自然な反応です。ひとりで抱え込まず、パートナーや家族、医師、助産師に話しましょう。つらい気持ちが続くときは、地域の相談窓口を利用することも選択肢のひとつです。
予防
すべての骨折を防ぐことはできませんが、転倒のリスクを減らす工夫は有効です。妊娠中は重心がかわることを意識し、急な動きを避け、段差や濡れた床に注意しましょう。栄養バランスのよい食事と妊婦健診を続けることも、骨と体の健康につながります。
ワクチン
骨折の治療や治りに直接関わる特別なワクチンはありません。妊娠中の予防接種については、医師と相談してください。
検診プログラム
妊婦健診で骨密度を測ることはふつうありませんが、骨折しやすい要因があれば、医師が評価してくれます。骨の健康が気になる場合は、妊婦健診のときに相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 放置すると、折れた骨がずれたままくっつき、変形や長引く痛みが残ることがある
- 放置すると、体重をかけると痛みが続き、歩く・物を持つなどの動作に支障が出ることがある
- まれに、折れた場所によっては血管や神経を傷つけたり、重い合併症を起こしたりすることがある
長期的な見通し
ほとんどの骨折は、適切な治療と十分な時間をかければ、しっかりと治ります。妊娠中でも、産科と整形外科が一緒に対応してくれるため、赤ちゃんの安全を守りながら回復を目指せます。焦らず、今できるケアを少しずつ続けていきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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