妊娠中の腎臓の健康:大切なこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠をすると、からだの中で血液の量が増え、腎臓(じんぞう)という臓器の負担が大きくなります。腎臓は血液をきれいにして尿を作る臓器ですが、妊娠中はその働きが変わります。妊娠中に腎臓の機能が低下したり、妊娠高血圧腎症(にんしんこうけつあつじんしょう)という病気を発症したりすることがあります。この記事では、妊娠中の腎臓のトラブルについて、やさしく説明します。
重要な事実
- 妊娠中は腎臓に負担がかかりやすい
- 高血圧やたんぱく尿は腎臓のトラブルのサイン
- 定期的な産婦人科の検診で早期発見できる
- 腎臓病があっても、医師の管理のもとで妊娠・出産できることが多い
妊娠中は腎臓の負担が大きくなるため、腎臓にかかわる問題は一定数起こります。特に妊娠高血圧腎症は日本では全妊娠の約5%にみられるとされており、決して珍しくありません。
妊娠中の女性であれば誰にでも起こる可能性があります。特に、もともと腎臓病がある方、高血圧や糖尿病のある方、初めての妊娠の方、ご家族に妊娠高血圧腎症の方がいる場合などは注意が必要です。
症状
- 突然のけいれん
- 意識がもうろうとする
- 激しい頭痛
- 急に見えにくくなる、視界がかすむ
- 突然の息苦しさ
- おなかの赤ちゃんの動きを感じなくなる
- ⚠高熱が出る
- ⚠腰や背中に強い痛みがある
- ⚠尿の量が極端に少ない
- ⚠尿に血が混じっている
- ⚠吐き気やおう吐が続く
- ⚠むくみが急にひどくなる
一般的な症状
- 足や顔のむくみ(特に朝起きたとき)
- 尿の量が減る、または尿の出方が変わる
- 尿に血が混じる
- 腰や背中が痛む
- 頭痛が続く
- 視界がぼやける
- 吐き気や嘔吐
- 急に体重が増える
子供の症状
- 妊娠はこのテーマでは子どもには当てはまりません。妊娠可能な年齢であっても、小児では妊娠はありません。もし10代で妊娠した場合は、専門の産婦人科医に相談することが大切です。
高齢者の症状
- 35歳以上の妊娠を「高齢妊娠」と呼ぶことがあります。高齢妊娠では、妊娠高血圧腎症や腎臓のトラブルのリスクがやや高くなります。
- 高齢の妊婦の場合、むくみや頭痛などに加えて、血圧の上昇やたんぱく尿がみられたら、より注意が必要です。
原因
主な原因
- 妊娠によって血液量が増え、腎臓のろ過の仕事が増える
- 大きくなった子宮が尿道を圧迫し、尿の流れが滞る
- 妊娠による免疫の変化で、感染症にかかりやすくなる
- もともとの腎臓病が妊娠で悪化することがある
- 胎盤から出る物質が血管や腎臓に影響して、妊娠高血圧腎症になる
リスク要因
- もともと腎臓病がある
- 高血圧や糖尿病がある
- 肥満がある
- 初めての妊娠である
- 前回の妊娠で妊娠高血圧腎症になった
- 家族に妊娠高血圧腎症の人がいる
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)である
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれんや意識の変化がある
- 激しい頭痛や視野の異常がある
- 尿量が極端に少ない
- 胸の痛みや息苦しさがある
- 赤ちゃんの動きが普段より明らかに少ない
定期受診を予約すべき場合:
- むくみが続く
- 体重が急に増えた
- 頭痛や吐き気が続く
- 定期健診で尿たんぱくや血圧の異常を指摘された
- もともと腎臓病や高血圧があり、妊娠を考えている
診断
妊娠中の腎臓のトラブルは、主に血圧の測定と尿検査によって見つかります。産婦人科の定期健診では毎回これらの検査を行います。異常があれば、血液検査や超音波(エコー)検査で詳しく調べます。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定
- 尿検査(尿たんぱく、尿糖、尿中の血液など)
- 血液検査(腎臓の働きや電解質を調べる)
- 超音波(エコー)検査(腎臓や赤ちゃんの様子をみる)
- 胎児心拍数モニタリング(赤ちゃんの状態を確認する)
診察で予想されること
診察室で血圧を測り、尿検査をします。必要に応じて採血やエコー検査も行います。結果はその場で医師から説明され、その後どのように経過をみるか、生活で気をつけることなどのアドバイスがあります。不安なことは遠慮なく質問しましょう。
治療
妊娠中の腎臓のトラブルは、産婦人科と腎臓科の医師が連携して管理します。治療の目的は、お母さんの腎臓を守りながら、赤ちゃんが元気に育つことも守ることです。軽い場合には生活習慣の調整と安静が中心ですが、状態に応じて血圧を管理する薬や感染症の治療を行います。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控えめにし、バランスの良い食事をとる
- 十分な休息と睡眠をとる
- ストレスをためない
- 体重を毎日記録する
- 医師に指示された場合は自宅で血圧を測る
- お酒は妊娠中は一切避ける、たばこはやめる
医療治療
医師の判断で、血圧を下げる薬や、感染症がある場合は抗生物質(こうせいぶっしつ:細菌を退治する薬)などが使われることがあります。妊娠中でも使える薬は限られているため、必ず医師の処方に従ってください。妊娠高血圧腎症の場合は、症状の程度に合わせて入院して管理することもあります。お母さんや赤ちゃんの状態をみながら、出産の時期を検討します。
手術が検討される場合
妊娠中の腎臓のトラブルでは、一般的に手術は行いません。ただし、尿路の結石(こうせき)などが原因で強い痛みや重い感染症がある場合に、石を取るための手術や治療が検討されることはあります。手術が必要かどうかは、産婦人科と泌尿器科の医師が相談して決めます。
この病気と共に生きる
毎日の体重と血圧を測り、むくみがないかチェックしましょう。疲れを感じたら無理をせず休むことが大切です。通院や食事の記録はパートナーや家族の協力を得ながら、無理のない範囲で続けてください。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠をとる
- 左を下にして横になると、血行がよくなることがある
- ストレスをためず、リラックスする時間をもつ
- お酒とたばこはやめる
- 過度な運動は避け、医師に相談してから行う
食事と運動
食事は塩分を控えめに(1日6g未満をめやすに、医師の指示があればそれに従う)、たんぱく質や野菜をバランスよくとりましょう。運動は、ウォーキングなど軽いものにしましょう。医師から安静を指示された場合、激しい運動や長距離の歩行を避けてください。
精神的健康と心の健康
妊娠中に腎臓のトラブルがあると、おなかの赤ちゃんのことや自分の体のことが心配になり、不安やストレスを感じるのは自然なことです。気分が落ち込んだり、眠れない日が続くときは、ひとりで抱え込まずに医師や助産師に相談してください。
予防
妊娠中の腎臓のトラブルを完全に予防することは難しいですが、妊娠を考えている方は、妊娠前に血圧や血糖値を良好に保ち、腎臓の健康状態をチェックしておくことが大切です。妊娠中は、定期的な健診を受けて早期発見に努めることで、重症化を防げます。
ワクチン
妊娠を考えている方や妊娠中の方は、風疹、麻疹、インフルエンザ、新型コロナなどのワクチン接種について医師と相談しましょう。妊娠中に接種できるワクチンとできないワクチンがあります。不活化ワクチン(生きていない病原体から作られたワクチン)は妊娠中でも接種できるものがありますが、種類によって異なるので、必ず医師に確認してください。
検診プログラム
妊娠初期の血液検査と尿検査で腎臓の状態を確認し、その後の定期健診で血圧と尿たんぱくを毎回チェックします。これが腎臓トラブルの早期発見につながります。
合併症
治療しない場合
- 妊娠高血圧腎症が悪化する
- 赤ちゃんの育ちが遅れる(胎児発育不全)
- けいれん発作(子癇)
- 胎盤がはがれる(常位胎盤早期剥離)
- 腎臓の機能が低下する
長期的な見通し
妊娠中の腎臓のトラブルは、多くの場合、定期的な管理と早めの対応でお母さんと赤ちゃんの健康を守ることができます。腎臓病があっても、産婦人科と腎臓内科の医師がしっかり連携して管理することで、無事に出産を迎えられた方はたくさんいらっしゃいます。不安があれば、いつでも医師に相談してください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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