高血糖と吐き気(血糖値が高いと気分が悪くなる)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
「高血糖(こうけつとう)」とは、血液の中のブドウ糖(エネルギー源)が多すぎる状態です。血糖値が高くなると、体が水分を失ったり、血液が酸性に傾いたりして、吐き気を感じることがあります。これは糖尿病のある人に多く見られますが、糖尿病がない人でも、強いストレスや感染症などのきっかけで一時的に起こることがあります。吐き気があると食事や水分をとれず、さらに血糖値が上がるという悪循環に陥りやすいため、注意が必要です。
重要な事実
- 高血糖が続くと、吐き気だけでなく、のどの渇き、頻尿、だるさ、視界のかすみなどが現れることがあります。
- 吐き気や嘔吐があると、水分や食事を十分にとれず、脱水や血糖値の上昇を悪化させる可能性があります。
- 強い吐き気や嘔吐、意識のぼんやりなどは、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群という緊急状態のサインのことがあり、すぐに救急車(119番)を呼ぶ必要があります。
糖尿病患者さんでは、血糖コントロールが乱れているときに比較的よく見られる症状です。特に、感染症やストレス、服薬やインスリンの注射忘れがきっかけで起こりやすくなります。
1型糖尿病、2型糖尿病のどちらの人にも起こりえます。特に、インスリンの作用が極端に不足する状態で起こりやすく、高齢者や子どもでは脱水を合併しやすいため注意が必要です。糖尿病と診断されていない人でも、極度の高血糖になれば吐き気を感じることがあります。
症状
- 何度も嘔吐があり、水分を一切とれない
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 呼吸が速くて苦しそう
- 強い腹痛を伴う吐き気
- けいれん、または失神
- ⚠吐き気が続き、24時間以上食事や水分がとれない
- ⚠血糖値がいつもよりはるかに高い
- ⚠尿中ケトン体が陽性(自己測定できる人)
- ⚠発熱や感染症の兆候がある(のどの痛み、咳、頻尿など)
一般的な症状
- 吐き気、むかつき
- のどが異常に渇く
- 頻尿(何度もトイレに行く)
- 口や皮膚の乾燥
- 疲れやすさ、体のだるさ
- 視界のかすみ
- お腹の不快感
子供の症状
- 吐き気に加えて、おなかの痛みを訴える
- 呼吸が速くなったり、深くなったりする
- ぐったりして元気がない
- 甘いリンゴのような息(アセトン臭)がする
高齢者の症状
- 吐き気よりも、意識がもうろうとする、反応が鈍い
- めまいや立ちくらみ
- 食べる気がしない、尿の量が少ないなどの脱水のサイン
原因
主な原因
- インスリンの不足(特に1型糖尿病で起こりやすい)
- 糖尿病の薬の飲み忘れやインスリン注射のし忘れ
- 感染症(風邪、インフルエンザ、膀胱炎など)
- 急激な精神的・身体的ストレス
- ホルモンの変化(甲状腺や副腎の病気など)
- 手術後やけが、そのほかの重い病気
リスク要因
- 糖尿病と診断されている
- 血糖自己測定を怠っている
- 一人暮らしなど、周囲のサポートが少ない
- 高齢で脱水を起こしやすい
- 過去に糖尿病性ケトアシドーシスを起こしたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐き気が強く、嘔吐を繰り返している
- 胸の痛みや呼吸困難がある
- 混乱や異常行動が見られる
- 妊娠中に高血糖と吐き気がある
定期受診を予約すべき場合:
- 吐き気がときどきあるが、血糖値はおおむねコントロールできている
- 糖尿病の定期受診のときに、最近の吐き気について相談したい
- 飲み薬やインスリンの量について不安がある
診断
医師は、まず問診と血液検査で血糖値を確認します。あわせて尿中ケトン体を調べたり、血液の中の電解質(ナトリウムやカリウム)や酸塩基のバランスを調べたりします。症状やその場の検査結果によっては、緊急での対応が必要と判断されることもあります。吐き気のほかの原因(胃腸炎など)を除外するため、腹部の超音波検査などを行う場合もあります。
行われる可能性のある検査
- 血糖値検査(指先や採血で測定)
- 尿検査(ケトン体の有無)
- 血液検査(HbA1c=過去1〜2か月の平均的な血糖値、電解質、腎機能など)
- 血液ガス検査(血中の酸・塩基のバランス)
診察で予想されること
診察では、最近の食事内容、運動量、飲み薬やインスリンの使用状況、感染症の有無などについて質問されます。重症でなければ、輸液(点滴)やインスリン治療(?)を行いながら経過を見ます。症状によっては、そのまま入院となり、数時間ごとの血液検査と治療が行われます。
治療
治療の目的は、高血糖を改善し、失われた水分と電解質(ミネラル)を補い、吐き気の原因を突き止めることです。軽症なら、こまめな水分補給と食事調整で改善することがありますが、中等症以上では医療機関での治療が必要です。
自宅でのセルフケア
- 吐き気がおさまるまで、無理に食べず、こまめに水分をとる(お茶、白湯、スポーツドリンクなど)
- 血糖値は指示に従ってこまめに測り、記録する
- 十分な安静をとる
- 飲み薬やインスリンを自分で調整せず、必ず医師の指示を守る
- 発熱や感染の兆候がある場合は、すぐに医療機関へ電話して相談する
医療治療
治療の中心は、水分と電解質の補給(点滴)とインスリン療法です。感染症が原因の場合は、根本の感染症の治療も並行して行われます。状態が重いときは、入院して集中管理が必要になります。具体的な薬の種類や量は、医師が血液検査の結果に基づいて個別に決定します。
手術が検討される場合
この症状自体に対する手術は一般的には必要ありません。原因となる病気が特定された場合にのみ、その病気に対する治療法として手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
毎日の血糖値の記録と、食事・体調のメモを続けることが大切です。吐き気が現れやすい場面(空腹時、食後、感染症のときなど)を把握しておくと、早めの対処ができます。あらかじめ医師と「吐き気が出たときの行動計画」を立てておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい食事(1日3食、炭水化物を極端に抜かない)
- 適度な運動(尿中ケトン体が陽性のときは運動を避ける)
- 十分な睡眠とストレスケア
- 禁煙、節酒
- 手洗い・うがいなどの感染症予防
食事と運動
食事は、血糖値を上げやすい糖質(ご飯、パン、麺類、果物など)と、たんぱく質、野菜をバランスよく組み合わせましょう。吐き気が強いときは、おかゆやうどんなど食べやすいものを少量ずつ試してください。運動は血糖コントロールに役立ちますが、尿中ケトン体が陽性のときは運動をしてはいけません。必ず医師の指示に従ってください。
精神的健康と心の健康
高血糖と吐き気が続くと、「また体調が悪くなるのでは」という不安や、毎日の管理への疲れを感じることがあります。それは自然な気持ちです。ひとりで抱え込まず、家族や医療スタッフに気持ちを伝えましょう。必要に応じて、心理的なサポートを受けられる専門家の相談も利用できます。
予防
高血糖と吐き気の多くは、血糖値を目標の範囲に保つことで予防できます。自己測定を習慣にし、処方された薬やインスリンを指示どおりに使用し、感染症やストレスへの対策を行うことが重要です。
ワクチン
感染症が血糖値を急に上昇させるきっかけとなるため、インフルエンザや肺炎球菌などの予防接種を、かかりつけ医と相談して受けることを検討してもよいでしょう。
検診プログラム
糖尿病で定期的に通院している場合は、HbA1c(過去1〜2か月の平均的な血糖値)や腎臓の検査などを継続して受けましょう。吐き気が繰り返す場合には、その原因を早めに受診して調べることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 糖尿病性ケトアシドーシス(血液が酸性に傾く危険な状態)
- 高浸透圧高血糖症候群(血液が濃くなり、意識障害を起こす状態)
- 重度の脱水症と電解質異常
- 意識消失・昏睡
長期的な見通し
高血糖による吐き気は、適切な治療を早く始めれば、多くの場合数日で改善します。たとえ重症に至っても、119番などの緊急医療につながれば、多くの方が救命され回復します。日頃からの予防と定期受診が、安心して過ごすための鍵です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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