尿もれ(尿失禁)と家族生活
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態のことです。咳やくしゃみをしたとき、急にトイレに行きたくなったときなどに起こります。恥ずかしいと感じる方も多いですが、治療や工夫で良くなることができる身近な健康問題です。
重要な事実
- 尿もれは病気ではなく、適切な診断と治療で改善できる症状です。
- 大きく分けて「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」などの種類があります。
- 恥ずかしいと我慢せず、早めに相談することが回復への近道です。
- 水分を減らしすぎると尿が濃くなり、膀胱を刺激して逆効果になることがあります。
とてもよくあることです。女性では4人に1人、男性でも10人に1人くらいが経験するといわれています。年齢を重ねると増えますが、若い方にも起こります。
出産を経験した女性、前立腺の病気がある男性、高齢の方に多く見られますが、子どもを含めどの年代にも起こりうる症状です。
症状
- 急に尿がまったく出なくなり、下腹部が激しく痛む
- 尿もれにともない意識がもうろうとする、ろれつが回らない、片側の手足に力が入らない
- 転んで頭を打った後に尿もれが始まった
- ⚠尿に血が混じっている
- ⚠排尿時の強い痛みや焼けるような感覚がある
- ⚠発熱と背中やわき腹の痛みがある
- ⚠急に症状が現れた、または急に悪くなった
一般的な症状
- 咳やくしゃみ、重い物を持ったときにおしっこが漏れる
- 急に強い尿意があり、間に合わず漏れてしまう
- トイレに行きたくなる回数が多い
- 夜中に何度もトイレで目が覚める
- トイレに行きたくなると止まれない
子供の症状
- おねしょが続く(昼間の失敗を含む)
- 走ったりジャンプしたりすると漏れる
- こまめにトイレに行く、漏れることを怖がる
- 便秘をともなうことがある
高齢者の症状
- 動作がゆっくりになるにつれてトイレに間に合わない
- 夜間の頻尿
- 認知機能の変化でトイレに行けないことがある
- 水分摂取を減らしてしまうことがある
原因
主な原因
- 出産や加齢による骨盤底筋(膀胱や子宮などを下から支える筋肉)のゆるみ
- 過活動膀胱(膀胱の筋肉が原因なく収縮してしまう状態)
- 前立腺肥大症(男性の前立腺が大きくなり尿の通り道を圧迫する状態)
- 膀胱炎や尿道炎などの感染症
- 神経の病気(脳卒中、脊髄損傷、糖尿病など)による排尿調節の障害
- 一部の薬が尿もれを引き起こしたり悪化させたりすること
リスク要因
- 出産、特に自然分娩を経験している
- 年齢を重ねている
- 慢性の便秘
- 喫煙や長引く咳
- 糖尿病や脳血管疾患などの持病
- 排尿の習慣を我慢すること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に血が混じる、排尿が痛い、発熱がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 急に尿が出なくなった、またはおなかが張って痛む場合は、救急車を呼ぶ必要があります(119番)。
- 突然の症状で、麻痺や言葉の障害をともなう場合は、脳卒中の可能性があり、緊急対応が必要です。
定期受診を予約すべき場合:
- 尿もれが続いている、量が多い、日常生活に支障がある
- 夜中に何度もトイレに起きて眠れない
- 尿もれを家族に隠している、外出を避けるようになっている
- 市販のパッドや下着で対応しているが、皮膚がかぶれてきた
診断
医師が丁寧に話を聞くことから始まります。いつ、どんなときに漏れるのか、どのくらいの量なのかを伝えましょう。そのうえで、必要な検査を行います。尿もれのタイプと原因を正確に知ることが、効果的な治療につながります。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(感染や血尿の有無を調べます)
- 排尿日誌(1〜2日間、おしっこの時間と量、漏れの状況を記録します)
- 残尿測定(膀胱に尿が残っていないか超音波で調べます)
- 尿流測定(尿を出す強さや流れを測ります)
- 必要に応じて、膀胱内圧測定などの検査が行われることもあります
診察で予想されること
診察では下着を確認したり、おなかや骨盤のあたりを触診したりすることがあります。プライバシーは守られますので安心してください。検査は痛みをともなうものもありますが、ほとんどは一時的で、結果によってあなたに合った治療法を選んでいきます。
治療
治療は、尿もれの種類と原因、生活状況によって個別に組み立てられます。多くの場合、まずは生活習慣の調整や骨盤底筋体操などの自分でできる方法から始め、それで不十分な場合に専門的な治療を検討します。
自宅でのセルフケア
- 骨盤底筋体操(骨盤の筋肉を意識して締めたり緩めたりする運動)を毎日続ける
- 膀胱訓練(少しずつトイレに行く間隔を延ばして、膀胱を慣らしていく方法)
- 水分は1日1.5リットル程度を目安に、のどが渇いたら飲む
- カフェインやアルコール、炭酸飲料を控えめにする
- 便秘を予防する(便秘は膀胱を圧迫します)
- 体重を適正に保つ(肥満はおなかの圧力を上げます)
医療治療
医師の指導のもと、膀胱の筋肉の緊張を和らげる薬、尿道の出口を締める力を助ける薬などが検討されることがあります。また、女性では膣の中に入れるリング状の器具(ペッサリー)を使う方法や、男性では前立腺の治療などが行われることもあります。いずれにしても、必ず医師との相談で決めます。
手術が検討される場合
自己ケアや薬などで改善しない場合、生活の質を大きく損なう場合には、手術が選択肢になることがあります。手術にはいくつかの種類があり、骨盤底を支える処置や、尿道を支えるテープ留置術などが行われます。泌尿器科専門医と十分に話し合って決めましょう。
この病気と共に生きる
外出先でのトイレの場所をあらかじめ確認しておく、念のために着替えやパッドを持ち歩く、移動時は内側にトイレがある席を選ぶなど、工夫で生活を広げられます。家族には症状を話して理解を求めると、心が軽くなります。
生活習慣のアドバイス
- 決まった時間にトイレに行く習慣をつける(例:3〜4時間おき)
- 1日30分程度の軽い運動を続ける
- 十分な睡眠をとり、疲れをためない
- 喫煙は控える(せきが続くと腹圧が上がるため)
- 利尿作用のある飲み物を夜に飲みすぎない
食事と運動
食事は食物繊維をしっかりとり、果物や野菜もバランスよく食べましょう。便秘をしにくい食生活は膀胱の圧迫を減らします。飲み物の量を減らしすぎると尿が濃くなって膀胱を刺激するため、適量をむらなく飲むことが大切です。運動は骨盤底筋体操を中心に、無理のない範囲で続けましょう。
精神的健康と心の健康
尿もれは恥ずかしい、迷惑をかけるといった気持ちから、外出を避けたり、人との付き合いを減らしたりすることがあります。孤立せず、家族や友人の理解を得ることはとても大切です。つらい気持ちが続くときは、医師や専門家に相談し、必要に応じて心理的なサポートを受けることも考えてください。
予防
すべての尿もれを予防できるわけではありませんが、リスクを減らすことは可能です。妊娠中・出産後の骨盤底筋体操、適正体重の維持、便秘の予防、継続的な運動、排尿を我慢しすぎないことなどが予防につながります。
ワクチン
尿もれに直接関係するワクチンはありませんが、肺炎やインフルエンザなどの感染症を防ぐことは、せきによる腹圧上昇や排尿障がいの悪化を防ぐ助けになります。
検診プログラム
日本の健康診断や特定健診では尿検査が一般的に行われますが、尿もれについての質問が含まれるとは限りません。受診の際には、尿もれの症状を自ら伝えることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 皮膚のかぶれやただれ、尿路感染症をくり返す
- 夜間の頻尿による転倒・骨折リスクの増加
- 外出を避けることで体力低下や社会的孤立が進む
- 重度の排尿障害が続くと腎臓に負担がかかることがある
- 自尊心の低下やうつ状態につながることがある
長期的な見通し
多くの尿もれは、適切な治療と自己ケアでよくなります。治療により排尿のコントロールが戻る方も、さらに工夫を続ければ日常生活を安心して送れる方も多くいます。希望を持って一歩ずつ取り組みましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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