人工膝関節置換術のリスクと利点
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
膝関節置換術(ひざかんせつちかんじゅつ)とは、傷んだ膝の関節を人工の部品に置き換える手術です。主に変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)や関節リウマチなどで膝の痛みがひどく、日常生活に大きな影響が出ている場合に検討されます。この手術には痛みを和らげたり、歩くなどの機能を改善したりする利点(メリット)がありますが、一方で感染症や血栓などのリスク(危険性)も伴います。
重要な事実
- 膝関節置換術は、保存療法(薬やリハビリなど)で効果が不十分な中等度から重度の膝関節症に行われる手術です。
- 手術の成功率は高く、多くの人が痛みの軽減と機能改善を実感します。
- 手術には全身麻酔または脊椎麻酔が使われ、入院期間は一般的に数日から2週間程度です。
- リスクには感染、血栓、インプラント(人工部品)の緩みや摩耗などがあります。
日本では年間約10万件以上の膝関節置換術が行われており、高齢化に伴い増加傾向にあります。厚生労働省の統計でも、変形性膝関節症に対する代表的な手術の一つです。
主に60歳以上の中高年に多く、女性の割合が高いです。ただし、関節リウマチやけがの後遺症がある若い人にも行われることがあります。
症状
- 手術後または手術前に関わらず、突然の強い膝の痛みと発熱(38度以上)がある
- 膝が急に赤く腫れて熱を持ち、悪寒(おかん)がある
- 手術後の脚に急な腫れや痛み、息切れ、胸の痛み(肺塞栓の可能性)
- ⚠膝の痛みがひどく、体重をかけられない
- ⚠膝が変な方向に曲がってしまった
- ⚠手術後の傷口から膿(うみ)のような分泌物が出る
一般的な症状
- 膝の慢性的な痛み(特に歩くときや階段の上り下り)
- 膝のこわばり(朝や座った後に動かしづらい)
- 膝の腫れや熱っぽさ
- 膝を曲げ伸ばししにくい
子供の症状
- 子どもの場合は、けがや先天的な病気による膝の問題で手術を検討することもありますが、非常にまれです。症状は痛みや歩き方の異常などです。
高齢者の症状
- 高齢者では、膝の痛みがひどくなり、安静時にも痛むことがあります。歩行が困難になり、家事や外出が減ることもあります。転倒のリスクも高まります。
原因
主な原因
- 変形性膝関節症(加齢や使いすぎで軟骨がすり減る)
- 関節リウマチ(免疫の異常で関節が炎症を起こす)
- けが(骨折や靭帯損傷)の後遺症
- 壊死(えし)(骨への血流が途絶える)
リスク要因
- 年齢(50歳以上)
- 肥満(体重が膝への負担を増やす)
- 遺伝(家族に関節症の人がいる)
- 過去の膝のけが
- 重い物をよく持つ仕事やスポーツ
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 膝の痛みが急に悪化し、立ち上がれない
- 膝が腫れて熱っぽく、38度以上の発熱がある
- 膝を全く動かせない
定期受診を予約すべき場合:
- 膝の痛みが数週間以上続いている
- 市販の痛み止めを使っても効果が弱い
- 膝の動きが悪くなり、日常生活に支障が出ている
診断
医師が問診(症状の聞き取り)と身体診察(膝の動きや腫れの確認)を行い、画像検査で関節の状態を詳しく調べます。
行われる可能性のある検査
- X線(レントゲン)検査:骨のすき間や骨棘(こつきょく)の有無を見る
- MRI検査:軟骨や靭帯の状態をより詳しく確認
- 血液検査:炎症の程度やリウマチの有無を調べる
診察で予想されること
診察では「いつから痛いか」「どんな時に痛むか」「どの程度動かせるか」を聞かれます。その後、膝を曲げ伸ばしたり、圧痛を確認したりします。痛みの場所や種類を診断し、治療方針を決めます。必要に応じて、整形外科専門医を紹介されることもあります。
治療
膝の痛みや機能障害に対する治療は、まず手術をしない保存療法から始まります。それで効果が不十分な場合に、手術が検討されます。膝関節置換術は最終的な選択肢の一つで、痛みの軽減と機能回復に大きな効果が期待できますが、リスクも伴います。
自宅でのセルフケア
- 体重を減らす(膝への負担軽減)
- 適度な運動(水中歩行やストレッチ)を行い膝周りの筋肉を鍛える
- 痛みが強い時は安静にするが、動かさない期間が長すぎるとこわばりが増すので注意
- サポーターや杖の使用で膝への負担を和らげる
医療治療
保存療法としては、消炎鎮痛薬の内服や外用、関節内注射(ヒアルロン酸やステロイド)が行われることがあります。理学療法(リハビリ)で筋力強化や可動域訓練も重要です。これらの治療を医師の指導のもとで行います。
手術が検討される場合
手術(膝関節置換術)は、保存療法を十分に試しても痛みが続き、日常生活に大きな支障がある場合に検討されます。例えば、歩行が困難、夜間痛で眠れない、趣味や仕事に支障が出ている場合などです。医師と十分に話し合い、リスクとベネフィット(利益)を理解した上で決めることが大切です。
この病気と共に生きる
膝関節置換術後は、回復に数か月かかります。術後すぐからリハビリが始まり、歩行器や杖を使いながら歩く練習をします。完全に元の生活に戻るまでには個人差がありますが、多くの人は6か月から1年程度で日常生活がほぼ自立できるようになります。
生活習慣のアドバイス
- 定期的なリハビリ(理学療法)を続ける
- 無理な姿勢や重い物を持たない
- 膝に負担のかかるスポーツ(ランニングやジャンプ)は避け、ウォーキングや水泳を推奨
- 転倒に注意し、家の中の段差をなくすなどの環境整備
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、特にカルシウムやビタミンDを十分に摂ることが骨の健康に役立ちます。運動は医師や理学療法士の指導のもとで行い、膝周りの筋肉(大腿四頭筋など)を鍛えることが安定性に重要です。
精神的健康と心の健康
手術後の痛みや思うように動けない期間は精神的に辛いことがあります。焦らず、リハビリを続けることが大切です。不安や気分の落ち込みがあれば、医師やカウンセラーに相談しましょう。
予防
膝関節の変形を完全に予防するのは難しいですが、進行を遅らせることは可能です。適度な運動、体重管理、膝に負担をかけない動作を心がけることで、重症化を防げる可能性があります。
合併症
治療しない場合
- 膝関節置換術を受けない場合、膝の痛みが続き、筋力低下や歩行困難が進行する可能性がある
- 長期間の痛みで生活の質(QOL)が低下し、外出や趣味が制限される
- バランスが悪くなり転倒リスクが高まる
長期的な見通し
膝関節置換術は、適応を正しく選べば多くの患者さんで痛みが大幅に改善し、歩行能力や生活の質が向上します。手術後のリハビリをしっかり行えば、90%以上の人が満足する結果を得られると言われています。ただし、人工関節には寿命(15~20年程度)があり、将来再手術が必要になる可能性もあります。また、感染や血栓などのリスクもあるため、医師と十分に相談し、リスクとベネフィットを理解した上で決断することが重要です。
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最終更新: 2026年7月31日
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