心膜炎(心臓を包む膜の炎症)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
心膜炎とは、心臓を包む薄い膜(心膜)に炎症が起こる病気です。この炎症によって、横になると悪化する胸の痛みや圧迫感が生じます。多くはウイルス感染がきっかけで起こりますが、免疫の異常や細菌感染でも起こります。
重要な事実
- 横になると胸の痛みが強くなり、座って前傾姿勢をとると楽になるのが特徴です。
- 心膜炎は心臓の機能ではなく、心臓の外側の膜に炎症が起こる病気です。
- 多くの場合、炎症を抑える薬と安静で数週間から数か月で改善します。
心膜炎はそれほど珍しくなく、かぜやインフルエンザなどのウイルス感染後に起こりやすい病気です。
どの年齢の人にも起こり得ますが、特に20〜50歳の男性に多いとされています。心臓手術の後や自己免疫疾患がある方にも発症しやすくなります。
症状
- 耐えられない強い胸の痛みや圧迫感
- 急にひどい息苦しさが出た
- 冷や汗・吐き気を伴う胸の痛み
- 意識を失いそうになる・失神した
- 唇が青い、手足が冷たいなどのショック症状
- ⚠胸の痛みが数時間続く、またはどんどん強くなる
- ⚠発熱と胸の痛みが同時にある
- ⚠足のむくみやお腹が張る感じがある
- ⚠心膜炎と診断されたが、薬が効かず痛みが続く
一般的な症状
- 横になると悪化する胸の痛み(座ると楽になる)
- 胸の痛みが肩・首・背中へ広がる
- 息苦しさ
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)
子供の症状
- 胸が痛いと上手に説明できず、不機嫌になったり、泣いたりする
- おなかや肩の痛みを訴えることがある
- 横になるのを嫌がり、座った姿勢を好む
高齢者の症状
- 典型的な胸の痛みが少なく、息切れや動悸、めまい、だるさが目立つ
- 意識がもうろうとする、反応がにぶいと感じたらすぐに医療機関を受診する
- 発熱がなく、無症状に近いこともある
原因
主な原因
- ウイルス感染(かぜ、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症など)
- 細菌感染(肺炎、結核など)
- 自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)で免疫系が心膜を攻撃する
- 心筋梗塞後の炎症
- 心臓の手術や胸部へのけが
- 腎臓病(特に透析が必要な慢性腎臓病)
- 一部の薬剤への反応
- がんの心膜への転移(まれ)
リスク要因
- 最近のウイルス感染
- 自己免疫疾患の持病がある
- 心臓手術やカテーテル治療を受けたことがある
- 慢性腎臓病で透析治療をしている
- 20〜50歳の男性
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みが突然出た、または数分以上続く
- 痛みとともに息苦しさやふらつきがある
- 高熱が出てきた
- 心膜炎の治療中に症状が悪化している
定期受診を予約すべき場合:
- 横になると胸に違和感がある、痛む
- 微熱やだるさが数日以上続く
- 心臓の病気が心配で検査を受けたい
診断
医師が話を聞き、聴診器で心臓の音(心膜こすれ音)を確認し、心電図や血液検査、胸のX線、心臓の超音波検査などを組み合わせて診断します。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気的な変化を見る)
- 胸部X線(心臓の影や胸の変化を見る)
- 血液検査(炎症の程度や心筋への影響を調べる)
- 心エコー(心膜に水がたまっていないか確認する)
- 心臓MRI(炎症の状態を詳しく評価する)
診察で予想されること
まず症状と病歴を詳しく尋ねられます。心電図や血液検査はその場で行われ、結果がすぐに出ることもあります。心膜炎が疑われれば、心膜の水のたまり具合を確認し、安静にするために入院を勧められる場合もあります。
治療
治療の中心は「炎症を抑える」ことと「原因に対する治療」です。急性期は安静にし、症状に応じて座った姿勢を保つと楽になります。多くの場合、数週間で改善しますが、再発することもあるため、経過観察が大切です。
自宅でのセルフケア
- 急性期は安静にし、横になるよりは少し起き上がった姿勢をとる
- 激しい運動や重い物を持ち上げる動作を避ける
- 胸を締め付ける服装を避ける
- 十分な睡眠と休養をとる
- 市販の痛み止めサプリなどについては医師・薬剤師に相談してから使う
医療治療
医師は、炎症を抑える薬や、免疫の反応をしずめる薬を処方することがあります。原因が細菌感染の場合は抗生物質が使われます。どの薬をどのように使うかは、原因や症状、持病に合わせて医師が決定します。必ず処方された通りに服用し、自己判断でやめないでください。
手術が検討される場合
心膜に大量の水がたまり、心臓を圧迫して循環が保てない場合(心タンポナーデ)には、針で水を抜く処置や、心膜の一部を切除する手術(心膜開窓術)が行われることがあります。
この病気と共に生きる
急性期は1〜2週間ほど安静を心がけます。症状がおさまったあとも、しばらくは胸の痛みがぶり返すことがあるため、無理をせず、痛みを感じたらすぐに休むようにしてください。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠時間をしっかり確保する
- 禁煙する(タバコは炎症を悪化させる)
- アルコールを控えめにする
- ストレスをためない方法を見つける
- 規則正しい生活リズムを保つ
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、野菜や果物を取り入れたバランスのよいものを心がけましょう。急性期は運動を控え、医師の許可が出てから散歩などの軽い運動から始め、徐々に強度を上げていきます。
精神的健康と心の健康
胸の痛みや息苦しさは、不安や恐怖を感じることがあります。症状が長引くと気分の落ち込みにつながることもあるので、一人で抱え込まず、医師や家族・友人に気持ちを伝えましょう。
予防
すべての心膜炎を予防することはできませんが、感染症にかかりにくくすることでリスクを減らせます。手洗いやうがい、バランスの良い食事、十分な睡眠を心がけましょう。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナウイルスなどのワクチン接種は、心膜炎のきっかけとなる感染症を防ぐのに役立ちます。
検診プログラム
心膜炎を対象にした特定の検診はありませんが、心臓の手術後や自己免疫疾患のある方は、定期的に循環器内科で経過を観察することが推奨されます。
合併症
治療しない場合
- 心膜に水がたまり、心臓を圧迫する「心タンポナーデ」になる
- 炎症が繰り返し起こり、「再発性心膜炎」になる
- 心膜が厚く硬くなり心臓の動きを制限する「収縮性心膜炎」になる
長期的な見通し
心膜炎は、適切な治療を受ければ多くの場合、数週間から数か月で改善します。後遺症が残らず、通常の生活に戻れる人がほとんどです。ただし、再発する場合もあるので、症状に注意しながら定期的に医師の診察を受けることが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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