尿失禁の基礎知識(患者さん向け)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態をいいます。ある特定の病気の名前ではなく、膀胱や尿道の働き、まわりの筋肉、神経などの問題によって起こる「症状」です。大きく分けて、せきやくしゃみで漏れるタイプ、急に尿意が起こって漏れるタイプ、尿がたまりすぎて漏れるタイプなどがあります。
重要な事実
- 尿失禁は、とてもありふれた症状で、決して恥ずかしいものでもありません。
- 尿失禁にはいくつかのタイプがあり、原因に合わせた対処法があります。
- 生活習慣の工夫や専門的な治療によって、多くの人が症状を改善できます。
とてもよくある症状です。特に40歳以上の女性では、約2〜3人に1人が何らかの尿漏れを経験したことがあると報告されています。男性でも、加齢や前立腺の病気に関連して起こることがあります。しかし、相談せずに我慢している人も多いのが現状です。
子どもから高齢者まで幅広い年齢で起こり得ます。特に、出産を経験した女性、骨盤の手術を受けたことがある人、高齢者で筋肉や神経のはたらきが弱まった人に多く見られます。
症状
- 次の症状があるときは、ためらわずに119番に電話してください。
- 尿がまったく出ない、またはごく少ししか出ず、下腹部が強く張って痛む
- 尿漏れにともなって、高熱や腰・背中の激しい痛みがあり、ぐったりしている
- 血の塊が出るほどの血尿があり、意識がもうろうとしている
- ⚠尿に血が混じっている
- ⚠排尿時に強い痛みがある
- ⚠前日までなかった尿漏れが突然始まった
- ⚠発熱がある
一般的な症状
- せきやくしゃみ、重い物を持ったときなど、おなかに力が入ったときに漏れる
- 急に強い尿意が起こり、トイレに間に合わない
- トイレに行く回数が多くなり、夜中にも何度も起きる
- 尿意を感じる前に、ちょっとした動作で漏れることがある
- いつも少しずつ尿がにじみ出て、下着がぬれている
原因
主な原因
- 骨盤底筋のゆるみや損傷(出産や加齢などが原因)
- 膀胱の筋肉の働きが不安定になる過活動膀胱
- 神経の障害(脳卒中、脊髄損傷、パーキンソン病など)
- 男性の前立腺肥大症や前立腺手術の影響
- 便秘や肥満、慢性的なせきなど、おなかの圧力が高まること
リスク要因
- 出産経験(特に難産や複数回の出産)
- 肥満(おなかへの圧力がかかるため)
- 喫煙(せきが慢性化し、腹圧がかかるため)
- 神経の病気や骨盤の手術歴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に血が混じっている
- 排尿困難(おしっこがしぼり出せない感じ)がある
- 尿漏れとともに強い腰痛や発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 尿漏れがあり、そのことで生活が制限されている
- 週に数回以上、尿漏れをする
- 尿意が我慢できず、外出や睡眠に不安がある
診断
尿失禁の診断では、まずどのようなときに尿が漏れるのか、生活についての詳しいお話を伺います。その後、必要に応じて尿検査や画像検査などを行い、尿失禁のタイプと原因を確認します。治療の前に、正しい診断がとても大切です。
行われる可能性のある検査
- 問診(どんなときに漏れるか、量、頻度、気になる点など)
- 排尿記録(排尿時間と尿量、尿漏れの状況を数日間記録)
- 尿検査(尿に血液やたんぱく、細菌が混じっていないか調べる)
- 残尿測定(排尿後に膀胱に残っている尿の量を超音波などで調べる)
- ウロダイナミクス検査(膀胱と尿道の圧力、流れを詳しく測る専門検査)
診察で予想されること
診察室では、看護師や医師が「いつから」「どんなきっかけで」「おしっこの回数は」「ほかに気になることは」といった質問をします。あらかじめこれらのことをメモしておくと、スムーズに伝えられます。初診でおこなう検査は、問診と尿検査が中心で、負担の少ないものです。
治療
治療の第一歩は、生活の中での工夫と骨盤底筋訓練です。これらは道具や薬を使わずに続けられるため、副作用の心配も少なく、多くの人にすすめられます。それでも効果が十分でない場合や、原因によっては、薬や手術などの専門的な治療を検討します。尿失禁は、治療を始めたからといって急にすべてが良くなるわけではありませんが、根気よく続けることで確実に改善できる症状です。
自宅でのセルフケア
- 排尿日記をつけて、自分の排尿パターンを把握する
- 骨盤底筋訓練を毎日おこなう(呼吸を止めずに、尿道や膣のまわりの筋肉を数秒間締めてゆるめる)
- トイレに行きたくなったら、あせらずに歩き、その場で骨盤底筋を締めるようにすると尿意が落ち着くことがある
- 便秘を予防し、腹圧がかかりすぎないようにする
- カフェインやアルコールのとりすぎに注意する
- 喫煙をやめる
医療治療
保存療法(生活の工夫や運動)で改善が不十分な場合、医師は膀胱の働きを整える薬を処方することがあります。薬は、尿失禁のタイプや原因に合わせて選ばれます。また、女性の場合、腟内に装着する器具や、尿道のまわりの組織を補強する治療が行われることもあります。いずれの治療も、必ず専門医の診察と説明を受けた上で決めてください。
手術が検討される場合
骨盤底筋訓練や薬などの非手術的治療を十分に行っても症状が改善しない場合や、骨盤臓器脱(子宮や膀胱などが下がってくる状態)をともなう場合には、手術が検討されます。手術にはいくつかの方法があり、患者さんの年齢や症状、生活スタイルなどを考えて、担当医と十分に話し合って決めます。
この病気と共に生きる
尿失禁があっても、生活の質は工夫次第で十分に保てます。外出するときは、あらかじめトイレの場所を確認しておく、着替えや吸水パッドを携帯するなどの準備をすると安心です。また、尿漏れに不安があると、どうしても行動が消極的になります。まずは小さな挑戦からはじめて、自信をつけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 1日の中で水分をこまめに分けて飲む(一度に大量の水を飲まない)
- カフェイン(コーヒー・緑茶・紅茶など)を控えめにする
- 便秘を予防するため、食物繊維を意識してとる
- 骨盤底筋訓練を続ける
- 夕方以降は、おしっこを増やす飲み物(コーヒーや濃いお茶など)を控えて、夜間の尿漏れを減らす
食事と運動
適正体重を保つことは、おなかから膀胱や骨盤底への圧力を減らすため非常に重要です。過度な食事制限はせず、野菜や果物、全粒穀物を中心としたバランスのよい食事を心がけましょう。運動は、ウォーキングや水中運動など、骨盤底に過度の負担をかけない軽い有酸素運動を週に数回おこなうことがおすすめです。運動する前には骨盤底筋を軽く締めておくと、尿漏れを予防できます。
精神的健康と心の健康
尿漏れが続くと、恥ずかしさ、不安、無力感などの感情を抱えることがあります。また、夜間の頻尿で睡眠が不足し、イライラや気分の落ち込みにつながることもあります。そうした感情はとても自然なものです。ただし、一人で抱え込むと悪化してしまうことがあります。パートナー、家族、友人、または医療者に気持ちを打ち明けることが、心の負担を減らす第一歩になります。
予防
すべての尿失禁を防げるわけではありませんが、リスクを減らす方法はあります。特に、妊娠中から骨盤底筋訓練をおこなうと、出産後の尿失禁を予防する効果が期待できます。また、適正体重を保つことや、便秘をしないこと、禁煙することも大切です。骨盤底筋は、症状が出る前から日頃からきたえておくのが理想です。
ワクチン
尿失禁に直接有効なワクチンはありません。ただし、肺炎やインフルエンザのワクチンは、高齢者の全身状態を保ち、せき込んで尿漏れを起こすきっかけを減らす間接的な効果が期待できます。かかりつけ医と相談のうえ、定期接種を含めた予防接種を検討しましょう。
検診プログラム
現在、尿失禁だけを対象にした定期健診はありませんが、健康診断の際に尿検査や問診の機会を利用して相談することができます。また、妊娠中や産後のケア、骨盤臓器脱のチェック、前立腺の検査など、医療機関を受診したときに、あわせて尿漏れの相談をしてみましょう。
合併症
治療しない場合
- 皮膚のただれや炎症(失禁関連皮膚炎)
- 尿路感染症をくり返す(膀胱炎から腎盂腎炎に進むこともある)
- 夜間のトイレで起きる転倒・骨折のリスク
- 外出や人との交流が減り、うつ状態や社会的な孤立につながる
長期的な見通し
尿失禁は、適切な治療と自己管理によって、多くの人が症状を改善できます。たとえ症状が残ったとしても、吸収パッドや生活の工夫を使えば、旅行や仕事、趣味など、日常の活動を続けられます。専門家のサポートを得ながら、自分に合った対処法を見つけていきましょう。あきらめずに一歩踏み出すことが、快適な毎日につながります。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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