腎臓を元気に保つために – 腎臓病の予防と早期発見
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
腎臓は、腰のあたりに左右ひとつずつあるソラマメのような形をした臓器です。体にたまった老廃物を尿として外に出し、水分のバランスや血圧を調整したり、赤血球を作るホルモンを分泌したりするなど、体にとって大切なはたらきをしています。腎臓病とは、こうした腎臓のはたらきが何らかの理由で低下した状態のことを指します。慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)は、腎臓の機能が数か月から数年かけてゆっくりと低下していく病気です。初期にはほとんど症状がないため、静かに進行することが多いのが特徴です。
重要な事実
- 腎臓病の初期は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行することがあります。
- 高血圧や糖尿病(とうにょうびょう)は、腎臓病の主な原因です。
- 健康診断の尿検査や血液検査で、早期に腎臓の異常が見つかることがあります。
- ふだんの生活習慣を見直すことで、腎臓病の発症や進行を予防できる可能性があります。
- 腎臓が弱ると、体に老廃物や余分な水分がたまり、むくみや疲れやすさなどの症状があらわれることがあります。
はい、腎臓病は決して珍しい病気ではありません。日本では、慢性腎臓病の患者さんは成人の約8人に1人いるともいわれています(厚生労働省の調査などによる報告があります)。加齢とともに腎臓の機能は自然に低下していきますが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を抱える人では、よりリスクが高まります。
腎臓病は、高齢者や、高血圧・糖尿病・脂質異常症(ししついじょうしょう)などの生活習慣病がある人に多く見られます。また、家族に腎臓病の人がいる場合や、痛み止めの薬を長期間使っている場合、肥満や喫煙習慣がある場合もリスクが高くなります。子どもでも、生まれつきの腎臓の病気や尿路感染症がきっかけで発症することがあります。
症状
- 突然、尿がまったく出なくなった
- 胸の痛みや強い息苦しさがある
- 意識がもうろうとする、またはけいれんが起きた
- 激しい腰背部痛が突然始まった
- ⚠尿に血が混じっている(肉眼で見て明らかに赤い)
- ⚠高熱とともに腰や背中に強い痛みがある
- ⚠急に足や顔がひどくむくんだ
- ⚠吐き気や嘔吐が続き、水分が取れない
一般的な症状
- 初期にはほとんど症状があらわれません。
- 足やまぶたのむくみ(特に朝、顔がはれる)
- 尿の泡立ちが気になる(タンパク尿の可能性)
- 尿の色が赤い・茶色い、または尿の量や回数の変化
- 体がだるい、疲れやすい
- 食欲がない、吐き気がする
- 夜中に何度もトイレに行く
- 皮膚のかゆみ
- 息切れや動悸(どうき)
子供の症状
- 成長が遅い、身長が伸びない
- 顔や足のむくみ
- 尿の色がおかしい(茶色や赤色)
- おねしょが続く(年齢から考えると通常を超える場合)
- よく熱を出す、尿路感染を繰り返す
- 元気がない、食欲がない
高齢者の症状
- 腎臓の機能低下によって、むくみや息切れがあらわれやすい
- めまいやふらつき(貧血や血圧の変動による)
- 認知機能の低下に似た症状(ぼんやりする、集中できない)
- 服薬中の薬の影響で腎機能が悪化しやすい
- 脱水(水分不足)になりやすいため、注意が必要
原因
主な原因
- 高血圧(こうけつあつ)…血管に負担がかかり、腎臓の小さな血管を傷つけます。
- 糖尿病(とうにょうびょう)…高血糖が続くと、腎臓のろ過機能を壊します(糖尿病性腎症)。
- 慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん)…腎臓のろ過装置である糸球体の炎症。
- 腎硬化症(じんこうかしょう)…高血圧などで腎臓の動脈が硬くなる病気。
- 多発性囊胞腎(たはつせいのうほうじん)…腎臓に水のうがたくさんできる遺伝性の病気。
- 薬の影響…特に痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)や一部の抗生物質の長期使用。
- 尿路の病気…前立腺肥大や尿路結石が原因で尿の流れが悪くなり、腎臓に負担がかかる。
リスク要因
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満がある
- 家族(親・兄弟姉妹)に腎臓病の人がいる
- 65歳以上である
- 喫煙習慣がある
- 痛み止めの薬を長期間、頻繁に使用している
- 運動不足や塩分の多い食事など不規則な生活習慣
- 脱水(水分不足)を繰り返す
- 過去に急性腎障害(急性に腎機能が低下する状態)にかかったことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に尿量が減った、または尿がまったく出ない
- 尿が明らかに赤い、またはコーラ色である
- 高熱と腰背部の激しい痛みがある
- むくみが急に悪化して、体重が1日で1〜2kg以上増えた
- 息苦しさや胸の痛みを伴う
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断で尿たんぱくや血液中のクレアチニン値を指摘された方
- 高血圧、糖尿病で通院中の方(定期的に腎機能検査を受けることが勧められます)
- 足のむくみや原因不明の疲れが続く
- 泡立ちの強い尿が続く
- 頻尿や夜間のトイレ回数が多い
診断
腎臓病の診断は、問診、身体診察(むくみや血圧のチェック)、血液検査、尿検査などの結果をもとに行われます。必要に応じて、超音波(エコー)検査やCT検査などで腎臓の形や大きさを調べることもあります。また、腎臓の組織を採取して調べる「腎生検(じんせいけん)」が行われる場合もありますが、すべての患者さんに必要なわけではありません。
行われる可能性のある検査
- 尿検査…尿たんぱくや尿潜血(尿に血液が混じっていないか)を調べます。
- 血液検査…血清クレアチニンという値を測定し、推定糸球体濾過量(eGFR)を計算することで腎臓のろ過機能を評価します。
- 血圧測定…高血圧は腎臓病の原因でもあり、結果でもあります。
- 超音波(エコー)検査…腎臓の大きさや形、水がたまっていないかなどを確認します。
- 血液中の電解質(カリウム、ナトリウムなど)の測定…腎臓の機能低下に伴うバランス異常を確認します。
診察で予想されること
病院での腎臓の検査は、基本的に採血と採尿が中心です。痛みを伴う検査は多くありません。健康診断と似たような検査が多いので、検査に不安がある場合は事前に医師や看護師に相談しましょう。結果にもとづいて、医師が腎臓の状態を説明し、今後の治療や生活のアドバイスをしてくれます。
治療
腎臓病の治療は、原因となる病気のコントロールと、腎臓への負担を減らすことを目的として行われます。進行の程度や原因によって治療法は異なりますが、早期であれば薬物療法や生活習慣の改善で進行をゆっくりにすることができます。腎臓の機能がかなり低下した場合は、透析(とうせき)や腎移植(じんいしょく)という治療を検討する時期があります。
自宅でのセルフケア
- 水分を適切に取る(ただし、心臓や腎臓の機能により制限がある場合は医師の指示に従う)
- 塩分を控える(1日6g未満が目標ですが、個人差があります。医師や栄養士に相談しましょう)
- たんぱく質の摂りすぎに注意する(必要量は医師や管理栄養士に相談しましょう)
- 適度な運動(ウォーキングなど)を生活に取り入れる
- 禁煙する
- アルコールは控えめに
- 肥満気味の人は体重管理をする
- 市販薬(特に痛み止めや風邪薬)を自己判断で長期間使用しない
医療治療
腎臓病の原因となっている病気を治療することが基本です。血圧や血糖値を下げるお薬、尿たんぱくを減らすお薬、利尿剤(尿の出をよくするお薬)などが使われることがありますが、どのお薬が適しているかは、病状や体質によって医師が判断します。また、腎機能が低下すると、貧血を改善する薬や、リンやカリウムの値を整える薬などが追加されることもあります。必ず医師の処方にしたがって服用してください。
手術が検討される場合
腎臓病が進行して、腎臓の機能が著しく低下した場合は、血液透析(けつえきとうせき)や腹膜透析(ふくまくとうせき)を行うための手術が必要になることがあります。また、腎臓移植(じんいしょく)は、健康な腎臓を提供者から移植する手術で、透析と並ぶ腎不全の治療選択肢のひとつです。手術が必要かどうか、どの治療が自分に合うかは、腎臓専門の医師やチームとよく相談して決めることが大切です。
この病気と共に生きる
腎臓病とともに生活する場合、まずは自分の腎臓の状態を理解することが大切です。通院の際に、検査結果の数値(eGFRや尿たんぱくなど)の意味を医師に聞いて、目標を一緒に決めましょう。毎日の血圧測定や体重測定、尿の色や量の変化に目を向けることも助けになります。水分は、のどの渇きを感じたら適度に飲むようにし、脱水を避けましょう。ただし、むくみがある場合や医師から水分制限を指示された場合は、その指示に従ってください。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に血圧を測る
- 塩分の多い加工食品、インスタント食品、外食を控えめにする
- 体重を週に1回程度測り、急な増減に注意する
- 生活リズムを整え、十分な睡眠をとる
- ストレスをためすぎないためのリラックス法を見つける
- 禁煙・節酒を心がける
- かかりつけ医の指示に従って、定期的に検査を受ける
食事と運動
腎臓病の食事療法では、塩分やたんぱく質、カリウム、リンなどの摂取量を調整することがあります。ただし、必要量は人それぞれなので、医師や管理栄養士の指導を受けながら進めることが大切です。運動は、激しすぎない有酸素運動(ウォーキングや水中歩行など)を週に数回行うことが推奨されます。ただし、血圧が高いときや体調が悪いときは無理をしないでください。
精神的健康と心の健康
腎臓病は長く付き合っていく病気であることが多く、「将来どうなるのだろう」と不安を感じることもあるかもしれません。そうした感情は自然なことです。1人で抱え込まず、家族や友人、医師、看護師、薬剤師などに気持ちを話しましょう。また、腎臓病の患者団体やオンラインのコミュニティもあります。必要に応じて心理的なサポートを求めることも、長い治療を続けるための立派な方法です。
予防
腎臓病を完全に予防することは難しい場合もありますが、進行を防ぎ、リスクを大きく下げることは十分に可能です。特に、高血圧・糖尿病の治療をきちんと続けること、塩分を控えめにするなどバランスの良い食事をとること、適度な運動、禁煙、節酒、適切な水分補給を心がけることが重要です。また、健康診断(特定健診・職場健診など)を毎年受けて、尿検査と血液検査の結果を確認することをおすすめします。厚生労働省も、生活習慣病の予防と健康診査の受診を推奨しています。
ワクチン
腎臓病自体を予防するワクチンはありません。ただし、腎臓病の患者さんや高齢者は感染症にかかると腎機能が悪化しやすいため、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種(よぼうせっしゅ)を受けることが勧められる場合があります。予防接種についての具体的な時期や種類は、かかりつけ医と相談してください。
検診プログラム
腎臓病の早期発見には、年に1回の健康診断での尿検査と血液検査がとても大切です。特に、高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療中の方や、家族に慢性腎臓病の人がいる方は、定期的な検査が勧められます。また、すでに腎臓病と診断されている人は、医師の指示に従って検査を受けてください。
合併症
治療しない場合
- 腎機能の低下が進み、慢性腎不全(まんせいじんふぜん)になる
- むくみが悪化し、心不全(心臓のポンプ機能の低下)を引き起こすことがある
- 心筋梗塞や脳卒中など、心血管疾患のリスクが高まる
- 貧血(赤血球を作るホルモンが減るため)
- 骨がもろくなる(骨ミネラル代謝異常)
- 高カリウム血症など、電解質の異常(不整脈の原因になることもある)
- 尿毒症(尿に排泄されるべき老廃物が体にたまり、食欲低下、吐き気、意識障害などを起こす状態)
長期的な見通し
腎臓病と診断されても、多くの場合は進行をゆっくりにすることができます。血圧や血糖、食事や運動などの対策をしっかり行えば、透析が必要になる時期を先延ばしにしたり、場合によっては回避できることもあります。医療の進歩により、腎臓病の治療や生活の質を維持するための方法も増えてきています。希望を持って、医療チームと一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。