PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の症状と旅行のヒント
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
PCOS(ピーコス)は、多嚢胞性卵巣症候群とも呼ばれるホルモンの病気です。月経周期をコントロールするホルモンのバランスが崩れ、卵巣がうまく働かなくなります。卵子が成熟しなかったり、排卵が起こらなかったりします。卵巣の中に小さな袋(卵胞)がいくつも見られることがあるため「多嚢胞性卵巣」という名前がついていますが、すべての人に嚢胞があるわけではありません。
重要な事実
- 月経が不規則になったり、無月経になりやすい
- 放置すると、糖尿病や心臓病などのリスクが高くなることがある
- 健康的な生活習慣と医療の助けで、症状は十分に管理できる
はい、とてもよくある病気です。日本では、10代から40代までの女性の約5〜10人に1人がPCOSではないかと言われています。ただし、自覚症状が少なく、気づかずにいる人も多くいます。
PCOSは、月経が始まった後の10代から40代までの、妊娠する可能性がある年齢の女性に多く見られます。体質や生活習慣によって症状のあらわれ方は人それぞれです。
症状
- 突然、下腹部(おなかの下側)にひどい痛みがある
- 1時間に1枚以上を交換しても間に合わないほどの、非常にも多い出血
- めまいや失神(ふっと力が抜けて意識が遠くなる)を伴う出血
- 激しい痛みとともに、吐き気やおう吐がある
- 上記の症状がある場合は、ためらわずに119番に連絡しましょう
- ⚠不正出血が何日も続く(月経でないのに出血がある)
- ⚠月経が3か月以上こない
- ⚠旅行中に薬を飲み忘れて、症状が悪化した
- ⚠旅行先で体調が急に悪くなり、近くの医療機関を受診したい
一般的な症状
- 月経周期が不規則(順番が遅れたり、飛んだりする)
- 月経がない期間が続く(無月経)
- 月経量が多い、または少ない
- にきびが増える、または治りにくい
- 顔や胸、背中などに体毛が濃く生える
- 頭髪が薄くなる
- 体重が増えやすい、減りにくい
- 首のまわりやわきの下など、皮膚が黒ずむ
- 気分の落ち込みや不安を感じることもある
原因
主な原因
- はっきりした原因はまだわかっていません
- 遺伝が関係することがある
- インスリン抵抗性(体でインスリンが効きにくく、血糖を下げるために余分にインスリンが出る状態)が関係することがある
- 体内の男性ホルモン(アンドロゲン)が少し多くなることも関係する
リスク要因
- 家族(姉妹や母)にPCOSの人がいる
- 太りすぎまたは肥満
- 運動不足
- インスリン抵抗性がある(特に、家族に2型糖尿病の人がいる場合)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「緊急」の症状がある場合
- 旅行中に、いつもと違う強い症状が出た場合
- 急な激しい腹痛や大量の出血がある場合は、すぐに医療機関を受診してください
定期受診を予約すべき場合:
- 月経が3か月以上ない
- 月経の周期が30日以上ずれることがよくある
- 妊娠を望んでいるが、なかなか妊娠しない
- にきびや体毛の増加、脱毛などが気になる
- 体重が急に増えた、または減りにくい
- 旅行や出張の計画があり、PCOSの管理について相談したい
診断
医師が、あなたの症状・月経の記録・家族に病気を持っている人の有無を聞いて診察を行います。血液検査や超音波(エコー)検査の結果を合わせて、ほかの病気を除外して診断します。日本では厚生労働省の診断の手引きが参考にされています。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(ホルモンの値を調べる)
- 超音波(エコー)検査(卵巣の形や卵胞の大きさを調べる)
- 血糖値やインスリン値の検査(糖尿病のリスクを調べる)
- 血圧やコレステロールの検査
診察で予想されること
診察では、月経の記録や症状について質問されます。思い当たることをメモしていくとスムーズです。PCOSは1つの検査で診断がつくものではなく、いくつかの検査と問診を組み合わせて診断します。あなたの目標(妊娠希望など)に合わせて、検査の計画を作りましょう。
治療
PCOSを完全に治す治療はありませんが、症状や将来のリスクを減らすことはできます。治療の中心は、生活習慣(食事・運動・体重管理)と、必要に応じた薬物療法です。あなたが妊娠を望むかどうか、月経不順を治したいのか、にきびや体毛の症状を改善したいのかによって、治療の目標は変わります。治療は必ず医師と相談して始めましょう。
自宅でのセルフケア
- 毎日30分程度の軽い運動(ウォーキングやヨガなど)を続ける
- 野菜や全粒穀物、豆類を多くしたバランスの良い食事を心がける
- 砂糖入り飲料や加工食品を減らす
- 体重を適正な範囲に保つ(5%の減量でも症状が改善することがある)
- 睡眠を十分にとって、ストレスをためない
- 旅行先では、こまめに水分をとり、長距離の移動中は立ち歩いて血行を促す
- 食事の時間がずれても、無理のない範囲で規則正しく食べる
医療治療
医師が処方する治療には、月経周期を整えるホルモン調整薬、排卵を促す薬、インスリンの働きを改善する薬、体毛やにきびに効く薬などがあります。内服薬や外用薬(塗り薬)もあります。どの薬も、医師による処方が必要です。必ず医師の指示にしたがい、わからないことは薬剤師に相談してください。旅行中は処方箋や薬を十分に持参し、原容器のまま携帯しましょう。
手術が検討される場合
内視鏡で卵巣に小さな穴をあける「卵巣ドリリング」という手術が行われることがありますが、これは多くの治療がうまくいかない場合の選択肢であり、第一選択ではありません。手術が必要かどうかは、医師とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
PCOSは関わり方が長く続くことを学ぶ病気です。日々の生活のなかで、月経の記録をつける、定期的に血圧や体重を測る、健診を欠かさないといったことが役立ちます。旅行のときは、薬や診療情報をまとめて持っていくこと、普段の食事や運動のリズムをできるだけ保つこと、無理をしないことが大切です。時間のずれや日程の変化で体調が変わることもあるので、周りに相談しながら無理のない計画を立てましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠と十分な休息
- 適度な運動を習慣にする
- たばこを吸わない
- アルコールはほどほどにする
- 定期的に健康診断(血圧・血糖・コレステロール)を受ける
- 旅行中は、普段の薬は手荷物に入れ、予備も持参する
食事と運動
食事は、野菜や果物、全粒穀物、魚、大豆などのたんぱく質を中心にした、血糖値が急に上がりにくいものを選びましょう。白いパンやごはん、砂糖を多く含むお菓子や飲み物は控えめにします。運動は、ウォーキングや水泳、筋力トレーニングを組み合わせて、週に150分(1日30分×5日)を目安にすると効果的です。旅行中は、エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う、出発前にホテルの周辺を歩くなど、できる範囲で体を動かしましょう。
精神的健康と心の健康
PCOSはからだだけでなく、気持ちにも影響することがあります。にきびや体毛、体重の変化は自信に影響するかもしれません。月経不順や妊娠への不安から、ストレスを感じることもあります。それらの感情は自然なものです。家族や友人、医療者に気持ちを話しましょう。旅行などの予定があるときは、無理をしすぎず、疲れたら休むことを自分のルールにすると気持ちが楽になります。もしも悲しみや不安が長く続く、または日常生活に支障がある場合は、一人で悩まずに医療機関に相談してください。もし自傷や自殺の考えがある場合は、すぐに119番に連絡するか、まわりの人に助けを求めましょう。
予防
PCOSそのものを予防する方法はまだ見つかっていません。しかし、発症しやすい人が、早期に気づいて生活習慣を整えることで、将来の合併症(糖尿病や心臓病など)のリスクを下げることができます。また、不規則な月経を放置せずに受診することで、子宮内膜の健康を守ることができます。
合併症
治療しない場合
- 不規則な月経が続くと、子宮内膜が厚くなりすぎて、子宮内膜がんのリスクが上がることがある
- 2型糖尿病を発症しやすくなる
- 高血圧や脂質異常症(LDLコレステロールが高いなど)を起こしやすくなる
- 妊娠を希望する場合、排卵しにくいため妊娠しにくいことがある
- 妊娠中に妊娠糖尿病や高血圧などの合併症が起こりやすい
- 不安やうつなどの心の不調が起こりやすい
長期的な見通し
PCOSは、うまく付き合っていける病気です。医師の助けを受けながら、食事・運動・睡眠などの生活習慣を見直すことで、症状は確実に改善できます。たとえ5%の体重減少でも、月経や排卵の改善につながるという報告があります。妊娠を望む人でも、適切な治療を受ければ、多くの人が自然妊娠または治療によって妊娠をかなえています。あなたのペースで無理なく、一歩ずつ取り組んでいきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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