妊娠中の骨粗しょう症
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中に骨がもろくなり、骨折しやすくなる状態です。特に背骨や腰の骨に起こりやすく、痛みや姿勢の変化を引き起こすことがあります。医学的には「妊娠関連骨粗しょう症」とも呼ばれます。
重要な事実
- 妊娠中の骨粗しょう症はとてもまれな病気です。
- 背中の骨(椎体)や腰の骨が折れやすいのが特徴です。
- 出産後、多くの女性で骨密度は自然に回復していきます。
- 厚生労働省も妊産婦の骨の健康を重要なテーマとして取り上げています。
とてもまれな病気です。どのくらいの頻度で起こるかははっきりとは分かっていませんが、多くの産科医が一生のうちに一度経験するかどうかという程度のまれさです。
妊娠中の女性全員に可能性はありますが、特に初めての妊娠で、妊娠後期(7〜9か月)から産後に診断されることが多いです。もともと骨密度が低い方、カルシウムが不足している方、妊娠中に長期間安静にしていた方などに起こりやすくなります。
症状
- 激しい痛みで体を動かせない
- 足に力が入らない、またはしびれがある
- 排尿・排便が自分でできない
- 背中や腰の激しい痛みとともに息苦しさがある
- ⚠腰や背中の痛みが強く、歩くのがつらい
- ⚠痛みが数日続く、または悪化している
- ⚠日常生活(立ち上がる、着替える)ができないほどの痛み
一般的な症状
- 腰や背中に突然の強い痛みがある(特に動いたとき)
- 骨盤やおしりに痛みがある
- 背中が丸くなったり、身長が縮んだ感じがする
- 骨折した場所を押すと痛む
- 痛みで夜眠れない
原因
主な原因
- 妊娠中は赤ちゃんの骨を作るためにカルシウムを多く使うため、母体の骨が一時的に弱くなることがあります。
- 妊娠に伴うホルモンの変化(エストロゲンなど)が骨の強さに影響することがあります。
- 妊娠前から骨密度が低かったり、食事でカルシウムが不足していると、骨がもろくなりやすくなります。
- まれに、遺伝的な要因や特定の病気(腎臓病や内分泌の病気など)が関係することもあります。
リスク要因
- 初めての妊娠である
- 妊娠中に安静が必要で、動かずにいた期間が長かった
- もともと低体重またはやせ型である
- 喫煙や過度な飲酒の習慣がある
- カルシウムやビタミンDが不足している
- 以前に骨粗しょう症や骨折の既往がある
- ステロイド薬を長期間使用している(妊娠前からの使用も含む)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 腰や背中の激しい痛みがある
- 痛みで歩けない、足のしびれがある
- 排尿や排便のコントロールが難しい
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中に腰や背中の痛みが続く
- 産後の骨密度を検査したい
- 骨粗しょう症のリスクについて相談したい
診断
医師が問診と身体診察を行います。痛みの場所や程度、妊娠経過、食生活、転倒の有無などを確認します。骨粗しょう症が疑われる場合は、骨密度検査や画像検査を検討します。
行われる可能性のある検査
- 骨密度検査(DXA)
- 背骨や腰のX線検査(必要に応じて、おなかを防護して行います)
- MRI検査(放射線を使わずに骨や神経を詳しく見る検査)
- 血液検査(カルシウム、ビタミンD、ホルモンの値など)
診察で予想されること
妊娠中は、おなかの赤ちゃんへの影響を考えて、放射線を使わない検査を選ぶことがあります。必要であればX線でも、おなかを保護した上で安全に行えます。検査結果をもとに、医師が今後の治療やケアの計画を一緒に立ててくれます。
治療
治療の中心は、痛みを管理し、骨を強化しながら、妊娠と産後の経過を見守ることです。産科医・整形外科医・助産師などが連携して治療を進めます。多くの場合、出産後数か月で症状は改善します。
自宅でのセルフケア
- 痛みがある間は安静にし、無理に動かない
- 立ち上がるときはゆっくりと、手すりや壁を支えにする
- 医師の許可があれば、腹帯やコルセットで腰や背中を支える
- カルシウムとビタミンDをしっかりとる
- 転倒に注意し、部屋の段差をなくす、滑りにくい靴を履く
医療治療
薬物治療については、妊娠中や授乳中は使える薬が限られるため、必ず医師と相談します。一般的には、骨を強くする薬やカルシウム・ビタミンDのサプリメントを、医師の指示のもとで使用することがあります。痛みに対しては、妊娠中に安全とされる鎮痛薬を医師が選びます。薬の種類や量は必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
手術が必要になることはほとんどありません。背骨の骨折で神経が圧迫されている場合や、太ももの骨の骨折で歩けなくなった場合など、日常生活に大きな支障があるときに、医師が選択肢として説明することがあります。
この病気と共に生きる
妊娠中は安静が第一ですが、医師の許可があれば、骨に負担をかけない軽い動きから始めましょう。産後は赤ちゃんのお世話で腰に負担がかかるため、抱っこひもの使い方やおむつ替えの姿勢なども助産師に相談しながら工夫しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する
- アルコールは妊娠中は控える
- 適度に日光を浴びてビタミンDを保つ(1日15分程度)
- 体重を適正な範囲に保つ
- 転倒を防ぐために、床に物を置かない、滑りにくい靴を履く
食事と運動
骨を作る栄養素として、カルシウム(乳製品、小魚、豆腐、小松菜など)とビタミンD(サケ、サンマ、しいたけなど)をバランスよくとりましょう。運動は、医師に相談した上で、ウォーキングや水中歩行など骨に優しいものを選びましょう。食事については、管理栄養士に相談するのもおすすめです。
精神的健康と心の健康
妊娠中に思いがけない病気が見つかると、不安や緊張を感じるのは自然なことです。また、痛みで思うように動けないことで、気分が落ち込むこともあります。一人で抱え込まず、パートナーや家族、医療者に気持ちを伝えてください。気分の落ち込みが続く場合は、早めに相談することが大切です。
予防
骨粗しょう症を完全に予防する方法はありませんが、妊娠前から骨を健康的に保つことはとても大切です。バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙・節酒が骨を作る土台になります。妊娠中は医師に相談しながら栄養管理を続けましょう。
ワクチン
この病気に直接関係する予防接種はありません。妊娠中の予防接種については、かかりつけ医や産婦人科医に相談しましょう。
検診プログラム
骨密度検査は、通常、妊娠中には行いません。しかし、骨折の症状がある場合や骨粗しょう症のリスクが高い場合は、医師が産後に骨密度測定を勧めることがあります。
合併症
治療しない場合
- 背骨や腰の骨折が治りにくくなる
- 痛みが慢性化し、日常生活の動きが制限される
- 姿勢が悪くなり、身長が縮む
- 次の妊娠時にも同じ問題が起こる可能性が高くなる
長期的な見通し
出産後はホルモンのバランスが戻るにつれて、骨密度は回復していくことがほとんどです。完全に回復するまで数か月から数年かかることもありますが、適切な治療と生活の見直しで、多くの女性が普段の生活に戻れます。赤ちゃんへの影響はほとんどないと言われています。あせらず、医師の指導を受けながら回復を待ちましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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