PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と吐き気:知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、女性ホルモンのバランスが乱れ、卵巣に小さな嚢胞(のう胞)がたくさんできることで、月経が不順になったり、男性ホルモンが増えたりする体の状態です。PCOS自体が吐き気を直接引き起こすことはまれですが、PCOSに伴うホルモンの変化や血糖値の乱れ、併存する体調不良が吐き気の原因になることがあります。
重要な事実
- PCOSは月経不順・にきび・体毛の増加などの症状を引き起こすことがあります。
- 吐き気はPCOSの典型的な症状ではありませんが、ホルモンの変動やインスリンの働きの乱れ、治療の影響で起こることがあります。
- 吐き気が続く場合は、他の病気が隠れていないか医師の診察を受けることが大切です。
- PCOSは生活習慣の改善や医療的なサポートで症状を和らげられます。
PCOSは日本人女性の約5~10%に見られるとされており、決して珍しい病気ではありません。吐き気自体は誰にでも起こりえますが、PCOSの患者さんで吐き気を感じる場合、その原因はPCOSではなく別の要因であることが多いです。
PCOSは主に10代後半から30代の出産年齢の女性に多く見られます。思春期が始まった後、どの年齢でも診断される可能性がありますが、特に月経不順や妊娠を希望する方で気づかれることが多いです。
症状
- 吐き気に加えて、突然の激しい腹痛や腰の痛みがある
- 吐いたものが血液混じり、またはコーヒーかすのような黒っぽい色をしている
- 意識がもうろうとする、めまいで立てない
- 胸の痛みや息苦しさを伴う
- 妊娠の可能性があり、激しい腹痛と出血がある場合
- ⚠吐き気が続いて水分がまったく取れない、尿が出ない
- ⚠吐き気とともに発熱や黄疸(皮膚や目が黄色くなる)がある
- ⚠市販の吐き気止めや水分補給でも改善しない
- ⚠強い頭痛や首のこわばりを伴う吐き気がある
一般的な症状
- 生理の周期が不規則になる(月経不順)
- 生理がなかなか来ない、または年に何回もない
- にきびや肌の脂っぽさが目立つ
- 顔や体の毛が濃くなる(多毛)
- 体重が増えやすい、特に腰回りにつきやすい
- 吐き気、むかむかする感じ(PCOSそのものより、関連する要因で起こることがあります)
子供の症状
- 思春期の場合は、生理が始まっても周期がなかなか整わない
- 体重増加や肥満傾向
- ひどいにきびや皮脂の多い肌
- 吐き気を伴う腹痛がある場合、他の病気の可能性もあるため医師に相談してください
高齢者の症状
- 閉経が近づくとPCOSの症状が変わり、月経不順がさらに目立つことがあります
- 吐き気が続く場合は、更年期の体調変化や他の消化器の問題が隠れていることもあります
- 高血圧や糖尿病のリスクが高まるため、定期健診が大切です
原因
主な原因
- PCOSでは、卵巣から出るホルモンのバランスが崩れ、排卵が起こりにくくなります。これによって月経不順や男性ホルモンの増加が起こります。
- 吐き気は、PCOSそのものが原因というよりも、ホルモンの急な変動(月経前や月経中)や、インスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンが効きにくい状態)が関係することがあります。
- PCOSの治療で使われる薬やホルモン剤が吐き気の副作用を引き起こすこともあります。
- 吐き気は、過食や偏食、ストレス、胃腸の疾患、内耳の異常など、PCOSと無関係の原因でも起こります。
リスク要因
- 家族にPCOSの人がいる
- 肥満や過体重
- インスリン抵抗性や糖尿病の既往
- 運動不足や偏った食生活
- 強いストレスを抱えている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 吐き気が1日以上続き、水分も喉を通らない
- 吐き気とともに体重が急に減った
- 吐き気とともに息切れや動悸がある
- 妊娠の可能性がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 月経不順やPCOSの症状について相談したい
- 吐き気が月経周期と関係しているように感じる
- PCOSと診断されているが、吐き気が続いて困っている
- 他にめまい・下痢・便秘なども併せて気になる
診断
医師はあなたの症状や体の状態を詳しく聞き、必要に応じて血液検査や超音波検査(お腹のエコー)を行います。吐き気については、PCOSだけでなく胃腸の病気や他のホルモンの異常がないかも調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:女性ホルモンや男性ホルモンの値、血糖値やインスリン値などを確認します。
- 超音波検査(エコー):卵巣の状態や嚢胞の有無を確認します。
- 医師による内診や問診:症状の詳しい経過を確認します。
- 妊娠検査:吐き気の原因として妊娠の可能性を除外します。
診察で予想されること
PCOSの診断には、月経不順があること、男性ホルモン過剰の症状(または血液検査の異常)、超音波で卵巣に多数の小さな卵胞が見えること、のうち2つ以上を満たすかどうかが基準になります。診察は30分程度で、初診で吐き気の原因をすべて調べられるとは限らないため、必要に応じて再診や追加の検査があります。
治療
PCOSの治療は、体質や症状、妊娠希望の有無によって大きく変わります。吐き気がある場合は、その原因に合わせた対応が必要です。食事や運動などの生活習慣の見直しが基本となり、状況に応じて医療的な治療が行われます。吐き気に対しては、まず原因を特定し、胃腸の症状を和らげる対症療法を併用することもあります。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる。冷たい水より常温の水や白湯がおすすめです。
- 吐き気が強いときは、においの強い食べ物を避け、消化の良いものを少量ずつ食べる。
- ゆっくり深呼吸をし、リラックスできる姿勢で休む。
- 月経前や月経中に吐き気がでやすい人は、カレンダーで記録してパターンを把握する。
- 医師の許可がなくても、サプリメントや市販薬を自己判断で服用しない。
医療治療
医療機関では、月経周期を整えるホルモン療法や、血糖値やインスリンの働きに働きかける薬が検討されることがあります。吐き気に対しては、胃腸の働きを調整する薬や吐き気を抑える薬が処方されることもあります。ただし、薬の選択や用量は必ず医師があなたの症状と状態に合わせて決めます。服用中に吐き気が強まる場合は、自己判断で中止せずに医師に相談してください。
手術が検討される場合
卵巣に大きな嚢胞がある場合や、強い痛みや吐き気を繰り返す場合は、手術が検討されることがあります。ただし、PCOS自体に対する手術はほとんど行われず、あくまで合併症への対応として行われます。
この病気と共に生きる
PCOSとともに生活するうえで、症状がすべての人に同じように出るわけではありません。吐き気が続くときは、自分の体調を記録し、食事量や睡眠、ストレスとの関係を観察してみましょう。つらいときは無理をせず、休むことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を毎日6〜8時間ほどしっかりとる。
- ストレスをため込まず、趣味や好きなことで気分転換をする。
- 飲酒や喫煙は控える。アルコールは吐き気を悪化させることがあります。
- 急激な体重の増減を避け、体重を管理する。
- 自分に合った運動を決まった時間に行う。
食事と運動
植物性の食材や食物繊維を多く含むバランスの良い食事を心がけましょう。血糖値の急激な上昇を避けるために、白米やパンなどの精製された炭水化物を控えめにし、野菜、豆類、全粒穀物を積極的に取り入れるとよいです。運動は1日30分程度のウォーキングやスイミングなどの有酸素運動がおすすめです。吐き気があるときは、無理に食べたり運動したりせず、体調が整ってから始めましょう。
精神的健康と心の健康
月経不順や体の見た目の変化、妊娠への不安、吐き気などの体調不良が続くと、気分の落ち込みや不安を感じることがあります。それは決して甘えではなく、病気の一部としてあつかう必要があります。つらい気持ちは一人で抱え込まず、パートナーや家族、友人に話してみましょう。
予防
PCOSそのものを完全に予防する方法はまだわかっていません。ただし、健康的な体重を維持し、バランスの良い食事と規則正しい生活を心がけることで、症状の悪化や吐き気などの合併症を防ぐことはできます。
検診プログラム
PCOSによる長期的な健康リスク(糖尿病や高血圧など)に早く気づくために、定期的な健康診断や婦人科検診を受けることが勧められます。吐き気が続く場合も、原因を早期に見つけるために医師の診察を受けましょう。
合併症
治療しない場合
- 月経不順が続き、妊娠しにくくなる可能性があります。
- 2型糖尿病や高血圧、脂質異常症のリスクが高まることがあります。
- 長期間の無排卵により子宮内膜が厚くなり、子宮内膜がんのリスクがわずかに上がることがあります。
- 吐き気が続く場合、脱水や栄養不足につながることがあります。
長期的な見通し
PCOSは決して珍しい病気ではなく、多くの女性が適切な治療と生活管理で症状をうまくコントロールしています。吐き気についても、原因を特定して対処することで、多くの場合改善が期待できます。将来の妊娠についても、医療の助けを受けることで可能性を高めることができます。あきらめずに、一歩ずつ自分の体と向き合っていきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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