尿路感染症(UTI)と共に生きる
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
尿路感染症(にょうろかんせんしょう)は、腎臓、尿管、膀胱、尿道など、尿の通り道に細菌が入って炎症を起こす病気です。多くは膀胱炎(ぼうこうえん)で、排尿時の痛みや頻尿などの症状が現れます。
重要な事実
- 尿路感染症は女性に非常に多い感染症です。
- 適切な治療で多くの場合、数日で症状が改善します。
- 放置すると腎臓まで感染が広がることがあるため、早めの受診が大切です。
とてもありふれた感染症です。特に20〜50歳代の女性では、年間に5人に1人が経験するといわれています。
女性に多く見られますが、子ども、高齢者、男性でも起こります。尿道が短いため女性の方が細菌が入りやすく、閉経後の女性や、尿路につまりがある方、糖尿病の方、免疫力が低下している方もリスクが高いです。
症状
- 39度以上の高熱がある
- 悪寒戦慄(ぶるぶる震え)がある
- 腰や背中に強い痛みがある
- 吐き気や嘔吐がある
- 意識がもうろうとする
- 尿が全く出ない
- ⚠血尿がある
- ⚠排尿時に激しい痛みがある
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠症状が数日で悪化している
- ⚠妊娠中に症状がある
- ⚠高齢者や小さな子どもの場合
一般的な症状
- 排尿時に痛みや焼けるような感じがある
- 尿が近い(頻尿)
- 尿が急に我慢できなくなる
- 尿が濁っている、または血が混じる
- 残尿感がある
- 腰や背中の痛み、発熱(腎臓まで感染した場合)
子供の症状
- 発熱が主な症状となることが多い
- おしっこを嫌がる、おしっこが近い
- 昼間のおねしょ(夜尿症の悪化)
- 食欲がない、機嫌が悪い
高齢者の症状
- ぼんやりする、意識がもうろうとする(せん妄)
- 元気がない、食欲が落ちる
- 転倒の増加
- 尿失禁(もらしてしまう)
- 発熱がないこともある
原因
主な原因
- 腸内細菌(多くは大腸菌)が尿道から膀胱に入り込み、増えることで起こります。
- 排尿時に細菌を洗い流しきれないこと(排尿を我慢しすぎる)は原因になりやすいです。
- 性行為による刺激で細菌が入りやすくなることがあります。
リスク要因
- 女性であること(尿道が短い)
- 閉経後のホルモン変化
- 尿路結石や前立腺肥大による尿のつまり
- 尿道カテーテルの留置
- 糖尿病、免疫力の低下
- 頻繁な性行為
- 尿路感染症を繰り返した既往がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 前述の緊急症状(高熱、意識の変化、激しい痛みなど)がある場合
- 妊娠中に症状がある場合(軽い症状でもすぐに受診)
- 高齢者や小さい子どもに症状がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 排尿時の違和感や頻尿などの症状が2日以上続く場合
- 水分補給や生活ケアをしても症状が改善しない場合
- 尿路感染症を繰り返す場合
診断
医師が症状を聞き、必要に応じて尿検査を行います。尿の中に白血球や細菌がいないかを調べます。再発や重症の場合には、尿培養検査(細菌の種類を特定する)を行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 尿培養検査(細菌の種類と抗菌薬の効きやすさを調べる)
- 超音波検査やCT検査(尿路の形やつまりの確認)
- 血液検査(感染が広がっているかの確認)
診察で予想されること
採尿の指示に従って少量の尿を清潔な容器に入れます。処置自体は数分で痛みはありません。簡易検査ではその場で結果が出ることもありますが、培養検査は数日かかります。待ち時間を含めて通常は1時間程度の受診になります。
治療
尿路感染症の治療の中心は抗菌薬です。細菌を除菌することで症状が治まります。症状を和らげるために水分をしっかり取ることも大切です。市販の痛み止めは一時的な症状緩和に使えることもありますが、自己判断では使わず、医療機関の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
- 水分を多く取る(1日1.5〜2リットルを目安に)
- 排尿を我慢しない
- カフェインやアルコールを控える
- 刺激の少ない下着を選び、清潔に保つ
- お風呂よりシャワーを主にし、陰部をやさしく洗う
- 十分な休息を取る
医療治療
治療の基本は抗菌薬です。どの抗菌薬を使うかは、症状や尿検査の結果、体調などに応じて医師が判断します。指示された治療は途中でやめずに、最後まで行いましょう。妊娠中や腎機能が低下している場合には、安全に使える抗菌薬が慎重に選ばれます。排尿の痛みを和らげる補助薬や漢方薬が使われることもあります。
手術が検討される場合
尿路結石や前立腺肥大など、尿の流れを妨げる原因がはっきりしている場合には、その原因に対する治療が必要になることがあります。軽度では抗菌薬と生活改善で対応しますが、高度の場合には内視鏡手術や砕石などの治療が検討されます。専門医とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
排尿は我慢せずに、こまめに行いましょう。水分をこまめに取って尿を薄め、膀胱を洗い流すイメージです。症状が落ち着くまでは無理をせず、体を温かくして過ごしましょう。パートナーに症状を伝え、性生活については体調に合わせて調整してください。
生活習慣のアドバイス
- 通気性の良い下着を選び、毎日交換する
- トイレのあとは前から後ろへ拭く
- 陰部を清潔に保つ(ただし強くこすらない)
- お尻や腰を温めて血行を良くする
- 骨盤底筋体操(排尿後にお尻を締める運動)を取り入れる
食事と運動
栄養バランスの良い食事を心がけ、野菜や果物、食物繊維をしっかり取りましょう。クランベリージュースは予防効果が一部報告されていますが、治療薬の代わりにはなりません。激しい運動や冷えは避け、ウォーキングなどの適度な運動で血流を高めると良いでしょう。
精神的健康と心の健康
排尿痛や頻尿は睡眠や日常生活を妨げ、不安やストレスになることがあります。繰り返す場合は「またか」という落ち込みも出やすいですが、適切な治療で改善します。自分を責めず、必要なら医師や家族に気持ちを話してください。
予防
尿路感染症の多くは予防できます。こまめな排尿、十分な水分補給、清潔な生活習慣が基本です。再発を繰り返す場合には、医師と予防策について相談しましょう。
ワクチン
現在、日本で一般的に使われている尿路感染症のワクチンはありません。
検診プログラム
症状がある時に尿検査で見つけるのが基本です。健康診断の尿検査を積極的に受け、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 膀胱炎が腎盂腎炎(腎臓の炎症)に進行することがあります。
- 腎盂腎炎は高熱や腰の強い痛みを伴い、繰り返すと腎機能が低下する可能性があります。
- まれに敗血症(細菌が全身に回る病気)という重症化があります。
長期的な見通し
尿路感染症は、適切な治療を受ければほとんどの場合、症状は数日のうちに改善します。再発しやすい方でも、再発予防策や治療法を工夫することで、長くうまく付き合うことができます。安心して、医療者と一緒に管理していきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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