子どもの甲状腺の健康:症状・治療・サポート
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺(こうじょうせん)は、のどぼとけの下にある「ちょう」のような形をした臓器です。ここで作られる「甲状腺ホルモン」は、体の成長、心臓や脳の働き、体温、エネルギーの使い方などを調整する、とても大切なホルモンです。子どもの甲状腺に異常があると、このホルモンが多すぎたり、少なすぎたりして、発育や体調、気分に影響が出ることがあります。
重要な事実
- 甲状腺ホルモンは、体の成長と脳の発達に欠かせません。
- 日本では、生まれたときに行う検査(新生児マススクリーニング)で、先天性の甲状腺機能低下症を早期に見つけることができます。
- 治療をきちんと続ければ、多くの子どもは健康な成長を取り戻せます。
子どもに多い病気ではありませんが、決して珍しくもありません。特に、生まれつき甲状腺の働きが弱い「先天性甲状腺機能低下症」は、新生児スクリーニングによって毎年一定数の赤ちゃんに見つかっています。
新生児から思春期の子どもまで、どの年齢でも起こり得ます。一般的に女の子にやや多いとされ、家族に甲状腺の病気の人がいる場合や、特定の遺伝的要因がある場合にも多く見られます。
症状
- 高熱と激しい動悸
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- けいれん
- 呼吸が苦しい
- 胸の痛み
- ぐったりして、水分もとれない
- これらの症状がある場合は、ためらわずに119番で救急車を呼んでください。
- ⚠動悸が続いて眠れない
- ⚠吐き気やおう吐が続く
- ⚠目が腫れぼったい・痛い、視力がおかしい
- ⚠短期間で急激に体重が減った
- ⚠元気がなく、水分がほとんどとれない
- ⚠けいれんや意識がぼんやりすることがある
一般的な症状
- 疲れやすく、よく眠る
- 寒がりになる、または暑がりになる
- 体重が増えやすい、あるいは減りやすい
- 便秘や下痢が続く
- 肌が乾燥する、髪がパサつく
- 動悸(どきどきする)や息切れがある
- 手足がふるえる
- 気分の落ち込みやイライラがある
子供の症状
- 身長が伸びない、成長曲線から外れる
- 学校の勉強についていけない、集中できない
- 無気力で、遊びたがらない
- まぶたや顔がむくむ
- 汗をかきやすい、暑がる
- 食欲がとてもあるのに体重が減る(または食欲がないのに増える)
- 思春期の始まりが早すぎる、または遅すぎる
高齢者の症状
- 元気がない、食欲がない、体重が減る
- 物忘れや気分の落ち込みが目立つ
- 脈が速い・遅い、動悸、息切れ
- 寒がる・暑がるなどの体温の変化
- 症状がはっきりしにくく、ほかの病気と間違われることもある
原因
主な原因
- 生まれつき甲状腺の形や働きに問題がある(先天性)
- 自分の免疫が甲状腺を攻撃してしまう(自己免疫性甲状腺炎など)
- ヨウ素(ヨード)のとりすぎ・不足(日本ではとりすぎが問題になることがあります)
- 脳の下垂体(かすいたい)という部分の異常
- 甲状腺の腫瘍や結節(しこり)
- 原因がはっきりしないこともあります。
リスク要因
- 家族に甲状腺の病気の人がいる
- 女児である
- ほかの自己免疫の病気(1型糖尿病など)がある
- ダウン症などの染色体異常がある
- 母親が甲状腺の病気をもっている
- 放射線をあびた経験がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「緊急」症状がある場合は、すぐに119番へ連絡してください。
- 新生児スクリーニングで再検査の案内が来たら、できるだけ早く(当日中に)医療機関へ連絡してください。
- 高熱、激しい動悸、繰り返す吐き気などがある場合は、すぐに受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 身長の伸びが悪い、または体重の増え方に変化がある
- 極端な眠気や疲れやすさが続く
- 便秘や皮膚の乾燥が長く続く
- イライラや気分の落ち込み、集中力の低下が続く
- 学校の先生から「元気がない」「落ち着きがない」と言われる
診断
まず医師が話を聞き、体の診察(首を触る、身長・体重を測る、脈をとるなど)をします。そのうえで、血液検査が中心となります。血液中の甲状腺ホルモンと、甲状腺をコントロールする脳のホルモン(TSH)の値を調べます。新生児では、入院中に足のかかとから少し血液をとる「新生児マススクリーニング」が行われ、この病気の早期発見に役立っています。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(TSH、FT3、FT4、甲状腺抗体など)
- 超音波(エコー)検査
- 甲状腺のシンチグラフィー(ごく弱い放射性の薬を使って甲状腺の働きを見る検査)
- 骨の年齢を調べるレントゲン検査
- 必要に応じて心電図や遺伝子検査
診察で予想されること
検査の結果が出るまで数日かかることがあります。採血は子どもにとってつらいこともありますが、子どもの状態に合わせて短時間で終わるよう配慮されます。心配なことや不安なことは、検査の前に医師や看護師に遠慮なく伝えてください。
治療
治療の基本は、甲状腺ホルモンのバランスを正常に近づけることです。ホルモンが不足している場合も、多すぎる場合も、薬で調整します。子どもの場合は成長に合わせて薬の量や種類を変えながら、長い目で治療を続けていきます。
自宅でのセルフケア
- 薬は医師の指示どおりに飲み、自己判断でやめない
- 定期的に受診して血液検査を受け、治療の記録を残す
- 学校や保育園の先生に、必要な範囲で病気のことを伝えておく
- 睡眠、栄養、運動など、規則正しい生活を心がける
- 気になる症状や変化をメモに残して、受診のときに相談する
医療治療
不足している場合には、不足した甲状腺ホルモンを補う薬を内服します。多すぎる場合には、甲状腺の働きを抑える薬を使います。薬の種類や量は、年齢、体重、甲状腺の状態によって医師が慎重に決めます。赤ちゃんの場合はごく少量から始め、成長に合わせて調整します。場合によっては、放射性ヨウ素治療や手術が検討されることもありますが、子どもの年齢や状態をよく考えて専門医が判断します。
手術が検討される場合
甲状腺に腫瘍ができて悪性(がん)が疑われる場合、薬でコントロールできないほどの甲状腺の腫れがある場合、気道を圧迫している場合などに、手術が検討されることがあります。手術が必要かどうかは、小児科と小児外科などの専門医が話し合って決めます。
この病気と共に生きる
治療が安定すれば、学校生活や遊び・運動もふつうに楽しめます。服薬が必要な場合は、毎日続けることで体調が安定します。家族や学校の先生に協力してもらいながら、子どもが自分のペースで過ごせる環境をつくることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 服薬や通院を習慣にする(朝の歯みがきの後に薬を飲むなど)
- 睡眠をしっかりとる
- ストレスをためないために、好きなことや遊びの時間をつくる
- 体調が悪いときは無理をしない
- 思春期には、悩みや不安を相談できる大人をつくる
食事と運動
基本的に特別な食事制限はありません。ただし、昆布やわかめなどの海藻類を毎日大量に食べ続けると、ヨウ素のとりすぎで甲状腺に影響が出ることがあります。運動は体調に合わせて行い、激しい動悸や息切れがあるときは休みましょう。詳しいことは担当医や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
治療が長く続くことや体の変化から、子どもが「自分は人と違う」と感じたり、不安やストレスを抱えることがあります。また、イライラや落ち込みは病気そのものの症状として現れることもあります。気持ちの変化に気づいたら、やさしく声をかけ、話を聞いてあげてください。学校のカウンセラーや専門医に相談するのも有効です。もし子どもが「死にたい」など強いつらい気持ちを話したときは、ひとりで抱え込まず、すぐに精神科や救急(119番)、児童相談所などにつなぐことが大切です。
予防
生まれつきの甲状腺の病気は予防できません。しかし、日本では新生児マススクリーニングで早期に見つけて治療を始めることができるため、発育・発達への影響を大きく減らせます。後から起こる甲状腺の病気も、はっきりした予防法はありませんが、気になる症状があれば早めに受診することが大切です。
検診プログラム
日本では、出生後まもなく、かかとから少量の血液をとる新生児マススクリーニングが行われており、先天性甲状腺機能低下症の早期発見・早期治療につなげています。再検査の案内が来たら、必ず受診してください。また、家族に甲状腺の病気の人がいる場合などは、医師の判断で定期的な血液検査が行われることもあります。
合併症
治療しない場合
- 先天性の場合、治療が遅れると身長の伸びが悪くなったり、脳の発達や知的発達に影響が出ることがあります。
- 甲状腺ホルモンが多すぎる状態が続くと、心臓への負担、不整脈、骨がもろくなる、成長が早く止まるなどのリスクがあります。
- 少なすぎる状態が続くと、重度の倦怠感、体重増加、便秘、コレステロール値の上昇などが見られることがあります。
- まれに、急に症状が悪化して「甲状腺クリーゼ」という危険な状態になることがあります。
長期的な見通し
早期発見・早期治療によって、多くの場合はとてもよい経過が期待できます。新生児スクリーニングのおかげで、先天性甲状腺機能低下症の赤ちゃんも、治療を始めれば発達の遅れを最小限にできます。治療は長く続くこともありますが、大人になる過程で状態は安定しやすくなります。希望を持って、子どもと一緒に治療に向き合いましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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