Deep Vein Thrombosis (DVT)
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この記事は患者教育のための独自コンテンツです。
国際的な臨床ガイドラインに基づいています
概要
深部静脈血栓症(DVT)とは、体の深い部分にある静脈(血管の一種で、血液を心臓へ戻す役割を持つ)の中に血の塊(血栓)ができる状態です。主に足やふくらはぎ、太ももの静脈に起こることが多く、血液の流れが滞ることで血栓が形成されます。この血栓が血流に乗って肺まで移動すると、「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」という命に関わる状態になることがあるため、早めの対応がとても大切です。
重要な事実
- DVTは足の深い静脈に血の塊ができる病気で、放置すると肺に影響が出ることがあります。
- 長時間の座りっぱなしや手術後、脱水などが引き金になることがあります。
- 早期に発見・治療を受けることで、多くの方が回復し、日常生活を取り戻せます。
DVTは決して珍しい病気ではありません。日本でも年間を通じて多くの方が経験しており、特に入院中の患者さんや長距離移動をする方、高齢者に見られやすいとされています。厚生労働省も、エコノミークラス症候群(長時間の座位による血栓症)として注意喚起を行っています。
DVTは誰にでも起こり得ますが、特に40歳以上の方、長時間動かずにいる方、手術や入院後の方、妊娠中・産後の方、肥満の方、血栓ができやすい体質(血液凝固異常)の方などにリスクが高いとされています。性別や年齢を問わず注意が必要な病気です。
症状
- 突然の息苦しさや呼吸困難(血栓が肺に移動した可能性があります)
- 胸の痛みや胸が締め付けられる感覚
- 血を吐く、または血の混じった咳が出る
- 意識がもうろうとする、気を失う
- これらの症状がある場合は、すぐに119番へ電話してください。
- ⚠片方の足が急に大きく腫れてきた
- ⚠足に強い痛みがあり、歩くのが難しい
- ⚠足の皮膚が赤くなり、触ると熱っぽい感じがある
- ⚠これらの症状がある場合は、その日のうちに医療機関を受診してください。
一般的な症状
- 片方の足(ふくらはぎや太もも)のむくみ(腫れ)
- 足の痛みや重だるさ、特にふくらはぎの痛み
- 触ると温かく感じる部分がある
- 皮膚が赤くなったり、皮膚の色が変わる
- 症状がまったく出ない(無症状)こともあります
子供の症状
- 子どもでのDVTはまれですが、足の腫れや痛みが続く場合は医師への相談が必要です。
- 心臓疾患や血液の病気がある子どもはリスクがやや高まることがあります。
- 子どもが足を痛がって歩きたがらない、足が明らかに腫れている場合は早めに受診しましょう。
高齢者の症状
- 高齢の方は症状がわかりにくいことがあります。なんとなく足が重い、だるいといった軽い症状の場合もあります。
- 足のむくみを「年のせい」と見過ごしてしまうことがありますが、片足だけのむくみや急なむくみには注意が必要です。
- 動くことが少ない方(介護を受けている方など)は特にリスクが高いため、周囲の方も変化に気づいてあげることが大切です。
原因
主な原因
- 血流のよどみ:長時間同じ姿勢でいる(飛行機・バスでの長距離移動、長時間の座り仕事、入院中の安静など)と血液の流れが遅くなり、血栓ができやすくなります。
- 血管の内側の傷つき:手術や骨折、外傷などによって血管の壁が傷つくと、血栓が形成されやすくなります。
- 血液が固まりやすい状態:体質的に血液が凝固しやすい方、妊娠中・産後の方、特定の病気(がんなど)がある方などは、血栓ができやすい傾向があります。
リスク要因
- 長時間の移動や入院などによる長期の安静・不動
- 過去にDVTや血栓症になったことがある
- 手術(特に整形外科や腹部の大きな手術)後
- 肥満(体重が血管に負担をかけます)
- 妊娠中・出産後
- ホルモン剤(避妊薬など)の使用
- がんの治療中
- 脱水症状(水分が不足すると血液が濃くなります)
- 高齢(年齢が上がるほどリスクが高まります)
- 喫煙(血管を傷つけ、血流を悪くします)
- 血液が固まりやすい遺伝的な体質
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片足だけがむくんでいたり、急に腫れてきた場合
- ふくらはぎや太ももに強い痛みや圧迫感がある場合
- 足の皮膚が赤く変色し、触ると熱っぽい場合
- 息苦しさや胸の痛みを伴う場合は119番へすぐに電話してください
定期受診を予約すべき場合:
- 長期の入院や手術の前後に足のむくみや不快感が続く場合
- リスク因子(肥満・喫煙・長距離移動が多いなど)がある方が予防について相談したい場合
- 家族にDVTや血栓症の方がいて、自分もリスクがあるか確認したい場合
診断
DVTの診断は、医師による問診(症状や生活習慣、リスク因子の確認)と身体診察から始まります。足の腫れや痛みの状態を確認したうえで、いくつかの検査を組み合わせて診断します。見た目だけではわからないことも多いため、検査が重要な役割を担います。
行われる可能性のある検査
- 超音波検査(エコー検査):体に害がなく痛みもない検査で、静脈の中に血栓があるかどうかを画像で確認します。最もよく使われる検査です。
- 血液検査(Dダイマー測定):血栓ができているときに血液中に増える物質(Dダイマー)を調べます。陰性であればDVTの可能性を大きく下げることができます。
- CT静脈造影検査:造影剤を使って血管の中をより詳しく調べる検査で、必要に応じて行われます。
- MRI検査:放射線を使わずに血管や周囲の組織を詳しく調べることができます。
診察で予想されること
診察では足の状態を見せていただき、いくつか質問(いつから症状があるか、最近長距離移動や手術はあったか、など)をされます。超音波検査はベッドに横になって行うもので、痛みはありません。検査結果によってその後の対応が決まりますが、何のための検査かを遠慮なく医師や看護師に確認してください。
治療
DVTの治療の主な目的は、血栓がこれ以上大きくならないようにすること、肺への移動を防ぐこと、そして将来的な再発を防ぐことです。治療法は症状の程度や血栓の大きさ、場所、患者さんの体の状態によって異なります。担当の医師と一緒に、自分に合った治療方針を相談することが大切です。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示のもと、安静にしすぎず、できる範囲で足を動かすこと(血流改善につながります)
- 足を心臓よりも高い位置に上げる(足を上げることで腫れや痛みが和らぐことがあります)
- 医師から弾性ストッキング(圧迫ストッキング)を勧められた場合は、正しく着用する
- こまめに水分を摂ること(脱水を防ぎ、血液が固まりにくくなります)
- 喫煙をしている方は禁煙を検討してください(喫煙は血栓のリスクを高めます)
- 医師の許可なく自己判断で治療を中止しないこと
医療治療
DVTの医療的な治療の中心は「抗凝固療法(こうぎょうこりょうほう)」と呼ばれるもので、これは血液が固まりにくくなるように調整する治療です。血栓をすでにできたものから溶かすというよりも、血栓がこれ以上大きくなったり新たにできたりするのを防ぐことを目的としています。治療期間は数か月から、場合によってはそれ以上になることもあり、定期的な血液検査と医師のフォローアップが必要です。また、足の腫れや静脈のダメージを防ぐために弾性ストッキングを使用することもあります。治療の詳しい内容は担当の医師から説明を受けてください。
手術が検討される場合
多くのDVTは薬による治療で対応できますが、非常に大きな血栓がある場合や、薬の治療が効かない場合、または重症の場合には、外科的な処置(カテーテルを使って血栓を除去する方法など)が検討されることがあります。また、肺への血栓移動を防ぐために「下大静脈フィルター(かだいじょうみゃくフィルター)」という小さな装置を血管の中に入れる処置が行われることもあります。手術が必要かどうかは、医師が患者さんの状態をふまえて慎重に判断します。
この病気と共に生きる
DVTと診断されると不安になるのは自然なことですが、多くの方が治療を続けながら普通の日常生活を送っています。医師の指示を守りながら、少しずつ生活を立て直していくことができます。焦らず、自分のペースで回復を目指しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 長時間同じ姿勢でいることを避け、1時間に一度は足首を動かしたり、軽く歩いたりする習慣をつけましょう。
- 飛行機や長距離バスの移動では、こまめに立ち上がって歩いたり、足首を回す運動をしたりしましょう。
- 弾性ストッキングを処方された場合は、朝起きたとき(まだ腫れていない状態)に着用するのが効果的です。正しいサイズと着用法を医師や薬剤師に確認しましょう。
- 体重が気になる方は、医師や管理栄養士に相談しながら無理のない範囲で体重管理を検討しましょう。
- 禁煙は血管の健康にとって非常に大切です。禁煙外来などのサポートを活用してみましょう。
食事と運動
バランスの良い食事と適度な運動は、血管の健康を保つうえでとても重要です。特定の食品を制限する必要があるかどうかは、使用している治療の内容によって異なるため、担当医や管理栄養士に確認してください。運動については、ウォーキングなどの軽い有酸素運動が血流改善に役立ちますが、いきなり激しい運動は避け、医師と相談しながら少しずつ体を動かしていくことをおすすめします。
精神的健康と心の健康
病気の診断を受けたり、「また血栓ができるかもしれない」という不安を抱えたりすることで、心が疲れてしまうことがあります。不安や落ち込みを感じるのは、決して弱いことではありません。気持ちがつらいときは一人で抱え込まずに、家族や信頼できる人、または医師やカウンセラーに話してみてください。もし気持ちがとても落ち込んで日常生活に支障が出ているときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にご連絡ください。
予防
DVTを完全に防ぐことは難しい場合もありますが、リスクを大幅に下げることは可能です。日常生活の中でできる予防法として、長時間座りっぱなしにならないこと、こまめに水分を摂ること、適度に体を動かすことが有効です。手術や入院が予定されている場合は、医師や看護師にDVT予防について相談しておくことをおすすめします。弾性ストッキングの着用や、場合によっては予防的な薬物治療が行われることもあります。厚生労働省もエコノミークラス症候群の予防として、長距離移動の際の定期的な足の運動と水分補給を推奨しています。
検診プログラム
特定のリスク因子(血液凝固異常の家族歴、過去の血栓症など)がある方は、医師に定期的なチェックについて相談してみましょう。リスクが高いと判断された場合、予防的な対策を早めに取ることができます。
合併症
治療しない場合
- 肺塞栓症(はいそくせんしょう):血栓が肺の血管に詰まる非常に深刻な状態で、命に関わることがあります。突然の息苦しさや胸の痛みが現れたら、すぐに119番に電話してください。
- 血栓後症候群(けっせんごしょうこうぐん):DVTを起こした静脈が傷ついたままになることで、足のむくみや慢性的な痛み、皮膚の変化が続く状態です。弾性ストッキングの使用などで予防・管理できます。
- 再発:一度DVTになった方は再発リスクが高まる場合があります。医師の指示に従って治療・予防を続けることが大切です。
- 静脈性潰瘍(じょうみゃくせいかいよう):長期間のDVTや血栓後症候群により、足の皮膚に傷(潰瘍)ができることがあります。
長期的な見通し
DVTは適切な治療と生活習慣の見直しによって、多くの方が回復し、通常の生活を取り戻しています。確かに不安なことはあるかもしれませんが、医師と協力しながら一歩ずつ前進することが大切です。定期的なフォローアップを続け、気になることは何でも医師に相談してください。あなたの体は回復する力を持っています。
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